11 / 79
第11話 強くて可愛いダンジョン無双!
しおりを挟む
「いけ! フクマロ!」
「ガオンッ!」
俺がノリノリで魔物を指差すと、フクマロが目にも止まらぬ速さを生かして魔物を狩っていく。
獲物を狩る時だけに出すフクマロのこの声。
高い声だから可愛いのだけど、どこか最強種族を思わせる迫力もある。
「ブ、ブモォ……」
全体的に黄土色をした、豚のような顔を持つ魔物『オーク』は、腹部を爪で抉られて倒れた。
またフクマロの瞬殺だ。
「すごいぞーフクマロ!」
「クゥ~ン!」
へっへっと舌を出しながら、尻尾をふりふりするフクマロ。
褒めて褒めて! とでも言いたげなモフを目一杯撫でてあげる。
《フクマロ君すごい!》
《かわいい~》
《まじでつええな》
《無双してて草》
《可愛くて強い!》
《最強じゃん》
コメント欄もフクマロの強さと可愛さに沸く。
フクマロの攻撃手段は、切り裂きや噛みつき。
単純だけど、それがひたすらに強い。
速さと攻撃力、その二つの要素が飛び抜けているからだ。
「それにしても……」
ふと周りを見渡せば、オークや『ゴブリン』など、数多くの魔物の死体が転がっている。
フクマロにかかればこんなもんらしい。
だけど、視聴者はそれほど気持ち悪さを感じていないはず。
というのも、この光景を配信する飛行型カメラには“グロ対策”がされていて、血や傷といった過激な部分は瞬時に修正して映し出されるからだ。
こういった配慮もあり、安心かつワクワクするダンジョン配信というコンテンツがここまで伸びたのだろう。
現在の視聴者数は、なんと5万人。
前回の人数を優に超えていることからも、ダンジョン配信のすごさが分かる。
「お」
そうして少し時間が経てば、魔物の死体はダンジョンへと取り込まれる。
生きている時は取り込まれることがないのに、死体になった途端、綺麗さっぱり死体や血が取り込まれるんだって。
ダンジョンって不思議だなあ。
そして、代わりにその場に残るのが、
「これが噂の!」
綺麗な色と形をした石、通称『魔石』だ。
魔石は、魔物の能力を持って生み落とされる。
いま手に持つ魔石はオークから落ちたので、オークの身体的特徴である筋力が上がるみたいだ。
見た目もなんとなく黄土色っぽい。
「これ、どうした方がいいですかね」
それでも、初めてのことなので一応視聴者に聞いてみる。
《使ってもいいと思うけど》
《売却かなあ》
《オークの魔石は結構単価高い》
《強さの割には高く売れるよ》
《売る用と自分用で分ければ?》
「そっか、売却用と分ければいいのか」
コメント欄に教えてもらい、ふと受付で聞いた話を思い出す。
魔石は「割った者が力を得られる」。
つまり、誰が倒したかとかは関係ないのだ。
そのため探索者などにも人気があり、市場価値が高い物だそう。
もちろん倒した魔物の種類や、魔石の大きさによって単価が違うけどね。
「……それなら」
周りにはたくさんの魔石。
多くは持ち帰るとして、一個は使ってみよう。
俺は『オークの魔石』を高く掲げて強く握った。
「出でよ! 最強パワー!」
パリンと音がして魔石が割れると、微かな光が零れる。
その微光は俺の周りをふよふよと浮き、やがて腕に取り込まれた。
おお、これが魔石によるパワーアップか!
「なんか強くなった気がする! ふん!」
そう確信した俺は、思いっきりカメラ目線で力こぶを立てた。
しかし、
《どこが?w》
《いや変わってねえよw》
《フクマロと同レベで草》
《むしろフクマロの方がある》
《す、すごいねー(棒)》
《やすひろさんも強くなってるよ!笑》
「なにっ!?」
コメント欄の反応は鈍い。
それもそのはず、少し勘違いをしていたよう。
《たった一個でムキムキにはならねえよww》
《強い魔物ならまだしも》
《ただのオークだしなあ……》
《それで強くなったら苦労しねえw》
《勘違いで草》
「それもそうか……くぅっ」
オークの魔石はそんなに効果が大きなものじゃないらしい。
よく考えてみればそうだ。
ここはあくまで初級ダンジョンだし、そこの魔石一個でボディビルダーになれたら、熟練の探索者は何になるんだって話だ。
「クゥン」
「おお、フクマロ。お前だけだ慰めてくれるのは」
「クン!」
《かわいい》
《かわよw》
《いいな~》
《やすひろのこと大好きだな》
《やすひろさんより大人》
《同情じゃね》
「え、同情なの?」
「ワ、ワファ……」
さ、さあ……じゃねえよ。
俺は現実を知り、少し肩を落としながらまたダンジョンを進む。
俺自身も最強になるのは遠い道のりらしい。
千里の道も一歩から、ということか。
そうして、
「なんだ!?」
「ワフッ!?」
高めの木々が生えるエリアに突入したあたり、俺たちを待ち受けていたのは大きな大きなスライムのような魔物。
目算だが、大体縦横それぞれ5メートルはある。
巨大なスライムが、まるで俺たちを待っていたように佇む。
「なんだこいつ……」
俺は取り出した魔物図鑑の情報を見た。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
デカスライム
希少度:C
戦闘力:C
『はじまりの草原』におけるボス的存在。
何匹かのスライムが合体してできる、スライムの上位互換にあたる魔物である。
これより取れる魔石は「女性の胸部を大きくする」効果があるとされ、高い値段で取引される。
なお、通常種スライムからそのような効果は確認されていない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ボス的存在……!」
希少度、戦闘力、共にC。
ランクはEから始まるので、書いてある通り、この初級ダンジョンにしてはかなり強いと取れる。
ここまでの魔物は全て、希少度も戦闘力もEだからな。
だが、
「って、んんん!?」
強さばかりに目がいっていたが、後半にサラっとすごいことが書いてあるのを確認する。
女性の胸部を大きくする!?
……ぽよんぽよん繋がりってか?
図鑑に書いてあるからきっと本当なのだろう。
そりゃあ高い値がつくのも頷ける。
《これは!》
《きたああああ!》
《デカスライムだ!》
《これが噂の!?》
《盛りスライム!!》
《おっ〇いスライム!?》
視聴者も割とみんな知っているそうだ。
女性と思われるコメントは見えないが、視聴者数はさっきから増え、7万人を超しそうだ。
黙って見守っているということなのだろうか。
「いけるか? フクマロ」
それなら一層、この機を逃すつもりはない。
俺は期待の目を持ってフクマロを撫でた。
「ガウッ!」
「よし!」
本能を表に出した力強い返事が返ってくる。
ここはフクマロに任せてみよう!
「頼んだ! フクマロ!」
「ガオンッ!」
フクマロは勢いよくその場を蹴った。
得意の速さを生かし、爪でデカスライムの体を引っかく。
だが、
「ぽよーん!!」
元の体が大きいからか、大して効いていない。
むしろ攻撃をされて怒っている様にも見える。
「フクマロ!」
「ワフ、ワフ」
「……!」
声を掛けるが、フクマロは「問題ないぜ」と言わんばかりに首を左右に振った。
そして、今度はより姿勢を落とし、より手足に力を入れた。
「ガウウウ!」
「おおおっ!?」
周りにあるのは高い木々。
フクマロは木々を生かし、得意の電光石火をしては木を蹴って方向転換、また地面や木を蹴って方向転換。
それを繰り返して、フクマロが上から下から、前から後ろから、次々とデカスライムの体を削り取っていく。
「すごい! すごいぞフクマロ!」
速すぎる切り返しがフクマロを何匹にも見せる。
まるで影分身をしているようだ。
「ぽよよー!!」
デカスライムは声を上げるだけで、なす術がない。
そうして気づいてみれば、
「クォ~~~ン」
デカスライムは倒れ、フクマロはその上で雄叫びを上げていた。
《うおおおおお!》
《すげえええええ》
《フクマロくーん!!》
《つっっっよ!》
《フクマロ最強!》
《やべええええ》
《これがフェンリルか……》
《こいつ、ワシより強くねー?》
フクマロの無双ぶりにコメ欄も大盛り上がり。
「フクマロ!」
「ワフッ!」
俺は嬉しさを爆発させてフクマロに駆け寄る。
「本当によくやったぞ!」
「ワフ~ン」
俺が抱き上げると、さっきまでの迫力とは打って変わって、すっかり懐く態度になるフクマロ。
