11 / 14
第11話 「僕は君が好きだ」
しおりを挟む
夕食後、フィーネとオスヴァルトは彼の部屋でお茶を飲みながら、ゆっくりと夜の時間を楽しんでいた。
「生活には慣れた?」
「はい、皆さんのおかげで。ただ、まだ公爵夫人と呼ばれるのは慣れません……」
「あはは、それはゆっくりでいいよ」
お茶を一口飲んで、オスヴァルトはフィーネの髪先を触る。
「オズ?」
「僕は君が好きだ」
突然の告白を受けて、フィーネの心臓はドクンと飛び上がった。
やがてじわじわと彼女の頬が赤くなる。
「どうしたのですか、急に……」
照れて目を逸らす彼女に、オズは真剣なまなざしで言う。
「君を身請けはして僕の妻に形式上はなったけど、もし君がこの家を出たいと思ったなら、出てもいいと思っている」
この国では結婚しても三年経てば、離婚が可能である。
つまりオズは形式的な離婚──いわゆるこの結婚を「白い結婚」にして構わないと言っていった。
「仮初めの夫婦となる、ということですか?」
「うん、僕は君を助けたい気持ちがあったとはいえ、君の意思を確認せずに身請けした。君の気持ちを無視した。今なら、友人のままでいることができる。なんせ僕は吸血鬼でもあるからね」
それを聞いてフィーネは俯く。
(オズと友人……)
そう考えた時、心の中がもやもやした。
(離婚したらオズは他の人と結婚するの? それは……)
「嫌です」
フィーネは思わず出た自分の言葉に驚いた。
しかし、もう気持ちは止まらない。
「オズは私の中で兄のような存在でした。でも、この家に来てなんだかそわそわして、オズがかっこよく見えて、その……たまに目が合わせられなくて、緊張することもドキドキすることもあって……呼吸が苦しくて、なんならリンにも嫉妬してしまいそうになることもあって」
「フィーネ……?」
「つまりその、私は人を好きになったことがなかったのですが、もしかしたらこれが昔教会の友人が言ってた『恋』なのかもって思って。その、オズともっと話したい、ご飯を一緒に食べたい、ふ、触れ合いたいって思うのは変でしょうか?」
しばらくの沈黙が流れる。
(やっぱり変なこと言った……?)
そう思った瞬間、フィーネは急に手を引かれて抱きしめられる。
「オズ!?」
「これも嫌じゃない?」
フィーネは顔を赤くしたまま、黙って頷く。
オズはフィーネの手に自分の手を絡ませると、耳元で囁く。
「唇、奪っていい?」
フィーネの肩がビクリとする。
彼女は小さな声で返事をした。
「奪ってくださいますか?」
その瞬間、二人の影が重なった。
甘い吐息が重なって、フィーネの気持ちはどんどん満たされていく。
「フィーネ……」
吐息交じりに名前を呼ばれるだけでドキリとする。
(ああ、やっぱり私はオズのことが好きなんだ……)
想いが通じ合った二人は、何度も何度も愛を確かめ合った──。
朝が来てオスヴァルトは横に眠るフィーネのおでこにちゅっとすると、シャツを着た。
「フィーネ、少し待っててね。今、君を苦しめていた彼らに罰を与えて来るから」
まだ眠るフィーネを残し、オスヴァルトは教会へと向かった──。
「生活には慣れた?」
「はい、皆さんのおかげで。ただ、まだ公爵夫人と呼ばれるのは慣れません……」
「あはは、それはゆっくりでいいよ」
お茶を一口飲んで、オスヴァルトはフィーネの髪先を触る。
「オズ?」
「僕は君が好きだ」
突然の告白を受けて、フィーネの心臓はドクンと飛び上がった。
やがてじわじわと彼女の頬が赤くなる。
「どうしたのですか、急に……」
照れて目を逸らす彼女に、オズは真剣なまなざしで言う。
「君を身請けはして僕の妻に形式上はなったけど、もし君がこの家を出たいと思ったなら、出てもいいと思っている」
この国では結婚しても三年経てば、離婚が可能である。
つまりオズは形式的な離婚──いわゆるこの結婚を「白い結婚」にして構わないと言っていった。
「仮初めの夫婦となる、ということですか?」
「うん、僕は君を助けたい気持ちがあったとはいえ、君の意思を確認せずに身請けした。君の気持ちを無視した。今なら、友人のままでいることができる。なんせ僕は吸血鬼でもあるからね」
それを聞いてフィーネは俯く。
(オズと友人……)
そう考えた時、心の中がもやもやした。
(離婚したらオズは他の人と結婚するの? それは……)
「嫌です」
フィーネは思わず出た自分の言葉に驚いた。
しかし、もう気持ちは止まらない。
「オズは私の中で兄のような存在でした。でも、この家に来てなんだかそわそわして、オズがかっこよく見えて、その……たまに目が合わせられなくて、緊張することもドキドキすることもあって……呼吸が苦しくて、なんならリンにも嫉妬してしまいそうになることもあって」
「フィーネ……?」
「つまりその、私は人を好きになったことがなかったのですが、もしかしたらこれが昔教会の友人が言ってた『恋』なのかもって思って。その、オズともっと話したい、ご飯を一緒に食べたい、ふ、触れ合いたいって思うのは変でしょうか?」
しばらくの沈黙が流れる。
(やっぱり変なこと言った……?)
そう思った瞬間、フィーネは急に手を引かれて抱きしめられる。
「オズ!?」
「これも嫌じゃない?」
フィーネは顔を赤くしたまま、黙って頷く。
オズはフィーネの手に自分の手を絡ませると、耳元で囁く。
「唇、奪っていい?」
フィーネの肩がビクリとする。
彼女は小さな声で返事をした。
「奪ってくださいますか?」
その瞬間、二人の影が重なった。
甘い吐息が重なって、フィーネの気持ちはどんどん満たされていく。
「フィーネ……」
吐息交じりに名前を呼ばれるだけでドキリとする。
(ああ、やっぱり私はオズのことが好きなんだ……)
想いが通じ合った二人は、何度も何度も愛を確かめ合った──。
朝が来てオスヴァルトは横に眠るフィーネのおでこにちゅっとすると、シャツを着た。
「フィーネ、少し待っててね。今、君を苦しめていた彼らに罰を与えて来るから」
まだ眠るフィーネを残し、オスヴァルトは教会へと向かった──。
3
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説

召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

聖女は寿命を削って王子を救ったのに、もう用なしと追い出されて幸せを掴む!
naturalsoft
恋愛
読者の方からの要望で、こんな小説が読みたいと言われて書きました。
サラッと読める短編小説です。
人々に癒しの奇跡を与える事のできる者を聖女と呼んだ。
しかし、聖女の力は諸刃の剣だった。
それは、自分の寿命を削って他者を癒す力だったのだ。
故に、聖女は力を使うのを拒み続けたが、国の王子が難病に掛かった事によって事態は急変するのだった。

【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。
氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。
聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。
でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。
「婚約してほしい」
「いえ、責任を取らせるわけには」
守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。
元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。
小説家になろう様にも、投稿しています。

教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!
海空里和
恋愛
王都にある果実店の果実飴は、連日行列の人気店。
そこで働く孤児院出身のエレノアは、聖女として教会からやりがい搾取されたあげく、あっさり捨てられた。大切な人を失い、働くことへの意義を失ったエレノア。しかし、果実飴の成功により、働き方改革に成功して、穏やかな日常を取り戻していた。
そこにやって来たのは、場違いなイケメン騎士。
「エレノア殿、迎えに来ました」
「はあ?」
それから毎日果実飴を買いにやって来る騎士。
果実飴が気に入ったのかと思ったその騎士、イザークは、実はエレノアとの結婚が目的で?!
これは、エレノアにだけ距離感がおかしいイザークと、失意にいながらも大切な物を取り返していくエレノアが、次第に心を通わせていくラブストーリー。

巻き込まれではなかった、その先で…
みん
恋愛
10歳の頃に記憶を失った状態で倒れていた私も、今では25歳になった。そんなある日、職場の上司の奥さんから、知り合いの息子だと言うイケメンを紹介されたところから、私の運命が動き出した。
懐かしい光に包まれて向かわされた、その先は………??
❋相変わらずのゆるふわ&独自設定有りです。
❋主人公以外の他視点のお話もあります。
❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。すみません。
❋基本は1日1話の更新ですが、余裕がある時は2話投稿する事もあります。

聖女召喚に巻き込まれた挙句、ハズレの方と蔑まれていた私が隣国の過保護な王子に溺愛されている件
バナナマヨネーズ
恋愛
聖女召喚に巻き込まれた志乃は、召喚に巻き込まれたハズレの方と言われ、酷い扱いを受けることになる。
そんな中、隣国の第三王子であるジークリンデが志乃を保護することに。
志乃を保護したジークリンデは、地面が泥濘んでいると言っては、志乃を抱き上げ、用意した食事が熱ければ火傷をしないようにと息を吹きかけて冷ましてくれるほど過保護だった。
そんな過保護すぎるジークリンデの行動に志乃は戸惑うばかり。
「私は子供じゃないからそんなことしなくてもいいから!」
「いや、シノはこんなに小さいじゃないか。だから、俺は君を命を懸けて守るから」
「お…重い……」
「ん?ああ、ごめんな。その荷物は俺が持とう」
「これくらい大丈夫だし、重いってそういうことじゃ……。はぁ……」
過保護にされたくない志乃と過保護にしたいジークリンデ。
二人は共に過ごすうちに知ることになる。その人がお互いの運命の人なのだと。
全31話

そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげますよ。私は疲れたので、やめさせてもらいます。
木山楽斗
恋愛
聖女であるシャルリナ・ラーファンは、その激務に嫌気が差していた。
朝早く起きて、日中必死に働いして、夜遅くに眠る。そんな大変な生活に、彼女は耐えられくなっていたのだ。
そんな彼女の元に、フェルムーナ・エルキアードという令嬢が訪ねて来た。彼女は、聖女になりたくて仕方ないらしい。
「そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげると言っているんです」
「なっ……正気ですか?」
「正気ですよ」
最初は懐疑的だったフェルムーナを何とか説得して、シャルリナは無事に聖女をやめることができた。
こうして、自由の身になったシャルリナは、穏やかな生活を謳歌するのだった。
※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。
※下記の関連作品を読むと、より楽しめると思います。

自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?
長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。
王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、
「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」
あることないこと言われて、我慢の限界!
絶対にあなたなんかに王子様は渡さない!
これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー!
*旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。
*小説家になろうでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる