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第二話
花嫁となった少年は、冷淡な初恋の旦那様から溺愛される
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その日は、大粒の雪が降っていた。『堤屋』で下働きをしていた智葵は、度重なる失敗のため、屋敷から追い出されようとしていた。
「全く。大金をはたいて買ったというのに、この有様はなんだい」
冷たく見下され、智葵は心底震え上がった。8歳の子供にだって、屋敷から追い出される事がどれだけ大変なのかがわかる。
裸足のまま雪の中に立たされた智葵は、冷たさで足が真っ赤になった事さえどうでも良かった。その時、冷静な声が辺りに響いた。
『堤家が、年端もいかない丁稚を追い出したなどと吹聴されては世間体が悪い』
顔を上げれば、まるで彫刻のような美しい少年が立っていた。まだあどけなさが残る顔立ちなれど、その眼差しには大人達を黙らせるだけの迫力があった。堤家の長男・洸太郎である。智葵は、自分を助けてくれた洸太郎に瞳を大きく見開いた。洸太郎の言葉で、智葵は取り敢えず辞めなくても良くなった。
ホッとしたら、急に寒さを思い出し智葵は自分で自分の身体を抱き締めた。と、足元に暖かそうなコートと手袋、靴が転がってきた。
『どうせ捨てる物だ。気にするな』
それだけ言って去って行った洸太郎。智葵は、その後ろ姿をいつまでも見つめていた。誰かに心を奪われたのは、初めての事だった。洸太朗はきっと覚えていないだろうが、その時の光景を智葵はずっと覚えていた。ドキドキと高鳴る鼓動の音と共に…。
「お帰りなさいませ、洸太郎様」
玄関で出迎えると、洸太郎は片方の眉だけをクイッと上げて見せた。
「あ、えっと。旦那様」
真っ赤になって言い直せば、洸太郎の目元がほんの少しだけ和らぐ。
洸太朗の妻として、智葵は日々忙しかった。特に食事には気を使う。洸太朗は好き嫌いが激しいため、食材にはかなり拘った。
(お口に合うと良いのだけれど…)
堤家で長年料理を作っている吉乃に習って、なんとか料理はできるようにしておいた。洸太郎の好みもリサーチ済で、味付けも合わせてある。智葵は、ちゃぶ台に座り黙々と自分が作った料理を食べている洸太郎を見つめた。
スッと通った鼻筋に、キリッとした目元。黙っているだけで絵になった。
(まだ、信じられない…)
洸太朗の嫁になれと言われた時には、何かの冗談だと思った。だが、こうして洸太朗と暮らして愛されている。智葵は、何度も自分の頬をつねった。一時でも目を離したくなかった。不意に洸太朗の視線が向く。
「そんなに見つめられると、食べづらい」
洸太朗の言葉に、智葵は慌てて視線を逸らした。
「も、申し訳ありませんっ」
「怒ってるんじゃない。ただ、恥ずかしいだけだ」
洸太郎が珍しく頬を染める。どうやら照れているらしい。
「おいで」
洸太郎に言われ、智葵は真っ赤になりながらもその膝の中に座った。頬に手を添えられたのを合図に目を閉じれば、すぐに優しく唇が塞がれる。
「ん…っ」
唇をおずおずと開けば、洸太朗の舌が入ってくる。智葵の舌を絡めとり、時には強く吸ってくる。
「あっ」
帯が解かれ、智葵は白い裸体を洸太朗の前に晒した。
「綺麗だな。お前の肌は」
素肌の上を、洸太朗の大きな掌が這い回る。そして、智葵が反応した場所は丁寧に愛撫してきた。明るい電灯の下で、自分だけ裸にされているという状況は智葵には耐え難かった。もう何度も洸太朗に抱かれているというのに、まだ慣れないのだ。玄関や台所、浴室と、家のあちこちで身体を繋いだ。恥ずかしがる智葵を、その度に洸太朗は初々しいと言ってくれる。
