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最終話② 幸せな披露宴
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里での配信を終えて、家の中。
ここは五年前から変わらないな。
今では三つある建物の内の一つだけど。
「ただいまー。帰ったよー」
「もう、遅いよ~?」
家の中から返ってくる声がある。
俺は靴を脱ぎながら返事をした。
「なんか落ち着かなくてさ」
「だから配信って、本当に配信星人だよね」
リビングに顔を出すと、そこには一人。
前からここに住む一人の女性だ。
「もう、やすひろさんは~」
「ごめんごめん。美月」
桜井美月。
俺が選んだパートナーだ。
先日、婚姻届も提出している。
「うーん。やっぱり美月は照れるなあ」
「美月はずっとやすひろさんだけどね」
「やすひろさんは、やすひろさんって感じだもん!」
だけど、結婚式はまだ挙げていない。
まあ、それは明日なんだけどね。
「いよいよ明日かあ」
「そうだな」
「こんな結婚式が出来るなんて」
そんな会話をしながら、お互いなんとなく窓から外を見上げる。
視聴者さん達も分かっていた明日のあれとは、結婚式のこと。
そして、俺たちの視線の先にあるのは世界樹。
俺たちは明日、世界樹で結婚式を挙げる。
「一番乗りは取られちゃったけどな」
「それは譲るよ。あの人達もいてこそだから」
「そうだね」
そう話している後ろから、声が掛かる。
「おいおい。一番乗りって俺たちのことか?」
「!」
美月と一緒に思わず振り返った。
そこにいるのは俺の親友と、そのお相手さんだ。
「そうだよ。えりと」
「だろうな。やすひろ」
二年前、世界樹で結婚式を挙げたカップル。
えりと、目銅佐オーナーだ。
「いやー悪いね。先に世界樹使わせてもらって」
「良いんだって。美月も言う通り、二人もいてこその世界樹だよ」
五年前からちょくちょく仲良いなとは思っていたけど、まさか結婚するとは思っていなかった。
というか、えりとが結婚したのが意外だ。
そんな二人は世界樹で結婚式を挙げている。
二年前のことだ。
二人のご親族もろともモフモフに囲まれ、料理は超豪華だし、オーナーの社員はたくさん来るし、それはもうすごい式だった。
今でも鮮明に覚えている。
「てかやすひろ。お前も婿入りなんだよな」
「そうだよ」
婚姻届を出した先日から、俺は「桜井やすひろ」だ。
理由は特にない。
強いて言うなら、美月が桜井の名字を気に入ってることぐらいか。
俺は「やすひろ」の名が浸透しすぎていて、問題もなさそうだったしな。
「って、えりと。お前も目銅佐えりとだろ」
「まあな」
そして、実はえりとも婿入りだ。
えりと側の理由は「名字くそかっこよくね?」とのことだった。
相変わらずこいつらしいが、今では誇りとすら思ってるオーナーの意図を汲んだのだろうな。
「目銅佐」の名で経営者を続けているわけだし。
「美月ちゃん、改めておめでとう!」
「オーナーさん! ありがとうございますっ」
オーナーと美月は隣で笑顔で話している。
親友同士、モフモフ好き同士、ビジネスパートナーなど……今では、二人の関係の表す言い方はどれだけでもあるな。
「にしても、やっと身を固めたか。やすひろよ」
「しょうがねえだろ。美月は大学生だったんだから」
「ま、それもそうだな」
俺と美月が付き合い始めたのは三年前。
彼女が二十歳になった時に「付き合いましょう」と言われたんだ。
だが大学生とはいえ、美月も配信業を続けていて、さらに彼女はアイドル配信者。
返事にはめちゃくちゃ迷った。
それでも、彼女からの幾度ものアプローチ、あとは俺の気持ちに正直になって付き合い始めた。
「やすひろと桜井さんが付き合った時は、相当荒れたな」
「ははっ。そうだったな」
付き合い始めた後、パパラッチも面倒なので俺たちは早々にそれを発表した。
そうなれば、さすがはアイドル配信者。
予想通り……いや、予想以上にネットは荒れた。
俺もそうだが、美月の登録者はかなりダメージを受けた。
だけど、それを見た美月はたった一言。
(こんなに残ってくれたんだ!)
