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第二話
双子のイケメン執事達が、身体中にキスしてくるんです
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(脱出、成功!)
平野勇人は、周囲をキョロキョロ見回しホッとした。丸い輪郭に、小動物を思わせるような大きな瞳。高校生男子にしては、かなりかわいらしい。小柄な身体を活かし、門の隙間からソッと外へ出る。
(見つからないように、早く行かなくちゃ)
道路に出た勇人は、一目散に走った。そこには見慣れた街が広がっていて、勇人はやっと緊張感を解いた。振り返ると、信じられないぐらいの豪邸がそびえ立っている。引っ越してきて1ヶ月たつが、まだ慣れない。
『今日から、ここで暮らすのよ』
母親に初めて連れてこられた時には、あまりの世界の違いに驚いてしまい現実とは思えなかった。まさか、母親の再婚相手があの大金持ちで有名な平野家とは思わなかったのだ。おまけに、双子のイケメン執事まで付けられてしまった。いや、単なる執事というだけならなんの問題もない。問題なのは、彼らが勇人に恋愛感情を抱いているという事だ。ちょっと気を抜くと、どこでもかしこでもスキンシップを求めてくる。
(今朝は、かなり長かったな)
執事達からされた事を思い出し、勇人は耳まで真っ赤になった。朝は、2人からの濃厚なキスで始まる。おまけに、身体のあちこちにキスをしてくるのだ。きっかけは、着替えの最中だった。
『勇人様。寝汗をかいてますね』
鎖骨に浮いたわずかな汗に気がついた篤が、そのまま舌で汗を拭った。亜麻色のサラサラした髪が素肌に触れて、勇人は慌てて離れようとした。だが、篤は構う事なく唇を寄せてくる。
「ここにも汗をかいてる」
「えっ。あっ、悟さんっ」
弟の悟が、勇人の背中に浮かぶ汗を舌で舐め取ってきた。2人は、勇人の身体中の汗を唇と舌で丁寧に拭った。かなり際どい部分にも舌は及び、やはり勇人の身体は反応してしまった。そして、悟の指によって奉仕されたのだ。
(なんだって、ああも恥ずかしい事ができるんだろう)
篤にハンカチでソコを拭かれた時には、どうしたらいいのかさえわからなかった。
今日の外出は、実は2人の顔をまともに見れなかったからだ。おそらく今頃は、勝手に外出した勇人を探しているだろう。そう思うと胸が小さく痛む。
(だって、あんな事されたら、恥ずかしくて)
やめてくれと叫んだが、2人は決してやめてはくれなかった。
(俺が本気で嫌がってないって、見抜かれてる)
問題はそこにあった。双子からされるキスを、勇人は決して嫌悪しているわけではないのだ。これまでキスの経験がない勇人は、その気持ちよさにいつもドキドキしていた。それに、キスをされる度に、自分がここにいてもいいんだと納得できる。勇人は、いまだに自分が平野家にいる事が信じられなかった。まるで場違いな場所に来てしまったようで落ち着かないのだ。だが、双子に愛していると言われる度に、ここにいていいんだよと認められているような気がした。
(母さん達、いつ新婚旅行から帰ってくるんだ?)