こんなに甘えん坊で、こんなに小さなフクマロがあれほど強いなんて。
フクマロの強さに配信は最高潮に盛り上がり、なんと同時接続数はついに10万人を突破。
こうして、初のダンジョン配信も最高の形で終えることができた。
もちろんデカスライムの魔石は持ち帰った。
高く売れたよ。
★
<三人称視点>
やすひろがデカスライムと対峙している一方、『はじまりの草原』のどこかにて。
「クォ~~~ン」
たった今、フクマロがデカスライムに勝利し、雄叫びを上げた。
そして、
「グガッ!?」
「ギャギャギャッ!?」
「ブモー!!」
それが聞こえた魔物たちは一斉に騒ぎ立てる。
雄叫びが、魔物の最上位種のそれであると本能で自覚したからだ。
「グゴゴゴゴ!」
「ギャヤヤー!」
「カーカー!」
魔物達はすぐさま駆け出した。
あてもなく、ただフクマロの雄叫びから一歩でも遠くに逃げようと。
結果、魔物達は普段の生活圏よりも狭いエリアに集まり始めた。
そうなれば、そのエリアは強い魔物にとっては絶好の餌場所へと化すのだ。
「──グオオオオッ!」
美味しそうな餌の匂いが一挙に集まったことで、眠っていたある魔物が目を覚ました。
★
同時刻、ここはとある少女の家。
超人気インフルエンサー『桜井美月』の家だ。
彼女は、やすひろが配信機材を買いに行った際、フクマロの可愛さに惚れて写真を求めて来た女子高生。
また、それによってフクマロが人気となる火付け役になった子だ。
「ドキドキするなあ。私がダンジョン配信なんて」
彼女は企業案件により、今週末にダンジョン配信を行うことになっていた。
普段とは違う活動に胸を躍らせると同時に、少しの不安を持っている。
「でも『はじまりの草原』だし、護衛の人もいるから大丈夫だよねっ!」
美月がダンジョン配信を行うのは、たった今魔物が騒ぎ立てている『はじまりの草原』だ。
「ガオンッ!」
俺がノリノリで魔物を指差すと、フクマロが目にも止まらぬ速さを生かして魔物を狩っていく。
獲物を狩る時だけに出すフクマロのこの声。
高い声だから可愛いのだけど、どこか最強種族を思わせる迫力もある。
「ブ、ブモォ……」
全体的に黄土色をした、豚のような顔を持つ魔物『オーク』は、腹部を爪で抉られて倒れた。
またフクマロの瞬殺だ。
「すごいぞーフクマロ!」
「クゥ~ン!」
へっへっと舌を出しながら、尻尾をふりふりするフクマロ。
褒めて褒めて! とでも言いたげなモフを目一杯撫でてあげる。
《フクマロ君すごい!》
《かわいい~》
《まじでつええな》
《無双してて草》
《可愛くて強い!》
《最強じゃん》
コメント欄もフクマロの強さと可愛さに沸く。
フクマロの攻撃手段は、切り裂きや噛みつき。
単純だけど、それがひたすらに強い。
速さと攻撃力、その二つの要素が飛び抜けているからだ。
「それにしても……」
ふと周りを見渡せば、オークや『ゴブリン』など、数多くの魔物の死体が転がっている。
フクマロにかかればこんなもんらしい。
だけど、視聴者はそれほど気持ち悪さを感じていないはず。
というのも、この光景を配信する飛行型カメラには“グロ対策”がされていて、血や傷といった過激な部分は瞬時に修正して映し出されるからだ。
こういった配慮もあり、安心かつワクワクするダンジョン配信というコンテンツがここまで伸びたのだろう。
現在の視聴者数は、なんと5万人。
前回の人数を優に超えていることからも、ダンジョン配信のすごさが分かる。
「お」
そうして少し時間が経てば、魔物の死体はダンジョンへと取り込まれる。
生きている時は取り込まれることがないのに、死体になった途端、綺麗さっぱり死体や血が取り込まれるんだって。
ダンジョンって不思議だなあ。
そして、代わりにその場に残るのが、
「これが噂の!」
綺麗な色と形をした石、通称『魔石』だ。
魔石は、魔物の能力を持って生み落とされる。
いま手に持つ魔石はオークから落ちたので、オークの身体的特徴である筋力が上がるみたいだ。
見た目もなんとなく黄土色っぽい。
「これ、どうした方がいいですかね」
それでも、初めてのことなので一応視聴者に聞いてみる。
《使ってもいいと思うけど》
《売却かなあ》
《オークの魔石は結構単価高い》
《強さの割には高く売れるよ》
《売る用と自分用で分ければ?》
「そっか、売却用と分ければいいのか」
コメント欄に教えてもらい、ふと受付で聞いた話を思い出す。
魔石は「割った者が力を得られる」。
つまり、誰が倒したかとかは関係ないのだ。
そのため探索者などにも人気があり、市場価値が高い物だそう。
もちろん倒した魔物の種類や、魔石の大きさによって単価が違うけどね。
「……それなら」
周りにはたくさんの魔石。
多くは持ち帰るとして、一個は使ってみよう。
俺は『オークの魔石』を高く掲げて強く握った。
「出でよ! 最強パワー!」
パリンと音がして魔石が割れると、微かな光が零れる。
その微光は俺の周りをふよふよと浮き、やがて腕に取り込まれた。
おお、これが魔石によるパワーアップか!
