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女王と海賊
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この話はまだ地球が丸く海を渡ればどんな大陸にも渡れるそんな当たり前のこともしらなかった時代の話。
街は浮足立っていた。なぜなら今日は女王の結婚相手を選別するための儀式が広く執り行われていたからだ。若くて美しい男が何人も集まった。だが女王は歯牙にもかけない。もちろん最低限の礼儀は尽くしたうえでだ.彼女は有能で頭の切れる男を探していた。夫としても最低限自分につくし政治の面でも自分をささえてくれるそんな男を探していた。彼女は従者に言った。「好みの男がいないわ」
「しばしのごしんぼうを。待つこともときには重要です。」
そのとき隙のない男が女王の目の前に立った。その男は女王の手に口づけをし、優雅に一礼をした。
その男は華やかな雰囲気をまとわせていながらもスキがないせいか間が抜けてはいなかった。
「どうかわたくしを選んでいただけますよう。」
それを聞いた瞬間あたりの男はみな鼻白んだ。
「いいわね。あなた。骨がある。ただ夫にはできないわ。臣下としてはそばにおきたいけど」
「あなたのおっしゃるままにいたしましょう」
「よいのですか?陛下。こんなどこの馬の骨ともしれぬ輩を臣下にして」
女王陛下に一番近い側近のウェリントンが訊ねた。
「気に入ったのよ。彼の目が。野心にあふれてる」
「それに多少のリスクをかけるのも好きなのも知っているでしょう?」
ため息をつきながらウェリントンは言った。
「女王陛下の御心のままに」
ウェリントンは考えた。この者はおそらく海賊。ということは海軍との折衝が多くなるだろう。大きな事態にならないといいが。かならずこのような部外者を登用すれば不平不満の声が上がってくる。そうなる前になんとかしなければ。
なんとかなるといいが。
この国は一見平和に見えるように見えて実は海の向こうの南方に敵国をかかえているのである。そしてその敵国の両隣も敵国同然である。今は口約束同然の条約でかりそめの平和を維持しているが。最近スパーニャは東方貿易で富をたくうえ、さらに強国になりつつあるらしい。その上南方の敵国フランはスパーニャと同盟を結び、全盛を誇っている。
つまりこのような時期に執り行うような儀式ではないものをこの国の女王は執り行っているのである。
結婚相手が見つかれば政治に精を出せるという口実つきで。
おそらくあの男、あの海賊を登用した理由は敵国の船を襲わせるためだろう。それもみずからは白をきるつもりで。しかしあの男そうそう簡単に鎖をつけられるような人間にはみえなかった。だからこそあえてあの男を選んだのだろう。ウェリントンは深くため息をついた。これから忙しくなる。彼には確信があった。
こんな時で悪いがあんたらスパーニャの商船だろ?抵抗しても無駄だ。わかったら積荷全部差しだしな。
そう海賊は言って嗤った。
2時間後スパーニャの商船は壊滅的なまでに打撃を受けていた。海戦では顕著な能力を有するこの男は商船をたった2時間で沈めてしまったのだ。装備の質からいえば格上のこの商船をだ。周辺には藻屑となった木片が漂っていた。
「船長どうします?生き残りの生存者たちは?」「金目になりそうな奴だけ引き揚げろ。あとはほっといていい」「そんな・・・俺たちも助けてくれ」「助けてくれよ」「お前ら海賊を慈善団体か何かと勘違いしてるんじゃねえのか。金のねえやつは助けねえよ」部下の一人が言った。
「ならせめてこの子だけでも」母親らしい女性が自分の子供を差し出していった。
「いいだろう。子どもだけはな。ロープをおろせ!」
ひきあげられた子どもは震えていた。それも当然だろう。母親からひきはなされてわけのわからぬ輩にひきわたされたのだから。
「おい、クソガキおれたちが怖いか」少年は反応しない。というよりできないないのだろう。恐怖に体を支配されて。「安心しろ。おれたちはお前を傷つけない。そういって海賊は少年に近づいていき抱きしめた。その瞬間鮮血が舞った。
「生き残りは全員始末しろ。今のやつみたいにな。」
「船長いいんで?」船員が訊ねた。
「問題ない他国の船だとがめられることはないだろう」
「あっても問題ない女王の許可を得てる」
「お前らこんなことをして神の天罰が下るぞ」
「ただではすまんぞ!」助からなかったものたちが声をあげる。
「天罰?今の時代そんなもの信じてるやつがいるとはねえ」
「オレは無神論者だ。この世の中には人間しかいない。神は存在しない。まあそれを決めるのはそれぞれであって決めるのはあんたらでもオレでもねえってわけだ。
できれば自分の価値観を他人に押し付けないでほしいねえ」
船員は全員残酷と恐れられているものたちばかりだった。少々のことでは顔色一つ変えない。そんなところを女王に気に入られたのだろう。
だが女王に与えられた特権
街は浮足立っていた。なぜなら今日は女王の結婚相手を選別するための儀式が広く執り行われていたからだ。若くて美しい男が何人も集まった。だが女王は歯牙にもかけない。もちろん最低限の礼儀は尽くしたうえでだ.彼女は有能で頭の切れる男を探していた。夫としても最低限自分につくし政治の面でも自分をささえてくれるそんな男を探していた。彼女は従者に言った。「好みの男がいないわ」
「しばしのごしんぼうを。待つこともときには重要です。」
そのとき隙のない男が女王の目の前に立った。その男は女王の手に口づけをし、優雅に一礼をした。
その男は華やかな雰囲気をまとわせていながらもスキがないせいか間が抜けてはいなかった。
「どうかわたくしを選んでいただけますよう。」
それを聞いた瞬間あたりの男はみな鼻白んだ。
「いいわね。あなた。骨がある。ただ夫にはできないわ。臣下としてはそばにおきたいけど」
「あなたのおっしゃるままにいたしましょう」
「よいのですか?陛下。こんなどこの馬の骨ともしれぬ輩を臣下にして」
女王陛下に一番近い側近のウェリントンが訊ねた。
「気に入ったのよ。彼の目が。野心にあふれてる」
「それに多少のリスクをかけるのも好きなのも知っているでしょう?」
ため息をつきながらウェリントンは言った。
「女王陛下の御心のままに」
ウェリントンは考えた。この者はおそらく海賊。ということは海軍との折衝が多くなるだろう。大きな事態にならないといいが。かならずこのような部外者を登用すれば不平不満の声が上がってくる。そうなる前になんとかしなければ。
なんとかなるといいが。
この国は一見平和に見えるように見えて実は海の向こうの南方に敵国をかかえているのである。そしてその敵国の両隣も敵国同然である。今は口約束同然の条約でかりそめの平和を維持しているが。最近スパーニャは東方貿易で富をたくうえ、さらに強国になりつつあるらしい。その上南方の敵国フランはスパーニャと同盟を結び、全盛を誇っている。
つまりこのような時期に執り行うような儀式ではないものをこの国の女王は執り行っているのである。
結婚相手が見つかれば政治に精を出せるという口実つきで。
おそらくあの男、あの海賊を登用した理由は敵国の船を襲わせるためだろう。それもみずからは白をきるつもりで。しかしあの男そうそう簡単に鎖をつけられるような人間にはみえなかった。だからこそあえてあの男を選んだのだろう。ウェリントンは深くため息をついた。これから忙しくなる。彼には確信があった。
こんな時で悪いがあんたらスパーニャの商船だろ?抵抗しても無駄だ。わかったら積荷全部差しだしな。
そう海賊は言って嗤った。
2時間後スパーニャの商船は壊滅的なまでに打撃を受けていた。海戦では顕著な能力を有するこの男は商船をたった2時間で沈めてしまったのだ。装備の質からいえば格上のこの商船をだ。周辺には藻屑となった木片が漂っていた。
「船長どうします?生き残りの生存者たちは?」「金目になりそうな奴だけ引き揚げろ。あとはほっといていい」「そんな・・・俺たちも助けてくれ」「助けてくれよ」「お前ら海賊を慈善団体か何かと勘違いしてるんじゃねえのか。金のねえやつは助けねえよ」部下の一人が言った。
「ならせめてこの子だけでも」母親らしい女性が自分の子供を差し出していった。
「いいだろう。子どもだけはな。ロープをおろせ!」
ひきあげられた子どもは震えていた。それも当然だろう。母親からひきはなされてわけのわからぬ輩にひきわたされたのだから。
「おい、クソガキおれたちが怖いか」少年は反応しない。というよりできないないのだろう。恐怖に体を支配されて。「安心しろ。おれたちはお前を傷つけない。そういって海賊は少年に近づいていき抱きしめた。その瞬間鮮血が舞った。
「生き残りは全員始末しろ。今のやつみたいにな。」
「船長いいんで?」船員が訊ねた。
「問題ない他国の船だとがめられることはないだろう」
「あっても問題ない女王の許可を得てる」
「お前らこんなことをして神の天罰が下るぞ」
「ただではすまんぞ!」助からなかったものたちが声をあげる。
「天罰?今の時代そんなもの信じてるやつがいるとはねえ」
「オレは無神論者だ。この世の中には人間しかいない。神は存在しない。まあそれを決めるのはそれぞれであって決めるのはあんたらでもオレでもねえってわけだ。
できれば自分の価値観を他人に押し付けないでほしいねえ」
船員は全員残酷と恐れられているものたちばかりだった。少々のことでは顔色一つ変えない。そんなところを女王に気に入られたのだろう。
だが女王に与えられた特権
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