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第一話
親友はどうやらオレの事が好きらしい
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「ダメだ」
親友の冷たい一言に、中村弘哉は今にも泣きそうな顔をした。大きくて垂れた目が、まるで捨てられた子犬のようだった。だが、そんなかわいい表情をしても沢村義直には一切通じない。弘哉に向かってシッ、シッとしてくる。弘哉は思わずカッとなって、その手を払い除けた。
「オレは犬じゃねぇっ」
「だったらさっさと帰れ」
義直がドアを閉めようとするのを感じとり、慌てて弘哉が足を挟んで阻止した。ここでドアを閉じられたら、弘哉にはもう野宿という選択肢しかないのだ。
「待ってくれ、義直っ。今夜だけでいいんだっ。寝るところもないんだよぉ」
義直のセーターにしがみつけば、パッとその手を振りほどかれる。
「知るか」
「俺達、親友じゃないかっ」
「腐れ縁の間違いだろ」
玄関の前で攻防戦を繰り広げていれば、通りすがりの住人にジロジロと見られてしまった。夜の9時にデカい男が2人で喧々囂々とやっていれば、嫌でも目立つというものだ。折れたのは義直の方だった。
「しょうがないな」
ムスッとした顔で背中を向ける義直に、弘哉の顔がパアッと輝く。
「義直のそういうところ、大好きっ」
ギュッと抱きつけば、すぐに振り払われてしまう。
「暑苦しい」
「なんだよ。冷たいなぁ」
昔から義直はこうだ。ベタベタするのを極端に嫌がるのだ。それがわかっているからこそ、弘哉はわざとベタベタして反応を楽しんでいる。義直はクールだけど、完全に突き放したりはしない。なんだかんだ言って、最後には手を差しのべてくれる。そんなところが弘哉は気に入っていた。
(やっぱ。持つべきものは親友だよなぁ)
弘哉にとって、義直は自慢の親友だ。
2人の出会いは、高校生の時まで遡る。中村と沢村でよく苗字を間違えられたのをきっかけに、なんとなく仲良くなった。そして、その付き合いは2人が大学生になってからも続いている。
「彼女とラブラブに暮らしてるって言ってなかったか?」
ボストンバッグを抱えて項垂れる弘哉に、義直が呆れたように言った。
「・・・暮らしてたよ。2時間前までは」
大学に入ってすぐ、弘哉には彼女ができた。アイドル並に可愛くて、かなりの巨乳。男なら誰だって彼女のスタイルから目が離せないだろう。
「なにがあったんだ?」
「こっちが聞きてーよっ。帰ったら知らねー男とキスしていて、出てけって怒鳴られた」
弘哉は大きなため息を吐いて項垂れた。
「あんな男のどこがいいんだかっ」
チラッと見たその男は、見るからに金持ちそうだった。それに、かなりのイケメンでスタイルもいい。そして、アソコの大きさも。弘哉の言葉に、義直が冷めた視線を寄越す。
「つまり、男としてお前が負けただけだろ」
「言うなっ」
ズズッと鼻をすする弘哉に、義直がティッシュを手渡す。
「気が済むまでいろ」
「・・・ありがとう」
やはり持つべきものは友だと、弘哉は感動の涙を流した。
「その代わり。リビングで寝ろ」
「え~っ」
リビングに折り畳み式のベッドが運ばれ、弘哉の部屋が出来た。
義直との同居は、快適以外のなにものでもなかった。家事は義直が殆どしてくれて、弘哉がするのはせいぜいゴミ捨てぐらいだ。もちろん、弘哉だって手伝おうとする意思はあるのだ。だが、義直にことごとく却下された。
「洗濯ぐらい自分でするよ」
「ついでだから」
「お風呂掃除ならできるって」
「時間がかかる」
こんな感じで、弘哉は大学とコンビニのアルバイトだけしてればよかった。
家庭教師のアルバイトをしている義直とは、帰宅時間がなかなか合わない。弘哉が帰宅した時には、既に義直は寝ているなんてしょっちゅうだった。だが、不思議と居心地が良かった。
義直の気持ちを知るまでは・・・。
この日。大規模なイベントがあり、コンビニにはかなり忙しかった。
「疲れたぁ」
ドサッとベッドに仰向けになった弘哉は、そのまま熟睡してしまったらしい。意識が浮上したのは、玄関でガタガタと音がした時だ。
(義直?珍しい、酔ってんのか)
薄目を開けると、フラフラとキッチンへ行く義直が見えた。水道から直接水を飲んで、何度もため息を吐いている。
(寝たフリ、寝たフリ)
疲れているのに、この上酔っぱらいに絡まれてはたまらない。弘哉は寝たフリをすることに決めた。だが、この日の義直はいつもと違った。なんだか怒っているみたいだ。近づいてくる気配に、弘哉は小言でも言われるのかと身構えた。が、そうではなかった。そっと前髪がかきあげられる。
「なんで、俺のとこに来たんだよ」
呟きは、どこか泣いているようにも聞こえた。
「なんで、期待なんかさせんだよ」
前髪を撫でる指が微かに震えている。
(期待?なんのことだ?)