今はタイにいるらしい。楽しそうな母親の声に、帰ってきてとは言えない。
勇人は、キュッと唇を噛み締めた。子供じみているかもしれないが、なんだか母親が以前とは変わった気がして寂しかった。
物心ついた時、すでに勇人には父親という存在はいなかった。勇人を妊娠している時に両親は離婚。天涯孤独だった母親は、勇人を1人で育ててくれた。朝は豆腐屋で、昼はスーパーで、そして夜は弁当屋で働き勇人を育ててくれた。だから、母親が幸せな結婚をして本当に良かったと思っている。
だが、なぜか勇人はすごく寂しかった。自分だけ取り残されていくような、変な感覚だった。
(母さんには、母さんの人生がある)
勇人は、寂しい気持ちを無理矢理押し込んだ。久しぶりの懐かしい景色に、勇人の足が速まる。
不意に、子供達の声が聞こえてきた。
「ん?」
見れば、小さな子供達が騒いでいる。
「どうしたの?」
「僕のボール、引っ掛かっちゃった」
1人の男の子が半泣きで木の上を指差す。そこには、サッカーボールが引っ掛かっていた。
「待ってろ。お兄ちゃんが取ってやる」
これでも、勇人は中学時代はサッカー部だったのだ。運動神経にはそれなりに自信がある。木へ登るのは大変な事ではなかった。子供達の歓声が聞こえる。が、ボールを抱えて降りようとした瞬間。パーカーの裾が引っ掛かってしまった。
「ヤバッ」
体勢を立て直そうと伸ばした指が枝を掴んだものの、その枝は折れてしまい、勇人の身体が大きく傾く。ビリッと音がしてパーカーが破れてしまった。
「うわっ」
バランスを崩した勇人の身体が宙を舞う。
周囲に悲鳴が響く中、勇人はギュッと目を閉じた。だが、訪れるはずの衝撃はどこにもない。まるで、浮いているような感覚だ。
「?」
「オレ達を置いていこうとするからだぞ。勇人様」
目を開ければ、そこにはニッコリ笑顔の悟がいた。驚く事に、彼は落下している勇人を空中で抱えて着地したのだ。悟の、少し切れ長の瞳が柔らかく細められる。太陽の光を浴びて、亜麻色の髪が金色に見えた。まるで、王子様のようだ。
「全くです。こちらの身にもなってください」
駆け寄ってきて篤が、悟の腕からさりげなく勇人を奪い取った。いきなり現れた双子のイケメンに、通りすがりの若い女性達の視線が集中する。いつの間にか周囲には人だかりができていた。
「篤っ。オレが勇人様を助けたんだぞっ」
悟の腕が再び勇人を抱き締める。
イケメン2人が子ザルのような少年を取り合っている姿に、周囲は唖然とした。
「狭いけど…」
勇人は恐縮しながら玄関のドアを開けた。街外れにあるボロいアパート。ここで、勇人は母親と14年暮らしていた。平野家の屋敷の物置の方がまだ広いぐらいだ。
「ここが、勇人様が過ごした部屋ですか」
篤と悟は珍しそうにキョロキョロと周囲を見回した。そこには、蔑んだ様子は微塵も感じられない。
「2人の私服って、初めて見たかも」
「さすがに燕尾服では目立つので」
篤の言葉に、勇人がクスッと笑う。悟は、拗ねたように窓辺で腕を組んだ。
「なんで黙って出ていったんだよ」
「着替えを取りに来ただけだって」
ここには、まだ荷物もある程度残っている。いや、残したと言った方が正しいかもしれない。心のどこかで、逃げる場所が欲しかった。
「オレ達の事が、嫌になったのか?」
悟が寂しそうに聞く。篤の表情も変わった。勇人は慌てて首を振った。
「違うよ。そうじゃない」
篤と悟の落胆した様子に、勇人は慌てて否定した。そして、しどろもどろに本当の事を話した。
「篤さんも、悟さんも、素敵すぎて。俺の事が好きっていうのも、いまだに信じられなくて…。キ、キスとかされたり、触られたりするのが、恥ずかしくて…っ」
真っ赤になりながら勇人が言うと、篤と悟の腕が同時に伸びてきた。そして、苦しいぐらいに抱き締めてくる。
「…安心しました」
「大好きだ」
ギュウギュウと抱きついてくる2人に、勇人は小さく笑みを浮かべた。ちゃんと、愛されている。そう感じる事ができて、ホッとした。
「あ、あのさ。着替えるから、退いて」
照れ隠しに言えば、篤と悟の指が服にかかる。
「へ?」
「着替えでしたら、いつものように」
「オレ達がしてやるよ」
そして、あれよあれよという間に勇人は裸にされていった。そして、結局はいつものように2人がかりで着替えさせられる。もちろん、濃厚なキス付きで。
「んっ。ダメだってば・・・っ」
篤に頬や首筋を、悟からは項や背中にキスをされながらどんどん服を脱がされていく。破れたパーカーはともかく、なぜかデニムまで脱がされてしまった。下着と靴下だけという姿で2人に挟まれる事になり、勇人はあわてふためいた。
「本気で嫌だったら、やめろって言えばいいんだよ」
とうとう悟の指が下着をずり下ろす。これで、目的は明白だ。
「あっ」
勇人は条件反射的に股間を手で隠す。だが、その手はすかさず篤によって掴まれた。全裸をじっと見つめられ、勇人の全身が桜色に染まる。
