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第56話 その魔物は
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「モンブラン! 道を開いてくれ!」
「ムニャニャニャー!」
「お願いぽよちゃん!」
「ぽよー!」
二日目の午前。
俺たちは変わらず『地獄谷』を突き進む。
「えりと、道は!」
『変わらず真っ直ぐだ。ここは乗り切るしかねえ!」
「了解!」
奥に進むにつれ、魔物の数もその強さも格段に強くなってきた。
さすがは日本最難関ダンジョン。
とても一筋縄ではいかない。
「ムニャ!」
「キュル!」
「プクー!」
モンブランは地上、ココアは強化、タンポポは空中から戦う。
「グオオオオォォ!」
三匹の見事な連携で巨大な木の魔物『グレートツリー』を倒した。
グレートツリーの戦闘力はA。
このダンジョンに潜ってA未満の魔物は見たことが無い。
ペット達の活躍でなんとかなっているだけだ。
いくら上級探索者をたくさん連れて来ても、この魔境を抜けるのは相当に厳しいだろう。
「……ふう。中々きついな」
『少し休むか?』
「そうしよう。ペットも傷ついてる」
『それがいい』
それでも、俺たちも無傷ってわけではない。
主な原因は、フクマロが俺と美月ちゃんを守っているために、積極的に戦闘に参加はできないからだろう。
切り込み隊長がいない分、火力が下がるのは当然だ。
「ほら、これを飲むんだ」
「ムニャ~」
「キュルルー」
「プクッ」
それぞれにたくさん持ってきている『魔物用ポーション』を飲ませる。
これは、初めて案件を下さったダンジョンヘルス(株)様から頂いた物だ。
初期からずっと携わってもらえるのは本当にありがたい。
品質も抜群に良いし。
休憩を挟む中で、えりとと意見を交わす。
細かな時間の使い方は、ダンジョン攻略にとても大切だ。
「タンポポで空を進むのは良くないんだよな?」
『ああ。このダンジョンはあくまで森がメイン。森の中にヒントがあるはずだ。それを見逃したくねえ』
「なるほど」
つまり、このまま地上での移動を続けるしかないわけだ。
複雑に絡み合ったこの森の中。
えりとの誘導がなければ、この変わらない景色を進むのは気が狂いそうだ。
「頼りにしてるぜ」
『任せろ。俺は天才だからな』
自分で言うかよ。
そんな、“らしさ”もここでは支えになるな。
「ワフ!?」
「フクマロ? どうした」
「ワフー!」
「うわあっ!」
「きゃっ!」
フクマロが俺と美月ちゃんを強引に引っ張る。
「グオオオオォォ!」
「──!!」
そのすぐ後、俺たちがいた場所に炎のブレスが飛んできた。
ほんのタッチの差だ。
フクマロがいなければ危なかったかもしれない。
「みんなは!」
「ムニャ」
「キュル」
「プク」
「ぽよ!」
返事をするペット達。
それぞれフクマロと同じタイミングで気づき、回避していたようだ。
フクマロもみんななら躱せると信頼して、俺と美月ちゃんだけを引っ張ったのだろう。
だが、今はそんなことよりも。
「──グオオオォォ!」
「こいつは……とんでもないな」
現れたのはドラゴン!
俺はその姿を前に図鑑を覗く。
だけど、
「あれ……?」
図鑑がまるで反応しない。
「どういうことだ!?」
『……新種だ』
「え?」
『図鑑にすら載ってねえ、新種ってことだよ。俺の記憶にもねえ』
えりとが焦ったような声色で伝えてくる。
『こいつはやべえぞ』
「まじかよ……!」
改めてドラゴンの姿を見る。
赤い鋼鉄のような皮膚。
今までのどの魔物より大きな体躯。
王たる巨大な翼と、一つの武器と化した尻尾を持った生命の頂上種だ。
それでも、引くわけにはいかない。
「やすひろさん……!」
「覚悟を決めて。美月ちゃん」
「はい!」
よりにもよって休憩のタイミングで来るか。
ポーションを与えたとはいえ、みんなの傷が癒えきったわけじゃない。
絶体絶命のピンチかもしれないな。
「──グオオオォォ!」
「ぐっ!」
ドラゴンの咆哮。
死すらも覚悟する戦いが始まる……そう思った時だった。
「クォ~~~~ン!」
「──!?」
今度は後方からの魔物の声。
遠吠えのようなものが響き渡る。
ていうか今の声……。
俺は思わず、“フクマロを見た”。
だって、今の遠吠えはまるで!
