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第一話
ライバルだったのに・・・
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「ったく、やってらんねーっつーのっ」
飲んでいたグラスをダンッとテーブルに置くと、宙樹はずっと心の中に溜め込んでいた気持ちを吐き出した。クラッシックが流れる静かなバーでは、その声はかなり大きく響いた。数人の客が、チラチラとカウンターを振り向く。
「宙樹さん。飲みすぎですよ」
顔馴染みのバーテンダーが軽くたしなめるが、今の宙樹にはその忠告に耳を傾ける余裕はなかった。
「オレがさ、ホストになったのは、早く金を貯めたかったからなんだ。自分の店が欲しかったのっ。ところが、蓋を開けてみたらなんだよ。どんどん指名は減るわ、客から文句言われるは・・・っ。話が違うっつーのっ」
愚痴る宙樹に、バーテンダーもさすがに呆れ返った。
(どうりで、固定客がつかないわけだ)
宙樹は、黙っていればそのルックスはアイドル並だ。丸顔に溢れそうなぐらいの大きな瞳。まるで口紅をつけたように赤い唇。もし、宙樹が雑誌やテレビに出ても誰も驚かないだろう。
そのため、宙樹には女性客がすぐに寄ってくる。だが、正直過ぎる性格と正義感の強さから次々と客離れてしていったのだ。おかげで、今や最下位である。
「ずいぶん、荒れているね」
カウンターでグッタリしていれば、誰かが肩を叩く。見上げれば、そこにはいけすかない顔があった。
「・・・なんだ。お前か」
ライバル店である「R」で、長年No.1ホストとして君臨する隆人。柔らかな表情と知的な雰囲気が人気で、彼に会いたくてホストデビューする女性もたくさんいる。宙樹は、隆人に対してあまりいい印象を持ってはいなかった。
「なんだとはご挨拶だね。彼と同じ物を」
さっきまで宙樹に困り果てていたバーテンダーは、たったそれだけで機嫌を良くしてしまった。隆人には不思議な魅力がある。男らしい顔立ちなのに、どこか色気を感じさせる。それでいて、人の心を掴むのが早いのだ。同じ男とわかっていても、隆人になら抱かれてもいいというホストもたくさんいた。努力では決して手に入らない、持って生まれた魅力。だから、宙樹は彼が嫌いなのだ。
「話ぐらいなら聞くよ」
宙樹は、気がつくと日頃の不平不満を隆人に話していた。よほど酔っていたのか、同僚の愚痴まで。
「漣の奴。オレにはホストは向いてないとか言いやがる。なんなら、自分が面倒みてやるとか。バカにしやがってっ」
「・・・へぇ」
隆人は、時おり相槌を打つぐらいで特になんの感想も言わなかった。だから、宙樹は思う存分溜まりに溜まった不満をぶちまけた。ぶちまけたら、なんだかひどく眠くて気がついたら意識を沈めていた。
「ん・・・っ」
なんだかとっても気持ちいい。宙樹は、甘えたような自分の声に、パッと目を覚ました。
「起きた?」
爽やかな笑顔が、顔の目前にある。周囲を見渡せば、見覚えない部屋だった。モデルハウスのようなインテリアに、鮮やかな観葉植物。おまけに、Tシャツにパンツ1枚という格好で隆人と抱き合うように寝ている。
「これ、どういう事だよっ」
まだ酔っているせいか、思考が追い付かない。なぜ、見知らぬ部屋で服を脱がされているのか。なぜ、隆人と抱き合って眠ってたのか。わけがわからず慌てていれば、笑い声が聞こえてくる。
「面白いね。君って」
隆人は、冷たいミネラルウォーターが入ったグラスを持ってくると宙樹に差し出した。
「どうぞ」
「あ、りがとう」
