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第二話
花を照らす月
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深夜。椿は、微かな音にハッと目を覚ました。すぐに布団から出て部屋の隅へ行けば、障子が音もなく開けられる。
「椿ちゃん、見~っけ」
かなり泥酔した様子の亜也彦が、だらしなく着物をはだけさせた格好で入ってきた。青ざめた椿は、背中を丸めてガタガタと震えるしかできなかった。
平沼家に養子として迎えられた日から、椿は亜也彦が大嫌いだった。舐めるように見つめてくる視線も、下心丸出しで触れてくる指も何もかも苦手だった。
「待っててねぇ。すぐに気持ちよくさせてあげるから」
「ひ・・・っ」
亜也彦の指が、椿の細い足首を掴んだ瞬間。
「触るな」
低い声と同時に、ドスンという鈍い音が響いた。
「え?」
驚いた椿が顔を上げれば、そこにはスラリとした黒頭巾の男が立っていた。顔は見えないが、椿には誰なのかすぐにわかった。焦げ茶色の瞳に涙が浮かぶ。
「・・・涼雅、だよね?」
震える声で呼びかければ、男が黒頭巾を外した。途端に広がる金色の髪。すっかり大人の顔になった涼雅がそこには立っていた。
椿は立ち上がると、差し伸べられた腕に躊躇いなく身を投げ出した。涼雅の腕が、力強く椿を抱き締める。椿は、数年ぶりに声を上げて泣いた。
「ちょっと待ってろ」
涼雅は、亜也彦の大きな身体を軽々担ぐと外へと放りだした。いいだけ酔っているため、目が覚めても夢だと思っているだろう。
「道案内。ご苦労さま」
涼雅はクスッと笑うと、音もなく室内へと戻った。
涼雅は、部屋の隅で椿を抱き締めながら事の経緯を教えてくれた。椿が孤児院を出たすぐ後に、和菓子職人の深山源造という男にもらわれた事。今は、『蜜月堂』という和菓子屋を営んでいる事。ずっと、椿を探していた事。
「平沼が孤児を外国に売り飛ばしてるって聞いた時は、さすがに焦ったよ」
椿の長い黒髪を指で玩びながら、涼雅が耳元で囁く。幼い頃に互いが抱いた恋心は、少しだけ形を変えていた。それは、2人が大人になった事を物語っている。
「そんな時に、あのバカ息子に出くわしたんだ」
居酒屋で声を荒げながら椿の自慢話をしていた亜也彦。涼雅は、そこに可能性を見つけた。
「まさか、こんな遠くにいるとは思わなかった。おまけに、店の名前は園田だもんな」
呉服屋は、そもそも隠れ蓑でしかなかった。知恵が回る亜耶子は、偽名で呉服屋を営んでいたのだ。
「でも、これでやっとお前を自由にできる」
涼雅が椿の頬を両手で包んだ。自然と互いの顔を近づけ、柔らかく唇が重なる。口づけはどんどん深くなり、顔を離した時にはかなり息が上がっていた。
「ここから出よう。椿」
涼雅が椿の腕を引き寄せる。だが、椿は一歩を踏み出さなかった。
「・・・椿?」
「もう、いいんだ。また会えただけで、嬉しかった」
椿が賢明に笑みを作る。だが、真珠のような大粒の涙がポロポロとこぼれ落ちた。涼雅が慌ててその涙を手で拭った。
「どうしてだ、椿っ。助けに来たのに・・・っ」
「どうせ、すぐに追手がくる。もう、何度も逃げようとしたんだ」
「そんなの、オレが・・・っ」
涼雅が椿の身体を抱き締めた時、外で亜耶子の声がした。涼雅はチッと舌打ちをすると、椿に軽く口づる。
「また来る」
そう言って、涼雅は窓から外へと逃げ出した。まさに風のごとく、その気配はすぐに感じられなくなった。椿は、急いで布団に潜り込むと眠ったふりをした。