「私達は、勇人様の忠実な下僕です。勇人様がやめろと言えば、やめます」
掴んだ指先にキスをしながら、篤が意味深な視線を寄越す。そして、後ろからは悟の指が勇人の大事な部分を掴んだ。
「ん…っ」
「勇人様は、この行為を嫌がってない。そうですよね?」
篤の言葉に、勇人は小さく頷いた。
「2人の事は、とても好きだよ。俺、こんな風に誰かに必要とされた事がなかったから。触られるのも、本当は嫌じゃない」
小声で言えば、双子は顔を見合わせて微笑んだ。
「では、私達の想いを受け入れてくれるのですね」
篤の嬉しそうな笑顔に、勇人の鼓動が跳ねる。ぎこちなく頷けば、すぐに前と後ろから抱き締められた。
「とても、嬉しいです」
篤の顔がゆっくりと近づき、深く唇が重なる。離れたかと思えば、今度は悟が。交互にディープキスを繰り返されて、勇人はその心地よさにうっとりと目を閉じた。とっくに自分の気持ちには気づいていたのだから、意地を張る必要はないのかと思えた。
2人に触られてドキドキするのも、キスされて気持ちいいと思えるのも、それは2人を特別存在と思っているからだ。恋愛感情と考えて正しいだろう。
「ん?んんっ」
甘いキスに酔っていれば、篤と悟の指が同時に下半身に伸びてくる。そして、左右から激しく扱く。
「んんっ、んっ、んんーっ」
抗議の声は、双子の唇の中へと消えた。立ったまま、キスされた状態で下半身を弄られるなんて恥ずかしすぎる。イッた直後は力が入らず、篤に抱えられるように着替えさせられた。
「感じやすいんだな。勇人様」
クスクス笑いながら、悟が下着とハーフパンツを履かせてくれる。
「そこがまた愛らしい」
放心状態の勇人にシャツを着せながら、篤がその耳にキスをする。勇人は、2人に抱えられるようにして家へと帰った。
(な、なんか一気に大人になった気がする)
篤と悟に挟まれながら、勇人は頬を染めた。思春期も遅く、エッチな話題にも疎かったというのに…。篤と悟によって、心と身体がどんどん大人にされていく。
双子の寝顔をそっと見つめ、勇人は深い深い溜め息を吐いた。
彼らと居ると、寂しさなど吹き飛んでしまうらしい。
平野勇人は、周囲をキョロキョロ見回しホッとした。丸い輪郭に、小動物を思わせるような大きな瞳。高校生男子にしては、かなりかわいらしい。小柄な身体を活かし、門の隙間からソッと外へ出る。
(見つからないように、早く行かなくちゃ)
道路に出た勇人は、一目散に走った。そこには見慣れた街が広がっていて、勇人はやっと緊張感を解いた。振り返ると、信じられないぐらいの豪邸がそびえ立っている。引っ越してきて1ヶ月たつが、まだ慣れない。
『今日から、ここで暮らすのよ』
母親に初めて連れてこられた時には、あまりの世界の違いに驚いてしまい現実とは思えなかった。まさか、母親の再婚相手があの大金持ちで有名な平野家とは思わなかったのだ。おまけに、双子のイケメン執事まで付けられてしまった。いや、単なる執事というだけならなんの問題もない。問題なのは、彼らが勇人に恋愛感情を抱いているという事だ。ちょっと気を抜くと、どこでもかしこでもスキンシップを求めてくる。
(今朝は、かなり長かったな)
執事達からされた事を思い出し、勇人は耳まで真っ赤になった。朝は、2人からの濃厚なキスで始まる。おまけに、身体のあちこちにキスをしてくるのだ。きっかけは、着替えの最中だった。
『勇人様。寝汗をかいてますね』
鎖骨に浮いたわずかな汗に気がついた篤が、そのまま舌で汗を拭った。亜麻色のサラサラした髪が素肌に触れて、勇人は慌てて離れようとした。だが、篤は構う事なく唇を寄せてくる。
「ここにも汗をかいてる」
「えっ。あっ、悟さんっ」
弟の悟が、勇人の背中に浮かぶ汗を舌で舐め取ってきた。2人は、勇人の身体中の汗を唇と舌で丁寧に拭った。かなり際どい部分にも舌は及び、やはり勇人の身体は反応してしまった。そして、悟の指によって奉仕されたのだ。
(なんだって、ああも恥ずかしい事ができるんだろう)
篤にハンカチでソコを拭かれた時には、どうしたらいいのかさえわからなかった。
今日の外出は、実は2人の顔をまともに見れなかったからだ。おそらく今頃は、勝手に外出した勇人を探しているだろう。そう思うと胸が小さく痛む。
(だって、あんな事されたら、恥ずかしくて)
やめてくれと叫んだが、2人は決してやめてはくれなかった。
(俺が本気で嫌がってないって、見抜かれてる)
問題はそこにあった。双子からされるキスを、勇人は決して嫌悪しているわけではないのだ。これまでキスの経験がない勇人は、その気持ちよさにいつもドキドキしていた。それに、キスをされる度に、自分がここにいてもいいんだと納得できる。勇人は、いまだに自分が平野家にいる事が信じられなかった。まるで場違いな場所に来てしまったようで落ち着かないのだ。だが、双子に愛していると言われる度に、ここにいていいんだよと認められているような気がした。
(母さん達、いつ新婚旅行から帰ってくるんだ?)
今はタイにいるらしい。楽しそうな母親の声に、帰ってきてとは言えない。
勇人は、キュッと唇を噛み締めた。子供じみているかもしれないが、なんだか母親が以前とは変わった気がして寂しかった。
物心ついた時、すでに勇人には父親という存在はいなかった。勇人を妊娠している時に両親は離婚。天涯孤独だった母親は、勇人を1人で育ててくれた。朝は豆腐屋で、昼はスーパーで、そして夜は弁当屋で働き勇人を育ててくれた。だから、母親が幸せな結婚をして本当に良かったと思っている。
だが、なぜか勇人はすごく寂しかった。自分だけ取り残されていくような、変な感覚だった。
(母さんには、母さんの人生がある)
勇人は、寂しい気持ちを無理矢理押し込んだ。久しぶりの懐かしい景色に、勇人の足が速まる。
不意に、子供達の声が聞こえてきた。
「ん?」
見れば、小さな子供達が騒いでいる。
「どうしたの?」
「僕のボール、引っ掛かっちゃった」
1人の男の子が半泣きで木の上を指差す。そこには、サッカーボールが引っ掛かっていた。
「待ってろ。お兄ちゃんが取ってやる」
これでも、勇人は中学時代はサッカー部だったのだ。運動神経にはそれなりに自信がある。木へ登るのは大変な事ではなかった。子供達の歓声が聞こえる。が、ボールを抱えて降りようとした瞬間。パーカーの裾が引っ掛かってしまった。
「ヤバッ」
体勢を立て直そうと伸ばした指が枝を掴んだものの、その枝は折れてしまい、勇人の身体が大きく傾く。ビリッと音がしてパーカーが破れてしまった。
「うわっ」
バランスを崩した勇人の身体が宙を舞う。
周囲に悲鳴が響く中、勇人はギュッと目を閉じた。だが、訪れるはずの衝撃はどこにもない。まるで、浮いているような感覚だ。
「?」
「オレ達を置いていこうとするからだぞ。勇人様」
目を開ければ、そこにはニッコリ笑顔の悟がいた。驚く事に、彼は落下している勇人を空中で抱えて着地したのだ。悟の、少し切れ長の瞳が柔らかく細められる。太陽の光を浴びて、亜麻色の髪が金色に見えた。まるで、王子様のようだ。
「全くです。こちらの身にもなってください」
駆け寄ってきて篤が、悟の腕からさりげなく勇人を奪い取った。いきなり現れた双子のイケメンに、通りすがりの若い女性達の視線が集中する。いつの間にか周囲には人だかりができていた。
「篤っ。オレが勇人様を助けたんだぞっ」
悟の腕が再び勇人を抱き締める。
イケメン2人が子ザルのような少年を取り合っている姿に、周囲は唖然とした。
「狭いけど…」
勇人は恐縮しながら玄関のドアを開けた。街外れにあるボロいアパート。ここで、勇人は母親と14年暮らしていた。平野家の屋敷の物置の方がまだ広いぐらいだ。
「ここが、勇人様が過ごした部屋ですか」
篤と悟は珍しそうにキョロキョロと周囲を見回した。そこには、蔑んだ様子は微塵も感じられない。
「2人の私服って、初めて見たかも」
「さすがに燕尾服では目立つので」
篤の言葉に、勇人がクスッと笑う。悟は、拗ねたように窓辺で腕を組んだ。
「なんで黙って出ていったんだよ」
「着替えを取りに来ただけだって」
ここには、まだ荷物もある程度残っている。いや、残したと言った方が正しいかもしれない。心のどこかで、逃げる場所が欲しかった。
「オレ達の事が、嫌になったのか?」
悟が寂しそうに聞く。篤の表情も変わった。勇人は慌てて首を振った。
「違うよ。そうじゃない」
篤と悟の落胆した様子に、勇人は慌てて否定した。そして、しどろもどろに本当の事を話した。
