魔法が教えてくれたこと

すいかちゃん

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第七話

魔法使い見習いと意外なパートナー

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アンピニア伯爵令嬢が高笑いをしたすぐ後にブォンと風が巻き上げる音がした。

私は何だかわからないけど、闇属性魔法で消されてしまうの?

それでもセントバーナル様を巻き込む訳にはいかない!

セントバーナル様だけでも無事でいてもらわなければ!

私がセントバーナル様の前に出ようとしたのだけど、セントバーナル様に抱き込まれて、動けなくなってしまっている。

私はもう駄目だとセントバーナル様の腕の中で、ギュッと目を閉じた。


その時にパリンッと何かが割れる音がした。

「えっ?」

というアンピニア伯爵令嬢の声が聞こえた。

「私を舐めないで頂きいですね。

お前が闇属性の魔道具を使ってエンヴェリカを害そうとしたのだろうけど、それ程度の魔道具など何とでも出来るんだよ!」

セントバーナル様の喋り方が変わった。

これは相当怒ってる!

あのパリンッという音は闇属性の魔道具の魔石をセントバーナル様が壊した音なんだ。

私はその時に初めてセントバーナル様の実力を知った。

いつの間に魔法を発動したかもわからないくらいだった。

それも無詠唱だった。

セントバーナル様も無詠唱で魔法が発動出来るんだ。


「あれ?」

「あら?わたくし何故倒れていたのかしら」

「何?何が起こったんだ?」

バタバタと倒れたはずの人たちの目が覚めたようで、口々に何が起こったのかわからないという声があちこちから聞こえてきた。

あれ?どういうことなの?
訳がわからないよ。

「そ、そんな…。

そんなはずはないわ!

わたくしの計画は完璧だったはず…」

セントバーナル様にしっかりと抱きしめられながら首だけ動かして見ていると、アンピニア伯爵令嬢の足元がフラフラして崩れるように両膝が地面についた。

アンピニア伯爵令嬢の瞳の色が黒から青色に戻っている。

「ここの結界魔法は私たち瞳の継承者たちが何重にもかけているものだ。

本当はお前たちになど解除出来るものでない。

卒業パーティー前に結界魔法を違うものに変えて、お前の仲間にわざと結界魔法の情報をこちから渡したんだよ。

結界魔法を解除して騒ぎを起こさせるようにな。

結界魔法を解除した者たちはもう拘束されている。

そしてお前たちの黒幕も逃走しようとしたところを拘束したと情報がこっちに来ている」

「えっ?黒幕?」

アンピニア伯爵令嬢が目を見開いている。

どうして驚いているんだろう?

アンピニア伯爵令嬢は黒幕の存在を知らないの?

「そうだ、お前も操られて魔道具を使おうとした。
お前の取り巻きも操られて魔道具を使いパーティーの参加者を昏倒させたんだ。
みんな私たちの罠にかかったんだよ」

「えっ?そんな…操られた?そんな…有り得ない!」

セントバーナル様の言葉にアンピニア伯爵令嬢は信じられないというふうに首を激しく横に振りながら声を張り上げる。

「お前たちがこのパーティーで騒ぎを起こしている間に瞳の継承者たちをみんなここに集まらせて黒幕はまんまんと逃走しようとしたのだ。

しかしそれらはすべて私たちの仕組んだ罠だ。

アンピニア伯爵令嬢並びに取り巻きの者たちを今すぐ捕らえよ」

セントバーナル様の声で黒いローブを着た魔術師と騎士たちが大勢会場に入ってきて、アンピニア伯爵令嬢たちを捕らえていく。

「いや…待って…嫌よ!
セントバーナル様の婚約者になるのはわたくしなのよ!…」

アンピニア伯爵令嬢は暴れながらそんなことを言っていたが、他の3人令嬢ともども捕らえられて会場から連れ出された。

他の3人はいつものアンピニア伯爵令嬢の取り巻きの令嬢たちだった。

アンピニア伯爵令嬢以外の令嬢たちは呆気に取られたように大人しく捕まっていた。

私は何が何かわからずに呆然としている。

「エンヴェリカ!」

アンピニア伯爵令嬢たちが捕らえられて会場から連れ出された後セントバーナル様がさらにギュッと私を抱きしめてきた。

「…セントバーナル様!」

「エンヴェリカごめんね。

怖い思いをさせて本当にごめん!