数日後。上機嫌の亜耶子が椿の部屋を訪れた。
「え?今、なんて・・・」
「イギリスだよ、イギリス。お前はイギリスの男に買われたんだ」
椿は顔を青くした。
「お前の事を話したら、どうしても欲しいっていうんだよ」
塚原夫人が、満面の笑みを浮かべて札束を椿の前に積み重ねる。
「前金だって、えらくいい男が持ってきたんだよ」
高らかに笑う亜耶子に、椿は絶望を感じた。
「いつかは高く売れると思ったけど、まさかここまでの値がつくとはね」
夫人が高らかに笑いながら離れを出ていく。出発は明後日ということだった。
1人になった椿は、その場にへたり込んだ。まさか、こんなに早く涼雅と離れるとは思ってもいなかった。
「離れたくないよ・・・っ」
1度だけ涼雅に会えれば、それでいいと思っていた。でも、違った。声を交わしたらもっと話したくなった。見つめられたら、もっと見てほしいと思った。そして、唇を重ねたらもっと深く感じたくなった。
「こんなのってないよ・・・」
椿は、力なく呟いた。
その夜。涼雅が闇に紛れるようにしてやってきた。椿は、涼雅の顔を飽きるまで見つめた。2度と忘れないために・・・。
「椿?何か、あったのか?」
明後日。椿は、イギリスに発つ。どんなに涼雅が好きでも、一緒にはいられない。
「椿?どうしたんだ?」
いつもと違う椿の様子に、涼雅は戸惑ったようだ。椿は、震える指で帯を解いていく。
「やめろっ。どうしたんだよ」
腕を掴んで涼雅が止めれば、椿が縋るような視線を涼雅に向けた。
「僕は、もう涼雅の側にいられないんだ」
「椿?」
椿は、外国に自分が売られる話をした。涼雅はかなり驚いたようだが、特になにも言わなかった。
「最後に、涼雅に抱いてほしい。ずっと、忘れないために」
スルスルッと帯を解き、自分から裸を晒すのはとても勇気がいった。最後の1枚を床に落とし生まれたままの姿になった椿は、両手を広げた。
「こんな身体じゃ、抱く気になれない?」
触れてくれない涼雅に、椿は不安になる。女性とは違う、こんな痩せ細った身体には、魅力などあるわけがない。
「バカ野郎っ。俺がどれだけ我慢してるかも知らないでっ」
涼雅は細くて今にも壊れそうな椿を抱き締めると、そのまま布団に押し倒し深く口づけた。口の中に入り込んだ舌が、まるで指のように動き椿を翻弄する。互いの唾液が混ざり合うと、こんなにも甘いのだということを初めて知った。椿は、涼雅の金色の髪に指を差し込むともっと激しくしてほしくて、自分の方へと引き寄せる。
「んっ」
飲み込めなかった唾液が溢れて、椿の首筋を濡らしていく。その感触さえも、椿にとってはまるで愛撫のようだった。
涼雅の掌が、椿の胸を優しく撫で回す。桜色の小さな乳首をそっと指先で摘ままれ、クリッと捻られる。それだけなのに、椿の背中がまるで電流が走ったような衝撃があった。背中から腰にかけてのラインを撫でられながら、椿は両方の乳首を交互に弄られ続けた。
「あっ・・・っ」
ムズムズとした感覚が股間に集まってきて、そこが熱く硬くなっていく。椿が恥ずかしそうに顔を背けると、涼雅は露になった首筋を舌で吸いながら、立ち上がった椿の性器を指でさするように触れてきた。
「ふ・・・っ、あ・・・っ」
緩やかな愛撫は、椿の快楽を引き出し、更に大きくしていく。
「ここが、いいんだな?」
尖端を親指の腹でグリグリと押しながら涼雅が耳元で囁く。その吐息にすら、椿はビクビクと身体を震わせた。やがて、涼雅の指がスピードを増していく。
