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番外編
不器用な二人の恋物語3
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「シュヴェール騎士団が、クラリッサを人質に?!」
「ああ」
「それで、クラリッサは?!」
「レオンハルトの命で立てこもり先に極秘に侵入したリュディーの報告では、亡くなっていたと」
「──っ!!!」
それはクリスティーナにとってあまりにも衝撃的なことだった。
過激な反王国派の人間で結成されたシュヴェール騎士団は、多くの犯罪をおこなっていた。
ついに王国は彼らの居場所を突き止め、王国騎士団長のレオンハルト、そしてその副長でもあったリュディーを中心に大々的な討伐作戦を実行する。
しかし、結果、人質の犠牲という最悪の結果に終わってしまった。
「レオンハルトは辞任表を持ってきた」
「そんな……」
人質であったクラリッサはレオンハルトの婚約者だった。
彼の辛さと苦しさは計り知れないだろう。
「──っ!! リュディーは!?」
「それなんだが、彼は重傷を負って医務室で休んでいる」
「──っ!!」
国王のその言葉を聞くや否や、彼女は部屋を飛び出していた。
「リュディーっ!!」
「……クリスティーナ様」
体中に包帯を巻いてベッドに横たわるリュディーを見て、クリスティーナは涙を流す。
「無事でよかった……」
「ですが、俺はクラリッサ様を守れなかった。あなたの親友である彼女を……」
唇を噛んで血を流す彼を、クリスティーナは傷に触らないように優しく抱きしめた。
「クリスティーナ様!?」
「辛いの。あの子がいないなんて信じられない。でも、あなたが無事でほっとする自分もいるの。こんな私、最低……」
「あなたは悪くはない。俺が全て罪を引き受けます。あなたが背負う必要はない。だから……」
リュディーはクリスティーナの頬に手を添えると、少しだけ微笑んだ。
「俺しか見てませんから、泣いてください。俺が全部受け止めますから」
「──っ!!」
(なんで、なんで自分が辛い時にあなたはいつも……)
彼女は彼の胸にすがるようにして、声を枯らすまで泣いた。
リュディーの傷が治った頃、正式に彼は騎士団を辞めた。
平民として戻ると言って王宮を出ようとした彼を、国王が「王家の影」として働かないか、と声をかける。
「王家の影」は、王族の命で街に他国の者がいないか、つまりスパイを見つけたりする役割を持った人物のこと。
それの長として迎え入れようというのが、国王の提案であった。
リュディーは最初こそ断ったが、クリスティーナの助言もあってその任を引き受けることにする。
「またあなたと一緒にいられて嬉しいわ」
「普段は町のカフェ経営で情報を集めます。クリスティーナ様をお守りすることは減りますが、俺が留守の間は別の者が対応しますので」
「いいえ、私はあなたがいいの」
「……もったいなきお言葉」
「……」
(私の気持ち、わかってるくせに)
リュディー自身、クリスティーナが自分自身を想うわけがないと思っていた。
彼は彼女を想って身を引き、彼女は彼を想って一歩を踏み出せずにいる。
そんな彼女に婚約の話が訪れたのは、リュディーが王家の影として働き始めてから三年後のことだった。
「ミストラル国の第二王子?」
「ああ、そのリスト・ニューラルに嫁いでほしい」
一瞬、シルバーの長い髪の彼のことが浮かんだが、彼女は目を閉じてその幻を消す。
(きっとこれは王家にとって大切なこと、私が、私が嫁ぐことで国の為になるなら……)
昔から責任感の強かった彼女は、自分自身の想いよりも国のことを優先してしまう。
この恋とついに別れを告げるときが来たのだと、彼女は理解して国王に了承の返事をした。
(終わりにしましょう。この長い恋心を……)
彼女はリュディーへの恋心を断ち切ることにした──
「ああ」
「それで、クラリッサは?!」
「レオンハルトの命で立てこもり先に極秘に侵入したリュディーの報告では、亡くなっていたと」
「──っ!!!」
それはクリスティーナにとってあまりにも衝撃的なことだった。
過激な反王国派の人間で結成されたシュヴェール騎士団は、多くの犯罪をおこなっていた。
ついに王国は彼らの居場所を突き止め、王国騎士団長のレオンハルト、そしてその副長でもあったリュディーを中心に大々的な討伐作戦を実行する。
しかし、結果、人質の犠牲という最悪の結果に終わってしまった。
「レオンハルトは辞任表を持ってきた」
「そんな……」
人質であったクラリッサはレオンハルトの婚約者だった。
彼の辛さと苦しさは計り知れないだろう。
「──っ!! リュディーは!?」
「それなんだが、彼は重傷を負って医務室で休んでいる」
「──っ!!」
国王のその言葉を聞くや否や、彼女は部屋を飛び出していた。
「リュディーっ!!」
「……クリスティーナ様」
体中に包帯を巻いてベッドに横たわるリュディーを見て、クリスティーナは涙を流す。
「無事でよかった……」
「ですが、俺はクラリッサ様を守れなかった。あなたの親友である彼女を……」
唇を噛んで血を流す彼を、クリスティーナは傷に触らないように優しく抱きしめた。
「クリスティーナ様!?」
「辛いの。あの子がいないなんて信じられない。でも、あなたが無事でほっとする自分もいるの。こんな私、最低……」
「あなたは悪くはない。俺が全て罪を引き受けます。あなたが背負う必要はない。だから……」
リュディーはクリスティーナの頬に手を添えると、少しだけ微笑んだ。
「俺しか見てませんから、泣いてください。俺が全部受け止めますから」
「──っ!!」
(なんで、なんで自分が辛い時にあなたはいつも……)
彼女は彼の胸にすがるようにして、声を枯らすまで泣いた。
リュディーの傷が治った頃、正式に彼は騎士団を辞めた。
平民として戻ると言って王宮を出ようとした彼を、国王が「王家の影」として働かないか、と声をかける。
「王家の影」は、王族の命で街に他国の者がいないか、つまりスパイを見つけたりする役割を持った人物のこと。
それの長として迎え入れようというのが、国王の提案であった。
リュディーは最初こそ断ったが、クリスティーナの助言もあってその任を引き受けることにする。
「またあなたと一緒にいられて嬉しいわ」
「普段は町のカフェ経営で情報を集めます。クリスティーナ様をお守りすることは減りますが、俺が留守の間は別の者が対応しますので」
「いいえ、私はあなたがいいの」
「……もったいなきお言葉」
「……」
(私の気持ち、わかってるくせに)
リュディー自身、クリスティーナが自分自身を想うわけがないと思っていた。
彼は彼女を想って身を引き、彼女は彼を想って一歩を踏み出せずにいる。
そんな彼女に婚約の話が訪れたのは、リュディーが王家の影として働き始めてから三年後のことだった。
「ミストラル国の第二王子?」
「ああ、そのリスト・ニューラルに嫁いでほしい」
一瞬、シルバーの長い髪の彼のことが浮かんだが、彼女は目を閉じてその幻を消す。
(きっとこれは王家にとって大切なこと、私が、私が嫁ぐことで国の為になるなら……)
昔から責任感の強かった彼女は、自分自身の想いよりも国のことを優先してしまう。
この恋とついに別れを告げるときが来たのだと、彼女は理解して国王に了承の返事をした。
(終わりにしましょう。この長い恋心を……)
彼女はリュディーへの恋心を断ち切ることにした──
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