でも犯人たちを一網打尽にしたくてこんな作戦になってしまったんだ。

本当にすまない」

セントバーナル様が私を抱きしめる力をさらに強める。

「セントバーナル様ちょっ、ちょっと苦しいです」

「あっ、すまない」

セントバーナル様が抱擁を解く。

「エンヴェリカ大丈夫ですか?」

そう言いながらセントバーナル様が私の頬に手で触れてきた。

「だ、大丈夫じゃないです!
どうして私に教えてくれなかったんですか!」

私はセントバーナル様を見上げて睨み上げた。

「あっ、…エンヴェリカごめん…」

セントバーナル様が泣きそうな顔をする。

今度は私がセントバーナル様に抱きつく。

「あっ!…」

セントバーナル様が声を発するけど、私がぎゅうぎゅうと抱きつく。

「私を庇うように前に立ったり抱きしめてくれた時、嬉しかったけどセントバーナル様にもしものことがあったらって怖かったんですからね!」

「エンヴェリカ本当にすまない。

私のことを心配してくれていたんだね。

父上、母上、クリス、ジョルジュ瞳の継承者たちとエンヴェリカ家族やミーナの家族、あと卒業生の家族には今日のことは知らせていたんだ。

でも作戦の為に卒業生たちには内緒にしていた。

怖がらせて本当にすまない」

セントバーナル様がまた私をギュッと抱きしめてくれる。

「セントバーナル様が何事もなくて本当に良かった!

セントバーナル様に何かあったら私生きていけない!…」

「えっ?エンヴェリカ?」

セントバーナル様が抱きしめる腕を緩めて私を引き離して私の瞳を見開いた瞳で見つめてくる。

「セントバーナル様が私を大切にしてくれているように私もセントバーナルが大切なんですよ!」

私の言葉にセントバーナル様の金の瞳が蕩けるように潤んだ。

「エンヴェリカ!」

またセントバーナル様に抱きしめられた。

「あの~セントバーナル様、お取り込み中申し訳ないですがとりあえずこの場を収めて頂けますか?

今、この場で一番身分が高いのはセントバーナル様なので」

ジョルジュ様の言葉が聞こえてセントバーナル様と私はハッとしてすぐ離れる。

周りを見ると、会場にいるすべての方たちが私たちを見ている。

何だか視線が生暖かいように感じる。

何てことだ!
忘れてしまっていた!
ここは卒業パーティーの場で大勢の人がいる!

途端に恥ずかしくなって私は下を向いてしまう。

その時、誰かが拍手をしだしてそれがどんどん広がって会場中に拍手が鳴り響く。

セントバーナル様と私は見つめ合うけど、二人とも顔が真っ赤になる。

「エンヴェリカ、とりあえずこの場を収めます。

後でちゃんとお話しましょう」

セントバーナル様が私の目を見つめて言ってから他の方たちの方へ身体を向ける。

「みなさん、突然こんなことになり申し訳なかった。

知らされていなかった者たちには恐怖を与えてしまいました。

本当申し訳なかったと思っています。
謝罪します。

後で公表されることになると思いますが、事件解決に協力してくれたことに感謝します。

今宵の卒業パーティーがこんなことになってしまったことも本当に申し訳ありませんでした。

国王陛下よりまた別の日を設けてみなの卒業を祝うパーティーを開催することを約束します。

騎士服やドレスが汚れたり傷になった者にはこちらから弁償します。

本日はこれにて解散となります。

私とエンヴェリカでみなを見送るので、気をつけて帰って下さい」

セントバーナル様の発表にみなさんは驚いているだろうが、そこはみなさん貴族だ。

取り乱すことなく、みなさんが微笑みを浮かべてセントバーナル様に向かい礼を取った。

「エンヴェリカ、すまないがみなの見送りを手伝ってくれますか?」

「は、はい!…」

セントバーナル様に言われて、セントバーナル様にエスコートされながらみなさんに見られながらセントバーナル様と私は会場の出入り口に向かう。

セントバーナル様、クリスフォード様、ジョルジュ様、そして私が出口の外でみなさんを見送る。

セントバーナル様やクリスフォード様、ジョルジュ様が出口から出て行く貴族たち一人一人に声をかけていく。

王族、瞳の継承者様たちがお見送りをしてくれて、一人一人に声をかけてくれるなんて 普通は有り得ないことだろう。

今回はセントバーナル様の特別な配慮によるものだ。
 
貴族たちはそれだけで、先程まで起こった騒動がなかったかのように感激して、目を潤ませて嬉しそうにみなさん礼を取って、馬車止めの方へ歩いて行き帰って行く。

私はどうしていいかわからないながらに、私も゙みなさんに「ご無事でしたか?お怪我はされていませんか?」
「どうぞ気を付けてお帰り下さいませ」とみなさん一人一人に名を呼び声をかけていった。

貴族名鑑を暗記していた良かったとこの時も思った。









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