「んっ、んんっ、んっ、んーっ」
あまりの快感に、椿は声を押さえることができなかった。自分の両手で口を押さえて、そのすさまじい快感に耐えた。広げた膝がブルブルと震え、やがて弛緩する。
「椿の、すごく甘い。まるで、蜂蜜みたいだ」
指の合間から滴り落ちる椿の蜜を、涼雅が舌で舐め取る。その光景が妙にいやらしく見えて、椿は耳まで真っ赤になった。
「き、汚いよ。そんなのっ」
「汚くなんかない。椿の身体で汚いところなんて1つもない」
涼雅は、その言葉を証明するように、椿の裸体を丁寧に舐めた。乳首を甘噛みされ椿がのけぞれば、涼雅の大きな掌が丸くて柔らかな尻を撫で回す。
「あっ、んっ」
「まるで、全身が砂糖でできているみたいだな。どこもかしこも甘い」
椿の足首を左右に広げると、その奥に涼雅は口移しで蜜を垂らした。小さな蕾はビクビクと震え、まるで涼雅を誘うようにヒクヒクした。
花の蜜を吸う蝶のように、涼雅は椿の性器を貪った。あまりにも強い刺激に耐えられず、椿は声を喘ぎ続けた。も
「どこにも行かせないっ。椿を、2度と離すものかっ」
「涼雅・・・っ」
涼雅は、自身の指に唾液を絡ませると目的の場所をゆっくりなぞった。不安げに自分を見上げる椿に、優しく囁く。
「少し、痛いぞ」
入り口にそっと爪先を入れれば、椿の身体が強張った。涼雅は、椿の身体から緊張が解けるまで繰り返し指を差し込む。
「もう、いいから、涼雅。早く、いれ、て」
椿が弱々しい声で囁く。早く涼雅と1つになりたかった。隙間がないぐらい涼雅と繋がって、そのまま溶けてしまいたかった。
「力を抜くんだ。椿」
「ど、うやって?」
椿の質問に、涼雅はなにも言わず唇を重ねた。舌を深く絡め、椿がその気持ちよさから無意識に力を抜いた瞬間。涼雅が自身を埋める。椿は瞳を大きく見開き、自分の体内に入ってくる涼雅を受け止めた。
「あっ、うあっ、はあっ、ああっ」
硬くて熱い涼雅自身が、ジリジリと奥へと進む。その度に、椿は涼雅の背中に爪を立ててその痛みに耐えた。
「大丈夫か?」
汗だくになっている涼雅の、艶っぽい表情にゾクッときた。指を伸ばし、大好きな金色の髪を指に絡める。黄金に輝くその髪は、優しい月のように奇麗だと椿はぼんやり思った。
「もっと、乱暴にして、いいよ」
体内に、涼雅の鼓動を感じる。動かないのが辛いということも。椿が言えば、涼雅が切なげに眉を寄せる。
「バカなこと言うなっ。絶対に傷つけたりしないっ」
「涼雅・・・」
涼雅が緩やかに腰を動かす。
中を擦られ、椿の中に痛みだけではない。確かな快楽があった。
「椿っ。愛してる。ずっと、ずっと言いたかった。初めて会った時から、俺にはお前しかいない。だから、ずっと俺の側にいろっ」
背中を抱き締められ、より深く涼雅と繋がって、椿の心が満たされる。
「んっ、んんっ、あっ、あっ、涼雅っ、離さないでっ。もっと奥まで、もっと・・・っ」
うわ言のように何度も繰り返しながら、椿は涼雅と1つになった。熱くて、痛くて、気持ちよかった。愛する人と結ばれるという事が、これほどまでに幸福をくれるのかと椿は初めて知った。
(これで、大丈夫。涼雅と離れても生きていける)
椿は、涼雅の背中に爪を立てると熱い蜜を迸らせた。
「椿ちゃん、見~っけ」
かなり泥酔した様子の亜也彦が、だらしなく着物をはだけさせた格好で入ってきた。青ざめた椿は、背中を丸めてガタガタと震えるしかできなかった。
平沼家に養子として迎えられた日から、椿は亜也彦が大嫌いだった。舐めるように見つめてくる視線も、下心丸出しで触れてくる指も何もかも苦手だった。
