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第21話
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フェーヴル伯爵家でお茶会のことで私は自分の行為が正しかったのかどうか、悩んでしまっていました。
お兄さまを侮辱されたことでお相手の方に紅茶をひっかけてしまったことは、本当に正しかったのでしょうか。
そんな思いでしばらくいた頃、廊下でお兄さまとばったりお会いしました。
「ローゼ、よかった。探してたんだ」
「(?)」
「一緒にまたあのカフェにいかないか?」
「──っ!」
お兄さまからのお誘いは大変嬉しく、先ほどの悩みで落ち込んでいた気持ちも少し上向きになりました。
急いで準備をしてお兄さまとカフェに向かうと、どうやらベリーフェアという期間限定のメニューが出ているそうで、お兄さまはそれが書かれたメニュー表を見せてくださいました。
「ローゼの好きなベリーのスイーツがあるよ、ここはタルトが美味しいんだけど今年はミルフィーユもあるね。どちらがいい?」
う~ん、それは悩んでしまいます……。
タルトのサクサク感も食べてみたいし、今年初というミルフィーユもベリーが層になって入っていて美味しそうです。
あまりにうんうんと悩んでいるので、お兄さまが「半分こにしようか」と提案してくださり、そうさせていただくことにしました。
「お待たせいたしました、ベリーのタルトとミルフィーユでございます」
ケーキがテーブルに並べられるともうキラキラと輝いて見えて、しかも想像していたよりも大きくて嬉しいです!
どちらが最初にするか、で悩みましたがまずはタルトから食べてみることにしました。
「──っ!!」
これは美味しいです!
しっとりとしたタルトもありますが、これはザクっといった食感で私の好みです。
バターが効いていて口の中でふわっといい香りが漂います。
「よかった、気に入ってくれたみたいだね」
「(はいっ!!)」
「あ、このミルフィーユも美味しいな。ローゼもどうぞ」
「(では少しいただいて……)」
とお皿を持って来ようとしたらなぜかお兄さまに取り上げられました。
「(??)」
「ダーメ。私が食べさせてあげる」
「(え~!!!)」
なんということでしょう!
そんなお兄さまの手を煩わせるなど、というよりも皆さんが見ている前でそんな恋人のようなこと、恥ずかしいです!
「ほら、口開けないとあげないよ?」
「(ぐううー)」
お兄さまは結構意地悪だったのですね……。
私は意を決して思わず目をつぶりながら口をあけて、あ~んをしてもらいました。
すると口の中にふんわりとした生地と中からカットされたベリーの甘酸っぱさが広がって、思わず口もとに手を当ててしまいます。
美味しいっ!!
「やっぱりここのケーキはどれも美味しいね」
「(ふんふん)」
紅茶をゆっくりとそのあと飲みながらお兄さまは私にお茶会のことについて聞かれました。
「私のことをバカにされて怒ってくれたんだって?」
「(……こく)」
でも、本当によかったことなのか、あれはヴィルフェルト公爵家の名を汚す行為ではなかったのかとお兄さまに紙で聞きました。
「私がローゼの立場でも同じことをしたよ。そのくらいローゼが家族を大事に思ってくれていて私も父上も嬉しい。大丈夫だよ、何も悪いことはしていない」
「家族を大事に」ということが私に重くのしかかりました。
やはり、お兄さまは私のことを家族として、妹として見ていない。
わかっていたのに、なんだか現実を突きつけられたようで悲しい。
「ローゼはヴィルフェルト家になくてはならない存在だよ。だから、あまり気負わないでほしい。ローゼの努力家なところと素直なところは私やみんなわかっているから」
「(こく)」
私はその時頷きましたが、じゃあお兄さまにとって私ってなんなの?