「あ、あの。片付けがまだ…」
ちゃぶ台の上には、まだ食器が並んでいる。智葵が逃げようとすれば、洸太郎に強く抱き締めてその動きを封じた。
「後ですれば良い」
「ん…っ、あっ、あっ」
後ろから抱き抱えられ、洸太朗の指が智葵の乳首を摘まむ。
「あっ。そこは、ダメ、ですっ」
「本当にお前はココが弱いんだね」
クスクス笑いながら、洸太朗の指が小さな乳首をこねくり回す。ふっくらとした先端は、まるで甘い果実のようだと洸太朗が囁く。そして、智葵の腰を抱き抱えるようにして乳首を口に含んだ。
「想像以上の甘さだな。おそらく、このサクランボより…」
ガラスの器に入れたサクランボを口に含んだ洸太朗は、そのまま智葵に口移しで食べさせた。互いの口の中をサクランボが行ったり来たりする。
「あ…っ、あぁっ、あっ」
洸太朗の唇に乳首を、指に性器を愛され、智葵はすぐに達した。ぼんやりした目で洸太朗の方を見れば、彼が前を寛げているのが見える。智葵はギュッと目を閉じた。やがて、太くて熱い男根が容赦なく細い裸体に挿入された。
「あぁっ、あっ、旦那様…、あっ」
ずっと想いを寄せていた人に、丁寧に愛される。身体の奥深くで洸太朗を受け入れた瞬間。智葵は、幸福を抱き締めていた。
「まだ、狭いな」
秘部に自身を挿入したまま、智葵が小声で呟く。智葵のそこは、かなり小さくて狭い。洸太郎は智葵の負担にならないようにと、殆ど動く事はない。だが、不意に洸太朗の腰が揺れた瞬間。あるポイントに智葵が反応した。
「あっ、あぁっ、あっ」
「やっと、見つけた」
やけに嬉しそうな声で、洸太朗が囁く。智葵には何がなんだかわからなかったが、いつも以上に気持ちよくてたまらなかった。腰が勝手に揺れて、触れられてもいないのに射精した。初めての快楽に、智葵は声を上げ続けた。
今月も、この日が来た。
智葵は、月に1度は堤家を訪れている。呼び出しているのは、洸太朗の妹である菜衣子だ。
「お兄様に近づく女はいないのね?」
聞かれ、智葵は素直に頷いた。高校には男性教師が殆どだったし、女性教師は既婚者ばかりだ。酒を飲む席に呼ばれる事はあるものの、洸太郎はすぐに帰ってくる。
「では、私はこれで…」
智葵が帰ろうとすると、菜衣子が呼び止めた。振り向くと、パシッという乾いた音がした。
「な、菜衣子様?」
「お兄様に、抱かれたわね」
菜衣子は抵抗する智葵を捕まえ、着物を左右に広げた。そこには、昨夜の名残が多数残っている。
「お前ごときが、お兄様のお相手を?」
菜衣子は、側に控えていたメイド達に指示を出した。
「智葵を裸にしなさい。早くっ」
「お、おやめくださいっ。あっ、離して…っ」
メイド達に押さえつけられ、智葵の着物がどんどん脱がされていく。菜衣子は、上から智葵を見下ろし目付きを険しくした。美しい造形をしていたが、『綺麗』という表現は菜衣子には当てはまらなかった。菜衣子は、まるで能面のように無表情で智葵を見つめる。氷のように冷たく、智葵は逃げ出したいという本能に駆られた。
「あなたに頼みたい事があるの」
そう言いながらも、菜衣子の態度は決して頼み事をするかのようには見えなかった。菜衣子が1枚の小切手を出す。
「お兄様の側から離れて」
それは、予想していた言葉だった。菜衣子は、昔からとにかく洸太郎が好きだった。それは、堤家の誰もが知っている事だ。その執着ぶりは凄まじく、洸太郎が家を出てからまずまずひどくなった。そんな菜衣子からすれば、いきなり洸太郎の花嫁に選ばれた智葵は嫉妬の対象でしかなかったのだ。
「望むだけのお金をあげる。だから、さっさと消えて」