美月は前向きだった。
あの時ほど「配信者としてはかなわないな」と思ったことはない。
それを乗り越えたからこそ、今も彼女を応援してくれる視聴者は好意的な人たちばかりだ。
今では美月の登録者は500万人。
俺の登録者は1000万人にもなる。
「で、えりと。明日の準備は整った?」
「ああ、全て完璧だ」
「ありがとう。本当に助かるよ」
「なんだよ今更。きもちわりい」
「きもっ!?」
ふっ、と笑ったえりとは言葉を付け足す。
「俺はお前の裏方であり相方。なんでもしてやる」
「そっか。頼もしいな」
「ああ、世界一使える裏方だと自負してる」
「すんなよ!」
でもこんなところは変わらないらしい。
実際その通りなんだろうけど。
「しっかし、やすひろも桜井さんも、生粋の配信者だな」
「そうかもなあ」
えりとが行ってくれていたのは「配信の準備」。
明日行われる俺と美月の結婚式は、俺のチャンネルで配信されるんだ。
視聴者が楽しみにしていたのは、これのおかげでもある。
「じゃ、明日な。寝坊すんなよ新郎様よ」
「おう!」
えりとが手を振りながら帰る。
もちろんオーナーも一緒だ。
「私も行きますね、やすひろさん」
「はい。準備や諸々、ありがとうございました。明日もお願いします」
「もちろんです! 任せてください!」
目銅佐オーナーはぐっと親指を立てて帰っていった。
「じゃ、あとは明日の俺に任せるか~」
「ほんとに呑気だよね、やすひろさん」
ふふっ、といつものように笑う美月。
ちょっと距離が近い。
「緊張してるからこそだよ。今からあれこれ考えてたら吐きそう」
「自業自得だよ。発案者はわたしなんだけど」
「やっぱ配信力はかなわねえ」
「えー、わたしの二倍の登録者いるくせに!」
頬を膨らませた美月。
自然ともう一歩ずつ距離が近づく。
「たまたま露出の機会が多かっただけだって」
「そおかなあ」
「それより今日はゆっくりは休もう。明日は大変だよ」
「ふふっ。そうだね」
「……」
「……」
見つめ合ってから、そっと口づけをして、そのまま休んだ。
★
<三人称視点>
ざわざわ、ざわざわ。
ここは世界樹の頂上。
開宴直前となり、たくさんの人が出席して騒がしくなっている。
「いつもお世話になっております」
「いえいえ、こちらこそでございます」
「うちの美月が──」
出席しているには新郎新婦の親族、友人、仕事仲間など、多くの人々。
なお、えりとの開発システムにより、配信上では自動で顔はVTuber化される。
「す、すごすぎ……」
「これが世界樹ってやつなのね」
「ファンタジーだわ」
「美月、本当に良い男見つけたわね」
会場の豪華さには、出席した全員が驚く。
そもそもこの高さ50メートルという場所。
五年でさらに進化した空中ブランコや滑り台では、子どもがはしゃぐ姿も見られる。
「お花見ゾーン」には季節に関係なく、サクラ、ヒマワリ、モミジ、サザンカなど、それぞれの季節を代表する花々が顔を出す。
またもやすひろの「いつでも花を見たくない?」というぶっ飛び発想から実現させた技術の結晶だ。
当然、指揮役はえりとである。
そんな花々や派手にお金を使った壮大なセット。
その上、食卓に並ぶのは幻と言われる『王種』野菜をこれでもかというほどに使った一流料理。
女性にも嬉しい超高級スイーツもずらりと並ぶ。
まさに、目に入る全てがファンタジーな会場であった。
また、この様子は計三つのカメラですでに配信されている。
《今日は一段とやべえな》
《気合い入ってる》
《早く始まらないかなあ~!》
《\10000 いつもありがとう!》
《\50000 結婚おめでとうございます》
《\500 少なめですがこれからも応援してます!》
コメントに加え、今日はたくさんの投げ銭が流れる。
視聴者もお祝いをしたいようだ。
そうして、時間がやってくる。
いよいよ開宴だ。
静まり返った会場内で、マイクの音が響く。
「皆さん、本日はお越しいただき──」
司会を務めるえりとの声だ。
やすひろの親友にして相棒。
彼以外に務まる者はいないだろう。
「では挨拶も早々に。さっそく新郎新婦のご入場です。……いや」
「「「?」」」
だが、いきなりニヤリと笑ったえりと。
先の演出を知っているからこその表情だろう。
「ご登場の方が正しいかな」
えりとが言葉を訂正すると同時に、上空から鳴き声が響く。
「プクー!!」
やすひろのペットの一匹、モモンガのタンポポだ。
「え!?」
「どこから!?」
「上だよ!!」
《!?》
《タンポポ!?》
《タンポポだ!》
《どうして!?》
