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第一部
【おまけ③】賭けようか
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秋も深くなってきた頃、ルヴェリエ邸でソフィとジルはいつものように二人で逢瀬を楽しんでいた。
ソフィが本を読んでいるところを少し不満げに眺めるジルがおり、彼は今度は何かを思いつくとソフィに話しかける。
「ソフィ」
「なに? ジル」
「賭けようか」
「え?」
ジルはポケットからコインを出すと、手のひらに載せてソフィに見せた。
「このコインを僕が投げるから、表ならソフィの勝ち、裏なら僕の勝ち。どうだい?」
「負けたらどうするの?」
勝ったらどうするか、よりも負けたら何をするかを先に聞くところがソフィらしくて可愛いとジルは心の中で悶えた。
「そうだね、じゃあ僕が負けたらソフィの言うことをなんでも一つ聞くよ。でもソフィが負けたら……」
「負けたら?」
「本じゃなくて僕の話を聞いてくれるかい?」
「え……それだけでいいの?」
「ああ」
ジルはにっこりと笑うと、さあ始めるよと言ってコインを勢いよく投げた。
コインはくるくると回り実の左手の上に乗ると、パッと見えないように右手でさっと隠す。
「さあ、どっちかな?」
ソフィはドキドキしながらその手の甲に目を向けると、そっとジルが右手をあげていく。
「……う……ら?」
「裏だね、僕の勝ちだ」
残念とばかりにソフィは一息吐くと、約束通り本をテーブルに置いて話を聞く態勢になる。
「さあ、いいわよ、ジル。お話しましょう」
「ああ、そうだね」
そう言ってジルはテーブルに手をついた……と思いきやソフィの後ろに回り込み、後ろから抱きしめる。
「──っ!」
ソフィは驚いて身体をじたばたとさせるが、ジルの腕の力が強く、全く剥がれない。
「ジルっ!」
「ダメだよ、ソフィ。いうこと聞かなきゃ」
「でも話を聞くってお願いじゃ」
「聞く『だけ』とも言ってないよ」
そう言ってジルはソフィの耳元に唇を寄せると、そっと囁き始める。
「ねえ、ソフィ。最近つれなくないかい?」
「そ、そんなことないわよ」
「い~や。本ばかりに夢中になってる。僕をもっと見てほしい」
「わ、わかったから。その囁くのやめて……っ! くすぐったい」
「だ~め。全然ソフィが構ってくれなかったから寂しかったんだよ。これでも我慢してるんだから」
「な、なにしたら離れてくれるの?」
ジルはう~んと少し考えると、ソフィの目の前に回り込み目を閉じて自らの唇に人差し指を当てる。
「ここにちょうだい」
「──っ!」
ソフィは瞬時に要求されている事を理解すると、顔を真っ赤にしてジルの胸を叩く。
「もうっ! できるわけないじゃないっ!」
「じゃあ、また抱きしめるけどいい? ず~っと、ず~っと、おじ様やおば様にも見せつけるけど」
「それはダメっ!!!」
「ならほら」
そういって唇を差し出すジルにソフィはなんとなく周りをきょろきょろして誰もいないことを確認すると、そっと唇をくっつけた。
「──んっ!」
すると、逃がさないとでもいうように甘く優しいお返しが返って来る。
ソフィとジルの甘い日常は今日も平和に続いていた──
ソフィが本を読んでいるところを少し不満げに眺めるジルがおり、彼は今度は何かを思いつくとソフィに話しかける。
「ソフィ」
「なに? ジル」
「賭けようか」
「え?」
ジルはポケットからコインを出すと、手のひらに載せてソフィに見せた。
「このコインを僕が投げるから、表ならソフィの勝ち、裏なら僕の勝ち。どうだい?」
「負けたらどうするの?」
勝ったらどうするか、よりも負けたら何をするかを先に聞くところがソフィらしくて可愛いとジルは心の中で悶えた。
「そうだね、じゃあ僕が負けたらソフィの言うことをなんでも一つ聞くよ。でもソフィが負けたら……」
「負けたら?」
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「え……それだけでいいの?」
「ああ」
ジルはにっこりと笑うと、さあ始めるよと言ってコインを勢いよく投げた。
コインはくるくると回り実の左手の上に乗ると、パッと見えないように右手でさっと隠す。
「さあ、どっちかな?」
ソフィはドキドキしながらその手の甲に目を向けると、そっとジルが右手をあげていく。
「……う……ら?」
「裏だね、僕の勝ちだ」
残念とばかりにソフィは一息吐くと、約束通り本をテーブルに置いて話を聞く態勢になる。
「さあ、いいわよ、ジル。お話しましょう」
「ああ、そうだね」
そう言ってジルはテーブルに手をついた……と思いきやソフィの後ろに回り込み、後ろから抱きしめる。
「──っ!」
ソフィは驚いて身体をじたばたとさせるが、ジルの腕の力が強く、全く剥がれない。
「ジルっ!」
「ダメだよ、ソフィ。いうこと聞かなきゃ」
「でも話を聞くってお願いじゃ」
「聞く『だけ』とも言ってないよ」
そう言ってジルはソフィの耳元に唇を寄せると、そっと囁き始める。
「ねえ、ソフィ。最近つれなくないかい?」
「そ、そんなことないわよ」
「い~や。本ばかりに夢中になってる。僕をもっと見てほしい」
「わ、わかったから。その囁くのやめて……っ! くすぐったい」
「だ~め。全然ソフィが構ってくれなかったから寂しかったんだよ。これでも我慢してるんだから」
「な、なにしたら離れてくれるの?」
ジルはう~んと少し考えると、ソフィの目の前に回り込み目を閉じて自らの唇に人差し指を当てる。
「ここにちょうだい」
「──っ!」
ソフィは瞬時に要求されている事を理解すると、顔を真っ赤にしてジルの胸を叩く。
「もうっ! できるわけないじゃないっ!」
「じゃあ、また抱きしめるけどいい? ず~っと、ず~っと、おじ様やおば様にも見せつけるけど」
「それはダメっ!!!」
「ならほら」
そういって唇を差し出すジルにソフィはなんとなく周りをきょろきょろして誰もいないことを確認すると、そっと唇をくっつけた。
「──んっ!」
すると、逃がさないとでもいうように甘く優しいお返しが返って来る。
ソフィとジルの甘い日常は今日も平和に続いていた──
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