「待っててねぇ。すぐに気持ちよくさせてあげるから」
「ひ・・・っ」
亜也彦の指が、椿の細い足首を掴んだ瞬間。
「触るな」
低い声と同時に、ドスンという鈍い音が響いた。
「え?」
驚いた椿が顔を上げれば、そこにはスラリとした黒頭巾の男が立っていた。顔は見えないが、椿には誰なのかすぐにわかった。焦げ茶色の瞳に涙が浮かぶ。
「・・・涼雅、だよね?」
震える声で呼びかければ、男が黒頭巾を外した。途端に広がる金色の髪。すっかり大人の顔になった涼雅がそこには立っていた。
椿は立ち上がると、差し伸べられた腕に躊躇いなく身を投げ出した。涼雅の腕が、力強く椿を抱き締める。椿は、数年ぶりに声を上げて泣いた。
「ちょっと待ってろ」
涼雅は、亜也彦の大きな身体を軽々担ぐと外へと放りだした。いいだけ酔っているため、目が覚めても夢だと思っているだろう。
「道案内。ご苦労さま」
涼雅はクスッと笑うと、音もなく室内へと戻った。
涼雅は、部屋の隅で椿を抱き締めながら事の経緯を教えてくれた。椿が孤児院を出たすぐ後に、和菓子職人の深山源造という男にもらわれた事。今は、『蜜月堂』という和菓子屋を営んでいる事。ずっと、椿を探していた事。
「平沼が孤児を外国に売り飛ばしてるって聞いた時は、さすがに焦ったよ」
椿の長い黒髪を指で玩びながら、涼雅が耳元で囁く。幼い頃に互いが抱いた恋心は、少しだけ形を変えていた。それは、2人が大人になった事を物語っている。
「そんな時に、あのバカ息子に出くわしたんだ」
居酒屋で声を荒げながら椿の自慢話をしていた亜也彦。涼雅は、そこに可能性を見つけた。
「まさか、こんな遠くにいるとは思わなかった。おまけに、店の名前は園田だもんな」
呉服屋は、そもそも隠れ蓑でしかなかった。知恵が回る亜耶子は、偽名で呉服屋を営んでいたのだ。
「でも、これでやっとお前を自由にできる」
涼雅が椿の頬を両手で包んだ。自然と互いの顔を近づけ、柔らかく唇が重なる。口づけはどんどん深くなり、顔を離した時にはかなり息が上がっていた。
「ここから出よう。椿」
涼雅が椿の腕を引き寄せる。だが、椿は一歩を踏み出さなかった。
「・・・椿?」
「もう、いいんだ。また会えただけで、嬉しかった」
椿が賢明に笑みを作る。だが、真珠のような大粒の涙がポロポロとこぼれ落ちた。涼雅が慌ててその涙を手で拭った。
「どうしてだ、椿っ。助けに来たのに・・・っ」
「どうせ、すぐに追手がくる。もう、何度も逃げようとしたんだ」
「そんなの、オレが・・・っ」
涼雅が椿の身体を抱き締めた時、外で亜耶子の声がした。涼雅はチッと舌打ちをすると、椿に軽く口づる。
「また来る」
そう言って、涼雅は窓から外へと逃げ出した。まさに風のごとく、その気配はすぐに感じられなくなった。椿は、急いで布団に潜り込むと眠ったふりをした。
数日後。上機嫌の亜耶子が椿の部屋を訪れた。
「え?今、なんて・・・」
「イギリスだよ、イギリス。お前はイギリスの男に買われたんだ」
椿は顔を青くした。
「お前の事を話したら、どうしても欲しいっていうんだよ」
塚原夫人が、満面の笑みを浮かべて札束を椿の前に積み重ねる。
「前金だって、えらくいい男が持ってきたんだよ」
高らかに笑う亜耶子に、椿は絶望を感じた。
「いつかは高く売れると思ったけど、まさかここまでの値がつくとはね」
夫人が高らかに笑いながら離れを出ていく。出発は明後日ということだった。