《まさか!》
《さすがに?》
そして会場・コメントの期待に応えるよう二人の影が現れる。
「みなさーん!」
「こんにちは~!!」
やすひろと美月が空から降ってきた。
「「「えええ!?」」」
《!?》
見ている全員が驚くと同時に不安が過る。
あの高さから飛び降りれば当然だ。
だが、やすひろは余裕そうに声を上げる。
「モンブラン!」
「ムニャ!」
呼び声に反応して、どこからか現れたモンブランが得意のかまいたちを発生。
風を巻き起こし、二人の勢いを和らげたのだ。
それでも、落下しているのには変わりない。
「ココア!」
「キュルルルルー!」
そこで隠れていたココアが覚醒。
ちょっとおでぶちゃんになったモフモフの体で二人をバウンドさせる。
「うおっ!」
「わわっ!」
それでも勢い余る二人。
最後は……
「ワフッ!」
「ぽよっ!」
やすひろを最初のペットであるフクマロ、美月を相棒のぽよちゃんが受け止めた。
危険をくぐり抜けてきたからこその演出である。
「すごーっ!」
「やすひろー!」
「美月かっこいい!」
《かっけえええ!!》
《まじでビビった~ww》
《さすがやすひろ!》
《美月ちゃんもやるな!》
《これぞダンジョン配信者》
《美月ちゃんも花嫁修業(物理)してたもんな》
最初は驚いたが、完璧な演出に会場が湧く。
すかさずえりとがコメンを付け加えた。
「えー、皆さん驚かれたかと思いますが、こいつらはバカ……おっと失礼、エンターテイナーなのでご了承を」
「えりと!?」
「えりとさん!?」
「「「あはははっ!」」」
《おいwww》
《本音出てるぞw》
《さすがえりと笑》
《司会させても変わんねえw》
《むしろこいつ以外司会いねえわw》
えりとのキャラは世間にも知れ渡っている為、会場・配信共に笑いが起きる。
「では、新郎のご挨拶です」
ひとしきり笑いが起こった後、えりとは丁寧にやすひろへマイクを渡した。
こういうしっかりとした所も毒舌でも好かれる要因である。
「皆様、本日はご多忙の中、お集まりいただきありがとうございます。新郎の低目野やすひろ、改め桜井やすひろです」
《\15000 本当におめでとう!》
《\50000 やすひろー!》
《\1000 いつも応援してます!!》
《\3000 これからも楽しみにしてます!》
《\893 おめでとう!!》
《\3900 いつも配信サンキューな》
開宴の挨拶にスーパーチャットは大加速。
予定された二時間の配信で億以上にもなる勢いだ。
「それでは、今日はお越しの皆さまも配信の皆様もお楽しみください!」
後に感謝のメッセージの場も用意されているため、挨拶は早々に切り上げた。
やすひろと視線を交わしたえりとが進行する。
「続きまして、乾杯のご発声をしていただきます。フクマロです!」
「ワフ」
そこで立ち上がったのは、なんとフクマロ。
「まじかよ」
「うそぉ」
「聞いたことないよ」
《乾杯フクマロwww》
《理解してるのかw》
《ガチで賢くて草》
《もう驚かなくなってきた笑》
《やっぱフクマロよ》
《やすひろと言えばだな》
《なんか感慨深い》
《ずっと支え合ってきたもんな》
驚く人から、さも当然のようにする人まで。
やすひろの全ての始まりでもあるフクマロに、感動する者までいた。
「ワフ」
そうして登壇したフクマロ。
発するのはただ一言のみ。
「ワフー!」
「「「かんぱ~い!!」」」
《\5000 かんぱい!》
《\40000 かんぱ~い!》
《\1000 かんぱいだよ!》
《\1500 一緒に飲んでるよ~!》
《\4500 おめでとう!》
それが「乾杯」と言ったのは誰もが分かった。
こうして、やすひろと美月の結婚披露宴は開宴したのだ。
結婚披露宴は続く。
「やすひろのビジネスパートナー『安東会長』によるお言葉です」
かつて優しくしてもらい、今もなおやすひろはご厚意にしてもらっている安東会長の登壇。
「里を収める『長』と両種族の余興です」
里長さんとスライムさん、両種族の指揮の元、余興が行われた。
組体操のようなもので、魔物界随一の身体能力を持つフェンリルと、変幻自在の体を持つインフィニティスライムのそれは実に多彩なものであった。
すでにこの時点で普通ではないが、ここからさらに様々な企画が始まる。
「モンブラン、頼むぞ」
「ムニャ」
大きなケーキの前で、やすひろと美月が持つのはモンブラン。
ナイフの代わりにモンブランのかまいたちを採用したのだ。
ケーキ入刀……ならぬケーキ入猫である。
「続いては彼ら! 飼い主に捧げる熱いラブソングです!」
