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第13話 血で結ばれる存在
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オスヴァルトが教会からの帰りに倒れたと聞いて、フィーネは急いで彼の眠る部屋へと向かった。
「オズ!」
そこには険しい表情のエルゼとリンがいた。
ベッドで眠るオスヴァルトは苦しそうに息をはあはあと吐いている。
「オズは、どうしたんですか!?」
その言葉にエルゼは答える。
「発作……ではあるのだけど。ただの発作ではない、命に関わるのものよ」
「え……」
「発作の頻度がここ最近早い。本当に時間がないかもしれないわ」
「時間がない……?」
フィーネはエルゼの言っていることが理解できず、言葉を繰り返すことしかできない。
そんな彼女に向かい、エルゼは重い口を開く。
「実は、オスヴァルトは吸血鬼でありながら血を拒絶してしまうの」
(血を拒絶……?)
「私たちのような純血の吸血鬼は血を頻繁に飲まずに生きられる。でもオスヴァルトは違う。吸血鬼と人間の間に生まれた後天的な吸血鬼。だからこそ血を摂取しなければ生きられない」
「人間の血を吸うということですか?」
フィーネの問いにエルゼは首を左右に振って否定する。
「吸血鬼の血があれば生きられるわ。普通なら。でも、オスヴァルトは珍しい症例で、血を拒絶してしまうタイプだったの」
「そんな……! じゃあ……」
「そう。彼は寿命を縮めて生きてる。なんとか血縁者だった私の血を薄めてあげてたけど、それも限界かもしれない」
部屋中に重い空気が漂う中で、フィーネは絶望する。
(オズが死ぬってこと……?)
あまりの衝撃にフィーネは目の前が暗くなっていくような気がした。
(やっと好きだって言えて、二人で一緒に生きていけると思ったのに……)
フィーネの頬に涙が流れる。
「やっともう一度会えて、好きになって、想いが通じ合ったのに……なのに……死んでしまうなんて、そんなの嫌っ!」
フィーネは苦しそうに横たわるオスヴァルトに駆け寄って彼の胸を叩く。
「ねえ! 起きて! 死なないで! お願い!」
彼女の必死の言葉にエルゼもリンも何も言えずに立ち尽くす。
その時、リンはあるものを見つける。
「フィーネ様、その胸の痣……どうされましたか?」
「え?」
よく見るとフィーネの胸元には赤い痣があった。
「これは、その、昔からあってたぶん教会で神父様に蹴られた時の痣が……」
「痣……? 翡翠の瞳……?」
エルゼはそれを聞いて考え込むと、はっと何かに気づいて顔をあげた。
「まさか、でも……そんなあり得ない、伝承上の存在じゃ……」
「エルゼ様?」
エルゼはフィーネの傍に駆け寄った。
「もしかしたらあなたはオスヴァルトを救うことができる『稀血の大聖女』かもしれない」
「稀血の大聖女……?」
どういうことかわからずに困惑しているフィーネとリンにエルゼは話す。
「稀血の大聖女は、オスヴァルトのように血を拒絶する吸血鬼に唯一『拒絶しない血』を与えることができる存在なの。伝承上でしか聞いたことがなかったけど、その痣と翡翠の目。もしかしたら、フィーネは大聖女なのかもしれない」
「じゃあ、私の血でオズを救えるってことですか?」
「そう」
フィーネはそれを聞くと、近くにあった裁縫道具箱から針を取り出す。
「やってみます!」
フィーネは針で自分の指を傷つける。
すると、わずかに彼女の指に血が流れ始めた。
「オズ、お願い。飲んで……」
フィーネは彼の口元に自分の血を垂らした。
フィーネたちはじっとオスヴァルトの様子をしばらく見守る。
(お願い!)