訳のわからないことを言われて、弘哉は混乱するばかりだった。
「俺の気持ちも知らないで」
絞り出すような囁きと共に、唇に微かになにかが触れた。アルコールの香りが鼻先を掠める。
(キス、されてる?)
触れるか触れないかだったが、あきらかに温もりを感じた。
「好きだ。弘哉」
小さな囁きと共に、もう一度キスされた。今度は、かなりしっかりとしたキス。
「ずっと好きだったのに、彼女なんか作りやがって。忘れようと努力したのに・・・」
義直の手が優しく頬を撫でる。壊れ物を扱うように優しく。弘哉をギュッと強く抱き締めてから、義直は立ち上がった。
義直が立ち去った後、弘哉はやっと冷静に自分の身に起きたことを考えた。
(え~っと、つまり、そういうこと?)
好きだと言われ、キスまでされたのだ。これは、間違いなくそうなのだろう。
(ど、どうしようっ。オレ、どうしたらいいんだろうっ。てか、なんでオレっ?)
弘哉は、ドッドッと高まる鼓動を静めようとしたが無理だった。人形のように整った顔をした義直は、高校ではモテモテだった。女子からのラブレターが毎日のように机から溢れていた。だが、義直は全て断っていた。好きな奴がいるからと。
(って、それが、オレ?)
親友の知られざる本音を聞いてしまい、弘哉は眠れない夜を過ごした。
翌朝。義直といつも通りに朝食を食べる。義直の唇が動く度に、昨夜のキスの記憶が蘇る。
「どうしたんだ?顔が赤いぞ」
「なっ、なんでもないっ」
弘哉は、赤くなる頬を知られたくなくて、ご飯をかっこんだ。
義直が、そんな弘哉をジッと見つめる。
「昨日。起きてたんだろ?」
「なっ、なんのことだよっ」
ムキになって答えて、弘哉はしまったと思った。義直は、特に動揺した様子はなかった。
「俺、お前が好きなんだ」
ブッと弘哉がご飯を吹き出してしまったのは、仕方がない話である。まさか、こんなストレートに告白してくるとは思わなかった。
「ご飯粒を飛ばすな」
義直が、頬についたご飯粒を躊躇いなく口に入れる。なんか、妙に色気を感じさせる仕草だった。
(普通。あれは冗談だったとか、言い訳するだろっ)
義直がそう言ってくれたら、弘樹だって笑ってスルーできたのに。義直は、まるでなにかに吹っ切れたように、あっさりとカミングアウトしてくれた。
「初めて会った時から、お前が好きだったんだ。知られたら嫌われるって思ってた」
義直がまっすぐ弘哉を見つめる。
「お前に彼女ができて、諦めようと思ったんだ。でも、やっぱり我慢できなかった。これからは容赦なく口説くから、覚悟しろよ」
まっすぐに見つめられて、弘哉が焦る。
「待てよっ。オレは・・・」
反論しようとした瞬間。義直によって強引にキスされた。それも、かなりディープなやつだ。
「んっ、んんっ、んっ」
チュポンッという音と共に義直の唇が離れる。
「弘哉だって、俺を嫌いじゃないはずだ」
言われて、弘哉はドキッとした。確かに、だからといって義直を嫌いになったりはしてない。
「そ、それは友達として・・・」
「さ。そろそろ大学に行く時間だな」
「待て、待て、待てっ。なんだその切り返しの早さはっ。こっちの気持ちにもなれっ」
「あ、今日はバイトないよな。だったら、外で食おう」
「義直~っ。お前な・・・」
「焼き肉だぞ」
義直の言葉にピタッと止まる。焼き肉なんて、かなり久しぶりだ。弘哉を懐柔することなど、義直には容易いことなのだ。
「お前の寝顔、かわいいな」
弘哉は、口に入れたご飯粒をもう一度派手にぶちまける事となった。
弘哉が義直から、好きだと告白されてから1週間がたった。弘哉は、戸惑いながらも義直との同居生活を続けている。本当はすぐにでも自分の部屋に戻りたいのだが、元カノがまだ居座っているので、戻るに戻れないのだ。というのは、言い訳である。
(まさか。ダチに告白されるなんて思ってもいなかった)
おまけに、弘哉に告白してからというもの、義直の態度がこれまでとは明らかに変わってきたのだ。
「おはよう。弘哉」
朝は、目覚まし時計ではなく義直に起こされる。優しく揺り起こされ、耳元で甘く囁かれるのだ。まるで、出来立てホヤホヤのカップルのように。
「・・・1人で起きれるんだけど」
とクレームをつけてみるものの、全然取り合ってくれない。