バーの閉店時間だというのに、宙樹がなかなか起きないために隆人がとりあえず自宅へ運んでくれたらしい。
「スーツは、シワになるから脱がせておいたよ」
見れば、自分のスーツがハンガーにかかっている。
「そ、そっか。ありがと」
「で、酔った君がなかなか離してくれないから一緒に寝てただけ」
言いながら、隆人の視線が宙樹の下半身に向けられる。
「勃ってるよ」
隆人の指に突っつかれて、宙樹は初めて自分の身体が反応しているのに気がついた。慌てて隠そうとしたが、力が入らないためうまくいかない。
「あ、あのっ。これは、その・・・っ」
「恥ずかしがることないよ。男だったら、みんなこうなる」
「うわっ。やめろよっ」
隆人の指が、スルッと下着の中に潜り込む。
「手伝ってあげようか?辛いでしょ?」
「えっ。あっ、やめろ・・・っ」
まるで、二人羽織か操り人形のような格好で扱かれる。隆人の大きな手が包みこむように、ゆっくり大きく上下に動かされる。ゾクッと背中を慣れた快感が駆け抜けた。自分の手の感触とも、女の指の感触とも違う。
「はぁっ、あっ、あ・・・っ」
宙樹の太ももがブルブル震える。早くイキたくてイキたくて仕方なかった。
「はっ、あっ、どうして・・・」
なぜ、今日に限ってなかなかイケないのかわからなかった。おそらく、普段とは違うシチュエーションだからだろう。だが、出口まで出かかっている熱が体内で渦巻く。
「落ち着いて。今、イカせてあげるから」
隆人の唇が、優しく耳を挟みながら囁く。
「あ・・・んんっ、やっ、あっ」
隆人の唾液で濡れた指が、優しく肛門に入り込んだ。くすぐるように、ゆっくりゆっくりと円を描きながら奥を目指す。
「ふぁっ、あっ、あっ、んんっ、あっ、ああっ」
いきなりグッと奥まで指を挿入された瞬間。宙樹は、勢いよく白濁を吹き出していた。
「とっても可愛かったよ」
囁かれ、宙樹はあまりの恥ずかしさに涙が溢れた。いくら酔っていたからといって、男に尻の穴を弄られて達するなんて信じられなかったのだ。だが、意外にもそんな宙樹に隆人があわてふためいた。
「ごめんっ。あんまり君が可愛かったから、つい。気持ち悪い?嫌だった?」
ティッシュで顔を拭かれながら、宙樹は必死な隆人になぜか笑いが込み上げてきた。
(こんな顔もするんだ)
いつも澄ました顔していけすかない奴だと思っていたのに、なんだか急に親近感が沸いてきて宙樹は笑い声をあげた。隆人は、しばらくポカンとその光景を見ていたが釣られたように笑いだした。
「オレの事が好き?マジで?」
ベタベタする下着が気持ち悪いからと全裸になった宙樹に、隆人が戸惑ったように視線をさ迷わせる。
「挑発してるの?」
「挑発?こんな裸見ても、仕方な・・・」
言いかけて、宙樹は固まった。目の前で、隆人の股間は形を変えていたのだ。気まずい空気が流れる。
「宙樹が嫌でなかったら、してもいい?」
隆人の指が、ゆっくりと身体に伸びてくる。なぜか、抵抗する気にはなれなかった。
「さ、最後までしないなら、ちょっとだけなら・・・」
言った瞬間。押し倒された。そして、身体中を愛撫され甘い声を上げる事となった。
そして、宙樹は隆人と身体の関係を持つようになった。宙樹としてはなし崩しに口説かれた感じだが、それでも隆人の告白は素直に嬉しかった。それは、隆人が真剣だという事がわかったから。そして、宙樹も隆人の事が気になっていたから。
お互い同僚に見られたらマズいと、外で会う事はほとんどなかった。
「隆人って、物好きだよなぁ」
風呂上がりにゲームをしながら、宙樹が楽しそうに笑いかける。隆人は、宙樹のためにせっせと夜食を作りながら苦笑した。
「そんな事ないよ」
