49 / 56
番外編
おまけ 甘い駆け引き
しおりを挟む
コルネリアが目を覚ますと、何か違和感を覚えてそちらに視線を向けた。
「レオンハルト様っ!?」
自分の隣には愛しい夫であるレオンハルトが眠っている。
そのはだけたシャツから見える胸板からはとんでもない色気を放っていた。
咄嗟にシーツで顔を隠して彼を見ないようにしてもう一度声をかける。
「レオンハルト様……?」
それでも聞こえてくるのが、彼の静かな寝息だけ──
(確か昨日は遅くまで仕事をなさっていたはずじゃあ……)
寝る前に挨拶に行った際に、今日は一緒に眠れないんだ、と申し訳なさそうに言われた。
そんな言葉を思い出して、彼女は必死に頭の中で否定する。
(いえっ! 決してその、寂しいから一緒に寝たいなんて事ではないんですよ!?)
シーツの中に隠した顔は少し赤らんでおり、頭を軽く左右に振った。
彼女がこんなことを心の中で思うわけには理由があった。
最近、夫であるレオンハルトの態度が素っ気ない気がしていたのだ。
なんとなく自分の愛が重すぎるのかもしれない、それで嫌われたのかも、と感じたコルネリアは、押してみるのではなく引いてみる作戦に出た。
(最近レオンハルト様を意識的に避けてみたりしたけど、なんにも反応は変わらないし……)
そう、結果引いてみても彼の反応は変わらず素っ気ないだけだった。
それどころか会えない不満だけがコルネリアの中で募ってしまい、もやもやが止まらなかった。
そーっとレオンハルトの様子を伺うように、シーツから顔をのぞかせると、じーっと彼を見つめてみる。
(本当に綺麗な寝顔……やっぱり好き……)
もはや心の声がだだ漏れしそうな勢いで呟く。
鼓動がどんどん早まってどうしようもなく、彼女の中である欲望が渦巻いた。
(ちょっとならいいかな?)
彼女はゆっくりとレオンハルトに顔を近づけると、そのまま自らの唇を彼の唇にちょんと押し当てる。
そーっと彼が起きていないか伺う。
「……んっ」
「──っ!」
少しだけ身体をよじっている彼にびくりと驚くも、彼が再び寝息を立てると安心した。
(……足りない)
もはや愛情表現が足りなくなった彼女は逆に心がざわざわとして困ってしまう。
このままでは彼を襲ってしまいそう。
そう思ってコルネリアはゆっくりとベッドから離れることにした。
「あれ、もう終わり?」
「──!?」
思わず振り返ると、彼が艶めかしいサファイア色の瞳をこちらに向けている。
「レオンハルト様っ!」
「もう、最近素っ気ないなと思ってたから寂しくて隣に寝に来たのに」
「そ、素っ気ないのはレオンハルト様じゃないですか?」
少しむっとした表情を浮かべてコルネリアは反論する。
すると、レオンハルトは申し訳なさそうに目を逸らすと、彼女の元に向かう。
彼女を勢いよく抱きしめると、ごめんと耳元で呟いた。
すると、コルネリアは自分の首元が少しヒヤッとしたことに驚いて手をやると、そこには細いチェーンに飾りがあるネックレスがあった。
「レオンハルト様、これは……?」
「昨日は誕生日だから、コルネリアの。これをプレゼントする予定だったんだけど、間に合わなくて。ごめん」
申し訳なさそうにしゅんとする彼を見て、コルネリアはなんとも彼が愛おしくなった。
「いいえ、もしかして素っ気なかったのはこれのためですか?」
「ああ、その、プレゼントをサプライズで渡したかったけど、なんとなく口走ってしまいそうで。数日不安にさせたなら、ごめん」
星形の飾りの中に光る淡い紫の宝石は、朝日に照らされて輝いている。
その飾りを愛おしそうになでたあと、コルネリアは彼に抱き着いた。
「私も、レオンハルト様への愛が重すぎるかもしれないと、少し素っ気ない態度をとってしまいました。ごめんなさい」
ぎゅっと彼を抱きしめながら目に涙をためて謝る。
そんな彼女の謝罪を聞いて全ての行動の意味が納得できたのか、彼は微笑んだ。
「よかった、嫌われたわけじゃなくて」
「嫌うなんてっ!! その、大好きです……」
あまりにストレートな愛情表現に、彼の心は燃え上がった。
「コルネリア、ごめん我慢できないかも」
「え……?」
そう言って彼は彼女をベッドに押し倒すと、そのまま彼女の唇を貪る。
「レオンハルト、さま……」
「可愛すぎ。コルネリア」
そんな言葉と共に彼の溺愛は続く。
「んっ……」
何度も当てられる唇に思わず吐息が漏れる。
「ん……コルネリア、愛してる」
「私も、大好きです」
再び唇が重なって、甘い甘い時間が始まる──
********************
クリスティーナ&リュディーのおまけの番外編は、
「小説家になろう」にて公開中です!
