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第二話
お見合いの条件
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陸哉は、信じられないという思いで目の前の男を見つめた。
「見合い相手?あんたが?」
こんな偶然はあるのだろうか。たまたまバイト先で会った客が、たまたま恋人の見合い相手なんて。ジロジロと見ていれば、隆一がクスッと笑った。
「偶然じゃないよ。調べたんだ」
「調べって・・・」
普通、単なる見合い相手の身辺を調べるような事をするだろうか。そんな心の声が聞こえたのか、隆一が事情を説明した。
「実はね、見合いは今度で6回目なんだ」
「ろ、6回も?」
隆一は壁に背中を預けると、うんざりといった表情をした。
「僕は結婚する気なんてないんだが、周囲の奴らがうるさくてね。ほら、僕と繋がりができれば何かと美味しい思いをするだろ」
「・・・あ」
だから、麻里花の上司はしつこく見合いを勧めてきたのか。陸哉はやっと納得した。
「そもそも僕は結婚する気なんてないんだ。全く。独身だってだけで、煩わしい」
隆一が吐き捨てるように呟く。着ている服は超一流のブランドだし、つけている腕時計は陸哉でも知っている有名なもの。おまけに、顔もスタイルもいい。これで彼女がいないなんて言っても信じないだろう。
「どんな女性が来るのか、事前に知っておく事も必要だ」
「は、はぁ」
「麻里花さんの事を調べていたら、君の名前が出てきたんだ。お付き合いしてるんだよね?」
「は、はい」
「やっぱり」
隆一は親指の爪を噛んだ。
「見合いの話は断るよ」
隆一の言葉に陸哉はハッとした。
「彼氏がいるのに見合いをするなんて、不誠実すぎる」
隆一の言葉は、正論なのだ。だが、見合いを断られたとなっては麻里花の立場はどうなるのだろう。陸哉は、ギュッと拳を握った。
「あの、俺の事は会社には言わないでくれませんか?」
陸哉の言葉に、隆一が驚いたような顔をする。
「君を裏切った彼女を庇うのか?」
「あ、いや。今の会社に勤めるの。あいつの夢だったんです。この事で、もし会社に居づらくなったら・・・」
「へぇ」
隆一はしばらく何かを考え込むと、不意にニッコリ笑って手招きした。
「わかった。見合いはしよう」
「本当ですか?」
「その代わり・・・」
隆一の手がグイッと陸哉を引き寄せる。そして、そのままキスをしてきた。それも、思いっきりディープなやつを。隆一が顔を離しても、陸哉は呆然と立ち尽くしていた。
「僕、バイなんだ。実は、初めて会った時から君の事が気になっててね」
隆一の手が、陸哉の頬をなぞる。その動きは、どこか官能的だった。顎をなぞられ、陸哉がビクッと首を竦める。
「明日。僕とデートしてくれたら、彼女とお見合いするよ」
どうする?と甘く囁かれ、陸哉は軽くパニックになった。つまり、麻里花と見合いをするかどうかは陸哉にかかっているのだ。
「わ、わかりました」
陸哉には、他の答えが浮かばなかった。
「見合い相手?あんたが?」
こんな偶然はあるのだろうか。たまたまバイト先で会った客が、たまたま恋人の見合い相手なんて。ジロジロと見ていれば、隆一がクスッと笑った。
「偶然じゃないよ。調べたんだ」
「調べって・・・」
普通、単なる見合い相手の身辺を調べるような事をするだろうか。そんな心の声が聞こえたのか、隆一が事情を説明した。
「実はね、見合いは今度で6回目なんだ」
「ろ、6回も?」
隆一は壁に背中を預けると、うんざりといった表情をした。
「僕は結婚する気なんてないんだが、周囲の奴らがうるさくてね。ほら、僕と繋がりができれば何かと美味しい思いをするだろ」
「・・・あ」
だから、麻里花の上司はしつこく見合いを勧めてきたのか。陸哉はやっと納得した。
「そもそも僕は結婚する気なんてないんだ。全く。独身だってだけで、煩わしい」
隆一が吐き捨てるように呟く。着ている服は超一流のブランドだし、つけている腕時計は陸哉でも知っている有名なもの。おまけに、顔もスタイルもいい。これで彼女がいないなんて言っても信じないだろう。
「どんな女性が来るのか、事前に知っておく事も必要だ」
「は、はぁ」
「麻里花さんの事を調べていたら、君の名前が出てきたんだ。お付き合いしてるんだよね?」
「は、はい」
「やっぱり」
隆一は親指の爪を噛んだ。
「見合いの話は断るよ」
隆一の言葉に陸哉はハッとした。
「彼氏がいるのに見合いをするなんて、不誠実すぎる」
隆一の言葉は、正論なのだ。だが、見合いを断られたとなっては麻里花の立場はどうなるのだろう。陸哉は、ギュッと拳を握った。
「あの、俺の事は会社には言わないでくれませんか?」
陸哉の言葉に、隆一が驚いたような顔をする。
「君を裏切った彼女を庇うのか?」
「あ、いや。今の会社に勤めるの。あいつの夢だったんです。この事で、もし会社に居づらくなったら・・・」
「へぇ」
隆一はしばらく何かを考え込むと、不意にニッコリ笑って手招きした。
「わかった。見合いはしよう」
「本当ですか?」
「その代わり・・・」
隆一の手がグイッと陸哉を引き寄せる。そして、そのままキスをしてきた。それも、思いっきりディープなやつを。隆一が顔を離しても、陸哉は呆然と立ち尽くしていた。
「僕、バイなんだ。実は、初めて会った時から君の事が気になっててね」
隆一の手が、陸哉の頬をなぞる。その動きは、どこか官能的だった。顎をなぞられ、陸哉がビクッと首を竦める。
「明日。僕とデートしてくれたら、彼女とお見合いするよ」
どうする?と甘く囁かれ、陸哉は軽くパニックになった。つまり、麻里花と見合いをするかどうかは陸哉にかかっているのだ。
「わ、わかりました」
陸哉には、他の答えが浮かばなかった。
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