「だって、オレみたいな奴を好きになるなんてさ。もっと、いい男いるだろ?そっちのクラブに、すっごい綺麗な奴がいるって聞いたよ」
「ああ。1人ね」
隆人は、出来上がったクリームパスタを運んでくると、宙樹に差し出した。宙樹が口を開ければ、そのまま口の中へと入れられる。まさに、いたれりつくせりだった。
そして、朝までベッドの中で過ごすのは当たり前になっていた。
「なぁ。オレも、したい」
ベッドの上で、当たり前のように股間に顔を埋めてくる隆人を宙樹が止める。隆人が困ったように笑った。
「無理しなくていいよ。初心者には辛いから」
「オレも、したい。自分だけ気持ちいいのって、フェアじゃない」
「・・・わかったよ。全く、頑固なんだから」
宙樹はベッドに寝転んだ隆人の下半身に顔を寄せた。そして、目の前で屹立している隆人自身を躊躇いがちに口に入れた。
(マズ・・・ッ)
これが、素直な感想だった。あんまりいつも隆人が美味しそうに頬張るから、てっきり美味しいものだと思ったのだ。実際は、かなりマズい。でも、いつも隆人がしてくれている姿を思い出しながら、宙樹は舌で先端を突っついたり根本までくわえたりした。微かに隆人が感じている声が聞こえてきて、宙樹は普段とは違うゾクゾク感を感じだ。
「あ・・・っ」
隆人の指が肛門をなぞる。そして、ゆっくりと中へ入り込んできた。クチュックチュッと音を出しながら、指が激しく出し入れされる。その意図がわからない宙樹ではない。
「バカ・・・ッ、それは、ダメだって・・・っ」
指で左右に広げられ、更に奥を弄られる。凄まじい快感が身体中を走った。
「あっ、んっ、はっっ、あっ」
宙樹が隆人に交際する条件として出したのは、最後まではしない事だった。やっぱり、それはかなり怖かったから。
「僕のを入れたりしないから、大丈夫。気持ちいいでしょ?」
「・・・いい、けど」
宙樹は、日に日に隆人といるのが当たり前になっていた。彼の腕の中があまりにも居心地がよくて。
「大好きだよ。宙樹」
何度も囁かれ、指や舌で愛撫され宙樹はたまらない幸福を感じた。
「お前。最近、変だぞ」
鼻唄混じりに店の前で掃除をしていれば、漣が不満気に唇を尖らせる。なにかと宙樹に突っかかってくる同僚で嫌な奴だった。
「変って、なにがだよ」
「この間、隆人といただろ?」
ギクリとした。できるだけバレないようにしていたつもりだが、しっかり見られていたらしい。
「あいつとどういう関係だよ」
「どうって、別に・・・」
「お前。利用されてんだよ」
漣が吐き捨てるように言う。宙樹としては、そんな風に考えた事もなかった。漣が、宙樹の襟を左右に広げる。そこには、隆人に付けられた跡が広がっていた。
「離せよっ。恥ずかしいだろっ」
「・・・信じられない」
漣が青ざめる。宙樹は、襟を元に戻すと漣を不思議そうに見つめた。漣が、更に指を伸ばそうとした時。
「僕の宙樹に触らないでもらおうか」
静かな、それでいて怒気を含んだ声が響いた。見れば、仕事モードの隆人が腕を組んで立っている。
「隆人。どうして、ここに・・・」
「どうしてって、働きに来たよ」
「え?」
隆人の言葉に宙樹が驚く。
「今日から僕たちはライバルじゃない。仲間になったんだ」
隆人がニッコリ笑う。
驚く事に、隆人は密かに互いの店のオーナーにかけあってうまく統合させたのだ。
「わかったろ。宙樹は諦めろ」
隆人が睨めば、漣が舌打ちをして慌てて店の中へと入っていった。
「これで、堂々と宙樹と会える」
隆人が近づいてきて、宙樹を優しく包み込む。
「そのために統合?なんだかなぁ」
宙樹が苦笑すると、隆人の腕が腰を抱き寄せてくる。
「宙樹。今夜もうちにおいで」
隆人が、宙樹の耳に唇を寄せた。宙樹は、安心したように笑みを浮かべると誘われるまま唇を寄せる。
店の前だという事も忘れ、たっぷりとキスを楽しんだ。
飲んでいたグラスをダンッとテーブルに置くと、宙樹はずっと心の中に溜め込んでいた気持ちを吐き出した。クラッシックが流れる静かなバーでは、その声はかなり大きく響いた。数人の客が、チラチラとカウンターを振り向く。
「宙樹さん。飲みすぎですよ」
顔馴染みのバーテンダーが軽くたしなめるが、今の宙樹にはその忠告に耳を傾ける余裕はなかった。
「オレがさ、ホストになったのは、早く金を貯めたかったからなんだ。自分の店が欲しかったのっ。ところが、蓋を開けてみたらなんだよ。どんどん指名は減るわ、客から文句言われるは・・・っ。話が違うっつーのっ」
愚痴る宙樹に、バーテンダーもさすがに呆れ返った。
(どうりで、固定客がつかないわけだ)
宙樹は、黙っていればそのルックスはアイドル並だ。丸顔に溢れそうなぐらいの大きな瞳。まるで口紅をつけたように赤い唇。もし、宙樹が雑誌やテレビに出ても誰も驚かないだろう。
そのため、宙樹には女性客がすぐに寄ってくる。だが、正直過ぎる性格と正義感の強さから次々と客離れてしていったのだ。おかげで、今や最下位である。
「ずいぶん、荒れているね」
カウンターでグッタリしていれば、誰かが肩を叩く。見上げれば、そこにはいけすかない顔があった。
「・・・なんだ。お前か」
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「なんだとはご挨拶だね。彼と同じ物を」
さっきまで宙樹に困り果てていたバーテンダーは、たったそれだけで機嫌を良くしてしまった。隆人には不思議な魅力がある。男らしい顔立ちなのに、どこか色気を感じさせる。それでいて、人の心を掴むのが早いのだ。同じ男とわかっていても、隆人になら抱かれてもいいというホストもたくさんいた。努力では決して手に入らない、持って生まれた魅力。だから、宙樹は彼が嫌いなのだ。
「話ぐらいなら聞くよ」
宙樹は、気がつくと日頃の不平不満を隆人に話していた。よほど酔っていたのか、同僚の愚痴まで。
「漣の奴。オレにはホストは向いてないとか言いやがる。なんなら、自分が面倒みてやるとか。バカにしやがってっ」
「・・・へぇ」
隆人は、時おり相槌を打つぐらいで特になんの感想も言わなかった。だから、宙樹は思う存分溜まりに溜まった不満をぶちまけた。ぶちまけたら、なんだかひどく眠くて気がついたら意識を沈めていた。
「ん・・・っ」
なんだかとっても気持ちいい。宙樹は、甘えたような自分の声に、パッと目を覚ました。
「起きた?」
爽やかな笑顔が、顔の目前にある。周囲を見渡せば、見覚えない部屋だった。モデルハウスのようなインテリアに、鮮やかな観葉植物。おまけに、Tシャツにパンツ1枚という格好で隆人と抱き合うように寝ている。
「これ、どういう事だよっ」
まだ酔っているせいか、思考が追い付かない。なぜ、見知らぬ部屋で服を脱がされているのか。なぜ、隆人と抱き合って眠ってたのか。わけがわからず慌てていれば、笑い声が聞こえてくる。
「面白いね。君って」
隆人は、冷たいミネラルウォーターが入ったグラスを持ってくると宙樹に差し出した。
「どうぞ」
「あ、りがとう」
バーの閉店時間だというのに、宙樹がなかなか起きないために隆人がとりあえず自宅へ運んでくれたらしい。
「スーツは、シワになるから脱がせておいたよ」
見れば、自分のスーツがハンガーにかかっている。
「そ、そっか。ありがと」
「で、酔った君がなかなか離してくれないから一緒に寝てただけ」