「グオォ……」
開戦の合図を上げたドラゴンですら動きを止め、遠吠えが聞こえた方をじっくりと見る。
その目は興味のようで、恐怖をしているような目つきだ。
「「「……」」」
また、それはうちのペット達も同じ。
固まり、一心にその遠吠えの方を見る。
「……! まさか、本当に……!」
そうして、音もなく現れたその魔物は──。
「ムニャニャニャー!」
「お願いぽよちゃん!」
「ぽよー!」
二日目の午前。
俺たちは変わらず『地獄谷』を突き進む。
「えりと、道は!」
『変わらず真っ直ぐだ。ここは乗り切るしかねえ!」
「了解!」
奥に進むにつれ、魔物の数もその強さも格段に強くなってきた。
さすがは日本最難関ダンジョン。
とても一筋縄ではいかない。
「ムニャ!」
「キュル!」
「プクー!」
モンブランは地上、ココアは強化、タンポポは空中から戦う。
「グオオオオォォ!」
三匹の見事な連携で巨大な木の魔物『グレートツリー』を倒した。
グレートツリーの戦闘力はA。
このダンジョンに潜ってA未満の魔物は見たことが無い。
ペット達の活躍でなんとかなっているだけだ。
いくら上級探索者をたくさん連れて来ても、この魔境を抜けるのは相当に厳しいだろう。
「……ふう。中々きついな」
『少し休むか?』
「そうしよう。ペットも傷ついてる」
『それがいい』
それでも、俺たちも無傷ってわけではない。
主な原因は、フクマロが俺と美月ちゃんを守っているために、積極的に戦闘に参加はできないからだろう。
切り込み隊長がいない分、火力が下がるのは当然だ。
「ほら、これを飲むんだ」
「ムニャ~」
「キュルルー」
「プクッ」
それぞれにたくさん持ってきている『魔物用ポーション』を飲ませる。
これは、初めて案件を下さったダンジョンヘルス(株)様から頂いた物だ。
初期からずっと携わってもらえるのは本当にありがたい。
品質も抜群に良いし。
休憩を挟む中で、えりとと意見を交わす。
細かな時間の使い方は、ダンジョン攻略にとても大切だ。
「タンポポで空を進むのは良くないんだよな?」
『ああ。このダンジョンはあくまで森がメイン。森の中にヒントがあるはずだ。それを見逃したくねえ』
「なるほど」
つまり、このまま地上での移動を続けるしかないわけだ。
複雑に絡み合ったこの森の中。
えりとの誘導がなければ、この変わらない景色を進むのは気が狂いそうだ。
「頼りにしてるぜ」
『任せろ。俺は天才だからな』
自分で言うかよ。
そんな、“らしさ”もここでは支えになるな。
「ワフ!?」
「フクマロ? どうした」
「ワフー!」
「うわあっ!」
「きゃっ!」
フクマロが俺と美月ちゃんを強引に引っ張る。
「グオオオオォォ!」
「──!!」
そのすぐ後、俺たちがいた場所に炎のブレスが飛んできた。
ほんのタッチの差だ。
フクマロがいなければ危なかったかもしれない。
「みんなは!」
「ムニャ」
「キュル」
「プク」
「ぽよ!」
返事をするペット達。
それぞれフクマロと同じタイミングで気づき、回避していたようだ。
フクマロもみんななら躱せると信頼して、俺と美月ちゃんだけを引っ張ったのだろう。
だが、今はそんなことよりも。
「──グオオオォォ!」
「こいつは……とんでもないな」
現れたのはドラゴン!
俺はその姿を前に図鑑を覗く。
だけど、
「あれ……?」
図鑑がまるで反応しない。
「どういうことだ!?」
『……新種だ』
「え?」
『図鑑にすら載ってねえ、新種ってことだよ。俺の記憶にもねえ』
えりとが焦ったような声色で伝えてくる。
『こいつはやべえぞ』
「まじかよ……!」
改めてドラゴンの姿を見る。
赤い鋼鉄のような皮膚。
今までのどの魔物より大きな体躯。
王たる巨大な翼と、一つの武器と化した尻尾を持った生命の頂上種だ。
それでも、引くわけにはいかない。
「やすひろさん……!」
「覚悟を決めて。美月ちゃん」
「はい!」
よりにもよって休憩のタイミングで来るか。
ポーションを与えたとはいえ、みんなの傷が癒えきったわけじゃない。
絶体絶命のピンチかもしれないな。
「──グオオオォォ!」
「ぐっ!」
ドラゴンの咆哮。
死すらも覚悟する戦いが始まる……そう思った時だった。
「クォ~~~~ン!」
「──!?」
今度は後方からの魔物の声。
遠吠えのようなものが響き渡る。
ていうか今の声……。
俺は思わず、“フクマロを見た”。
だって、今の遠吠えはまるで!
「グオォ……」
開戦の合図を上げたドラゴンですら動きを止め、遠吠えが聞こえた方をじっくりと見る。
その目は興味のようで、恐怖をしているような目つきだ。
「「「……」」」
また、それはうちのペット達も同じ。
固まり、一心にその遠吠えの方を見る。
「……! まさか、本当に……!」
そうして、音もなく現れたその魔物は──。
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