「この間、ニ度寝して講義に遅れたのは誰だ?」
そう言われては、返す言葉もなかった。
「それに、こんな風に弘哉を起こせるのが嬉しいんだ」
満面の笑みを向けられ、弘哉はうっと思わず言葉に詰まってしまった。
(こんの~、キャラまで変えやがって)
これまでの仏頂面が嘘のように、義直はニコニコと笑っている。なんで今まで笑わなかったのかと問えば、『理性が飛ぶから』と言われた。どこかで線を引いておかないと襲いかかってしまいそうだったと笑顔で言われた時には、血の気が引く思いがした。
(今まであんな顔、したことねーじゃん)
反則だと、弘哉は心の中でこっそり呟いた。義直の顔立ちは、どちらかというとかなり美形の部類に入る。不意に微笑んだ顔を向けられると、ドキッとしてしまう。
(しっかりしろっ、オレっ。義直は男だ。オ・ト・コ)
弘哉は何度も何度も自分に言い聞かせながら、パジャマを脱いだ。すると、義直がクルッと背中を向ける。自然すぎるぐらい自然で、余計に不自然に感じてしまう。そういえば、弘哉が風呂に入っている時間は、義直は家にはいない。コンビニに行っていたり、ジョギングをしたりしている。
(もしかして)
弘哉の中で、ムクムクと好奇心が沸いてきた。
「やっぱさ、オレの裸とか見たら興奮すんの?」
弘哉の言葉に、義直の背中がビクッと動く。弘哉はニヤッと笑うと、全裸になり義直の背中に抱きついた。弘哉としては、少し困らせてからかってやろうというぐらいの軽い気持ちだった。だが、次の瞬間。ものすごい勢いで弘哉は義直によってベッドへ押し倒される。驚きに目を見開くと、そこには見たこともないぐらい傷ついた表情をした義直がいた。
「・・・からかうな」
低く、苦しげに囁く声。
「これでも我慢の限界なんだ。今度こんなことしたら、お前が嫌がっても抱くぞ」
脅しのような言葉を吐いて、義直が部屋を出ていく。全裸で寝転んだまま、弘哉は自分がとんでもないことをしてしまったのだと初めて気がついた。
(オレが義直の立場だったら、かなり辛いよな。超タイプの女の子が裸で抱きついてくるってことだよな。でも、ヤレねーんだよなぁ)
自分は、義直に対してとんでもなくひどいことをしたんじゃないだろうか。弘哉は、自分の配慮のなさを自覚し深い自己嫌悪に陥った。
(ごめん。義直)
義直は、弘哉を抱きたいと毎日のように思っているのだ。でも、その気持ちを理性で押さえてくれている。
(これまでも、辛かったよな)
よく、彼女への愚痴やのろけを聞いてもらった。どんな気持ちで聞いてくれていたのだろう。
この日から、何となく義直に合わせる顔がなくて、弘哉はバイトの数を増やした。だが、無理をしたのがいけなかったのか、1週間後。弘哉は風邪で寝込むことになってしまった。
「大丈夫か?弘哉」
心配そうに顔を覗き込んでくる義直に、弘哉は気まずそうに頷いた。ベッドに寝かされ、額には冷却シートが貼られている。弘哉は、自分の世話をかいがいしくしてれる義直を見つめた。
「ごめん。迷惑、かけちゃって」
掠れ声で言えば、義直がフッと苦笑する。弘哉は一瞬ドキッとした。
(な、なんだよ。今のドキッってっ)
弘哉は熱で朦朧とするなか、義直をこれまでとは違う目で見ている自分に気がついた。意識しているのは、もしかして自分かもしれない。そんな気さえしてきた。
(義直のせいだ。オレを、こんなに甘やかすから・・・、だから、変な気持ちになっちまう)
弘哉の熱は夜中になると更に高くなり、義直は徹夜で看病を続けてくれた。何度か目を覚ました弘哉が見たのは、疲れた顔でソファにもたれる義直の姿だった。
これまで、こんな風に優しくされたことがなかった。
弘哉の両親は共働きだったから、体調が優れない時でもつきっきりということはなかったのだ。この間まで同棲していた彼女は、弘哉が風邪を引くと移されたくないからと実家へ帰っていた。こんな風に手厚く看病されたことなんてない。
「リンゴジュース、飲めるか?」
汗をかなりかいて、軽い脱水症状を起こしている弘哉の口元に義直がコップを近づける。飲みたいと思うのに、なかなかうまくいかない。どれだけ飲もうとしても、入っていかないのだ。
「今は、無理だ」
義直はしばらく考えてから、コップの中のジュースを口に含んだ。そして、そのまま弘哉に口移しでリンゴジュースを飲ませてくる。