アルファポリス版は本編を含めて非公開とする可能性がありますため、
継続してお読み直ししたい場合は「小説家になろう」でお願いします!
「レオンハルト様っ!?」
自分の隣には愛しい夫であるレオンハルトが眠っている。
そのはだけたシャツから見える胸板からはとんでもない色気を放っていた。
咄嗟にシーツで顔を隠して彼を見ないようにしてもう一度声をかける。
「レオンハルト様……?」
それでも聞こえてくるのが、彼の静かな寝息だけ──
(確か昨日は遅くまで仕事をなさっていたはずじゃあ……)
寝る前に挨拶に行った際に、今日は一緒に眠れないんだ、と申し訳なさそうに言われた。
そんな言葉を思い出して、彼女は必死に頭の中で否定する。
(いえっ! 決してその、寂しいから一緒に寝たいなんて事ではないんですよ!?)
シーツの中に隠した顔は少し赤らんでおり、頭を軽く左右に振った。
彼女がこんなことを心の中で思うわけには理由があった。
最近、夫であるレオンハルトの態度が素っ気ない気がしていたのだ。
なんとなく自分の愛が重すぎるのかもしれない、それで嫌われたのかも、と感じたコルネリアは、押してみるのではなく引いてみる作戦に出た。
(最近レオンハルト様を意識的に避けてみたりしたけど、なんにも反応は変わらないし……)
そう、結果引いてみても彼の反応は変わらず素っ気ないだけだった。
それどころか会えない不満だけがコルネリアの中で募ってしまい、もやもやが止まらなかった。
そーっとレオンハルトの様子を伺うように、シーツから顔をのぞかせると、じーっと彼を見つめてみる。
(本当に綺麗な寝顔……やっぱり好き……)
もはや心の声がだだ漏れしそうな勢いで呟く。
鼓動がどんどん早まってどうしようもなく、彼女の中である欲望が渦巻いた。
(ちょっとならいいかな?)
彼女はゆっくりとレオンハルトに顔を近づけると、そのまま自らの唇を彼の唇にちょんと押し当てる。
そーっと彼が起きていないか伺う。
「……んっ」
「──っ!」
少しだけ身体をよじっている彼にびくりと驚くも、彼が再び寝息を立てると安心した。
(……足りない)
もはや愛情表現が足りなくなった彼女は逆に心がざわざわとして困ってしまう。
このままでは彼を襲ってしまいそう。
そう思ってコルネリアはゆっくりとベッドから離れることにした。
「あれ、もう終わり?」
「──!?」
思わず振り返ると、彼が艶めかしいサファイア色の瞳をこちらに向けている。
「レオンハルト様っ!」
「もう、最近素っ気ないなと思ってたから寂しくて隣に寝に来たのに」
「そ、素っ気ないのはレオンハルト様じゃないですか?」
少しむっとした表情を浮かべてコルネリアは反論する。
すると、レオンハルトは申し訳なさそうに目を逸らすと、彼女の元に向かう。
彼女を勢いよく抱きしめると、ごめんと耳元で呟いた。
すると、コルネリアは自分の首元が少しヒヤッとしたことに驚いて手をやると、そこには細いチェーンに飾りがあるネックレスがあった。
「レオンハルト様、これは……?」
「昨日は誕生日だから、コルネリアの。これをプレゼントする予定だったんだけど、間に合わなくて。ごめん」
申し訳なさそうにしゅんとする彼を見て、コルネリアはなんとも彼が愛おしくなった。
「いいえ、もしかして素っ気なかったのはこれのためですか?」
「ああ、その、プレゼントをサプライズで渡したかったけど、なんとなく口走ってしまいそうで。数日不安にさせたなら、ごめん」
星形の飾りの中に光る淡い紫の宝石は、朝日に照らされて輝いている。
その飾りを愛おしそうになでたあと、コルネリアは彼に抱き着いた。
「私も、レオンハルト様への愛が重すぎるかもしれないと、少し素っ気ない態度をとってしまいました。ごめんなさい」
ぎゅっと彼を抱きしめながら目に涙をためて謝る。
そんな彼女の謝罪を聞いて全ての行動の意味が納得できたのか、彼は微笑んだ。
「よかった、嫌われたわけじゃなくて」
「嫌うなんてっ!! その、大好きです……」
あまりにストレートな愛情表現に、彼の心は燃え上がった。
「コルネリア、ごめん我慢できないかも」
「え……?」
そう言って彼は彼女をベッドに押し倒すと、そのまま彼女の唇を貪る。
「レオンハルト、さま……」
「可愛すぎ。コルネリア」
そんな言葉と共に彼の溺愛は続く。
「んっ……」
何度も当てられる唇に思わず吐息が漏れる。
「ん……コルネリア、愛してる」
「私も、大好きです」
再び唇が重なって、甘い甘い時間が始まる──
********************
クリスティーナ&リュディーのおまけの番外編は、
「小説家になろう」にて公開中です!
アルファポリス版は本編を含めて非公開とする可能性がありますため、
継続してお読み直ししたい場合は「小説家になろう」でお願いします!
5
お気に入りに追加
586
あなたにおすすめの小説
【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。
氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。
聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。
でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。
「婚約してほしい」
「いえ、責任を取らせるわけには」
守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。
元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。
小説家になろう様にも、投稿しています。
【完結】フェリシアの誤算
伽羅
恋愛
前世の記憶を持つフェリシアはルームメイトのジェシカと細々と暮らしていた。流行り病でジェシカを亡くしたフェリシアは、彼女を探しに来た人物に彼女と間違えられたのをいい事にジェシカになりすましてついて行くが、なんと彼女は公爵家の孫だった。
正体を明かして迷惑料としてお金をせびろうと考えていたフェリシアだったが、それを言い出す事も出来ないままズルズルと公爵家で暮らしていく事になり…。
大好きな旦那様はどうやら聖女様のことがお好きなようです
古堂すいう
恋愛
祖父から溺愛され我儘に育った公爵令嬢セレーネは、婚約者である皇子から衆目の中、突如婚約破棄を言い渡される。
皇子の横にはセレーネが嫌う男爵令嬢の姿があった。
他人から冷たい視線を浴びたことなどないセレーネに戸惑うばかり、そんな彼女に所有財産没収の命が下されようとしたその時。
救いの手を差し伸べたのは神官長──エルゲンだった。
セレーネは、エルゲンと婚姻を結んだ当初「穏やかで誰にでも微笑むつまらない人」だという印象をもっていたけれど、共に生活する内に徐々に彼の人柄に惹かれていく。
だけれど彼には想い人が出来てしまったようで──…。
「今度はわたくしが恩を返すべきなんですわ!」
今まで自分のことばかりだったセレーネは、初めて人のために何かしたいと思い立ち、大好きな旦那様のために奮闘するのだが──…。
聖女のわたしを隣国に売っておいて、いまさら「母国が滅んでもよいのか」と言われましても。
ふまさ
恋愛
「──わかった、これまでのことは謝罪しよう。とりあえず、国に帰ってきてくれ。次の聖女は急ぎ見つけることを約束する。それまでは我慢してくれないか。でないと国が滅びる。お前もそれは嫌だろ?」
出来るだけ優しく、テンサンド王国の第一王子であるショーンがアーリンに語りかける。ひきつった笑みを浮かべながら。
だがアーリンは考える間もなく、
「──お断りします」
と、きっぱりと告げたのだった。
偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら
影茸
恋愛
公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。
あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。
けれど、断罪したもの達は知らない。
彼女は偽物であれ、無力ではなく。
──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。
(書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です)
(少しだけタイトル変えました)
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
【コミカライズ決定】婚約破棄され辺境伯との婚姻を命じられましたが、私の初恋の人はその義父です
灰銀猫
恋愛
両親と妹にはいない者として扱われながらも、王子の婚約者の肩書のお陰で何とか暮らしていたアレクシア。
顔だけの婚約者を実妹に奪われ、顔も性格も醜いと噂の辺境伯との結婚を命じられる。
辺境に追いやられ、婚約者からは白い結婚を打診されるも、婚約も結婚もこりごりと思っていたアレクシアには好都合で、しかも婚約者の義父は初恋の相手だった。
王都にいた時よりも好待遇で意外にも快適な日々を送る事に…でも、厄介事は向こうからやってきて…
婚約破棄物を書いてみたくなったので、書いてみました。
ありがちな内容ですが、よろしくお願いします。
設定は緩いしご都合主義です。難しく考えずにお読みいただけると嬉しいです。
他サイトでも掲載しています。
コミカライズ決定しました。申し訳ございませんが配信開始後は削除いたします。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる