魔法が教えてくれたこと

すいかちゃん

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第二話

魔法使いだって恋をする

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「師匠。どうして、魔法使いと人間は仲良くしてはいけないの?」
それは、アレンにとって幼い頃からの謎だった。違う世界に住んでいるだけなのに、なぜ仲良く笑う事ができないのか。
アレンの疑問に、師匠のセラが苦笑する。そして、何度も言い聞かせてきた話を繰り返した。
「昔々、魔法使いと人間は仲良く暮らしていました。魔法使い達は得意の魔法で人々を助け、人間は知恵を使って魔法使いのサポートをしていたのです。ですが、その事がいつしか小さな亀裂を生んでしまいました。人間は、魔法使いを道具のように使い始めたのです。そして、魔法使い達は、無限の知恵を持つ人間を恐れ始めました」
それは、魔法界で長年読まれてきた絵本です。
「魔法使いの王は、互いの平和のために透明な扉で2つの国を分けてしまいました。そして、ある掟を作ったのです」
セラが少しだけ哀しそうな顔をする。アレンには、その意味がわからなかった。
「魔法使いは、人間に恋をしてはいけません。なぜなら、人間は魔法使いを利用するからです」
セラがアレンを見つめる。
「わかったかい?お前がどれだけ彼女を好きでも、駄目なものは駄目なんだ」
セラの言葉に、アレンが真っ赤になる。
「どどどどどうして、そそそそそそれをっ」
「お前の言動を見ればわかるよ」
セラがクスクス笑う。
「パートナーの願いは聞けたかい?」
「それが、まだなんです」
魔法使いになるための最終試験。それは、人間のパートナーの願いを叶える事。アレンは、数日前にパートナーを見つけた。エリという可愛い女の子だった。
「エリは、願いごとがないのでしょうか?」
「そんな事はないよ。人間は欲深い生き物だ。願いごとがない者はいない」
アレンは、エリの願いならなんでも叶えたかった。いつも寂しそうなエリに笑ってほしかった。
「アレン。人間に恋をしても、辛いのはお前だよ・・・」
セラが寂しそうに呟く。
なぜ、彼女に恋をしてはいけないのだろうか。だが、数日後。アレンはセラの言葉の意味を知る。
エリが願い事を言ったのだ。
「彼に告白する勇気をください」
エリには、好きな人がいたのだ。相手は、幼馴染みの男の子。いつもケンカばかりしているけれど、ずっと一緒にいたい人。
魔法使いになるための試験は、アレンに失恋の切なさを教えた。アレンの魔法で、エリは片思いを実らせたのだ。
「良かったね、エリ」
アレンは、魔法では人の心を込めて変えられない事を知った。どんなにエリの心を変えようとしても、できなかったのだ、
だが、アレンは不思議と嬉しかった。
(好きな人には、笑っていてほしいもの)
悔しいが、今のエリは初めてあった時よりも数倍美しかった。
アレンはホウキに跨ると、魔法界へと戻っていった。失恋を経験したアレンは、どこか大人の表情をしていた。
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