フクマロ・モンブラン・ココア・タンポポ・ぽよちゃん、新郎新婦のペット五匹によるバンドの余興。
それ以外にも、やすひろとこの里ならではの企画が多数持ち込まれた。
後半にはすでに結婚式ですらなくなっていたが、それがまた大いに盛り上がる。
そして、いよいよ最後の企画。
ずっと明るいままのこの場所ではあるが、季節柄、外はすっかり暗くなっていた。
そんな中でマイクを持ったのは、やすひろ・美月のそれぞれのビジネスパートナーであり、彼らと親友でもある目銅佐オーナーだ。
彼女は照明に合図を送り、会場を暗くする。
「最後に祝福の気持ちを込めたものをお送りしますので、ぜひご覧ください」
オーナーがパチン、と指を鳴らす。
その瞬間、どこからかひゅるひゅる~と音が聞こえてくる。
その後、
「おおー!」
「綺麗……!」
ボン、と音と共に綺麗な花火が鳴った。
これはやすひろと美月も聞かされていないサプライズ企画だった。
「美月ちゃん、やすひろさん、改めておめでとうございます」
多数花火が打ちあがる中、オーナーが話し出す。
「今思えば、やすひろさんに私の本性を見られたのがきっかけでしたね」
彼女の「モフモフ好き」という本性。
名前とその目付きの悪さから恐れられていた彼女だったが、本性を見られたことをきっかけに彼女は開き直ることができた。
今では業界でも彼女の本性は有名だ。
「こうして、ここでお二人をお祝いできたことを誇りに思います」
オーナーの言葉にやすひろと美月は頷いている。
「それでは、最後に特大のお祝い花火です!」
タイミングを何度も練習したのだろう。
そうして、掲げられた最後の花火は。
「やすひろさん……! みんなも!」
「あれは美月とぽよちゃん!」
わあああ、と一段と湧いた会場。
夜空に映し出されたのは、やすひろと美月、また五匹のペット達の顔を模した花火だった。
「これで私の企画は終わりです。ありがとうございました」
一番の拍手とコメント欄。
最後にふさわしい言葉と企画を以て、全企画が終了した。
★
<やすひろ視点>
「これで私の企画は終わりです。ありがとうございました」
目銅佐オーナーがマイクを手放す。
最後は俺の締めの挨拶だ。
「美月」
「うん」
花束を持った美月と登壇して、マイクを片手に話し始めた。
「改めまして、皆様、本日は本当にありがとうございました」
俺たちのペットを最前列に、たくさんの人やモフ・ぷにが集まってくれている。
こんなの普通の結婚式じゃまずありえない光景だ。
「また配信の皆様も本当にありがとうございます」
スーパーチャットをくれた人も、そうでない人も。
等しく「ありがとう」と言いたい。
「うまく言えませんが、こうして皆様と作った光景というのは、一生忘れないのだろうなと思います」
俺は恵まれている、心からそう思った。
「だから、この恩返しとして、僕は何ができるのかなって考えました」
答えは、さっき出たばかりだ。
「僕はこれからも配信を続けていきます。隣の美月と一緒に。それが一番恩返しになるのではないかと思うからです」
美月と目を合わせて、共にお辞儀をする。
「本日は本当に、本当にありがとうございました」
会場中から拍手が聞こえてくる。
俺たちを祝福してくれているんだ。
初めてフクマロと出会った深夜の帰り道。
ただ絶望していた、憔悴していた日々に光が差した日だった。
あの日から俺はずっと幸せだ。
これからもそんな日々を送っていきたい。
みんなと一緒に。
終わり
───────────────────────
~あとがき~
まずは、最後までお読み頂いた読者の皆様、本当にありがとうございました。
物語はここで完結となります。
もし良ければ、最後にコメントなどを頂けると作者はとってもハッピーになります笑。
また、番外編なども更新するかもしれません!
少しお話をしますと、本作は第3回ファンタジーカップに合わせて投稿したものでした。
すでに順位は下がっておりますが、期間中「男性向けHOTランキング」2位、「ファンタジーカップpt」3位まで登ることができました。
6/1現在も「ファンタジーカップpt」は8位と高順位を維持しております。
これも全て、応援してくださった皆様のおかげでございます。
改めてありがとうございました。
これからもアルファポリス様では活動していきたいと思っておりますので、よろしければ『作者お気に入り』もしていただけたら嬉しく思います。
それではあとがきはこの辺で。
また違う作品でお会いしましょう。
ありがとうございました!