「なんか強くなった気がする! ふん!」
そう確信した俺は、思いっきりカメラ目線で力こぶを立てた。
しかし、
《どこが?w》
《いや変わってねえよw》
《フクマロと同レベで草》
《むしろフクマロの方がある》
《す、すごいねー(棒)》
《やすひろさんも強くなってるよ!笑》
「なにっ!?」
コメント欄の反応は鈍い。
それもそのはず、少し勘違いをしていたよう。
《たった一個でムキムキにはならねえよww》
《強い魔物ならまだしも》
《ただのオークだしなあ……》
《それで強くなったら苦労しねえw》
《勘違いで草》
「それもそうか……くぅっ」
オークの魔石はそんなに効果が大きなものじゃないらしい。
よく考えてみればそうだ。
ここはあくまで初級ダンジョンだし、そこの魔石一個でボディビルダーになれたら、熟練の探索者は何になるんだって話だ。
「クゥン」
「おお、フクマロ。お前だけだ慰めてくれるのは」
「クン!」
《かわいい》
《かわよw》
《いいな~》
《やすひろのこと大好きだな》
《やすひろさんより大人》
《同情じゃね》
「え、同情なの?」
「ワ、ワファ……」
さ、さあ……じゃねえよ。
俺は現実を知り、少し肩を落としながらまたダンジョンを進む。
俺自身も最強になるのは遠い道のりらしい。
千里の道も一歩から、ということか。
そうして、
「なんだ!?」
「ワフッ!?」
高めの木々が生えるエリアに突入したあたり、俺たちを待ち受けていたのは大きな大きなスライムのような魔物。
目算だが、大体縦横それぞれ5メートルはある。
巨大なスライムが、まるで俺たちを待っていたように佇む。
「なんだこいつ……」
俺は取り出した魔物図鑑の情報を見た。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
デカスライム
希少度:C
戦闘力:C
『はじまりの草原』におけるボス的存在。
何匹かのスライムが合体してできる、スライムの上位互換にあたる魔物である。
これより取れる魔石は「女性の胸部を大きくする」効果があるとされ、高い値段で取引される。
なお、通常種スライムからそのような効果は確認されていない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ボス的存在……!」
希少度、戦闘力、共にC。
ランクはEから始まるので、書いてある通り、この初級ダンジョンにしてはかなり強いと取れる。
ここまでの魔物は全て、希少度も戦闘力もEだからな。
だが、
「って、んんん!?」
強さばかりに目がいっていたが、後半にサラっとすごいことが書いてあるのを確認する。
女性の胸部を大きくする!?
……ぽよんぽよん繋がりってか?
図鑑に書いてあるからきっと本当なのだろう。
そりゃあ高い値がつくのも頷ける。
《これは!》
《きたああああ!》
《デカスライムだ!》
《これが噂の!?》
《盛りスライム!!》
《おっ〇いスライム!?》
視聴者も割とみんな知っているそうだ。
女性と思われるコメントは見えないが、視聴者数はさっきから増え、7万人を超しそうだ。
黙って見守っているということなのだろうか。
「いけるか? フクマロ」
それなら一層、この機を逃すつもりはない。
俺は期待の目を持ってフクマロを撫でた。
「ガウッ!」
「よし!」
本能を表に出した力強い返事が返ってくる。
ここはフクマロに任せてみよう!
