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第8話 Fランク探索者、Sランク魔物とたわむれる(激しめ)

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「だから、めろんもこうなるんですね~」

 俺は隣のめろんに視線を向ける。
 カメラも空気を読み、引きでめろんを映す。

《ファッ!?》
《なんだ!?》
《はい!?》
《???》
《どういうこと!?》
《なんじゃこりゃーーー!!》

 そこには、体が大きくなった・・・・・・めろん。

「ギャオッ!」

 緑のもふもふな毛並みは残しつつも、所々に浮き出る筋肉。
 バサッと音が鳴る立派な翼に、伸びた尻尾。

「グオ!」

 さっきの小さな姿からは一転。
 かっこよさが全面に押し出ためろんが宙を舞っていた。

「ははっ、興奮したんだな」
「ギャオ!」

 地下のダンジョン内で興奮すると、この姿になるんだよね。
 大抵は飲んだり食べたりする時だ。

「可愛いけどね~」
「ギャウゥ~ン」

 頭を抱えてなでなでする。
 体は大きくなっても可愛いものは可愛い。
 人懐っこい性格は変わらないからね。

 だけど、

「え?」

 ふと見たコメント欄の方はとんでもないことになっていた。

《おいおい!》
《ちょっと待って》
《この姿……》
《まさか》
《そうだよな?》
《本物か!?》

「ん?」

 視聴者がまるで共通認識を持っているみたいだ。

「みんな? どうしたっていうんですか」

 その問いに答えてくれたのは、またもあの人物。

《日向ヒカリ:その子、間違いなく『ドラゴン』よ!》

 コメント欄は一気に加速する。

《だよなあ!》
《やっぱりかー!!》
《めろんお前ドラゴンだったのか!》
《だから飛んでたのかよ!!》
《ドラゴンって実在するんだ!!》
《かっけええ!》

「!!」

 その盛り上がりように、めろんの方をゆっくり振り向く。

「めろん、君……」
「ギャオ?」
「ドラゴンだったのかー!」

《お前もかい笑》
《ズコー》
《だからなんで知らねえんだよw》
《一緒に過ごして来たんじゃないのかww》

「大きくなるなあとは思ってましたけど」

《こいつw》
《もうダメだ》
《ここまでとはw》
《灯台下暗しの極み》

「教えてくれてもいいじゃーん、めろん」
「ギャオ……」
「え、何回も言ったって?」
「ギャオ」
「そっかあ」

《会話できてんの?w》
《でも何回も言ってたの気づいてないじゃん》
《できてるんだかできないんだかw》
《腹いてえw》

「幼い頃から遊んでいるんですけどねー」

 固定概念って怖いんだね。
 幼い頃からトカゲだと思って過ごしてきたら、そうにしか見えなかったよ。
 割とびっくしたけど、視聴者が盛り上がってくれたならいいかな。

 視聴者のコメントは続く。

《遊ぶって何をするんですか?》

「んーと、単にじゃれ合ったりとか、ですかね」

《さっきみたいな?》

「それもありますしー、もうちょっと激しめ・・・の時もあるかも」
 
 だけど、この言葉で少しコメントが流れる速度が落ちる。

《激しめ……?》
《それってどういう?》

 イマイチピンときていないみたいだ。
 そういうことなら!

「めろん、あれをしよう!」
「ギャウ!」

 俺たちは入口から少し奥、いつもの遊び場へ進む。
 そこの地面は楕円だえん形に草原がくり抜かれており、土俵・・のようになっている。

 俺たちは距離を取って向かい合い、お互いにぐっと腰を落とした。

《何が始まるんだ?》
《なんか土俵みたいな……?》
《え、これまさか》

「いつでもいいぞー」
「ギャオオオ!」

 合図と共に、めろんは全速力で突進してくる。
 視聴者も完全に理解したようだ。

《相撲!?》
《相撲だ!》
《やっぱりか!》
《ドラゴンと相撲!?》
《相手Sランク魔物だぞ!?》

《日向ヒカリ:大丈夫なの!?》

「うおおっ!?」
「ギャオ!」

 めろんと俺の体がぶつかり、激しい音がなる。

《爆発音したぞ!?》
《音えっぐ!!》
《ぶつかる音ドガーンでわろたwww》
《死ぬて!》

「ぐううぅぅ」
「ギャオオ!」

 その圧倒的な力の前に、俺は一気に土俵際まで詰められる。

《大丈夫か!》
《そりゃそうだろ!》
《むしろなんで耐えてんだ》
《普通の探索者なら体粉々だぞ!?》

 だけど、土俵際で勢いはピタっと止まる。

《え?》
《は?》
《!?》
《止まった?》

《日向ヒカリ:うそでしょ……》

「ふっ」

 俺はニヤリとしながらめろんを見上げた。
 
「強くなったな、めろん」
「ギャオ!?」
「おりゃああああ!」
「ギャイ~ン!」

 俺は体を後ろに反転。
 勢いのまま、背負い投げでめろんを投げ飛ばした。
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