上 下
10 / 60

第10話 明らかに日本人ではないお姉さん

しおりを挟む
 「はっ、はっ!」
「キュイ、キュイッ!」
 
 俺は急いで地上へと駆け上がる。
 リビングに顔を出すと、そこにはさっき聞こえた声の主がいた。

「……ねえさん」
「あ、ホシく~ん!」
「おかえり」
「たーだいまっ!」
「んむっ!」

 目が合った瞬間、いきなり柔らかな感触に包まれる。

「く、苦しいって」
「え~いいじゃない、ちょっとぐらい!」
「毎日だからだよ。はい離れて」
「やん」

 柔らかな感触から離れて見上げると、ねた表情をしている女性。

 彼女は『エリカ』姉さん。
 血は繋がっていないけど、「お姉さん」と呼んでと言われているからそうしてる。

「も~冷たいなあ」

 腰あたりまで伸びたサラサラな黄緑色の髪。
 スカイブルーの瞳。
 胸が大きく出た豊満なボディ。

 見た目通り日本人ではない。
 でも、ずっと一緒にいるからもう慣れた。
 両親がいないこの家で過ごせるのは、姉さんのおかげでもある。

 だけど、一緒に過ごす難点はいくつか。

「じゃあおやつ食べよっか」
「ガキじゃないから。あと頭でないで」

 まずは甘やかすのが大好きなことだ。
 俺も高校生だし、そろそろ恥ずかしい。

 とは言いつつも、一応おやつはもらっておいた。
 一応ね。

「お姉さん、今日は料理教室に行ってたんだよ」
「へー」

 姉さんが出したパンケーキを食べながら、なんとなく話す。
 
「キュイ~!」

 めろんにはダンジョンで採れる果物だ。
 喜んで食べる姿は可愛い。

「それでね」
「え、うん。……ん?」

 姉さんはゆっくりとこちらを振り返った。

「さっきは何をしてたのかな?」
「え」
「地下からすごく急いできたみたいだったけど?」
「な、なんのことだか……さっぱり」

 さっきのことと言えば、もう配信しかない。
 俺は目を逸らしながら隠す。

「本当にそうかな?」
「……うん」
「ふーん?」
「ち、近いって」

 だけど、横を向いても下を向いても、姉さんは視界に入ってくる。
 やがて姉さんは俺の後方に目を向けた。

「じゃあ、それはなにかな?」
「……!」

 姉さんが指差した方向には、浮遊型カメラ。
 何故かまだ浮いていて、こちらを映してる。
 
 ここまで言われれば仕方がないか。

「……配信をやってたんだよ」
「へえ配信! それはすごい! じゃあ~」
「なに?」

 何が言いたいか分かっていながらも聞き返す。

「お姉さんも配信に載りたい!」
「ダメ」
「がーん!」

 姉さんは口を四角にして落ち込んだ。
 なんともわかりやすい。

「ど、どうして?」

 うるうると涙ぐませながらお願いしてくる姉さん。
 それでも俺は断る。

「……恥ずかしいから」
「なにがー?」
「だって絶対配信でもこの調子でしょ」
「そりゃもちろん!」

 姉さんは立ち上がり、人差し指をピンと伸ばした。

「お姉さんとホシ君が仲良しってことをみんなに見せないと!」
「うん。だからダメ」
「も~!」

 ぷんぷん、と言いながら姉さんは両手を腰に当てた。
 もうそんなのが似合う年じゃないと思うけどな。

「ごちそうさま」
「はーい」

 パンケーキは美味しく頂いたので、俺は浮遊型カメラに近づく。

「どうやって止めるんだっけ」

 ナナミから譲ってもらった時は、段ボールに収まっていたはず。
 だから地下ダンジョンに置いてきたと思ったんだけど。

「うーん?」

 色々といじっている内に、カメラの上部分が赤く光っていることに気づく。

「え」

 俺はナナミの言葉を思い出した。
 『ここが光ってる時は配信中なのよ』

「……!?」

 ちょっとまって、冗談だろ!

 俺は焦りながら配信を確認する。
 だけど、時はすでに遅かった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!

果 一
ファンタジー
二人の勇者を主人公に、ブルガス王国のアリクレース公国の大戦を描いた超大作ノベルゲーム『国家大戦・クライシス』。ブラック企業に勤務する久我哲也は、日々の疲労が溜まっている中、そのゲームをやり込んだことにより過労死してしまう。 次に目が覚めたとき、彼はゲーム世界のカイム=ローウェンという名の少年に生まれ変わっていた。ところが、彼が生まれ変わったのは、勇者でもラスボスでもなく、本編に名前すら登場しない悪役サイドのモブキャラだった! しかも、本編で配下達はラスボスに利用されたあげく、見限られて殺されるという運命で……? 「ちくしょう! 死んでたまるか!」 カイムは、殺されないために努力することを決める。 そんな努力の甲斐あってか、カイムは規格外の魔力と実力を手にすることとなり、さらには原作知識で次々と殺される運命だった者達を助け出して、一大勢力の頭へと駆け上る! これは、死ぬ運命だった悪役モブが、最凶へと成り上がる物語だ。    本作は小説家になろう、カクヨムでも公開しています 他サイトでのタイトルは、『いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!~チート魔法で無双してたら、一大勢力を築き上げてしまったんだが~』となります

【完結】小さなフェンリルを拾ったので、脱サラして配信者になります~強さも可愛さも無双するモフモフがバズりまくってます。目指せスローライフ!〜

むらくも航
ファンタジー
ブラック企業で働き、心身が疲労している『低目野やすひろ』。彼は苦痛の日々に、とにかく“癒し”を求めていた。 そんな時、やすひろは深夜の夜道で小犬のような魔物を見つける。これが求めていた癒しだと思った彼は、小犬を飼うことを決めたのだが、実は小犬の正体は伝説の魔物『フェンリル』だったらしい。 それをきっかけに、エリートの友達に誘われ配信者を始めるやすひろ。結果、強さでも無双、可愛さでも無双するフェンリルは瞬く間にバズっていき、やすひろはある決断をして……? のんびりほのぼのとした現代スローライフです。 他サイトにも掲載中。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~

椿紅颯
ファンタジー
目標である登録者3万人の夢を叶えた葭谷和昌こと活動名【カズマ】。 しかし次の日、身に覚えのない大炎上を経験してしまい、SNSと活動アカウントが大量の通報の後に削除されてしまう。 タイミング良くアルバイトもやめてしまい、完全に収入が途絶えてしまったことから探索者になることを決める。 数日間が経過し、とある都市伝説を友人から聞いて実践することに。 すると、聞いていた内容とは異なるものの、レアドロップ&レアスキルを手に入れてしまう! 手に入れたものを活かすため、一度は去った配信業界へと戻ることを決める。 そんな矢先、ダンジョンで狩りをしていると少女達の危機的状況を助け、しかも一部始終が配信されていてバズってしまう。 無名にまで落ちてしまったが、一躍時の人となり、その少女らとパーティを組むことになった。 和昌は次々と偉業を成し遂げ、底辺から最速で成り上がっていく。

姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?~穀潰しのための奮闘が賞賛される流れに~

果 一
ファンタジー
 リクスには、最強の姉がいる。  王国最強と唄われる勇者で、英雄学校の生徒会長。  類い希なる才能と美貌を持つ姉の威光を笠に着て、リクスはとある野望を遂行していた。 『ビバ☆姉さんのスネをかじって生きよう計画!』    何を隠そうリクスは、引きこもりのタダ飯喰らいを人生の目標とする、極めて怠惰な少年だったのだ。  そんな弟に嫌気がさした姉エルザは、ある日リクスに告げる。 「私の通う英雄学校の編入試験、リクスちゃんの名前で登録しておいたからぁ」  その時を境に、リクスの人生は大きく変化する。  英雄学校で様々な事件に巻き込まれ、誰もが舌を巻くほどの強さが露わになって――?  これは、怠惰でろくでなしで、でもちょっぴり心優しい少年が、姉を越える英雄へと駆け上がっていく物語。  ※本作はカクヨム・ノベルアップ+でも公開しています。カクヨム・ノベルアップ+でのタイトルは『姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?~穀潰し生活のための奮闘が、なぜか賞賛される流れになった件~』となります。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

処理中です...