言いながら、隆人の視線が宙樹の下半身に向けられる。
「勃ってるよ」
隆人の指に突っつかれて、宙樹は初めて自分の身体が反応しているのに気がついた。慌てて隠そうとしたが、力が入らないためうまくいかない。
「あ、あのっ。これは、その・・・っ」
「恥ずかしがることないよ。男だったら、みんなこうなる」
「うわっ。やめろよっ」
隆人の指が、スルッと下着の中に潜り込む。
「手伝ってあげようか?辛いでしょ?」
「えっ。あっ、やめろ・・・っ」
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「はぁっ、あっ、あ・・・っ」
宙樹の太ももがブルブル震える。早くイキたくてイキたくて仕方なかった。
「はっ、あっ、どうして・・・」
なぜ、今日に限ってなかなかイケないのかわからなかった。おそらく、普段とは違うシチュエーションだからだろう。だが、出口まで出かかっている熱が体内で渦巻く。
「落ち着いて。今、イカせてあげるから」
隆人の唇が、優しく耳を挟みながら囁く。
「あ・・・んんっ、やっ、あっ」
隆人の唾液で濡れた指が、優しく肛門に入り込んだ。くすぐるように、ゆっくりゆっくりと円を描きながら奥を目指す。
「ふぁっ、あっ、あっ、んんっ、あっ、ああっ」
いきなりグッと奥まで指を挿入された瞬間。宙樹は、勢いよく白濁を吹き出していた。
「とっても可愛かったよ」
囁かれ、宙樹はあまりの恥ずかしさに涙が溢れた。いくら酔っていたからといって、男に尻の穴を弄られて達するなんて信じられなかったのだ。だが、意外にもそんな宙樹に隆人があわてふためいた。
「ごめんっ。あんまり君が可愛かったから、つい。気持ち悪い?嫌だった?」
ティッシュで顔を拭かれながら、宙樹は必死な隆人になぜか笑いが込み上げてきた。
(こんな顔もするんだ)
いつも澄ました顔していけすかない奴だと思っていたのに、なんだか急に親近感が沸いてきて宙樹は笑い声をあげた。隆人は、しばらくポカンとその光景を見ていたが釣られたように笑いだした。
「オレの事が好き?マジで?」
ベタベタする下着が気持ち悪いからと全裸になった宙樹に、隆人が戸惑ったように視線をさ迷わせる。
「挑発してるの?」
「挑発?こんな裸見ても、仕方な・・・」
言いかけて、宙樹は固まった。目の前で、隆人の股間は形を変えていたのだ。気まずい空気が流れる。
「宙樹が嫌でなかったら、してもいい?」
隆人の指が、ゆっくりと身体に伸びてくる。なぜか、抵抗する気にはなれなかった。
「さ、最後までしないなら、ちょっとだけなら・・・」
言った瞬間。押し倒された。そして、身体中を愛撫され甘い声を上げる事となった。
そして、宙樹は隆人と身体の関係を持つようになった。宙樹としてはなし崩しに口説かれた感じだが、それでも隆人の告白は素直に嬉しかった。それは、隆人が真剣だという事がわかったから。そして、宙樹も隆人の事が気になっていたから。
お互い同僚に見られたらマズいと、外で会う事はほとんどなかった。
「隆人って、物好きだよなぁ」
風呂上がりにゲームをしながら、宙樹が楽しそうに笑いかける。隆人は、宙樹のためにせっせと夜食を作りながら苦笑した。
「そんな事ないよ」
「だって、オレみたいな奴を好きになるなんてさ。もっと、いい男いるだろ?そっちのクラブに、すっごい綺麗な奴がいるって聞いたよ」
「ああ。1人ね」
隆人は、出来上がったクリームパスタを運んでくると、宙樹に差し出した。宙樹が口を開ければ、そのまま口の中へと入れられる。まさに、いたれりつくせりだった。
そして、朝までベッドの中で過ごすのは当たり前になっていた。
