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第6話
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エリー先生とのマナー練習が終わった私は、ランチを食べて戻ってきてもなんだか落ち着かなくてお部屋の中をうろうろ、うろうろしていました。
テーブルに置いてあるコップの水を一気に飲み干し、ベッドの端にわずかに体重をかけて座ります。
『来月の社交界デビューに向けて一気に練習していくわよ!!』
エリー先生の言葉が頭の中で響いては、どうしましょうとそわそわしています。
来月ってもう今月は7日も過ぎてますし、あと何回練習ができるんでしょうか。
いえ、考えている場合じゃありませんね。今すぐにでも練習に取り掛からないと……!
私はベッドから勢いよく立ち上がると、そのままお部屋の真ん中で今日教えていただいたご挨拶のマナーを何度も繰り返し練習していきます。
う~ん。エリー先生のお手本はもっとこう、腕が綺麗に伸びていて……。
私は大きな鏡の前で自分の動きを確認しながらやっていきます。
もっとドレスも綺麗にひらっと動いてて、う~ん?
何度も同じ動きをしますが、エリー先生のようにできません。
動きにしておよそ5秒にも満たないのに、それなのにうまくできないんです。
そんな練習をしている途中で、いきなりドアのほうから声がしました。
「熱心に練習して偉いね、ローゼマリー」
「(ラルスさまっ!)」
私は慌てて姿勢を正してお辞儀をして挨拶をします。
でもふと、エリー先生への言葉が思い浮かびました。
『カーテシーは貴族の女性の挨拶よ』
『相手に敬意を届ける気持ちを忘れないこと』
そうです、ラルスさまにきちんと私はご挨拶をしたことがなかったのではないでしょうか。
私はその場に立って少し考えました。
「ローゼマリー?」
どうしたのか、というように私を心配するラルスさまのほうを向いて私は練習したカーテシーを披露してみました。
「(ラルスさま、いつもありがとうございます)」
「──っ!」
私は精いっぱいの感謝の気持ちをこめてドレスの裾を持ちながらちょんとお辞儀をしてみました。
そんな私の挨拶に目を点のようになさってじっとされています。
はあ、やはりお気持ちは伝わらなかったようです。
ごめんなさいという気持ちをこめてもう一度いつもするように頭を下げてお辞儀をしました。
すると、頭を上げた私の視界は何か真っ暗になりました。
「──っ!!!!」
しばらくたって私がラルスさまに抱きしめられていることに気づきました。
どうしてかわからず私はおどおどと視点をずらしながら、ラルスさまの腕の中で動けずにいます。
あ、もしかしてこれはあまりに私の動きがひどすぎて「やめろ」という合図でしょうか。
なんて思っていたときに、ラルスさまが私の頭の上から声をかけました。
「なんてことをするんだい、ローゼマリー」
ああ、やはりダメだったのですね。
「そんな心のこもったカーテシーを見せられたら、思わず感情が高ぶってしまう」
「(え……?)」
「きっと君のことだからさっきまで来月の社交界のことを気負いすぎて練習していたのだろう?」
なんてことでしょう、ラルスさまには全てバレてしまっています。
ラルスさまはゆっくりと私を解放して言いました。
「こんな可愛いカーテシー、他の男に見せないで」
それは社交界に行く以上無理なのではないでしょうか。
と思ったのですが、なんだか別の意味で考えてしまって、胸がドキドキしてそれで、頬っぺたが赤くなってきたような気がします。
ダメですっ! 変なこと考えていると思われてしまいます!!
咄嗟に顔を逸らした私でしたが、全然体の熱さはおさまってくれなくて、そのあとの文字を書く練習ではうまく字が書けませんでした──
テーブルに置いてあるコップの水を一気に飲み干し、ベッドの端にわずかに体重をかけて座ります。
『来月の社交界デビューに向けて一気に練習していくわよ!!』
エリー先生の言葉が頭の中で響いては、どうしましょうとそわそわしています。
来月ってもう今月は7日も過ぎてますし、あと何回練習ができるんでしょうか。
いえ、考えている場合じゃありませんね。今すぐにでも練習に取り掛からないと……!
私はベッドから勢いよく立ち上がると、そのままお部屋の真ん中で今日教えていただいたご挨拶のマナーを何度も繰り返し練習していきます。
う~ん。エリー先生のお手本はもっとこう、腕が綺麗に伸びていて……。
私は大きな鏡の前で自分の動きを確認しながらやっていきます。
もっとドレスも綺麗にひらっと動いてて、う~ん?
何度も同じ動きをしますが、エリー先生のようにできません。
動きにしておよそ5秒にも満たないのに、それなのにうまくできないんです。
そんな練習をしている途中で、いきなりドアのほうから声がしました。
「熱心に練習して偉いね、ローゼマリー」
「(ラルスさまっ!)」
私は慌てて姿勢を正してお辞儀をして挨拶をします。
でもふと、エリー先生への言葉が思い浮かびました。
『カーテシーは貴族の女性の挨拶よ』
『相手に敬意を届ける気持ちを忘れないこと』
そうです、ラルスさまにきちんと私はご挨拶をしたことがなかったのではないでしょうか。
私はその場に立って少し考えました。
「ローゼマリー?」
どうしたのか、というように私を心配するラルスさまのほうを向いて私は練習したカーテシーを披露してみました。
「(ラルスさま、いつもありがとうございます)」
「──っ!」
私は精いっぱいの感謝の気持ちをこめてドレスの裾を持ちながらちょんとお辞儀をしてみました。
そんな私の挨拶に目を点のようになさってじっとされています。
はあ、やはりお気持ちは伝わらなかったようです。
ごめんなさいという気持ちをこめてもう一度いつもするように頭を下げてお辞儀をしました。
すると、頭を上げた私の視界は何か真っ暗になりました。
「──っ!!!!」
しばらくたって私がラルスさまに抱きしめられていることに気づきました。
どうしてかわからず私はおどおどと視点をずらしながら、ラルスさまの腕の中で動けずにいます。
あ、もしかしてこれはあまりに私の動きがひどすぎて「やめろ」という合図でしょうか。
なんて思っていたときに、ラルスさまが私の頭の上から声をかけました。
「なんてことをするんだい、ローゼマリー」
ああ、やはりダメだったのですね。
「そんな心のこもったカーテシーを見せられたら、思わず感情が高ぶってしまう」
「(え……?)」
「きっと君のことだからさっきまで来月の社交界のことを気負いすぎて練習していたのだろう?」
なんてことでしょう、ラルスさまには全てバレてしまっています。
ラルスさまはゆっくりと私を解放して言いました。
「こんな可愛いカーテシー、他の男に見せないで」
それは社交界に行く以上無理なのではないでしょうか。
と思ったのですが、なんだか別の意味で考えてしまって、胸がドキドキしてそれで、頬っぺたが赤くなってきたような気がします。
ダメですっ! 変なこと考えていると思われてしまいます!!
咄嗟に顔を逸らした私でしたが、全然体の熱さはおさまってくれなくて、そのあとの文字を書く練習ではうまく字が書けませんでした──
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