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素直になれないお姫様と彼女を愛した王子様
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西にある小さな小さな国に、ちょっと変わったお姫様がいました。
「エレノア様。国一番のシェフが作ったケーキです」
テーブルの上には、純白の美しいケーキが置かれました。まるで雪のようなそのケーキに、誰もが溜め息を吐きます。ですが、エレノアはスプーンでそのクリー厶を一口食べるなり、
「美味しくないわ」
と一言。ガッカリしたシェフは、弟子達に抱えられながら帰っていきました。
「エレノア様。肖像画が完成致しました」
「似てないわ」
どんなに素晴らしいものを贈っても、エレノアが喜ぶ事はありませんでした。いつしか、エレノアに話しかける人はいなくなりました。
エレノアは、決して悪口が言いたいわけではないのです。
彼女だって、本当は美味しいケーキを誉めたかったし、肖像画も嬉しかったのです。でも、それができないのです。
なぜなら、彼女は生まれてから1度も自分の気持ちを素直に言えた事がないからです。ですが、その事に誰も気がついてくれません。エレノアは、いつしか『美しいが性格は最悪の姫』と呼ばれるようになりました。
あまりの哀しさに塞ぎ込み、エレノアは誰とも口をきかなくなりました。
(どうして、どうして私はあんな事を言ってしまうの?本当は、言いたくないのに)
エレノアは、部屋に閉じこもるようになってしまいました。
エレノアの噂は、北の王子様の耳にも入りました。
「見た目は美しいのに性格が悪い?面白いお姫様だな」
王子アディソンは、とにかく面白い事が大好きです。エレノアの話を聞いて、早速馬を走らせました。
(彼女がエレノア。確かに、かなりの美人だ)
城のバルコニーに、エレノアが立っていました。
長い長い金色の髪をなびかせて、エレノアが歌っています。なんて美しい声なのかと、アディソンは聞き惚れました。その声は、ガラスのように透明で、シルクのように滑らかだったのです。
(あんなに美しいのに、性格が悪いなんて)
その時、エレノアの前を蝶が飛びました。蝶は、何度かエレノアの周りを舞って、その指先に止まりました。
「まぁ、なんて不細工なんでしょう」
ニコニコしながらエレノアが言います。
(?)
アディソンは違和感を感じました。優しい笑顔でひどい言葉を言うなんて、ありえるのでしょうか。
「今日は、天気が悪いのね」
空は青空で、雲1つありません。
(もしかして、エレノア姫は・・・)
ある事実に気がついたアディソンは、その場をそっと離れました。
エレノアの元に、北の国から舞踏会への招待状が届きました。迷いましたが、エレノアは参加する事にしました。初めて会う王子アディソンは、気品があり凛々しくて、エレノアは一目で恋に落ちました。
ですが、その気持ちを伝えられません。
「エレノア姫。楽しいですか?」
アディソンが声をかけてきます。
「楽しくないです(楽しいです)」
また気持ちとは逆の事を言ってしまい、エレノアは落ち込みます。
「そうですか。それはよかった」
エレノアはアディソンの反応を不思議に思いました。アディソンは、今までの誰とも違ったのです。
「安心してください。私は、全てわかっています」
「わかってる?」
「私の事がお好きですか?」
「とっても、嫌いです(とっても好きです)」
「私も、あなたが好きです。花嫁に迎えたいほどに」
エレノアは、アディソンが自分の事を理解している事を知り嬉し涙を流しました。
数日後。
エレノアは、アディソンと結婚しました。
「私の美しい姫様。永遠にあなたを愛します」
エレノアは、アディソンの誓いの言葉にキスで答えました。
言葉よりも、確実な方法で自分の気持ちを伝えたのです。
「エレノア様。国一番のシェフが作ったケーキです」
テーブルの上には、純白の美しいケーキが置かれました。まるで雪のようなそのケーキに、誰もが溜め息を吐きます。ですが、エレノアはスプーンでそのクリー厶を一口食べるなり、
「美味しくないわ」
と一言。ガッカリしたシェフは、弟子達に抱えられながら帰っていきました。
「エレノア様。肖像画が完成致しました」
「似てないわ」
どんなに素晴らしいものを贈っても、エレノアが喜ぶ事はありませんでした。いつしか、エレノアに話しかける人はいなくなりました。
エレノアは、決して悪口が言いたいわけではないのです。
彼女だって、本当は美味しいケーキを誉めたかったし、肖像画も嬉しかったのです。でも、それができないのです。
なぜなら、彼女は生まれてから1度も自分の気持ちを素直に言えた事がないからです。ですが、その事に誰も気がついてくれません。エレノアは、いつしか『美しいが性格は最悪の姫』と呼ばれるようになりました。
あまりの哀しさに塞ぎ込み、エレノアは誰とも口をきかなくなりました。
(どうして、どうして私はあんな事を言ってしまうの?本当は、言いたくないのに)
エレノアは、部屋に閉じこもるようになってしまいました。
エレノアの噂は、北の王子様の耳にも入りました。
「見た目は美しいのに性格が悪い?面白いお姫様だな」
王子アディソンは、とにかく面白い事が大好きです。エレノアの話を聞いて、早速馬を走らせました。
(彼女がエレノア。確かに、かなりの美人だ)
城のバルコニーに、エレノアが立っていました。
長い長い金色の髪をなびかせて、エレノアが歌っています。なんて美しい声なのかと、アディソンは聞き惚れました。その声は、ガラスのように透明で、シルクのように滑らかだったのです。
(あんなに美しいのに、性格が悪いなんて)
その時、エレノアの前を蝶が飛びました。蝶は、何度かエレノアの周りを舞って、その指先に止まりました。
「まぁ、なんて不細工なんでしょう」
ニコニコしながらエレノアが言います。
(?)
アディソンは違和感を感じました。優しい笑顔でひどい言葉を言うなんて、ありえるのでしょうか。
「今日は、天気が悪いのね」
空は青空で、雲1つありません。
(もしかして、エレノア姫は・・・)
ある事実に気がついたアディソンは、その場をそっと離れました。
エレノアの元に、北の国から舞踏会への招待状が届きました。迷いましたが、エレノアは参加する事にしました。初めて会う王子アディソンは、気品があり凛々しくて、エレノアは一目で恋に落ちました。
ですが、その気持ちを伝えられません。
「エレノア姫。楽しいですか?」
アディソンが声をかけてきます。
「楽しくないです(楽しいです)」
また気持ちとは逆の事を言ってしまい、エレノアは落ち込みます。
「そうですか。それはよかった」
エレノアはアディソンの反応を不思議に思いました。アディソンは、今までの誰とも違ったのです。
「安心してください。私は、全てわかっています」
「わかってる?」
「私の事がお好きですか?」
「とっても、嫌いです(とっても好きです)」
「私も、あなたが好きです。花嫁に迎えたいほどに」
エレノアは、アディソンが自分の事を理解している事を知り嬉し涙を流しました。
数日後。
エレノアは、アディソンと結婚しました。
「私の美しい姫様。永遠にあなたを愛します」
エレノアは、アディソンの誓いの言葉にキスで答えました。
言葉よりも、確実な方法で自分の気持ちを伝えたのです。
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