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第一話

こんな形で再会するなんて・・・

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今宵も美しい月夜だ。育也は男に激しく突かれながら、ぼんやりとそんな事を考えていた。そんな育也を、客の男は冷めた瞳で見下ろした。
「お前は人形か?」
嘲笑るように言われても、育也の心が動く事はなかった。誰が好きでもない男に抱かれて喜ぶものか。育也は、男が身支度を終えるまで天井を見つめていた。
本来なら、育也は近衛家の長子として何不自由なく暮らしているはずだった。女物の着物を着せられ、男に好き勝手されるような仕事を好きで選ぶはずがない。
育也が男娼館で働くようになったのは、1年近く前の事だ。その理由は、父親の失踪だ。お人好しの父親は、うまい話に騙されて事業に失敗。妻子を置いて、忽然と姿を消した。まだ16歳になったばかりの育也が、母親と妹を守るにはこの方法しかなかったのだ。
最初の頃は、男に触られるのも嫌だった。だが、最近はすっかり慣れてしまった。ただジッと我慢していればいい。育也は、枕元に置いてあった小さな巾着袋をそっと抱いた。中には、育也にとって何よりも大切な宝物が入っている。
これさえあれば、この思い出さえあれば何でも耐えられる。
育也は、声を出さずに泣きながら眠りについた。
男娼館の主である塚原夫妻に呼ばれたのは、それからしばらくたっての頃だった。
「え?」
応接室に行くと、そこには塚原夫妻の他に1人の男性がいた。ダークグレーの上品なスーツに、綺麗に整えられた髪。細いフレームの眼鏡は知的な雰囲気を作り、男娼館にいるのがとても不自然な印象だった。男が育也に一礼する。
「お久しぶりです。育也様」
「ど、うして、ここに」
育也は、震える声でやっとそれだけを呟いた。
男の名前は、二階堂秋臣。かつて、近衛家で使用人をしていた人物だ。年は、育也よりも5歳ほど上だから、現在は22歳になるだろう。彼は、ある事をきっかけに7年前に屋敷を離れた。育也が秋臣と会うのは、その日以来だ。
「こちらが、お前をぜひ引き取りたいそうだよ」
塚原婦人が上機嫌で札束を数えている。その数はかなりのものだ。
「え・・・っ?ま、待ってくださいっ。こいつだけは嫌ですっ」
育也が叫ぶと、秋臣の眉毛がピクッと動いた。その瞬間。塚原婦人の平手が飛び、育也の小さな身体が吹っ飛ぶ。
「バカも休み休みお言いっ。お前、自分の評判も知らないのかいっ?顔だけよくて、後は人形だそうじゃないかっ。男に奉仕しなくて、何が男娼だっ」
育也の着物の襟を掴み、尚も塚原婦人が手を振り上げた瞬間。秋臣の手が育也を庇った。
「私が買った男に傷をつけないでもらおう」
静かだが怒気を含んだ声に、塚原婦人も息を呑んだ。育也は、自分を包み込む腕の変わらない暖かさに涙が出そうになった。
「行きましょう」
秋臣の手が育也の腕を掴む。優しいが、決して離さないというように。育也は、そのまま高級な車に乗せられた。
秋臣が運転する車に乗せられ、育也は流れる車窓を眺めた。車内は、不自然なほど無言だった。秋臣は、バックミラー越しに何度かチラチラ育也を見たが、何も言ってはこなかった。
(一番会いたくなかった男に買われるなんて)
育也は、車窓に映る自分が泣いている事に初めて気がついた。
秋臣は、幼かった育也にとって兄のような存在であり、初恋の人でもあった。ずっと一緒にいられると思っていた。だが、秋臣は育也の父親によって家を追い出されてしまった。そして、その原因を作ってしまったのは育也だった。
(僕の事なんて、きっと嫌いだろうに)
なのに、なぜ大金を積んでまで自分を買ったのか育也にはわからなかった。もしかすると、あの頃の腹いせに育也をコキ使うつもりなのだろうか。それとも、別の誰かに売るためなのだろうか。
どちらにしても、育也はこれでいいと思えた。かつての罪滅ぼしと思えば、どうという事はない。
「着きました」
秋臣の声に促され車を降りれば、そこには大きな日本家屋があった。玄関の前には使用人がズラッと並び、秋臣と育也に丁寧に一礼する。子供の頃は、こうやって出迎えられるのが当然と思っていた。秋臣に案内されたのは、かなり豪華な部屋だった。