(うわっ)
ほんのり生暖かいリンゴジュースに、弘哉は目を見張った。これは、人命救助だ。キスじゃないとわかってはいても、口内に触れる義直の舌の感触にゾクゾクと背中が震える。
(なんで気持ち悪いって思わないんだよぉ)
何度も口移しでリンゴジュースを飲まされ、唇が離れた時には「寂しい」なんて思ってしまった。いっそのこと、気持ち悪いと思えればよかった。そうしたら、義直を拒絶できるのに。こんな宙ぶらりんな気持ちを抱えなくてすむのに。
翌日には、大量の汗をかくようになり、義直は治ってきたとホッと安堵の息を吐いた。熱も下がり、かなり弘哉の体調もよくなってきた。
「着替えた方がいいな」
シャツのボタンを外され、咄嗟に弘哉が前を押さえる。義直が苦笑した。
「風邪引いてる奴を襲おうなんて思わないよ」
「ご、ごめん」
弘哉は、自分が過剰に義直を意識していることに気がついた。意識しているのは、これまでとは違う感情があるからだ。
(汗だくの汚い身体見られたくないとか思ってた。乙女か、オレは)
テキパキと着替えを手伝ってくれる義直を、弘哉はチラッと見た。あの唇にキスされたのだと思ったら、カアッと頬が赤くなった。おまけに、下半身まで反応してしまい、弘哉は慌てて義直に背中を向けた。
「弘哉?」
「あ、後は自分でできるから」
弘哉の言葉に、義直は戸惑いながらも離れた。だが、身体の変化は誤魔化せなかったらしい。ゴクッと唾を飲み込む音がする。
「そういうの、誘ってるっていうんだぞ」
義直の手が、強引でない強さで弘哉を仰向けにする。そして、両手で股間を必死に抑える弘哉に目を細めた。それは、紛れもなく欲情している顔だった。
「これは、その、違う・・・」
「何が、違うんた?意識してるんだろ?」
のし掛かってくる義直から、弘哉は慌てて逃げようとした。だが、すぐに捕まりパジャマの中に指を入れられる。そして、躊躇うことなく長い指が絡みついてきた。
「やっ」
「こんな風にしておいて、違うもなにもない」
「あっ、やめろっ。そんなんじゃ・・・っ」
義直の指に先端をコリコリと弄られ、弘哉が艶っぽい声を出す。
「そんな色っぽい顔して、ハァハァしてる姿見せられて、理性なんて保てるわけないだろ?」
額や頬に口づけされ、ゆっくりと唇が重なる。弘哉が困るのは、そこに嫌悪がないことだ。キスは蕩けそうに甘いし、股間をなぶる指はとんでもなく優しい。まるで、全身が溶けてしまいそうだった。
「触るだけ。触るだけだから」
耳元で囁きながら、義直の指が早くなる。チラッと見れば、義直は反対の左手で自身を慰めていた。
(うわぁ。義直がオナってるとこ、初めて見ちゃった)
日頃から性欲を感じさせない義直が、官能に満ちた表情で自身を激しく擦っている姿がたまらなく色気があって、弘哉は追い上げられていく。熱が一気に股間に集中してきた。
「あっ。あ・・・っ、ダメだっ、イッちゃう・・・っ」
「イッていいよ。ほら」
「そんな、義直の手が汚れる・・・、あっ、ひあっ、あっ」
弘哉の声が高まり、義直の指が濡れた。それから、ほどなくして義直も達した。義直は弘哉の身体を綺麗にタオルで拭くと、新しいパジャマを着せてくれた。まるで、何事もなかったように義直が部屋から出ていく。
「ヤバい、よな。これって」
義直が離れたことを寂しく感じる自分がいる。もっと触って欲しいなんて思ってしまった。
この気持ちがなんなのかはわからないが、弘哉は義直に間違いなく欲情したのだ。
(ただの親友、じゃないよなぁ)
普通、親友には欲情したりしない。義直の指に反応したという事は、つまり・・・。
「考えるのは、やめよう」
弘哉は考え事を放棄して眠りについた。
夜中に義直が様子を見に来て、そっと触れるだけのキスをしてきた。そして、弘哉は当たり前のようにその感触を受け入れていた。
義直への気持ちは、親友に対するものとは違っていた。
親友の冷たい一言に、中村弘哉は今にも泣きそうな顔をした。大きくて垂れた目が、まるで捨てられた子犬のようだった。だが、そんなかわいい表情をしても沢村義直には一切通じない。弘哉に向かってシッ、シッとしてくる。弘哉は思わずカッとなって、その手を払い除けた。
「オレは犬じゃねぇっ」