そんな質問はとても聞けませんでした。
◇◆◇
家に戻ると、クリスタさんが私のところにいらっしゃってお父さまが呼んでいると伝えてくださいました。
私は急いでお父さまのところに向かいます。
お父さまに呼ばれるのもしばらくぶりだったような気がしますね。
執務室に呼ぶということは何か内緒のお話や重要なお話でしょうか。
ノックをしたあと、そっとお部屋に入ると中にはとても神妙な面持ちのお父さまがいました。
「こっちへ来てくれるか?」
「(こく)」
私は机に向かうお父さまの近くに歩いていきました。
お父さまの真正面に立つと、お話は始まりました。
「隣国の第二王子であるオリヴィエ王子は覚えているな?」
「(はい、もちろんです)」
もしかして先日王子にご迷惑をおかけしたことで、何か処分などを受けることになったのでは……。
お父さまの口からそのようなお言葉が出るのを覚悟して待ちます。
すると、お父さまは意を決したように私に告げました。
「ローゼマリー。王国よりお前に隣国のオリヴィエ・ブランジェ第二王子との婚約の要請が出た」
「──っ!!」
予想外の内容で私は何も言えませんでした。
お兄さまを侮辱されたことでお相手の方に紅茶をひっかけてしまったことは、本当に正しかったのでしょうか。
そんな思いでしばらくいた頃、廊下でお兄さまとばったりお会いしました。
「ローゼ、よかった。探してたんだ」
「(?)」
「一緒にまたあのカフェにいかないか?」
「──っ!」
お兄さまからのお誘いは大変嬉しく、先ほどの悩みで落ち込んでいた気持ちも少し上向きになりました。
急いで準備をしてお兄さまとカフェに向かうと、どうやらベリーフェアという期間限定のメニューが出ているそうで、お兄さまはそれが書かれたメニュー表を見せてくださいました。
「ローゼの好きなベリーのスイーツがあるよ、ここはタルトが美味しいんだけど今年はミルフィーユもあるね。どちらがいい?」
う~ん、それは悩んでしまいます……。
タルトのサクサク感も食べてみたいし、今年初というミルフィーユもベリーが層になって入っていて美味しそうです。
あまりにうんうんと悩んでいるので、お兄さまが「半分こにしようか」と提案してくださり、そうさせていただくことにしました。
「お待たせいたしました、ベリーのタルトとミルフィーユでございます」
ケーキがテーブルに並べられるともうキラキラと輝いて見えて、しかも想像していたよりも大きくて嬉しいです!
どちらが最初にするか、で悩みましたがまずはタルトから食べてみることにしました。
「──っ!!」
これは美味しいです!
しっとりとしたタルトもありますが、これはザクっといった食感で私の好みです。
バターが効いていて口の中でふわっといい香りが漂います。
「よかった、気に入ってくれたみたいだね」
「(はいっ!!)」
「あ、このミルフィーユも美味しいな。ローゼもどうぞ」
「(では少しいただいて……)」
とお皿を持って来ようとしたらなぜかお兄さまに取り上げられました。
「(??)」
「ダーメ。私が食べさせてあげる」
「(え~!!!)」
なんということでしょう!
そんなお兄さまの手を煩わせるなど、というよりも皆さんが見ている前でそんな恋人のようなこと、恥ずかしいです!
「ほら、口開けないとあげないよ?」
「(ぐううー)」
お兄さまは結構意地悪だったのですね……。
私は意を決して思わず目をつぶりながら口をあけて、あ~んをしてもらいました。
すると口の中にふんわりとした生地と中からカットされたベリーの甘酸っぱさが広がって、思わず口もとに手を当ててしまいます。
美味しいっ!!
「やっぱりここのケーキはどれも美味しいね」
「(ふんふん)」
紅茶をゆっくりとそのあと飲みながらお兄さまは私にお茶会のことについて聞かれました。
「私のことをバカにされて怒ってくれたんだって?」
「(……こく)」
でも、本当によかったことなのか、あれはヴィルフェルト公爵家の名を汚す行為ではなかったのかとお兄さまに紙で聞きました。
「私がローゼの立場でも同じことをしたよ。そのくらいローゼが家族を大事に思ってくれていて私も父上も嬉しい。大丈夫だよ、何も悪いことはしていない」
「家族を大事に」ということが私に重くのしかかりました。
やはり、お兄さまは私のことを家族として、妹として見ていない。
わかっていたのに、なんだか現実を突きつけられたようで悲しい。
「ローゼはヴィルフェルト家になくてはならない存在だよ。だから、あまり気負わないでほしい。ローゼの努力家なところと素直なところは私やみんなわかっているから」
「(こく)」
私はその時頷きましたが、じゃあお兄さまにとって私ってなんなの?
そんな質問はとても聞けませんでした。
◇◆◇
家に戻ると、クリスタさんが私のところにいらっしゃってお父さまが呼んでいると伝えてくださいました。
私は急いでお父さまのところに向かいます。
お父さまに呼ばれるのもしばらくぶりだったような気がしますね。
執務室に呼ぶということは何か内緒のお話や重要なお話でしょうか。
ノックをしたあと、そっとお部屋に入ると中にはとても神妙な面持ちのお父さまがいました。
「こっちへ来てくれるか?」
「(こく)」
私は机に向かうお父さまの近くに歩いていきました。
お父さまの真正面に立つと、お話は始まりました。
「隣国の第二王子であるオリヴィエ王子は覚えているな?」
「(はい、もちろんです)」
もしかして先日王子にご迷惑をおかけしたことで、何か処分などを受けることになったのでは……。
お父さまの口からそのようなお言葉が出るのを覚悟して待ちます。
すると、お父さまは意を決したように私に告げました。
「ローゼマリー。王国よりお前に隣国のオリヴィエ・ブランジェ第二王子との婚約の要請が出た」
「──っ!!」
予想外の内容で私は何も言えませんでした。
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