ここは五年前から変わらないな。
今では三つある建物の内の一つだけど。
「ただいまー。帰ったよー」
「もう、遅いよ~?」
家の中から返ってくる声がある。
俺は靴を脱ぎながら返事をした。
「なんか落ち着かなくてさ」
「だから配信って、本当に配信星人だよね」
リビングに顔を出すと、そこには一人。
前からここに住む一人の女性だ。
「もう、やすひろさんは~」
「ごめんごめん。美月」
桜井美月。
俺が選んだパートナーだ。
先日、婚姻届も提出している。
「うーん。やっぱり美月は照れるなあ」
「美月はずっとやすひろさんだけどね」
「やすひろさんは、やすひろさんって感じだもん!」
だけど、結婚式はまだ挙げていない。
まあ、それは明日なんだけどね。
「いよいよ明日かあ」
「そうだな」
「こんな結婚式が出来るなんて」
そんな会話をしながら、お互いなんとなく窓から外を見上げる。
視聴者さん達も分かっていた明日のあれとは、結婚式のこと。
そして、俺たちの視線の先にあるのは世界樹。
俺たちは明日、世界樹で結婚式を挙げる。
「一番乗りは取られちゃったけどな」
「それは譲るよ。あの人達もいてこそだから」
「そうだね」
そう話している後ろから、声が掛かる。
「おいおい。一番乗りって俺たちのことか?」
「!」
美月と一緒に思わず振り返った。
そこにいるのは俺の親友と、そのお相手さんだ。
「そうだよ。えりと」
「だろうな。やすひろ」
二年前、世界樹で結婚式を挙げたカップル。
えりと、目銅佐オーナーだ。
「いやー悪いね。先に世界樹使わせてもらって」
「良いんだって。美月も言う通り、二人もいてこその世界樹だよ」
五年前からちょくちょく仲良いなとは思っていたけど、まさか結婚するとは思っていなかった。
というか、えりとが結婚したのが意外だ。
そんな二人は世界樹で結婚式を挙げている。
二年前のことだ。
二人のご親族もろともモフモフに囲まれ、料理は超豪華だし、オーナーの社員はたくさん来るし、それはもうすごい式だった。
今でも鮮明に覚えている。
「てかやすひろ。お前も婿入りなんだよな」
「そうだよ」
婚姻届を出した先日から、俺は「桜井やすひろ」だ。
理由は特にない。
強いて言うなら、美月が桜井の名字を気に入ってることぐらいか。
俺は「やすひろ」の名が浸透しすぎていて、問題もなさそうだったしな。
「って、えりと。お前も目銅佐えりとだろ」
「まあな」
そして、実はえりとも婿入りだ。
えりと側の理由は「名字くそかっこよくね?」とのことだった。
相変わらずこいつらしいが、今では誇りとすら思ってるオーナーの意図を汲んだのだろうな。
「目銅佐」の名で経営者を続けているわけだし。
「美月ちゃん、改めておめでとう!」
「オーナーさん! ありがとうございますっ」
オーナーと美月は隣で笑顔で話している。
親友同士、モフモフ好き同士、ビジネスパートナーなど……今では、二人の関係の表す言い方はどれだけでもあるな。
「にしても、やっと身を固めたか。やすひろよ」
「しょうがねえだろ。美月は大学生だったんだから」
「ま、それもそうだな」
俺と美月が付き合い始めたのは三年前。
彼女が二十歳になった時に「付き合いましょう」と言われたんだ。
だが大学生とはいえ、美月も配信業を続けていて、さらに彼女はアイドル配信者。
返事にはめちゃくちゃ迷った。
それでも、彼女からの幾度ものアプローチ、あとは俺の気持ちに正直になって付き合い始めた。
「やすひろと桜井さんが付き合った時は、相当荒れたな」
「ははっ。そうだったな」
付き合い始めた後、パパラッチも面倒なので俺たちは早々にそれを発表した。
そうなれば、さすがはアイドル配信者。
予想通り……いや、予想以上にネットは荒れた。
俺もそうだが、美月の登録者はかなりダメージを受けた。
だけど、それを見た美月はたった一言。
(こんなに残ってくれたんだ!)