「だったらさっさと帰れ」
義直がドアを閉めようとするのを感じとり、慌てて弘哉が足を挟んで阻止した。ここでドアを閉じられたら、弘哉にはもう野宿という選択肢しかないのだ。
「待ってくれ、義直っ。今夜だけでいいんだっ。寝るところもないんだよぉ」
義直のセーターにしがみつけば、パッとその手を振りほどかれる。
「知るか」
「俺達、親友じゃないかっ」
「腐れ縁の間違いだろ」
玄関の前で攻防戦を繰り広げていれば、通りすがりの住人にジロジロと見られてしまった。夜の9時にデカい男が2人で喧々囂々とやっていれば、嫌でも目立つというものだ。折れたのは義直の方だった。
「しょうがないな」
ムスッとした顔で背中を向ける義直に、弘哉の顔がパアッと輝く。
「義直のそういうところ、大好きっ」
ギュッと抱きつけば、すぐに振り払われてしまう。
「暑苦しい」
「なんだよ。冷たいなぁ」
昔から義直はこうだ。ベタベタするのを極端に嫌がるのだ。それがわかっているからこそ、弘哉はわざとベタベタして反応を楽しんでいる。義直はクールだけど、完全に突き放したりはしない。なんだかんだ言って、最後には手を差しのべてくれる。そんなところが弘哉は気に入っていた。
(やっぱ。持つべきものは親友だよなぁ)
弘哉にとって、義直は自慢の親友だ。
2人の出会いは、高校生の時まで遡る。中村と沢村でよく苗字を間違えられたのをきっかけに、なんとなく仲良くなった。そして、その付き合いは2人が大学生になってからも続いている。
「彼女とラブラブに暮らしてるって言ってなかったか?」
ボストンバッグを抱えて項垂れる弘哉に、義直が呆れたように言った。
「・・・暮らしてたよ。2時間前までは」
大学に入ってすぐ、弘哉には彼女ができた。アイドル並に可愛くて、かなりの巨乳。男なら誰だって彼女のスタイルから目が離せないだろう。
「なにがあったんだ?」
「こっちが聞きてーよっ。帰ったら知らねー男とキスしていて、出てけって怒鳴られた」
弘哉は大きなため息を吐いて項垂れた。
「あんな男のどこがいいんだかっ」
チラッと見たその男は、見るからに金持ちそうだった。それに、かなりのイケメンでスタイルもいい。そして、アソコの大きさも。弘哉の言葉に、義直が冷めた視線を寄越す。
「つまり、男としてお前が負けただけだろ」
「言うなっ」
ズズッと鼻をすする弘哉に、義直がティッシュを手渡す。
「気が済むまでいろ」
「・・・ありがとう」
やはり持つべきものは友だと、弘哉は感動の涙を流した。
「その代わり。リビングで寝ろ」
「え~っ」
リビングに折り畳み式のベッドが運ばれ、弘哉の部屋が出来た。
義直との同居は、快適以外のなにものでもなかった。家事は義直が殆どしてくれて、弘哉がするのはせいぜいゴミ捨てぐらいだ。もちろん、弘哉だって手伝おうとする意思はあるのだ。だが、義直にことごとく却下された。
「洗濯ぐらい自分でするよ」
「ついでだから」
「お風呂掃除ならできるって」
「時間がかかる」
こんな感じで、弘哉は大学とコンビニのアルバイトだけしてればよかった。
家庭教師のアルバイトをしている義直とは、帰宅時間がなかなか合わない。弘哉が帰宅した時には、既に義直は寝ているなんてしょっちゅうだった。だが、不思議と居心地が良かった。
義直の気持ちを知るまでは・・・。
この日。大規模なイベントがあり、コンビニにはかなり忙しかった。
「疲れたぁ」
ドサッとベッドに仰向けになった弘哉は、そのまま熟睡してしまったらしい。意識が浮上したのは、玄関でガタガタと音がした時だ。
(義直?珍しい、酔ってんのか)
薄目を開けると、フラフラとキッチンへ行く義直が見えた。水道から直接水を飲んで、何度もため息を吐いている。
(寝たフリ、寝たフリ)
疲れているのに、この上酔っぱらいに絡まれてはたまらない。弘哉は寝たフリをすることに決めた。だが、この日の義直はいつもと違った。なんだか怒っているみたいだ。近づいてくる気配に、弘哉は小言でも言われるのかと身構えた。が、そうではなかった。そっと前髪がかきあげられる。
「なんで、俺のとこに来たんだよ」
呟きは、どこか泣いているようにも聞こえた。
「なんで、期待なんかさせんだよ」
前髪を撫でる指が微かに震えている。
(期待?なんのことだ?)