智葵は、震える足を叱咤し菜衣子に向き合った。目的はなんであれ、洸太郎の花嫁となり愛される日々を送っている。その幸福は、金で買えるものではない。
「私は、洸太郎さんの花嫁です。洸太郎さんを側でお支えします」
そうキッパリ言い切った智葵は、これまでとは明らかに変わった。だが、そんな凛とした態度は菜衣子の怒りを更に煽った。
「だったら、その身体を抱かせなさい」
「え?」
予想外の言葉に智葵が固まる。メイド達が智葵の身体を床に押さえつけた。
「な、何するんですっ。やめ…っ」
菜衣子は、智葵の足の間へと視線を移した。
「中にお兄様の放ったものが残っているはず。その蜜を、私にも味あわせなさい」
「やぁ…っ、止めてくださいっ」
メイド達が一斉に目を逸らす。菜衣子が大きく口を開けて顔を伏せた瞬間。
「私の花嫁になんの真似だっ」
洸太郎の怒りに満ちた声が響いた。振り向けば、洸太郎が仁王立ちしている。
「お、お兄様。これは…」
菜衣子とメイド達が智葵から離れる。洸太朗は、身体を丸めて泣きじゃくる智葵の裸体を抱き上げた。
「お兄様、本気なんですかっ。智葵は男なのよっ。本来なら、嫁になんかなれない者よっ」
喚く菜衣子を無視して、洸太郎は智葵に優しく囁いた。
「帰るぞ」
戸惑う智葵を促し洸太郎が歩き出せば、その背中に菜衣子がしがみつく。
「行かないで、お兄様っ。私の気持ちを知っているでしょう?私なら、お兄様を肉体的にもっと満足させられますっ」
露骨な表現に、智葵がビクリと反応する。だが、洸太郎はしがみつく菜衣子を乱暴に払い除けた。
「私の花嫁は智葵だけだ。お前など誰が抱くか」
洸太郎は、それだけ言うと智葵を連れて自宅へと帰った。後ろで菜衣子が何か喚いていたが、洸太郎も智葵も振り向く事はなかった。
「んっ、あっ、やめないで・・・っ、ください・・・っ」
帰宅後。智葵後ろ向きの体位で洸太朗に貫かれた。洸太郎の腰が激しく上下に揺れる。かつて、こんなに激しく交わった事はない。
「智葵…っ、そんなに力を入れるな…っ」
智葵の蕾はまだ狭く、洸太朗は全てをおさめる事が出来ない。
「も、申し訳ありません。でも…、あっ…」
軽く窘めながらも、洸太郎は少しでも智葵の苦痛を和らげようと空いた手で乳首や前を弄ってくれる。広げられた細い足はブルブル震え、智葵は苦痛と快楽の間を行ったり来たりした。
「ゆっくり息を吐け」
洸太朗の言葉に智葵がゆっくり息を吐く。瞬間。洸太朗の性器が根本まで押し込まれた。
「あぁっ」
「わかるか?」
洸太郎は、細くしなやかや智葵の指をその場所へ導いた。繋がった部分から、ドキンッ、ドキンッと音がする。
「これで、完全に1つに?」
「ああ。1つになった」
洸太郎の声に、智葵が安堵したように溜息をつく。そして、互いに本能のままに求め合い長い夜を終えた。
「なぜ、言わなかったんだ?菜衣子に嫌がらせをされていると…」
「それは…」
「お前は私の花嫁なのだから、我慢する事はない」
行為の後、洸太郎の指に優しく髪を撫でられながら智葵は目を閉じた。
「とても、幸せです」
遠くから見つめているだけで満足だったのに、花嫁として洸太郎に抱かれている。洸太郎に愛され、大切にされている。菜衣子の嫌がらせなど、なんでもなかった。
「私は、お前が側にいてくれればそれで良い」
洸太郎の言葉に、智葵が恐る恐る手を伸ばす。頬に触れれば、その指を口に含まれた。
「冷淡で感情などないと言われた私を、お前が人間らしくしてくれた」
洸太郎は、自分でもこんなに喜怒哀楽があったのかと驚くぐらいの変化を遂げていた。その感情をもたらしてくれたのは、間違いなく智葵なのだ。
「安心しなさい。お前を放したりしないから」
