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第54話 団らんとまずい状況?

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 「ふい~、疲れた~」
「今日はこの辺で野営ですかね」

 先ほど配信を終えたところで、一息つく。
 辺りもすっかり暗くなってきて、これ以上の探索は危険との判断だ。

「本当にこの道で合ってる?」
『ああ、間違いない』

 変わらずサポートしてくれているのは、えりと。
 
『草のちょっとした踏み跡、魔物の出現具合……。道筋は合っているはずだ』
「ふーん。とにかく助かるよ! めちゃくちゃ!」
『よし、今日も理解度はゼロだな』

 えりとは複数の小型ドローンを遠隔操作して、この先に行くべき道を探ってくれている。

 少しでも逸れれば、すぐに迷ってしまうようなこの森林。
 えりとがいなければ、とっくに道を見失っていただろう。

『とにかく今日はここまでだ。しっかり体を休めろ』
「了解」

 通信を切り、野営の準備を進めるペット達を手伝いにいく。

「みんなは大丈夫か?」
「ワフッ!」
「ムニャッ!」
 
 まだまだ元気そうな声を上げるペット達。
 さすがにタフだな。

「ごめんな。これ以上は俺や美月ちゃんが厳しい。また交代で見張りを頼んでもいいか?」
「キュル!」
「プクー!」
「ははっ、ありがとうな」

 頼られるのが嬉しそうなみんなを順番にでた。
 こんな危険な場所に潜られるのも、みんなのおかげだ。
 感謝しないとな。

「やすひろさん。こっちはできましたよー」
「りょかーい。って、ええ!?」

 美月ちゃんの方を振り返ると、驚くべき光景が。
 なんと、仮眠のためのテントが一つ・・しかないのだ。

「えと、どうしてテントが一つ……?」
「いざという時、お互いに連携を取れた方が良いと思いまして!」
「いや、それに越したことはないけど!」

 だからって、さすがにこの状況をまずいんじゃないか!?

 相手は年下の女の子。
 しかもアイドルダンジョン配信者だ。
 色々と問題がある気がする。

 というより!
 
「美月ちゃんはいいの!?」
「ここはダンジョンですよ! 何よりも安全を優先すべきです!」
「それはっ、そうだけど……!」

 かなりの正論を言われて言い返せない。

 いやいや!
 それでも、そういう問題じゃないだろ!

「ダンジョンでは一分一秒が死に繋がるんです!」
「くっ……」

 だがやはり、叩きつけられるのは正論。
 そうして結局、俺たちは同じテントで夜を過ごすことに。




 野営の準備が終わった頃。

「ぽよ~!」
「おお、すごい!」

 今はテントの前で火をき、夕食を作っているところだ。
 ぽよちゃんが火を吹く能力を持っていたことで、火は簡単に点けることが出来た。

「そろそろじゃないですか!」
「そ、そうだね!」

 シャワーを浴びて軽装になった美月ちゃん。
 目のやり場に困りながら返事をする。

 ちなみにシャワーの水源も、ぽよちゃんだ。

 美月ちゃんと会っていない間も、彼女とダンジョンに潜っていたようで、今ではかなりたくさんの能力を持っている。
 ぽよちゃんのおかげで、随分と野営の生活レベルが上がった。

「そろそろ開けるよ」
「はい!」
 
 そうして、頃合いを見て釜のふたを開ける。
 少し寒めのこの環境に合わせて、作っていたのはシチューだ。

「おおー!」
「ふわあ……!」
 
 蓋を開けた瞬間、もくもくと湯気が上がる。
 同時に、食欲をそそるとても良い匂いがただよった。

 あらかじめ持ってきていた『王種』野菜に、途中に討伐した『デリシャスバート』の鶏肉などを使ったシチューだ。
 とても野営で食べる物とは思えない。

「ぽよー!」
「ムニャア!」

 順に皿に分けていくと、ペット達も大喜び。
 いつも通り……いや、むしろいつものご飯より豪華なんじゃないか?
 そう思うと、俺の手も止まらなかった。

「あ、あふっ!」
「やすひろさん、ゆっくりですよ」
「う、うん。でも美味ーい!」

 ちょっと舌を火傷した気もするけど、しっかり味わうことが出来た。

「本当です! すっごく美味しいです!」
「それは良かった」

 続けて口に運んだ美月ちゃんも喜んでくれた。
 下準備をしてきて正解だったな。

 それにしても、『王種』野菜と混ぜても味をしっかり出す鶏肉とは。
 さすが日本最難関ダンジョンの魔物。
 美味しさのレベルも相当高い。

「すみません、わたしももうちょっと何か役に立てたら良いんですけど……」
「いやいや。こうやって話し相手がいるのは嬉しいし頼もしいよ」
「そうですか?」
「もちろん!」

 これは本音だ。
 人がもう一人いるのといないのじゃ、心強さが全然違う。

「それにぽよちゃんも頼りになるしな!」
「ぽよっ!」

 火やシャワー、昼間の大活躍など。
 本当に来てくれて良かったと思っている。
 
 ペット達に美月ちゃん。
 みんなで食事をしていると、時間もあっという間に過ぎていった。
 こんなに温かな食事になるとは思わなかったな。




 だが、

「では、そろそろテントで横になりましょう。明日も早いですよ」
「……はっ! う、うん!」

 食事を終えたので、必然的にそうなる。
 考えないようにしていたけど、いざこうなると心臓がバクバクしてきた。

 って、何を考えているんだ!
 俺が手を出さなければそれだけで済むんだ!
 美月ちゃんの言う通り、すぐに寝よう!

「やすひろさん?」
「い、今行くよ!」

 電動歯ブラシはいつもより長めにした。
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