「頼んだ! フクマロ!」
「ガオンッ!」
フクマロは勢いよくその場を蹴った。
得意の速さを生かし、爪でデカスライムの体を引っかく。
だが、
「ぽよーん!!」
元の体が大きいからか、大して効いていない。
むしろ攻撃をされて怒っている様にも見える。
「フクマロ!」
「ワフ、ワフ」
「……!」
声を掛けるが、フクマロは「問題ないぜ」と言わんばかりに首を左右に振った。
そして、今度はより姿勢を落とし、より手足に力を入れた。
「ガウウウ!」
「おおおっ!?」
周りにあるのは高い木々。
フクマロは木々を生かし、得意の電光石火をしては木を蹴って方向転換、また地面や木を蹴って方向転換。
それを繰り返して、フクマロが上から下から、前から後ろから、次々とデカスライムの体を削り取っていく。
「すごい! すごいぞフクマロ!」
速すぎる切り返しがフクマロを何匹にも見せる。
まるで影分身をしているようだ。
「ぽよよー!!」
デカスライムは声を上げるだけで、なす術がない。
そうして気づいてみれば、
「クォ~~~ン」
デカスライムは倒れ、フクマロはその上で雄叫びを上げていた。
《うおおおおお!》
《すげえええええ》
《フクマロくーん!!》
《つっっっよ!》
《フクマロ最強!》
《やべええええ》
《これがフェンリルか……》
《こいつ、ワシより強くねー?》
フクマロの無双ぶりにコメ欄も大盛り上がり。
「フクマロ!」
「ワフッ!」
俺は嬉しさを爆発させてフクマロに駆け寄る。
「本当によくやったぞ!」
「ワフ~ン」
俺が抱き上げると、さっきまでの迫力とは打って変わって、すっかり懐く態度になるフクマロ。
こんなに甘えん坊で、こんなに小さなフクマロがあれほど強いなんて。
フクマロの強さに配信は最高潮に盛り上がり、なんと同時接続数はついに10万人を突破。
こうして、初のダンジョン配信も最高の形で終えることができた。
もちろんデカスライムの魔石は持ち帰った。
高く売れたよ。
★
<三人称視点>
やすひろがデカスライムと対峙している一方、『はじまりの草原』のどこかにて。
「クォ~~~ン」
たった今、フクマロがデカスライムに勝利し、雄叫びを上げた。
そして、
「グガッ!?」
「ギャギャギャッ!?」
「ブモー!!」
それが聞こえた魔物たちは一斉に騒ぎ立てる。
雄叫びが、魔物の最上位種のそれであると本能で自覚したからだ。
「グゴゴゴゴ!」
「ギャヤヤー!」
「カーカー!」
魔物達はすぐさま駆け出した。
あてもなく、ただフクマロの雄叫びから一歩でも遠くに逃げようと。
結果、魔物達は普段の生活圏よりも狭いエリアに集まり始めた。
そうなれば、そのエリアは強い魔物にとっては絶好の餌場所へと化すのだ。
「──グオオオオッ!」
美味しそうな餌の匂いが一挙に集まったことで、眠っていたある魔物が目を覚ました。
★
同時刻、ここはとある少女の家。
超人気インフルエンサー『桜井美月』の家だ。
彼女は、やすひろが配信機材を買いに行った際、フクマロの可愛さに惚れて写真を求めて来た女子高生。
また、それによってフクマロが人気となる火付け役になった子だ。
「ドキドキするなあ。私がダンジョン配信なんて」
彼女は企業案件により、今週末にダンジョン配信を行うことになっていた。
普段とは違う活動に胸を躍らせると同時に、少しの不安を持っている。
「でも『はじまりの草原』だし、護衛の人もいるから大丈夫だよねっ!」
美月がダンジョン配信を行うのは、たった今魔物が騒ぎ立てている『はじまりの草原』だ。
47
お気に入りに追加
1,978
あなたにおすすめの小説

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる