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第8話 妃教育とご褒美(2)
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「私とデートをしよう!」
「へ?」
「セドリック」
「はい」
ジェラルドの横に控えていたセドリックが主人の呼びかけに対して、すぐさま返答をする。
「昨日私も公務を徹夜でおこなった。文句はないな?」
「はい、数時間であればお休みしていただいても問題ございません」
「よしっ! なら、私とシェリーで街でデートをしてくる!!」
「かしこまりました」
こうしてシェリーとジェラルドはお忍びという形で街へと遊びに出ることとなった。
「ですが、護衛もつけずによかったのですか?」
「ああ、セドリックが影から見てるよ」
「そうだったのですか?!」
「ほんとは二人きりがよかったんだが、どうしてもそれはダメだと言われてね」
ものすごく落ち込んで肩を落とすジェラルドに、シェリーはそっと彼の手の上に自分の手を重ねた。
「──っ!」
「私はこうしてジェラルド様と街に出られるだけで嬉しいです」
「シェリー……今すぐ君に愛情表現を目いっぱいしてもいいだろうか」
「なんだか想像するに大変激しそうなので、今はご遠慮いたします」
「君は私の扱いがうまくなってきたね」
「いえ、とんでもございません」
そんな会話をしているうちに街は一番賑わいを見せるストリートへと出た。
道の脇に馬車を止めると、二人はゆっくりと降りて歩き始める。
「私、街に出たのは久々です」
「誰かとデートしたことはないのか?」
「はい。街でデートはないですね」
「なら私が初めてというわけだ」
「そうですね。ジェラルド様が初めてです」
「では思いっきり今日は楽しもう!」
シェリーはジェラルドに手を引かれて落ち着いた大人な雰囲気のカフェに入ると、テーブルでコーヒーを二つ頼む。
頼んだコーヒーが目の前に置かれると、シェリーが怪訝そうな顔でカップを持ち、眺める。
「ジェラルド様、これは……?」
「コーヒーというものだよ、初めてかい?」
「はい、こんなに黒くて大丈夫なのですか?」
「ふふ、少し飲んでごらん」
「はい……──っ!!!」
「苦いだろう?」
シェリーはあまりの苦さに顔をしかめてカップを素早くテーブルに置く。
「これは……本当に飲んでいいものですか?」
「そこに置かれたミルクとはちみつを入れてごらん」
「これですか?」
ジェラルドに促されてテーブルにあるミルクとはちみつをそっと入れてもう一度飲んでみる。
すると、先ほどよりも甘く飲みやすくなったコーヒーに驚く。
「とても飲みやすくなりました。でも、まだ苦いです」
「ふふ、好みがあるからね。私はこのコーヒーが好きなんだ」
「私は紅茶が口に合うかもしれません」
「そっか、では今度は紅茶が美味しいカフェに行こうね」
「はいっ!」
コーヒーと一緒に出されたドーナツも食べながら、二人はカフェを後にする。
まだまだ二人のデートは始まったばかり。
だが、この後の出会いと悲劇を二人はまだ知らない──
「へ?」
「セドリック」
「はい」
ジェラルドの横に控えていたセドリックが主人の呼びかけに対して、すぐさま返答をする。
「昨日私も公務を徹夜でおこなった。文句はないな?」
「はい、数時間であればお休みしていただいても問題ございません」
「よしっ! なら、私とシェリーで街でデートをしてくる!!」
「かしこまりました」
こうしてシェリーとジェラルドはお忍びという形で街へと遊びに出ることとなった。
「ですが、護衛もつけずによかったのですか?」
「ああ、セドリックが影から見てるよ」
「そうだったのですか?!」
「ほんとは二人きりがよかったんだが、どうしてもそれはダメだと言われてね」
ものすごく落ち込んで肩を落とすジェラルドに、シェリーはそっと彼の手の上に自分の手を重ねた。
「──っ!」
「私はこうしてジェラルド様と街に出られるだけで嬉しいです」
「シェリー……今すぐ君に愛情表現を目いっぱいしてもいいだろうか」
「なんだか想像するに大変激しそうなので、今はご遠慮いたします」
「君は私の扱いがうまくなってきたね」
「いえ、とんでもございません」
そんな会話をしているうちに街は一番賑わいを見せるストリートへと出た。
道の脇に馬車を止めると、二人はゆっくりと降りて歩き始める。
「私、街に出たのは久々です」
「誰かとデートしたことはないのか?」
「はい。街でデートはないですね」
「なら私が初めてというわけだ」
「そうですね。ジェラルド様が初めてです」
「では思いっきり今日は楽しもう!」
シェリーはジェラルドに手を引かれて落ち着いた大人な雰囲気のカフェに入ると、テーブルでコーヒーを二つ頼む。
頼んだコーヒーが目の前に置かれると、シェリーが怪訝そうな顔でカップを持ち、眺める。
「ジェラルド様、これは……?」
「コーヒーというものだよ、初めてかい?」
「はい、こんなに黒くて大丈夫なのですか?」
「ふふ、少し飲んでごらん」
「はい……──っ!!!」
「苦いだろう?」
シェリーはあまりの苦さに顔をしかめてカップを素早くテーブルに置く。
「これは……本当に飲んでいいものですか?」
「そこに置かれたミルクとはちみつを入れてごらん」
「これですか?」
ジェラルドに促されてテーブルにあるミルクとはちみつをそっと入れてもう一度飲んでみる。
すると、先ほどよりも甘く飲みやすくなったコーヒーに驚く。
「とても飲みやすくなりました。でも、まだ苦いです」
「ふふ、好みがあるからね。私はこのコーヒーが好きなんだ」
「私は紅茶が口に合うかもしれません」
「そっか、では今度は紅茶が美味しいカフェに行こうね」
「はいっ!」
コーヒーと一緒に出されたドーナツも食べながら、二人はカフェを後にする。
まだまだ二人のデートは始まったばかり。
だが、この後の出会いと悲劇を二人はまだ知らない──
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