美月は前向きだった。
あの時ほど「配信者としてはかなわないな」と思ったことはない。
それを乗り越えたからこそ、今も彼女を応援してくれる視聴者は好意的な人たちばかりだ。
今では美月の登録者は500万人。
俺の登録者は1000万人にもなる。
「で、えりと。明日の準備は整った?」
「ああ、全て完璧だ」
「ありがとう。本当に助かるよ」
「なんだよ今更。きもちわりい」
「きもっ!?」
ふっ、と笑ったえりとは言葉を付け足す。
「俺はお前の裏方であり相方。なんでもしてやる」
「そっか。頼もしいな」
「ああ、世界一使える裏方だと自負してる」
「すんなよ!」
でもこんなところは変わらないらしい。
実際その通りなんだろうけど。
「しっかし、やすひろも桜井さんも、生粋の配信者だな」
「そうかもなあ」
えりとが行ってくれていたのは「配信の準備」。
明日行われる俺と美月の結婚式は、俺のチャンネルで配信されるんだ。
視聴者が楽しみにしていたのは、これのおかげでもある。
「じゃ、明日な。寝坊すんなよ新郎様よ」
「おう!」
えりとが手を振りながら帰る。
もちろんオーナーも一緒だ。
「私も行きますね、やすひろさん」
「はい。準備や諸々、ありがとうございました。明日もお願いします」
「もちろんです! 任せてください!」
目銅佐オーナーはぐっと親指を立てて帰っていった。
「じゃ、あとは明日の俺に任せるか~」
「ほんとに呑気だよね、やすひろさん」
ふふっ、といつものように笑う美月。
ちょっと距離が近い。
「緊張してるからこそだよ。今からあれこれ考えてたら吐きそう」
「自業自得だよ。発案者はわたしなんだけど」
「やっぱ配信力はかなわねえ」
「えー、わたしの二倍の登録者いるくせに!」
頬を膨らませた美月。
自然ともう一歩ずつ距離が近づく。
「たまたま露出の機会が多かっただけだって」
「そおかなあ」
「それより今日はゆっくりは休もう。明日は大変だよ」
「ふふっ。そうだね」
「……」
「……」
見つめ合ってから、そっと口づけをして、そのまま休んだ。
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<三人称視点>
ざわざわ、ざわざわ。
ここは世界樹の頂上。
開宴直前となり、たくさんの人が出席して騒がしくなっている。
「いつもお世話になっております」
「いえいえ、こちらこそでございます」
「うちの美月が──」
出席しているには新郎新婦の親族、友人、仕事仲間など、多くの人々。
なお、えりとの開発システムにより、配信上では自動で顔はVTuber化される。
「す、すごすぎ……」
「これが世界樹ってやつなのね」
「ファンタジーだわ」
「美月、本当に良い男見つけたわね」
会場の豪華さには、出席した全員が驚く。
そもそもこの高さ50メートルという場所。
五年でさらに進化した空中ブランコや滑り台では、子どもがはしゃぐ姿も見られる。
「お花見ゾーン」には季節に関係なく、サクラ、ヒマワリ、モミジ、サザンカなど、それぞれの季節を代表する花々が顔を出す。
またもやすひろの「いつでも花を見たくない?」というぶっ飛び発想から実現させた技術の結晶だ。
当然、指揮役はえりとである。
そんな花々や派手にお金を使った壮大なセット。
その上、食卓に並ぶのは幻と言われる『王種』野菜をこれでもかというほどに使った一流料理。
女性にも嬉しい超高級スイーツもずらりと並ぶ。
まさに、目に入る全てがファンタジーな会場であった。
また、この様子は計三つのカメラですでに配信されている。
《今日は一段とやべえな》
《気合い入ってる》
《早く始まらないかなあ~!》
《\10000 いつもありがとう!》
《\50000 結婚おめでとうございます》
《\500 少なめですがこれからも応援してます!》
コメントに加え、今日はたくさんの投げ銭が流れる。
視聴者もお祝いをしたいようだ。
そうして、時間がやってくる。
いよいよ開宴だ。
静まり返った会場内で、マイクの音が響く。
「皆さん、本日はお越しいただき──」
司会を務めるえりとの声だ。
やすひろの親友にして相棒。
彼以外に務まる者はいないだろう。
「では挨拶も早々に。さっそく新郎新婦のご入場です。……いや」
「「「?」」」
だが、いきなりニヤリと笑ったえりと。
先の演出を知っているからこその表情だろう。
「ご登場の方が正しいかな」
えりとが言葉を訂正すると同時に、上空から鳴き声が響く。
「プクー!!」
やすひろのペットの一匹、モモンガのタンポポだ。
「え!?」
「どこから!?」
「上だよ!!」
《!?》
《タンポポ!?》
《タンポポだ!》
《どうして!?》
《まさか!》
《さすがに?》
そして会場・コメントの期待に応えるよう二人の影が現れる。
「みなさーん!」
「こんにちは~!!」
やすひろと美月が空から降ってきた。
「「「えええ!?」」」
《!?》
見ている全員が驚くと同時に不安が過る。
あの高さから飛び降りれば当然だ。
だが、やすひろは余裕そうに声を上げる。
「モンブラン!」
「ムニャ!」
呼び声に反応して、どこからか現れたモンブランが得意のかまいたちを発生。
風を巻き起こし、二人の勢いを和らげたのだ。
それでも、落下しているのには変わりない。
「ココア!」
「キュルルルルー!」
そこで隠れていたココアが覚醒。
ちょっとおでぶちゃんになったモフモフの体で二人をバウンドさせる。
「うおっ!」
「わわっ!」
それでも勢い余る二人。
最後は……
「ワフッ!」
「ぽよっ!」
やすひろを最初のペットであるフクマロ、美月を相棒のぽよちゃんが受け止めた。
危険をくぐり抜けてきたからこその演出である。
「すごーっ!」
「やすひろー!」
「美月かっこいい!」
《かっけえええ!!》
《まじでビビった~ww》
《さすがやすひろ!》
《美月ちゃんもやるな!》
《これぞダンジョン配信者》
《美月ちゃんも花嫁修業(物理)してたもんな》
最初は驚いたが、完璧な演出に会場が湧く。
すかさずえりとがコメンを付け加えた。
「えー、皆さん驚かれたかと思いますが、こいつらはバカ……おっと失礼、エンターテイナーなのでご了承を」
「えりと!?」
「えりとさん!?」
「「「あはははっ!」」」
《おいwww》
《本音出てるぞw》
《さすがえりと笑》
《司会させても変わんねえw》
《むしろこいつ以外司会いねえわw》
えりとのキャラは世間にも知れ渡っている為、会場・配信共に笑いが起きる。
「では、新郎のご挨拶です」
ひとしきり笑いが起こった後、えりとは丁寧にやすひろへマイクを渡した。
こういうしっかりとした所も毒舌でも好かれる要因である。
「皆様、本日はご多忙の中、お集まりいただきありがとうございます。新郎の低目野やすひろ、改め桜井やすひろです」
《\15000 本当におめでとう!》
《\50000 やすひろー!》
《\1000 いつも応援してます!!》
《\3000 これからも楽しみにしてます!》
《\893 おめでとう!!》
《\3900 いつも配信サンキューな》
開宴の挨拶にスーパーチャットは大加速。
予定された二時間の配信で億以上にもなる勢いだ。
「それでは、今日はお越しの皆さまも配信の皆様もお楽しみください!」
後に感謝のメッセージの場も用意されているため、挨拶は早々に切り上げた。
やすひろと視線を交わしたえりとが進行する。
「続きまして、乾杯のご発声をしていただきます。フクマロです!」
「ワフ」
そこで立ち上がったのは、なんとフクマロ。
「まじかよ」
「うそぉ」
「聞いたことないよ」
《乾杯フクマロwww》
《理解してるのかw》
《ガチで賢くて草》
《もう驚かなくなってきた笑》
《やっぱフクマロよ》
《やすひろと言えばだな》
《なんか感慨深い》
《ずっと支え合ってきたもんな》
驚く人から、さも当然のようにする人まで。
やすひろの全ての始まりでもあるフクマロに、感動する者までいた。
「ワフ」
そうして登壇したフクマロ。
発するのはただ一言のみ。
「ワフー!」
「「「かんぱ~い!!」」」
《\5000 かんぱい!》
《\40000 かんぱ~い!》
《\1000 かんぱいだよ!》
《\1500 一緒に飲んでるよ~!》
《\4500 おめでとう!》
それが「乾杯」と言ったのは誰もが分かった。
こうして、やすひろと美月の結婚披露宴は開宴したのだ。
結婚披露宴は続く。
「やすひろのビジネスパートナー『安東会長』によるお言葉です」
かつて優しくしてもらい、今もなおやすひろはご厚意にしてもらっている安東会長の登壇。
「里を収める『長』と両種族の余興です」
里長さんとスライムさん、両種族の指揮の元、余興が行われた。
組体操のようなもので、魔物界随一の身体能力を持つフェンリルと、変幻自在の体を持つインフィニティスライムのそれは実に多彩なものであった。
すでにこの時点で普通ではないが、ここからさらに様々な企画が始まる。
「モンブラン、頼むぞ」
「ムニャ」
大きなケーキの前で、やすひろと美月が持つのはモンブラン。
ナイフの代わりにモンブランのかまいたちを採用したのだ。
ケーキ入刀……ならぬケーキ入猫である。
「続いては彼ら! 飼い主に捧げる熱いラブソングです!」
フクマロ・モンブラン・ココア・タンポポ・ぽよちゃん、新郎新婦のペット五匹によるバンドの余興。
それ以外にも、やすひろとこの里ならではの企画が多数持ち込まれた。
後半にはすでに結婚式ですらなくなっていたが、それがまた大いに盛り上がる。
そして、いよいよ最後の企画。
ずっと明るいままのこの場所ではあるが、季節柄、外はすっかり暗くなっていた。
そんな中でマイクを持ったのは、やすひろ・美月のそれぞれのビジネスパートナーであり、彼らと親友でもある目銅佐オーナーだ。
彼女は照明に合図を送り、会場を暗くする。
「最後に祝福の気持ちを込めたものをお送りしますので、ぜひご覧ください」
オーナーがパチン、と指を鳴らす。
その瞬間、どこからかひゅるひゅる~と音が聞こえてくる。
その後、
「おおー!」
「綺麗……!」
ボン、と音と共に綺麗な花火が鳴った。
これはやすひろと美月も聞かされていないサプライズ企画だった。
「美月ちゃん、やすひろさん、改めておめでとうございます」
多数花火が打ちあがる中、オーナーが話し出す。
「今思えば、やすひろさんに私の本性を見られたのがきっかけでしたね」
彼女の「モフモフ好き」という本性。
名前とその目付きの悪さから恐れられていた彼女だったが、本性を見られたことをきっかけに彼女は開き直ることができた。
今では業界でも彼女の本性は有名だ。
「こうして、ここでお二人をお祝いできたことを誇りに思います」
オーナーの言葉にやすひろと美月は頷いている。
「それでは、最後に特大のお祝い花火です!」
タイミングを何度も練習したのだろう。
そうして、掲げられた最後の花火は。
「やすひろさん……! みんなも!」
「あれは美月とぽよちゃん!」
わあああ、と一段と湧いた会場。
夜空に映し出されたのは、やすひろと美月、また五匹のペット達の顔を模した花火だった。
「これで私の企画は終わりです。ありがとうございました」
一番の拍手とコメント欄。
最後にふさわしい言葉と企画を以て、全企画が終了した。
★
<やすひろ視点>
「これで私の企画は終わりです。ありがとうございました」
目銅佐オーナーがマイクを手放す。
最後は俺の締めの挨拶だ。
「美月」
「うん」
花束を持った美月と登壇して、マイクを片手に話し始めた。
「改めまして、皆様、本日は本当にありがとうございました」
俺たちのペットを最前列に、たくさんの人やモフ・ぷにが集まってくれている。
こんなの普通の結婚式じゃまずありえない光景だ。
「また配信の皆様も本当にありがとうございます」
スーパーチャットをくれた人も、そうでない人も。
等しく「ありがとう」と言いたい。
「うまく言えませんが、こうして皆様と作った光景というのは、一生忘れないのだろうなと思います」
俺は恵まれている、心からそう思った。
「だから、この恩返しとして、僕は何ができるのかなって考えました」
答えは、さっき出たばかりだ。
「僕はこれからも配信を続けていきます。隣の美月と一緒に。それが一番恩返しになるのではないかと思うからです」
美月と目を合わせて、共にお辞儀をする。
「本日は本当に、本当にありがとうございました」
会場中から拍手が聞こえてくる。
俺たちを祝福してくれているんだ。
初めてフクマロと出会った深夜の帰り道。
ただ絶望していた、憔悴していた日々に光が差した日だった。
あの日から俺はずっと幸せだ。
これからもそんな日々を送っていきたい。
みんなと一緒に。
終わり
───────────────────────
~あとがき~
まずは、最後までお読み頂いた読者の皆様、本当にありがとうございました。
物語はここで完結となります。
もし良ければ、最後にコメントなどを頂けると作者はとってもハッピーになります笑。
また、番外編なども更新するかもしれません!
少しお話をしますと、本作は第3回ファンタジーカップに合わせて投稿したものでした。
すでに順位は下がっておりますが、期間中「男性向けHOTランキング」2位、「ファンタジーカップpt」3位まで登ることができました。
6/1現在も「ファンタジーカップpt」は8位と高順位を維持しております。
これも全て、応援してくださった皆様のおかげでございます。
改めてありがとうございました。
これからもアルファポリス様では活動していきたいと思っておりますので、よろしければ『作者お気に入り』もしていただけたら嬉しく思います。
それではあとがきはこの辺で。
また違う作品でお会いしましょう。
ありがとうございました!
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