「今日からここが育也様の部屋になります」
「え?」
てっきり秋臣の私室だと思っていた育也が驚いて顔を上げると、薄い水色の美しい着物が渡された。
「そのような着物は、あなたにふさわしくない」
秋臣が淡々と告げる。男娼として働いていた育也は、女物の着物を普段から着用している。腰まで長い黒髪は、朱色の紐で結ばれ、唇には紅が引かれていた。少年と言わなければ、おそらく大抵の人が少女と間違えるだろう。
「すぐに風呂の用意を致します」
「ま、待てよ。僕は、こんな部屋では暮らせない」
部屋から出ようとする秋臣を、育也が慌てて止める。
「育也様?」
「その『様』って付けるのもやめてくれ。知ってるだろ?今の僕がどんな生活をしているか。お前は、僕を惨めな気持ちにさせたいのかっ?施しを与えて、優越感に浸りたいのか?」
育也には、そうとしか思えなかった。男娼にまで身を落とした自分に、秋臣は情けをかけたつもりでいるのだ。住居と着る物を与え、昔のように接する事で、今がどれだけ惨めなのかを教えようとしているのだ。こんな屈辱はないと育也は思った。
「帰るっ」
何も言わない秋臣の胸ぐらから手を離すと、育也は襖を開けようと指を伸ばした。その細い手首が、強い力で掴まれる。
「誰がこの部屋を出てもいいと言いました?」
振り向くと、秋臣が無表情で育也を見下ろしていた。そして、敷いてあった布団の上へと乱暴に育也を押し倒すとあっという間に組み伏せてしまった。
「秋臣っ」
育也が秋臣を睨み付けても、秋臣は表情1つ変えなかった。
「あなたは何を勘違いしているのですか?あなたは、金で私に買われたんだ。あなたの身体は、私のものなんですよ?」
片手だけで育也の両手を押さえると、秋臣はゆっくりと育也の帯を解いていった。そして、赤い長襦袢も脱がし、全裸の育也を眺める。そして、昨夜の客がつけた痣に目を細めた。
「男に抱かれるのが、お好きなのでしょう?」
「・・・っ」
秋臣のあまりの言い方に、育也の頬がカッと熱くなる。文句を言おうとすれば、秋臣に噛みつかれるように口づけされた。
「んっ、んっ、んーっ」
舌で口内を蹂躙しながら、秋臣の指がいきなり下肢に伸びた。性器を握り、緩やかに擦り上げる。育也の瞳が大きく見開かれる。
「んっ、んっ、んっ、んんっ」
育也の文句は、秋臣の口に塞がれ言葉にさえならなかった。やがて、ビクッビクッと数回震えて、秋臣の手が白濁に濡れる。
秋臣が口を離しても、育也は文句を言わなかった。いや、あまりの衝撃に声さえ出なかったのだ。
「いい反応です。人形と言った男は、どんな感性を持っていたのでしょうね」
秋臣は、育也が放った精液を指に絡ませ、わざと育也に見せつけた。ねっとりとした指先に、育也は顔を背けた。そんな育也を楽しげに見つめながら、秋臣の指が入り口を解す。
「・・・っ、はあっ・・・」
「何人の男をくわえこんだんです?綻ぶのが早い」
クスクス笑われながら、指が一気に3本に増えた。3本の指がそれぞれバラバラに動き、育也を翻弄する。そして、前だけを寛げた秋臣がゆっくりと自身を挿入していった。いっそ、力任せに犯せばいいものを、秋臣はそうはしなかった。ジワジワと入り込んでくる熱棒の感触が、育也を支配していく。
(秋臣に、抱かれてる)
ずっと好きで、恋い焦がれた男に抱かれている。それは、嬉しくもあり、哀しくもあった。秋臣には、知られたくなかった。自分の身体が、男を受け入れる事に慣れてるなんて。
秋臣は、育也を何時間もなぶり続けた。甘い睦言の代わりとでも言うように、身体のあちこちにキスをされ、指で弄られた。
全裸になった秋臣が、育也を包むように抱き締める。まるで、愛し合う恋人同士のように。
「秋・・・」
呼び掛けようとして、育也がハッとした。秋臣の左肩に残る古傷が、育也の気持ちにブレーキをかける。
「何を考えてるんです?私に集中しなさい」
「うぁっ、あっ、あっ、あぁぁあぁぁっ、あっ」
育也の緊張を感じ取った秋臣が乱暴に突いてきて、育也は悲鳴を上げた。だが、身体の奥から快楽の波が押し寄せてくる。
育也は、男に抱かれて初めて感じた。