祈るように彼を見ると、段々オスヴァルトの呼吸が落ち着いてくる。
そして、彼はゆっくりと目を開き、フィーネを見た。
「フィーネ……」
彼の発作はおさまり、フィーネは安心して胸を撫で下ろした。
「オズ!」
フィーネは彼の胸に飛び込んだ。
「オズ!」
そこには険しい表情のエルゼとリンがいた。
ベッドで眠るオスヴァルトは苦しそうに息をはあはあと吐いている。
「オズは、どうしたんですか!?」
その言葉にエルゼは答える。
「発作……ではあるのだけど。ただの発作ではない、命に関わるのものよ」
「え……」
「発作の頻度がここ最近早い。本当に時間がないかもしれないわ」
「時間がない……?」
フィーネはエルゼの言っていることが理解できず、言葉を繰り返すことしかできない。
そんな彼女に向かい、エルゼは重い口を開く。
「実は、オスヴァルトは吸血鬼でありながら血を拒絶してしまうの」
(血を拒絶……?)
「私たちのような純血の吸血鬼は血を頻繁に飲まずに生きられる。でもオスヴァルトは違う。吸血鬼と人間の間に生まれた後天的な吸血鬼。だからこそ血を摂取しなければ生きられない」
「人間の血を吸うということですか?」
フィーネの問いにエルゼは首を左右に振って否定する。
「吸血鬼の血があれば生きられるわ。普通なら。でも、オスヴァルトは珍しい症例で、血を拒絶してしまうタイプだったの」
「そんな……! じゃあ……」
「そう。彼は寿命を縮めて生きてる。なんとか血縁者だった私の血を薄めてあげてたけど、それも限界かもしれない」
部屋中に重い空気が漂う中で、フィーネは絶望する。
(オズが死ぬってこと……?)
あまりの衝撃にフィーネは目の前が暗くなっていくような気がした。
(やっと好きだって言えて、二人で一緒に生きていけると思ったのに……)
フィーネの頬に涙が流れる。
「やっともう一度会えて、好きになって、想いが通じ合ったのに……なのに……死んでしまうなんて、そんなの嫌っ!」
フィーネは苦しそうに横たわるオスヴァルトに駆け寄って彼の胸を叩く。
「ねえ! 起きて! 死なないで! お願い!」
彼女の必死の言葉にエルゼもリンも何も言えずに立ち尽くす。
その時、リンはあるものを見つける。
「フィーネ様、その胸の痣……どうされましたか?」
「え?」
よく見るとフィーネの胸元には赤い痣があった。
「これは、その、昔からあってたぶん教会で神父様に蹴られた時の痣が……」
「痣……? 翡翠の瞳……?」
エルゼはそれを聞いて考え込むと、はっと何かに気づいて顔をあげた。
「まさか、でも……そんなあり得ない、伝承上の存在じゃ……」
「エルゼ様?」
エルゼはフィーネの傍に駆け寄った。
「もしかしたらあなたはオスヴァルトを救うことができる『稀血の大聖女』かもしれない」
「稀血の大聖女……?」
どういうことかわからずに困惑しているフィーネとリンにエルゼは話す。
「稀血の大聖女は、オスヴァルトのように血を拒絶する吸血鬼に唯一『拒絶しない血』を与えることができる存在なの。伝承上でしか聞いたことがなかったけど、その痣と翡翠の目。もしかしたら、フィーネは大聖女なのかもしれない」
「じゃあ、私の血でオズを救えるってことですか?」
「そう」
フィーネはそれを聞くと、近くにあった裁縫道具箱から針を取り出す。
「やってみます!」
フィーネは針で自分の指を傷つける。
すると、わずかに彼女の指に血が流れ始めた。
「オズ、お願い。飲んで……」
フィーネは彼の口元に自分の血を垂らした。
フィーネたちはじっとオスヴァルトの様子をしばらく見守る。
(お願い!)
祈るように彼を見ると、段々オスヴァルトの呼吸が落ち着いてくる。
そして、彼はゆっくりと目を開き、フィーネを見た。
「フィーネ……」
彼の発作はおさまり、フィーネは安心して胸を撫で下ろした。
「オズ!」
フィーネは彼の胸に飛び込んだ。
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