訳のわからないことを言われて、弘哉は混乱するばかりだった。
「俺の気持ちも知らないで」
絞り出すような囁きと共に、唇に微かになにかが触れた。アルコールの香りが鼻先を掠める。
(キス、されてる?)
触れるか触れないかだったが、あきらかに温もりを感じた。
「好きだ。弘哉」
小さな囁きと共に、もう一度キスされた。今度は、かなりしっかりとしたキス。
「ずっと好きだったのに、彼女なんか作りやがって。忘れようと努力したのに・・・」
義直の手が優しく頬を撫でる。壊れ物を扱うように優しく。弘哉をギュッと強く抱き締めてから、義直は立ち上がった。
義直が立ち去った後、弘哉はやっと冷静に自分の身に起きたことを考えた。
(え~っと、つまり、そういうこと?)
好きだと言われ、キスまでされたのだ。これは、間違いなくそうなのだろう。
(ど、どうしようっ。オレ、どうしたらいいんだろうっ。てか、なんでオレっ?)
弘哉は、ドッドッと高まる鼓動を静めようとしたが無理だった。人形のように整った顔をした義直は、高校ではモテモテだった。女子からのラブレターが毎日のように机から溢れていた。だが、義直は全て断っていた。好きな奴がいるからと。
(って、それが、オレ?)
親友の知られざる本音を聞いてしまい、弘哉は眠れない夜を過ごした。
翌朝。義直といつも通りに朝食を食べる。義直の唇が動く度に、昨夜のキスの記憶が蘇る。
「どうしたんだ?顔が赤いぞ」
「なっ、なんでもないっ」
弘哉は、赤くなる頬を知られたくなくて、ご飯をかっこんだ。
義直が、そんな弘哉をジッと見つめる。
「昨日。起きてたんだろ?」
「なっ、なんのことだよっ」
ムキになって答えて、弘哉はしまったと思った。義直は、特に動揺した様子はなかった。
「俺、お前が好きなんだ」
ブッと弘哉がご飯を吹き出してしまったのは、仕方がない話である。まさか、こんなストレートに告白してくるとは思わなかった。
「ご飯粒を飛ばすな」
義直が、頬についたご飯粒を躊躇いなく口に入れる。なんか、妙に色気を感じさせる仕草だった。
(普通。あれは冗談だったとか、言い訳するだろっ)
義直がそう言ってくれたら、弘樹だって笑ってスルーできたのに。義直は、まるでなにかに吹っ切れたように、あっさりとカミングアウトしてくれた。
「初めて会った時から、お前が好きだったんだ。知られたら嫌われるって思ってた」
義直がまっすぐ弘哉を見つめる。
「お前に彼女ができて、諦めようと思ったんだ。でも、やっぱり我慢できなかった。これからは容赦なく口説くから、覚悟しろよ」
まっすぐに見つめられて、弘哉が焦る。
「待てよっ。オレは・・・」
反論しようとした瞬間。義直によって強引にキスされた。それも、かなりディープなやつだ。
「んっ、んんっ、んっ」
チュポンッという音と共に義直の唇が離れる。
「弘哉だって、俺を嫌いじゃないはずだ」
言われて、弘哉はドキッとした。確かに、だからといって義直を嫌いになったりはしてない。
「そ、それは友達として・・・」
「さ。そろそろ大学に行く時間だな」
「待て、待て、待てっ。なんだその切り返しの早さはっ。こっちの気持ちにもなれっ」
「あ、今日はバイトないよな。だったら、外で食おう」
「義直~っ。お前な・・・」
「焼き肉だぞ」
義直の言葉にピタッと止まる。焼き肉なんて、かなり久しぶりだ。弘哉を懐柔することなど、義直には容易いことなのだ。
「お前の寝顔、かわいいな」
弘哉は、口に入れたご飯粒をもう一度派手にぶちまける事となった。
弘哉が義直から、好きだと告白されてから1週間がたった。弘哉は、戸惑いながらも義直との同居生活を続けている。本当はすぐにでも自分の部屋に戻りたいのだが、元カノがまだ居座っているので、戻るに戻れないのだ。というのは、言い訳である。
(まさか。ダチに告白されるなんて思ってもいなかった)
おまけに、弘哉に告白してからというもの、義直の態度がこれまでとは明らかに変わってきたのだ。
「おはよう。弘哉」
朝は、目覚まし時計ではなく義直に起こされる。優しく揺り起こされ、耳元で甘く囁かれるのだ。まるで、出来立てホヤホヤのカップルのように。
「・・・1人で起きれるんだけど」
とクレームをつけてみるものの、全然取り合ってくれない。
「この間、ニ度寝して講義に遅れたのは誰だ?」
そう言われては、返す言葉もなかった。
「それに、こんな風に弘哉を起こせるのが嬉しいんだ」
満面の笑みを向けられ、弘哉はうっと思わず言葉に詰まってしまった。
(こんの~、キャラまで変えやがって)
これまでの仏頂面が嘘のように、義直はニコニコと笑っている。なんで今まで笑わなかったのかと問えば、『理性が飛ぶから』と言われた。どこかで線を引いておかないと襲いかかってしまいそうだったと笑顔で言われた時には、血の気が引く思いがした。
(今まであんな顔、したことねーじゃん)
反則だと、弘哉は心の中でこっそり呟いた。義直の顔立ちは、どちらかというとかなり美形の部類に入る。不意に微笑んだ顔を向けられると、ドキッとしてしまう。
(しっかりしろっ、オレっ。義直は男だ。オ・ト・コ)
弘哉は何度も何度も自分に言い聞かせながら、パジャマを脱いだ。すると、義直がクルッと背中を向ける。自然すぎるぐらい自然で、余計に不自然に感じてしまう。そういえば、弘哉が風呂に入っている時間は、義直は家にはいない。コンビニに行っていたり、ジョギングをしたりしている。
(もしかして)
弘哉の中で、ムクムクと好奇心が沸いてきた。
「やっぱさ、オレの裸とか見たら興奮すんの?」
弘哉の言葉に、義直の背中がビクッと動く。弘哉はニヤッと笑うと、全裸になり義直の背中に抱きついた。弘哉としては、少し困らせてからかってやろうというぐらいの軽い気持ちだった。だが、次の瞬間。ものすごい勢いで弘哉は義直によってベッドへ押し倒される。驚きに目を見開くと、そこには見たこともないぐらい傷ついた表情をした義直がいた。
「・・・からかうな」
低く、苦しげに囁く声。
「これでも我慢の限界なんだ。今度こんなことしたら、お前が嫌がっても抱くぞ」
脅しのような言葉を吐いて、義直が部屋を出ていく。全裸で寝転んだまま、弘哉は自分がとんでもないことをしてしまったのだと初めて気がついた。
(オレが義直の立場だったら、かなり辛いよな。超タイプの女の子が裸で抱きついてくるってことだよな。でも、ヤレねーんだよなぁ)
自分は、義直に対してとんでもなくひどいことをしたんじゃないだろうか。弘哉は、自分の配慮のなさを自覚し深い自己嫌悪に陥った。
(ごめん。義直)
義直は、弘哉を抱きたいと毎日のように思っているのだ。でも、その気持ちを理性で押さえてくれている。
(これまでも、辛かったよな)
よく、彼女への愚痴やのろけを聞いてもらった。どんな気持ちで聞いてくれていたのだろう。
この日から、何となく義直に合わせる顔がなくて、弘哉はバイトの数を増やした。だが、無理をしたのがいけなかったのか、1週間後。弘哉は風邪で寝込むことになってしまった。
「大丈夫か?弘哉」
心配そうに顔を覗き込んでくる義直に、弘哉は気まずそうに頷いた。ベッドに寝かされ、額には冷却シートが貼られている。弘哉は、自分の世話をかいがいしくしてれる義直を見つめた。
「ごめん。迷惑、かけちゃって」
掠れ声で言えば、義直がフッと苦笑する。弘哉は一瞬ドキッとした。
(な、なんだよ。今のドキッってっ)
弘哉は熱で朦朧とするなか、義直をこれまでとは違う目で見ている自分に気がついた。意識しているのは、もしかして自分かもしれない。そんな気さえしてきた。
(義直のせいだ。オレを、こんなに甘やかすから・・・、だから、変な気持ちになっちまう)
弘哉の熱は夜中になると更に高くなり、義直は徹夜で看病を続けてくれた。何度か目を覚ました弘哉が見たのは、疲れた顔でソファにもたれる義直の姿だった。
これまで、こんな風に優しくされたことがなかった。
弘哉の両親は共働きだったから、体調が優れない時でもつきっきりということはなかったのだ。この間まで同棲していた彼女は、弘哉が風邪を引くと移されたくないからと実家へ帰っていた。こんな風に手厚く看病されたことなんてない。
「リンゴジュース、飲めるか?」
汗をかなりかいて、軽い脱水症状を起こしている弘哉の口元に義直がコップを近づける。飲みたいと思うのに、なかなかうまくいかない。どれだけ飲もうとしても、入っていかないのだ。