こんなつもりではなかった。
布団の上にぐったりと横たわる育也を見つめて、秋臣はもう何度目になるかわからないため息を吐いた。疲れきった顔をして眠る育也に、秋臣は改めて彼の苦労を思い知った。育也を男娼館で買ったのは、こんな事をするためじゃない。育也に笑顔になってほかったからだ。
「育也様」
男娼館で育也を見つけた時には、息が止まるかと思った。幼い頃の面影を残しながら、その顔立ちはとても儚げで美しかった。客らしき男が後ろから抱き締め、その首筋に顔を埋めた瞬間。秋臣は怒りを抑えることができなかった。そして、虚ろな瞳で月を見上げる育也の姿に秋臣の心は乱れた。

『秋臣。だいすき』

幼かった頃、育也が口癖のように言っていた。世話係である秋臣を兄のように慕い、どこに行くにもついてきた。孤独だった秋臣の心に、初めて優しさを与えてくれたのが育也だった。育也のためなら、秋臣はなんでもした。
屋敷を追われるように出た秋臣は、とにかく育也との再会を願った。育也の父親が騙され消息不明になったと知った時は、まさに血の気が引く思いがした。育也や他の家族の所在がわからず、秋臣は手当たり次第探し回ったのだ。
再会した時には、てっきり育也も喜んでくれると思っていた。だが、違った。彼は、全身で秋臣を拒絶したのだ。その事に苛立ったのは事実だ。
「あなたを、傷つけるつもりはなかったのです」
投げ出される細い手首を持ち上げた秋臣は、指の1本1本に口づけた。育也の身体には、秋臣がつけた痣が無数に広がっている。おそらく、唇で触れなかった場所は皆無だろう。
指で触れた瞬間にわかってしまった。育也が、これまで多くの男と交わってきた事に。その事実は、思いの外秋臣を追い詰めた。気がついた時には、自分を押さえられくなっていた。
秋臣は、育也の小さな身体を抱き締めて眠りについた。嫌われてもいい。自分の側にいてくれれば、それでいいと何度も自分に言い聞かせながら。
翌朝。やけにシーツが冷たく感じて、秋臣はハッと目を開けた。腕の中にいたはずの育也がいない。秋臣は急いで浴衣を羽織り、屋敷中を探した。秋臣が嫌で出ていったのかもしれない。そんな絶望的な考えが浮かぶ。ふと、厨房から育也の声が聞こえてきた。
「困ります。私が旦那様に叱られますっ」
声の主は、長年秋臣に仕えてくれているタミだ。高齢とは思えないほど働き者で、厨房のすべてをしきっている。育也が味噌汁を作りながら笑う。
「秋臣様の朝食は、これからは僕が作るから。タミさんはゆっくり寝ていてよ」
それは、秋臣が最も見たかった育也の笑顔だった。秋臣は、一歩踏み出した足を戻した。もし、ここで声をかけたら、育也の笑みがまた消えてしまう気がして。
その日の朝食には、秋臣が昔から好きだったジャコの甘辛炒めとわさび漬けが並んでいた。覚えていてくれたのかと思いながら、秋臣は一口一口味わって食べた。
「髪を、切りましょう。育也様には短い方がよく似合う」
朝食の後、秋臣は昔のように育也の散髪をした。長い髪を切った育也は、まるで昔に戻ったようだった。2人の関係は、次第に変化していった。
育也は、秋臣に逆らう事なく黙って抱かれるようになった。秋臣が言えば、どんな事でもした。
「うつ伏せになって、尻だけを高く上げなさい。私に全て見えるように」
秋臣がわざと羞恥を煽っても、育也は何も言わなかった。顔を真っ赤にして、言う通りにする。こうして交わるには、ある理由があった。1つは、この方が挿入しやすい事。もう1つは、自分の野獣のような素顔を育也に見せなくていい事。
「う・・・っ、あっ、はあっ、あっ、んっ」
秋臣が腰を激しく揺らす度に、育也はシーツを握り締め身体を震わせる。その声は、まるで泣いているようにも聞こえた。行為の後、秋臣は眠るフリをして育也を見つめた。育也は、いつも枕元に隠してある小さな巾着袋を取り出して微笑んでいた。
(恋人からもらったのか?)
秋臣は、ズキッと胸の奥が痛むのを感じた。もしかしたら、育也には心を寄せる人がいるのかもしれない。そう考えただけで、秋臣の心が焦った。
育也を愛しいと思う気持ちが抑えられない自分を、秋臣はもう誤魔化さないと感じた。
(忘れさせる。どんな事をしても)
秋臣は、育也を繋ぎ止めておくためなら何でもすると心に誓った。