洸太郎の長い腕が、智葵のしなやかな裸体に絡みつく。まるで、二度と離れないかのように。
「愛しているよ」
洸太朗の言葉に智葵は涙を溢した。
初恋の人に愛される喜びに包まれながら、智葵は目を閉じた。
「全く。大金をはたいて買ったというのに、この有様はなんだい」
冷たく見下され、智葵は心底震え上がった。8歳の子供にだって、屋敷から追い出される事がどれだけ大変なのかがわかる。
裸足のまま雪の中に立たされた智葵は、冷たさで足が真っ赤になった事さえどうでも良かった。その時、冷静な声が辺りに響いた。
『堤家が、年端もいかない丁稚を追い出したなどと吹聴されては世間体が悪い』
顔を上げれば、まるで彫刻のような美しい少年が立っていた。まだあどけなさが残る顔立ちなれど、その眼差しには大人達を黙らせるだけの迫力があった。堤家の長男・洸太郎である。智葵は、自分を助けてくれた洸太郎に瞳を大きく見開いた。洸太郎の言葉で、智葵は取り敢えず辞めなくても良くなった。
ホッとしたら、急に寒さを思い出し智葵は自分で自分の身体を抱き締めた。と、足元に暖かそうなコートと手袋、靴が転がってきた。
『どうせ捨てる物だ。気にするな』
それだけ言って去って行った洸太郎。智葵は、その後ろ姿をいつまでも見つめていた。誰かに心を奪われたのは、初めての事だった。洸太朗はきっと覚えていないだろうが、その時の光景を智葵はずっと覚えていた。ドキドキと高鳴る鼓動の音と共に…。
「お帰りなさいませ、洸太郎様」
玄関で出迎えると、洸太郎は片方の眉だけをクイッと上げて見せた。
「あ、えっと。旦那様」
真っ赤になって言い直せば、洸太郎の目元がほんの少しだけ和らぐ。
洸太朗の妻として、智葵は日々忙しかった。特に食事には気を使う。洸太朗は好き嫌いが激しいため、食材にはかなり拘った。
(お口に合うと良いのだけれど…)
堤家で長年料理を作っている吉乃に習って、なんとか料理はできるようにしておいた。洸太郎の好みもリサーチ済で、味付けも合わせてある。智葵は、ちゃぶ台に座り黙々と自分が作った料理を食べている洸太郎を見つめた。
スッと通った鼻筋に、キリッとした目元。黙っているだけで絵になった。
(まだ、信じられない…)
洸太朗の嫁になれと言われた時には、何かの冗談だと思った。だが、こうして洸太朗と暮らして愛されている。智葵は、何度も自分の頬をつねった。一時でも目を離したくなかった。不意に洸太朗の視線が向く。
「そんなに見つめられると、食べづらい」
洸太朗の言葉に、智葵は慌てて視線を逸らした。
「も、申し訳ありませんっ」
「怒ってるんじゃない。ただ、恥ずかしいだけだ」
洸太郎が珍しく頬を染める。どうやら照れているらしい。
「おいで」
洸太郎に言われ、智葵は真っ赤になりながらもその膝の中に座った。頬に手を添えられたのを合図に目を閉じれば、すぐに優しく唇が塞がれる。
「ん…っ」
唇をおずおずと開けば、洸太朗の舌が入ってくる。智葵の舌を絡めとり、時には強く吸ってくる。
「あっ」
帯が解かれ、智葵は白い裸体を洸太朗の前に晒した。
「綺麗だな。お前の肌は」
素肌の上を、洸太朗の大きな掌が這い回る。そして、智葵が反応した場所は丁寧に愛撫してきた。明るい電灯の下で、自分だけ裸にされているという状況は智葵には耐え難かった。もう何度も洸太朗に抱かれているというのに、まだ慣れないのだ。玄関や台所、浴室と、家のあちこちで身体を繋いだ。恥ずかしがる智葵を、その度に洸太朗は初々しいと言ってくれる。
「あ、あの。片付けがまだ…」
ちゃぶ台の上には、まだ食器が並んでいる。智葵が逃げようとすれば、洸太郎に強く抱き締めてその動きを封じた。
「後ですれば良い」
「ん…っ、あっ、あっ」
後ろから抱き抱えられ、洸太朗の指が智葵の乳首を摘まむ。
「あっ。そこは、ダメ、ですっ」
「本当にお前はココが弱いんだね」
クスクス笑いながら、洸太朗の指が小さな乳首をこねくり回す。ふっくらとした先端は、まるで甘い果実のようだと洸太朗が囁く。そして、智葵の腰を抱き抱えるようにして乳首を口に含んだ。
「想像以上の甘さだな。おそらく、このサクランボより…」
ガラスの器に入れたサクランボを口に含んだ洸太朗は、そのまま智葵に口移しで食べさせた。互いの口の中をサクランボが行ったり来たりする。
「あ…っ、あぁっ、あっ」
洸太朗の唇に乳首を、指に性器を愛され、智葵はすぐに達した。ぼんやりした目で洸太朗の方を見れば、彼が前を寛げているのが見える。智葵はギュッと目を閉じた。やがて、太くて熱い男根が容赦なく細い裸体に挿入された。
「あぁっ、あっ、旦那様…、あっ」
ずっと想いを寄せていた人に、丁寧に愛される。身体の奥深くで洸太朗を受け入れた瞬間。智葵は、幸福を抱き締めていた。
「まだ、狭いな」
秘部に自身を挿入したまま、智葵が小声で呟く。智葵のそこは、かなり小さくて狭い。洸太郎は智葵の負担にならないようにと、殆ど動く事はない。だが、不意に洸太朗の腰が揺れた瞬間。あるポイントに智葵が反応した。
「あっ、あぁっ、あっ」
「やっと、見つけた」
やけに嬉しそうな声で、洸太朗が囁く。智葵には何がなんだかわからなかったが、いつも以上に気持ちよくてたまらなかった。腰が勝手に揺れて、触れられてもいないのに射精した。初めての快楽に、智葵は声を上げ続けた。
今月も、この日が来た。
智葵は、月に1度は堤家を訪れている。呼び出しているのは、洸太朗の妹である菜衣子だ。
「お兄様に近づく女はいないのね?」
聞かれ、智葵は素直に頷いた。高校には男性教師が殆どだったし、女性教師は既婚者ばかりだ。酒を飲む席に呼ばれる事はあるものの、洸太郎はすぐに帰ってくる。
「では、私はこれで…」
智葵が帰ろうとすると、菜衣子が呼び止めた。振り向くと、パシッという乾いた音がした。
「な、菜衣子様?」
「お兄様に、抱かれたわね」
菜衣子は抵抗する智葵を捕まえ、着物を左右に広げた。そこには、昨夜の名残が多数残っている。
「お前ごときが、お兄様のお相手を?」
菜衣子は、側に控えていたメイド達に指示を出した。
「智葵を裸にしなさい。早くっ」
「お、おやめくださいっ。あっ、離して…っ」
メイド達に押さえつけられ、智葵の着物がどんどん脱がされていく。菜衣子は、上から智葵を見下ろし目付きを険しくした。美しい造形をしていたが、『綺麗』という表現は菜衣子には当てはまらなかった。菜衣子は、まるで能面のように無表情で智葵を見つめる。氷のように冷たく、智葵は逃げ出したいという本能に駆られた。
「あなたに頼みたい事があるの」
そう言いながらも、菜衣子の態度は決して頼み事をするかのようには見えなかった。菜衣子が1枚の小切手を出す。
「お兄様の側から離れて」
それは、予想していた言葉だった。菜衣子は、昔からとにかく洸太郎が好きだった。それは、堤家の誰もが知っている事だ。その執着ぶりは凄まじく、洸太郎が家を出てからまずまずひどくなった。そんな菜衣子からすれば、いきなり洸太郎の花嫁に選ばれた智葵は嫉妬の対象でしかなかったのだ。
「望むだけのお金をあげる。だから、さっさと消えて」
智葵は、震える足を叱咤し菜衣子に向き合った。目的はなんであれ、洸太郎の花嫁となり愛される日々を送っている。その幸福は、金で買えるものではない。
「私は、洸太郎さんの花嫁です。洸太郎さんを側でお支えします」