「篤さんも、悟さんも、素敵すぎて。俺の事が好きっていうのも、いまだに信じられなくて…。キ、キスとかされたり、触られたりするのが、恥ずかしくて…っ」
真っ赤になりながら勇人が言うと、篤と悟の腕が同時に伸びてきた。そして、苦しいぐらいに抱き締めてくる。
「…安心しました」
「大好きだ」
ギュウギュウと抱きついてくる2人に、勇人は小さく笑みを浮かべた。ちゃんと、愛されている。そう感じる事ができて、ホッとした。
「あ、あのさ。着替えるから、退いて」
照れ隠しに言えば、篤と悟の指が服にかかる。
「へ?」
「着替えでしたら、いつものように」
「オレ達がしてやるよ」
そして、あれよあれよという間に勇人は裸にされていった。そして、結局はいつものように2人がかりで着替えさせられる。もちろん、濃厚なキス付きで。
「んっ。ダメだってば・・・っ」
篤に頬や首筋を、悟からは項や背中にキスをされながらどんどん服を脱がされていく。破れたパーカーはともかく、なぜかデニムまで脱がされてしまった。下着と靴下だけという姿で2人に挟まれる事になり、勇人はあわてふためいた。
「本気で嫌だったら、やめろって言えばいいんだよ」
とうとう悟の指が下着をずり下ろす。これで、目的は明白だ。
「あっ」
勇人は条件反射的に股間を手で隠す。だが、その手はすかさず篤によって掴まれた。全裸をじっと見つめられ、勇人の全身が桜色に染まる。
「私達は、勇人様の忠実な下僕です。勇人様がやめろと言えば、やめます」
掴んだ指先にキスをしながら、篤が意味深な視線を寄越す。そして、後ろからは悟の指が勇人の大事な部分を掴んだ。
「ん…っ」
「勇人様は、この行為を嫌がってない。そうですよね?」
篤の言葉に、勇人は小さく頷いた。
「2人の事は、とても好きだよ。俺、こんな風に誰かに必要とされた事がなかったから。触られるのも、本当は嫌じゃない」
小声で言えば、双子は顔を見合わせて微笑んだ。
「では、私達の想いを受け入れてくれるのですね」
篤の嬉しそうな笑顔に、勇人の鼓動が跳ねる。ぎこちなく頷けば、すぐに前と後ろから抱き締められた。
「とても、嬉しいです」
篤の顔がゆっくりと近づき、深く唇が重なる。離れたかと思えば、今度は悟が。交互にディープキスを繰り返されて、勇人はその心地よさにうっとりと目を閉じた。とっくに自分の気持ちには気づいていたのだから、意地を張る必要はないのかと思えた。
2人に触られてドキドキするのも、キスされて気持ちいいと思えるのも、それは2人を特別存在と思っているからだ。恋愛感情と考えて正しいだろう。
「ん?んんっ」
甘いキスに酔っていれば、篤と悟の指が同時に下半身に伸びてくる。そして、左右から激しく扱く。
「んんっ、んっ、んんーっ」
抗議の声は、双子の唇の中へと消えた。立ったまま、キスされた状態で下半身を弄られるなんて恥ずかしすぎる。イッた直後は力が入らず、篤に抱えられるように着替えさせられた。
「感じやすいんだな。勇人様」
クスクス笑いながら、悟が下着とハーフパンツを履かせてくれる。
「そこがまた愛らしい」
放心状態の勇人にシャツを着せながら、篤がその耳にキスをする。勇人は、2人に抱えられるようにして家へと帰った。
(な、なんか一気に大人になった気がする)
篤と悟に挟まれながら、勇人は頬を染めた。思春期も遅く、エッチな話題にも疎かったというのに…。篤と悟によって、心と身体がどんどん大人にされていく。
双子の寝顔をそっと見つめ、勇人は深い深い溜め息を吐いた。
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