「今は、無理だ」
義直はしばらく考えてから、コップの中のジュースを口に含んだ。そして、そのまま弘哉に口移しでリンゴジュースを飲ませてくる。
(うわっ)
ほんのり生暖かいリンゴジュースに、弘哉は目を見張った。これは、人命救助だ。キスじゃないとわかってはいても、口内に触れる義直の舌の感触にゾクゾクと背中が震える。
(なんで気持ち悪いって思わないんだよぉ)
何度も口移しでリンゴジュースを飲まされ、唇が離れた時には「寂しい」なんて思ってしまった。いっそのこと、気持ち悪いと思えればよかった。そうしたら、義直を拒絶できるのに。こんな宙ぶらりんな気持ちを抱えなくてすむのに。
翌日には、大量の汗をかくようになり、義直は治ってきたとホッと安堵の息を吐いた。熱も下がり、かなり弘哉の体調もよくなってきた。
「着替えた方がいいな」
シャツのボタンを外され、咄嗟に弘哉が前を押さえる。義直が苦笑した。
「風邪引いてる奴を襲おうなんて思わないよ」
「ご、ごめん」
弘哉は、自分が過剰に義直を意識していることに気がついた。意識しているのは、これまでとは違う感情があるからだ。
(汗だくの汚い身体見られたくないとか思ってた。乙女か、オレは)
テキパキと着替えを手伝ってくれる義直を、弘哉はチラッと見た。あの唇にキスされたのだと思ったら、カアッと頬が赤くなった。おまけに、下半身まで反応してしまい、弘哉は慌てて義直に背中を向けた。
「弘哉?」
「あ、後は自分でできるから」
弘哉の言葉に、義直は戸惑いながらも離れた。だが、身体の変化は誤魔化せなかったらしい。ゴクッと唾を飲み込む音がする。
「そういうの、誘ってるっていうんだぞ」
義直の手が、強引でない強さで弘哉を仰向けにする。そして、両手で股間を必死に抑える弘哉に目を細めた。それは、紛れもなく欲情している顔だった。
「これは、その、違う・・・」
「何が、違うんた?意識してるんだろ?」
のし掛かってくる義直から、弘哉は慌てて逃げようとした。だが、すぐに捕まりパジャマの中に指を入れられる。そして、躊躇うことなく長い指が絡みついてきた。
「やっ」
「こんな風にしておいて、違うもなにもない」
「あっ、やめろっ。そんなんじゃ・・・っ」
義直の指に先端をコリコリと弄られ、弘哉が艶っぽい声を出す。
「そんな色っぽい顔して、ハァハァしてる姿見せられて、理性なんて保てるわけないだろ?」
額や頬に口づけされ、ゆっくりと唇が重なる。弘哉が困るのは、そこに嫌悪がないことだ。キスは蕩けそうに甘いし、股間をなぶる指はとんでもなく優しい。まるで、全身が溶けてしまいそうだった。
「触るだけ。触るだけだから」
耳元で囁きながら、義直の指が早くなる。チラッと見れば、義直は反対の左手で自身を慰めていた。
(うわぁ。義直がオナってるとこ、初めて見ちゃった)
日頃から性欲を感じさせない義直が、官能に満ちた表情で自身を激しく擦っている姿がたまらなく色気があって、弘哉は追い上げられていく。熱が一気に股間に集中してきた。
「あっ。あ・・・っ、ダメだっ、イッちゃう・・・っ」
「イッていいよ。ほら」
「そんな、義直の手が汚れる・・・、あっ、ひあっ、あっ」
弘哉の声が高まり、義直の指が濡れた。それから、ほどなくして義直も達した。義直は弘哉の身体を綺麗にタオルで拭くと、新しいパジャマを着せてくれた。まるで、何事もなかったように義直が部屋から出ていく。
「ヤバい、よな。これって」
義直が離れたことを寂しく感じる自分がいる。もっと触って欲しいなんて思ってしまった。
この気持ちがなんなのかはわからないが、弘哉は義直に間違いなく欲情したのだ。
(ただの親友、じゃないよなぁ)
普通、親友には欲情したりしない。義直の指に反応したという事は、つまり・・・。
「考えるのは、やめよう」
弘哉は考え事を放棄して眠りについた。
夜中に義直が様子を見に来て、そっと触れるだけのキスをしてきた。そして、弘哉は当たり前のようにその感触を受け入れていた。
義直への気持ちは、親友に対するものとは違っていた。
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