そうキッパリ言い切った智葵は、これまでとは明らかに変わった。だが、そんな凛とした態度は菜衣子の怒りを更に煽った。
「だったら、その身体を抱かせなさい」
「え?」
予想外の言葉に智葵が固まる。メイド達が智葵の身体を床に押さえつけた。
「な、何するんですっ。やめ…っ」
菜衣子は、智葵の足の間へと視線を移した。
「中にお兄様の放ったものが残っているはず。その蜜を、私にも味あわせなさい」
「やぁ…っ、止めてくださいっ」
メイド達が一斉に目を逸らす。菜衣子が大きく口を開けて顔を伏せた瞬間。
「私の花嫁になんの真似だっ」
洸太郎の怒りに満ちた声が響いた。振り向けば、洸太郎が仁王立ちしている。
「お、お兄様。これは…」
菜衣子とメイド達が智葵から離れる。洸太朗は、身体を丸めて泣きじゃくる智葵の裸体を抱き上げた。
「お兄様、本気なんですかっ。智葵は男なのよっ。本来なら、嫁になんかなれない者よっ」
喚く菜衣子を無視して、洸太郎は智葵に優しく囁いた。
「帰るぞ」
戸惑う智葵を促し洸太郎が歩き出せば、その背中に菜衣子がしがみつく。
「行かないで、お兄様っ。私の気持ちを知っているでしょう?私なら、お兄様を肉体的にもっと満足させられますっ」
露骨な表現に、智葵がビクリと反応する。だが、洸太郎はしがみつく菜衣子を乱暴に払い除けた。
「私の花嫁は智葵だけだ。お前など誰が抱くか」
洸太郎は、それだけ言うと智葵を連れて自宅へと帰った。後ろで菜衣子が何か喚いていたが、洸太郎も智葵も振り向く事はなかった。
「んっ、あっ、やめないで・・・っ、ください・・・っ」
帰宅後。智葵後ろ向きの体位で洸太朗に貫かれた。洸太郎の腰が激しく上下に揺れる。かつて、こんなに激しく交わった事はない。
「智葵…っ、そんなに力を入れるな…っ」
智葵の蕾はまだ狭く、洸太朗は全てをおさめる事が出来ない。
「も、申し訳ありません。でも…、あっ…」
軽く窘めながらも、洸太郎は少しでも智葵の苦痛を和らげようと空いた手で乳首や前を弄ってくれる。広げられた細い足はブルブル震え、智葵は苦痛と快楽の間を行ったり来たりした。
「ゆっくり息を吐け」
洸太朗の言葉に智葵がゆっくり息を吐く。瞬間。洸太朗の性器が根本まで押し込まれた。
「あぁっ」
「わかるか?」
洸太郎は、細くしなやかや智葵の指をその場所へ導いた。繋がった部分から、ドキンッ、ドキンッと音がする。
「これで、完全に1つに?」
「ああ。1つになった」
洸太郎の声に、智葵が安堵したように溜息をつく。そして、互いに本能のままに求め合い長い夜を終えた。
「なぜ、言わなかったんだ?菜衣子に嫌がらせをされていると…」
「それは…」
「お前は私の花嫁なのだから、我慢する事はない」
行為の後、洸太郎の指に優しく髪を撫でられながら智葵は目を閉じた。
「とても、幸せです」
遠くから見つめているだけで満足だったのに、花嫁として洸太郎に抱かれている。洸太郎に愛され、大切にされている。菜衣子の嫌がらせなど、なんでもなかった。
「私は、お前が側にいてくれればそれで良い」
洸太郎の言葉に、智葵が恐る恐る手を伸ばす。頬に触れれば、その指を口に含まれた。
「冷淡で感情などないと言われた私を、お前が人間らしくしてくれた」
洸太郎は、自分でもこんなに喜怒哀楽があったのかと驚くぐらいの変化を遂げていた。その感情をもたらしてくれたのは、間違いなく智葵なのだ。
「安心しなさい。お前を放したりしないから」
洸太郎の長い腕が、智葵のしなやかな裸体に絡みつく。まるで、二度と離れないかのように。
「愛しているよ」
洸太朗の言葉に智葵は涙を溢した。
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