上 下
15 / 32
第一部

第15話 幸せな婚約

しおりを挟む
 ルノアール公爵家でのパーティーの翌日、エストレ子爵からはソフィとルヴェリエ伯爵家に対して正式な謝罪がおこなわれた。
 ルヴェリエ伯爵はエストレ子爵から受けた以前の恩もあり、これまでの親交を続けることを決めた。


 一方、ソフィはというと、正式にジルの婚約者となり、二人は互いの家を訪れながら愛を育んでいた。

「お父様、お母様、それでは行ってまいります」

 ソフィは馬車に乗り、ルノアール公爵邸へと向かった。


 馬車がルノアール公爵邸へと到着すると、ソフィの到着を待ちきれなかったジルが姿を見せる。

「ジルっ!」

「いらっしゃい、ソフィ」

 二人は挨拶もそこそこに、ジルの自室へと向かっていく。
 今日はソフィの好きな本の話をする約束をしていた。

「これは、100年も前の物語でね、主人公の女の子が……」

 本のことになると饒舌になるソフィを見て、愛しい目で見つめるジル。

「それでね……っ! ごめんなさい、私ばかりお話してしまって……」

「ううん。僕は夢中で話すソフィが可愛くて仕方ないんだ。もっと聴かせて?」

「──っ!」

「だけど、ちょっとソフィに聴いてほしいことがあるんだ」

「……? なに?」

 ソフィは本を静かに閉じると、ジルのほうへと向きなおす。

 すると、ジルは座っていた椅子から立ち上がり、ソフィの前で跪いた。


「ジルっ?!」

「ソフィ、君が他の男と婚約した時、幼い頃からソフィが好きだった僕はとても苦しかった。でももう今は君の婚約者は僕だ。誓うよ、君を一生かけて守り、愛します。だから、僕と結婚してください」

 そういって、小さなソフィの薬指に指輪をはめる。
 可愛いピンクダイヤの入ったリングで、太陽の光に照らされて綺麗に輝いている。

 ジルは少し照れているように顔を逸らした。
 しかし、ソフィの手がジルの顔を捕まえると、そのまま唇を重ねた。

「──っ!」

 ジルは目を見開いて驚くが、すぐにソフィからの愛情を受け取る。
 二人は何度も唇を重ね、手と手を絡ませながらそっと唇を離す。


「私も好き。ジルのことが大好き!」

 そういってジルの胸に飛び込むソフィ。
 たくましい腕でそれを受け止めると、力強くソフィを抱きしめる。


「もう絶対離さないから」

「ええ、離さないで」


 二人の影は再びゆっくりと重なった──
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

たった一度の浮気ぐらいでガタガタ騒ぐな、と婚約破棄されそうな私は、馬オタクな隣国第二王子の溺愛対象らしいです。

弓はあと
恋愛
「たった一度の浮気ぐらいでガタガタ騒ぐな」婚約者から投げられた言葉。 浮気を許す事ができない心の狭い私とは婚約破棄だという。 婚約破棄を受け入れたいけれど、それを親に伝えたらきっと「この役立たず」と罵られ家を追い出されてしまう。 そんな私に手を差し伸べてくれたのは、皆から馬オタクで残念な美丈夫と噂されている隣国の第二王子だった―― ※物語の後半は視点変更が多いです。 ※浮気の表現があるので、念のためR15にしています。詳細な描写はありません。 ※短めのお話です。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません、ご注意ください。 ※設定ゆるめ、ご都合主義です。鉄道やオタクの歴史等は現実と異なっています。

婚約者を奪われて前世の記憶を思い出したので色々と何か企みます

まや
恋愛
アメリアは婚約者に婚約解消してくれと言われた。その理由は身に覚えがない従姉妹エレナに対する虐めだった。 アメリアは婚約破棄を言い渡されたショックにより前世の記憶を思い出した。前世の記憶からここは乙女ゲームの悪役令嬢の断罪イベントの最中だと言うことが分かった。 だけど身分剥奪されるのは嬉しくて思わず喜んでしまう。前世では15年間庶民として暮らしていたが親の事業が成功して金持ちになってしまって庶民に戻りたいと思っていたからだ。 その後、私は国外追放を言い渡され一人で生きていくことにーー。だけど負けっぱなしは嫌だから色々とアメリアは何か企む。 毎日三回更新。朝、昼、晩。 朝は8時、昼は13時、晩は20時となります。 (更新は落ち着き次第、毎日一回~二回にします。) 小説家になろう様でも投稿しております。 文章を書くのが下手なのでおかしな所があるかと思われます。何かございましたら感想にて教えて下さると有難いです。

【完結】マザコンな婚約者はいりません

たなまき
恋愛
伯爵令嬢シェリーは、婚約者である侯爵子息デューイと、その母親である侯爵夫人に長年虐げられてきた。 貴族学校に通うシェリーは、昼時の食堂でデューイに婚約破棄を告げられる。 その内容は、シェリーは自分の婚約者にふさわしくない、あらたな婚約者に子爵令嬢ヴィオラをむかえるというものだった。 デューイはヴィオラこそが次期侯爵夫人にふさわしいと言うが、その発言にシェリーは疑問を覚える。 デューイは侯爵家の跡継ぎではない。シェリーの家へ婿入りするための婚約だったはずだ。 だが、話を聞かないデューイにその発言の真意を確認することはできなかった。 婚約破棄によって、シェリーは人生に希望を抱きはじめる。 周囲の人々との関係にも変化があらわれる。 他サイトでも掲載しています。

妹に一度殺された。明日結婚するはずの死に戻り公爵令嬢は、もう二度と死にたくない。

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
恋愛
婚約者アルフレッドとの結婚を明日に控えた、公爵令嬢のバレッタ。 しかしその夜、無惨にも殺害されてしまう。 それを指示したのは、妹であるエライザであった。 姉が幸せになることを憎んだのだ。 容姿が整っていることから皆や父に気に入られてきた妹と、 顔が醜いことから蔑まされてきた自分。 やっとそのしがらみから逃れられる、そう思った矢先の突然の死だった。 しかし、バレッタは甦る。死に戻りにより、殺される数時間前へと時間を遡ったのだ。 幸せな結婚式を迎えるため、己のこれまでを精算するため、バレッタは妹、協力者である父を捕まえ処罰するべく動き出す。 もう二度と死なない。 そう、心に決めて。

完結 妹がなんでも欲しがるので全部譲りました所

音爽(ネソウ)
恋愛
「姉様のものは全部欲しいの!」 「そう、わかったわ。全部あげる」 姉のものをなんでも欲しがる妹、親も年上の者は譲るべきとウルサイので譲った。 ならば年上の親から私が貰っても良いですよね?

彼と婚約破棄しろと言われましても困ります。なぜなら、彼は婚約者ではありませんから

水上
恋愛
「私は彼のことを心から愛しているの! 彼と婚約破棄して!」 「……はい?」 子爵令嬢である私、カトリー・ロンズデールは困惑していた。 だって、私と彼は婚約なんてしていないのだから。 「エリオット様と別れろって言っているの!」  彼女は下品に怒鳴りながら、ポケットから出したものを私に投げてきた。  そのせいで、私は怪我をしてしまった。  いきなり彼と別れろと言われても、それは無理な相談である。  だって、彼は──。  そして勘違いした彼女は、自身を破滅へと導く、とんでもない騒動を起こすのだった……。 ※この作品は、旧作を加筆、修正して再掲載したものです。

【完結】名ばかりの妻を押しつけられた公女は、人生のやり直しを求めます。2度目は絶対に飼殺し妃ルートの回避に全力をつくします。

yukiwa (旧PN 雪花)
恋愛
*タイトル変更しました。(旧題 黄金竜の花嫁~飼殺し妃は遡る~) パウラ・ヘルムダールは、竜の血を継ぐ名門大公家の跡継ぎ公女。 この世を支配する黄金竜オーディに望まれて側室にされるが、その実態は正室の仕事を丸投げされてこなすだけの、名のみの妻だった。 しかもその名のみの妻、側室なのに選抜試験などと御大層なものがあって。生真面目パウラは手を抜くことを知らず、ついつい頑張ってなりたくもなかった側室に見事当選。 もう一人の側室候補エリーヌは、イケメン試験官と恋をしてさっさと選抜試験から引き揚げていた。 「やられた!」と後悔しても、後の祭り。仕方ないからパウラは丸投げされた仕事をこなし、こなして一生を終える。そしてご褒美にやり直しの転生を願った。 「二度と絶対、飼殺しの妃はごめんです」 そうして始まった2度目の人生、なんだか周りが騒がしい。 竜の血を継ぐ4人の青年(後に試験官になる)たちは、なぜだかみんなパウラに甘い。 後半、シリアス風味のハピエン。 3章からルート分岐します。 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。 表紙画像はwaifulabsで作成していただきました。 https://waifulabs.com/

(完結)私は一切悪くないけど、婚約破棄を受け入れます。もうあなたとは一緒に歩んでいけないと分かりましたから。

しまうま弁当
恋愛
ルーテシアは婚約者のゼスタから突然婚約破棄を突きつけられたのでした。 さらにオーランド男爵家令嬢のリアナが現れてゼスタと婚約するとルーテシアに宣言するのでした。 しかもゼスタはルーテシアが困っている人達を助けたからという理由で婚約破棄したとルーテシアに言い放ちました。 あまりにふざけた理由で婚約破棄されたルーテシアはゼスタの考えにはついていけないと考えて、そのまま婚約破棄を受け入れたのでした。 そしてルーテシアは実家の伯爵家に戻るために水上バスの停留所へと向かうのでした。 ルーテシアは幼馴染のロベルトとそこで再会するのでした。

処理中です...