お隣さんと恋愛中

すいかちゃん

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第二話

好きになったのは、お隣さんのパパでした

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中村湟は、もう2度と恋なんかできないと思っていた。そもそも自分には、恋愛感情などないと思っていた。彼に会うまでは・・・。
本気で恋した相手は、お隣さんで同じシングルファーザーで、そしてとても美しかった。容姿もさることながら、その内面の純粋さに心を奪われた。
男相手に本気の恋をするなんて、思ってもいなかった。

「おはよう、父さん」
やたら晴れ晴れとした顔で、息子が弁当を作っている。高校生にしては大人っぽい顔立ちをしていたが、最近特に艶っぽく感じた。
「おはようございますっ」
玄関がガラッと開き、バタバタと足音がする。途端に、周の顔がパッと輝いた。
「総悟。お弁当」
「サンキュ、周」
隣に住んでいる村瀬総悟は、明るく活発な少年だ。しょっちゅう出入りをしてるため、湟にとっても息子のような存在だった。
「そっか。確か、今日はバスケの試合があるんだっけ」
「今日こそ負けねーっ!」
とガッツポーズをとった総悟の首に、薄っすらと赤い痣。思わず周を見れば、スッと視線を逸らされる。
(こんの~、ガキのくせにサカリやがって)
そう言えば、周は昨夜かなり遅かった。湟は、小さく溜め息を吐いた。
(周の奴、嬉しそうだな)
息子の周が、長いこと総悟に恋心を抱いている事は知っていた。失恋確実と思っていたが、どうやらいらぬ心配だったようだ。
「おっと、もう7時だぞ」
湟が時計を指させば、周と総悟がバタバタと出かけていく。その後ろ姿を見送った湟は、慌ただしく着替えを済ませて隣家へと急いだ。きっと、彼は今朝も寝ているはずだ。
買って知ったる隣の家。湟は階段をタンタンと上がると、一番奥の部屋へと入った。そこでは、愛しい人物が枕を抱き締めるようにして眠っている。
村瀬透吾。総悟の父親で、湟の現在の恋人である。
(本当に40代なのか?)
今年で43歳になるというが、見た目はまだ25~6といったところだ。
「透吾」
ユサユサ揺すれば、透吾の瞳がゆっくりと開かれる。そして、湟の顔を見るなりガバッと起き上がった。
「こ、湟さんっ」
真っ赤になって慌てふためく透吾に、湟がクスッと笑う。
「総悟くんなら、もう学校に行ったよ」
言いながら、透吾の華奢な腰を抱き寄せる。ピクッと透吾の肩が震えた。湟は、わざと耳元に唇を寄せて甘く囁く。
「ごめん。昨夜はやっぱりやりすぎたな。まだ、辛いか?」
湟の言葉に、透吾の顔がますます赤くなった。2人が交際をスタートさせて、もうかれこれ3年がたつ。だが、透吾の反応はいまだ初々しくて湟の笑顔を誘った。
「今朝は、2人っきりだな」
今日は日曜日。つまり、2人共仕事が休みだ。おまけに子供達は夕方まで帰らない。湟は起きたばかりの透吾をベッドに押し倒すと、その唇を激しく塞いだ。
「こ、湟さん・・・っ。やめ・・・っ」
「でも、身体は俺を欲しがってるよ?」
下半身に指を這わせれば、透吾が口元を覆い喘ぎ声を抑えようとする。形を変えたばかりの部分を、ゆっくりと指先でなぞりながら透吾が更に囁く。
「我慢は、身体に良くない」
優しく擦れば、透吾の腕が背中に回る。
「しょうがないな」
諦めたような溜め息を吐いて、透吾は身体から力を抜いた。湟は、透吾の腰を引き寄せると自身をゆっくり埋めていく。

「・・・いつまで、誤魔化せるのかな」
行為が終わった後。透吾が湟の腕の中でポツリと呟いた。
「いつまでって?」
「総悟達だよ。思春期の子供達にこの事が知られたら・・・」
「後悔、してるのか?」
聞けば、間髪入れずに透吾が首を横に振る。
「してないよ。湟さんを、本気で愛してるから」
恥ずかしそうに言う透吾が、湟には愛おしい。
2人が初めて会ったのは、約10年も前の事だった。互いに幼い子供をかかえたシングルファーザーという事もあり、何かと会話をするようになった。そして、いつしか惹かれ合い恋人関係になったのだ。
「まさか、告白を受け入れてもらえるとは思わなかった」
湟にとって、それは忘れられない日だった。元々、バイだった湟にとって透吾に恋する事はごく自然だった。だが、ストレートな透吾には自分の気持ちを受け入れてもらえないと思っていた。
「かなり、驚いたけどね」
透吾が苦笑を浮かべ、湟の胸に顔を埋める。お隣さんに、まして男に告白されるなんて透吾も思ってもいなかった。そして、その気持ちを受け入れた自分にも・・・。
その日は、子供達がお泊り保育とあってかなり気が緩んでいた。湟は、勇気を出して透吾に告白。そして、戸惑いながらも透吾は湟の情熱を受け入れた。子持ちやもめの2人は、まるで高校生のような恋愛をスタートさせた。
「湟さんを好きになればなるほど、子供達に申し訳なくて」
透吾が不安げに目を伏せる。仕事で遅くなると言っては、2人でホテルに行った事もある。玄関の前でキスをしたり、さり気なくアイコンタクトをした事もある。心のどこかで、子供達に申し訳ないと感じていた。
「周くんがこの事を知ったら、ショックだろ?」
「あー、その事なんだけどな」
湟が躊躇いがちに視線を逸らす。
「周のやつは気づいているみたいだ」
「・・・え?ええっ」
透吾が顔を真っ赤にして起き上がる。
「おまけに、どうやら総悟くんと周は付き合っているみたいだ」
「えええええええええええっ」
軽くパニックに陥った透吾を、湟がギュッと抱き締める。
「いいじゃないか。2人の恋を応援してやろう」
チュッと透吾のこめかみにキスをして、湟が楽しそうな笑い声を立てる。
「お互い、ナイショの恋をしよう」
湟に言われ、透吾は複雑な気持ちで瞳を閉じた。好きになるのに性別は関係ない。それは、透吾も身をもって感じていたから。










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