(いつまで、こんな事が続くのだろう)
目を覚ました育也は、肌に残る余韻に泣きそうになった。こんな形で好きな男に抱かれるなんて・・・。気が付くと、夜がくるのを待ち遠しいと思うようになってしまった。
育也と秋臣の関係は、ずっと平行線を辿っていた。会話も殆どなく、夜になると激しく交わるだけの日々。ただ、育也が用意した食事を秋臣は全て綺麗に平らげてくれた。それだけが嬉しかった。
今夜は、秋臣は仕事仲間と料亭で打ち合わせをしている。どうやら、秋臣は外国に陶器を売って財を成したらしい。1人の夕食は、ひどく味気なかった。
(好きだなんて、言えない)
育也が男娼をしていた過去は消えない。好きだなんて言ったって、きっと信じてもらえない。なぜ秋臣が育也を抱くのかはわからないが、気まぐれでもいいではないかと思えた。名前も知らない男達に抱かれるよりも、愛する男に抱かれている方が幸せに決まっている。育也は手のひらを見つめて唇を噛み締めた。まだ、あの時に触れた傷の感覚が残っている。
あの傷こそが、秋臣を追い詰めてしまった原因なのだ。


『危ないっ。育也様っ』

覚えているのは、秋臣の叫び声と鈍い音だけだった。泣きじゃくる育也に、何度も何度も大丈夫だと囁いてくれた。
育也は、袋にそっと口づけた。きっと、秋臣は覚えていまい。あの日の事など。
「そんなに、その袋が大事ですか?」
「え?」
不意に秋臣の声がしたかと思うと、持っていた袋を奪われてしまった。
「返せっ」
育也が必死に手を伸ばすが、20センチ近くも身長差があるため、届くはずもなかった。秋臣は薄汚れた袋を一瞥すると、なんの躊躇もなく庭の池へと放り投げた。
「何するんだっ」
「明日。新しいのを買ってあげますよ。あんな安物よりも、高級な物を」
冷たい声と共に背中を向けられ、育也は唖然とした。秋臣は、やはり変わってしまった。育也が好きだった秋臣ではない。育也は踵を返すと、池の中へと飛び込んだ。

「育也様っ」
バシャッという水の音に、秋臣は慌てて踵を返した。池の近くには脱ぎ捨てられた雪駄。秋臣は上着を脱ぎ捨てると、慌てて中へと飛び込んだ。そして、巾着袋を抱き締めたまま池に沈んでいく育也を見つけた。
「まぁ。どうなさったんですかっ」
ずぶ濡れで戻った秋臣と育也に、タミが青ざめる。
「話しは後だ。早く育也様を・・・っ」
秋臣のらしくない取り乱しように、タミ達は啞然とした。
その夜。育也は熱を出し、うわ事のように何かを呟いていた。そんな育也の手を握り、秋臣は寝ることもせず看病した。額に濡らした手拭いを当てながら、秋臣は濡れたままの巾着袋に視線を向けた。あそこまでするほど、大事な何かが入っているのだ。
「ん?」
中を開ければ、白い貝殻が出てきた。
(貝殻?)
不意に、海の光景が浮かぶ。青い空と白い雲。そして、泣きじゃくる育也。
「まさか・・・」
なんとか育也の涙を止めたくて、秋臣は白い貝殻を渡した。まるで宝石のように美しく、育也は大喜びだった。そして、秋臣は迎えに来た船に乗り育也の前を去った。

『必ず、あなたの元へ戻ります』

秋臣の言葉に、幼い育也が頷いた。白い貝殻を抱き締めて・・・。
「育也様・・・」
秋臣の瞳が、信じられない物を見るように育也へと向けられた。巾着袋を愛しそうに抱き締めていた育也。自分は、育也の何を見ていたのだろう。
「・・・っ」
秋臣は、眠る育也をいつまでも抱き締めた。
育也の熱は、翌日にはすっかり下がっていた。夜中に目を覚ました育也は、床に毛布だけ被って寝ている秋臣を見つけた。手には、濡れた手拭いが握り締められている。
(もしかして、ずっと側に・・・?)
育也は、疲れたように眠る秋臣に胸が締め付けられる思いだった。今だけは、以前の関係に戻れた気がして、それが嬉しかった。
夏とはいえ、夜はかなり冷える。秋臣の肩に毛布をかけようとした瞬間、秋臣の瞳が開く。
「あ、あの・・・っ」
慌てて逃げようとした育也は、すぐに秋臣に捕まる。広い胸に抱き締められ、そっと髪を撫でられる。
「育也様。1度だけ聞かせてください。私の事を、お嫌いですか?」
心なしか、秋臣の声は震えているようだった。育也は、ゆっくりと力を抜くと、素直に今の気持ちを告げた。
「嫌いじゃ、ない」
「だったら、なぜ私を拒絶したのですか?」
「こんな僕を、知られたくなかったんだ。男に抱かれてるのを、知られたくなかった。秋臣には、いつまでも昔の僕を覚えていてほしかった」
秋臣は、やっと育也の本心を見たような気がした。
「育也様は、何も変わっていません。あの頃のままです」
秋臣の唇が、ゆっくりと重なる。口づけはだんだんと深くなり、やがて秋臣が静かに育也を押し倒した。
「私は、育也様をここから出しません」
「・・・秋臣」
「私の側に、いてください。あなたを、愛しているんです」
奪われるのでもなく、奪うのでもなく、2人は身体を重ねた。ピッタリとくっつきすぎて、どちらの鼓動の音かもわからないぐらい音が響いている。
「ずっと、秋臣に謝りたかった・・・っ」
胸の飾りを秋臣に弄られながら、育也が甘い声を上げる。その合間に、泣きそうな声が囁いた。だが、秋臣にはその意味がわからなかった。
「僕のせいで、屋敷を出る事になってしまって・・・、すまない」
あれは、夏休み中の事だった。育也は入ってはいけないと言われている倉庫に入り、誤って荷物を倒してしまったのだ。その時に、秋臣が庇い肩に怪我をした。その事が育也の父の激怒の原因となったのだ。
「この傷は、私の勲章です」
育也を強く抱き締めて、秋臣が嬉しそうに呟く。2人の身体の間では、欲望の証が擦れ合い、たまらない快感を呼ぶ。
「あ・・・っ」
両足を広げられ、秋臣に唇で性器とその奥を愛された。
「あっ、ダメッ。そんな所・・・っ」
舌先が蕾を潤し、次第に綻んでいく。秋臣は、育也の泣き声が甘く乱れるまで繰り返し愛撫を施した。そして、見つめ合いながら太く逞しい屹立を挿入していく。
「秋・・・臣。会いたかったよ」
「私もです。育也様」
秋臣と育也は、互いにやっと素直になれた気がした。

「秋臣。やっぱり育也様って呼ぶのは、やめてくれ」
布団の中で育也が頼む。全裸の育也と違い、秋臣は既に着替えている状態だ。布団の上から優しく抱き締められ、育也が顔を赤くする。
「私にとって、やはり育也様は育也様です」
「そんな・・・っ」
困ったような顔の育也が可愛くて、秋臣は声を立てて笑った。











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