「なぁ。オレも、したい」
ベッドの上で、当たり前のように股間に顔を埋めてくる隆人を宙樹が止める。隆人が困ったように笑った。
「無理しなくていいよ。初心者には辛いから」
「オレも、したい。自分だけ気持ちいいのって、フェアじゃない」
「・・・わかったよ。全く、頑固なんだから」
宙樹はベッドに寝転んだ隆人の下半身に顔を寄せた。そして、目の前で屹立している隆人自身を躊躇いがちに口に入れた。
(マズ・・・ッ)
これが、素直な感想だった。あんまりいつも隆人が美味しそうに頬張るから、てっきり美味しいものだと思ったのだ。実際は、かなりマズい。でも、いつも隆人がしてくれている姿を思い出しながら、宙樹は舌で先端を突っついたり根本までくわえたりした。微かに隆人が感じている声が聞こえてきて、宙樹は普段とは違うゾクゾク感を感じだ。
「あ・・・っ」
隆人の指が肛門をなぞる。そして、ゆっくりと中へ入り込んできた。クチュックチュッと音を出しながら、指が激しく出し入れされる。その意図がわからない宙樹ではない。
「バカ・・・ッ、それは、ダメだって・・・っ」
指で左右に広げられ、更に奥を弄られる。凄まじい快感が身体中を走った。
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宙樹が隆人に交際する条件として出したのは、最後まではしない事だった。やっぱり、それはかなり怖かったから。
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「・・・いい、けど」
宙樹は、日に日に隆人といるのが当たり前になっていた。彼の腕の中があまりにも居心地がよくて。
「大好きだよ。宙樹」
何度も囁かれ、指や舌で愛撫され宙樹はたまらない幸福を感じた。
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鼻唄混じりに店の前で掃除をしていれば、漣が不満気に唇を尖らせる。なにかと宙樹に突っかかってくる同僚で嫌な奴だった。
「変って、なにがだよ」
「この間、隆人といただろ?」
ギクリとした。できるだけバレないようにしていたつもりだが、しっかり見られていたらしい。
「あいつとどういう関係だよ」
「どうって、別に・・・」
「お前。利用されてんだよ」
漣が吐き捨てるように言う。宙樹としては、そんな風に考えた事もなかった。漣が、宙樹の襟を左右に広げる。そこには、隆人に付けられた跡が広がっていた。
「離せよっ。恥ずかしいだろっ」
「・・・信じられない」
漣が青ざめる。宙樹は、襟を元に戻すと漣を不思議そうに見つめた。漣が、更に指を伸ばそうとした時。
「僕の宙樹に触らないでもらおうか」
静かな、それでいて怒気を含んだ声が響いた。見れば、仕事モードの隆人が腕を組んで立っている。
「隆人。どうして、ここに・・・」
「どうしてって、働きに来たよ」
「え?」
隆人の言葉に宙樹が驚く。
「今日から僕たちはライバルじゃない。仲間になったんだ」
隆人がニッコリ笑う。
驚く事に、隆人は密かに互いの店のオーナーにかけあってうまく統合させたのだ。
「わかったろ。宙樹は諦めろ」
隆人が睨めば、漣が舌打ちをして慌てて店の中へと入っていった。
「これで、堂々と宙樹と会える」
隆人が近づいてきて、宙樹を優しく包み込む。
「そのために統合?なんだかなぁ」
宙樹が苦笑すると、隆人の腕が腰を抱き寄せてくる。
「宙樹。今夜もうちにおいで」
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