1人になった椿は、その場にへたり込んだ。まさか、こんなに早く涼雅と離れるとは思ってもいなかった。
「離れたくないよ・・・っ」
1度だけ涼雅に会えれば、それでいいと思っていた。でも、違った。声を交わしたらもっと話したくなった。見つめられたら、もっと見てほしいと思った。そして、唇を重ねたらもっと深く感じたくなった。
「こんなのってないよ・・・」
椿は、力なく呟いた。
その夜。涼雅が闇に紛れるようにしてやってきた。椿は、涼雅の顔を飽きるまで見つめた。2度と忘れないために・・・。
「椿?何か、あったのか?」
明後日。椿は、イギリスに発つ。どんなに涼雅が好きでも、一緒にはいられない。
「椿?どうしたんだ?」
いつもと違う椿の様子に、涼雅は戸惑ったようだ。椿は、震える指で帯を解いていく。
「やめろっ。どうしたんだよ」
腕を掴んで涼雅が止めれば、椿が縋るような視線を涼雅に向けた。
「僕は、もう涼雅の側にいられないんだ」
「椿?」
椿は、外国に自分が売られる話をした。涼雅はかなり驚いたようだが、特になにも言わなかった。
「最後に、涼雅に抱いてほしい。ずっと、忘れないために」
スルスルッと帯を解き、自分から裸を晒すのはとても勇気がいった。最後の1枚を床に落とし生まれたままの姿になった椿は、両手を広げた。
「こんな身体じゃ、抱く気になれない?」
触れてくれない涼雅に、椿は不安になる。女性とは違う、こんな痩せ細った身体には、魅力などあるわけがない。
「バカ野郎っ。俺がどれだけ我慢してるかも知らないでっ」
涼雅は細くて今にも壊れそうな椿を抱き締めると、そのまま布団に押し倒し深く口づけた。口の中に入り込んだ舌が、まるで指のように動き椿を翻弄する。互いの唾液が混ざり合うと、こんなにも甘いのだということを初めて知った。椿は、涼雅の金色の髪に指を差し込むともっと激しくしてほしくて、自分の方へと引き寄せる。
「んっ」
飲み込めなかった唾液が溢れて、椿の首筋を濡らしていく。その感触さえも、椿にとってはまるで愛撫のようだった。
涼雅の掌が、椿の胸を優しく撫で回す。桜色の小さな乳首をそっと指先で摘ままれ、クリッと捻られる。それだけなのに、椿の背中がまるで電流が走ったような衝撃があった。背中から腰にかけてのラインを撫でられながら、椿は両方の乳首を交互に弄られ続けた。
「あっ・・・っ」
ムズムズとした感覚が股間に集まってきて、そこが熱く硬くなっていく。椿が恥ずかしそうに顔を背けると、涼雅は露になった首筋を舌で吸いながら、立ち上がった椿の性器を指でさするように触れてきた。
「ふ・・・っ、あ・・・っ」
緩やかな愛撫は、椿の快楽を引き出し、更に大きくしていく。
「ここが、いいんだな?」
尖端を親指の腹でグリグリと押しながら涼雅が耳元で囁く。その吐息にすら、椿はビクビクと身体を震わせた。やがて、涼雅の指がスピードを増していく。
「んっ、んんっ、んっ、んーっ」
あまりの快感に、椿は声を押さえることができなかった。自分の両手で口を押さえて、そのすさまじい快感に耐えた。広げた膝がブルブルと震え、やがて弛緩する。
「椿の、すごく甘い。まるで、蜂蜜みたいだ」
指の合間から滴り落ちる椿の蜜を、涼雅が舌で舐め取る。その光景が妙にいやらしく見えて、椿は耳まで真っ赤になった。
「き、汚いよ。そんなのっ」
「汚くなんかない。椿の身体で汚いところなんて1つもない」
涼雅は、その言葉を証明するように、椿の裸体を丁寧に舐めた。乳首を甘噛みされ椿がのけぞれば、涼雅の大きな掌が丸くて柔らかな尻を撫で回す。
「あっ、んっ」
「まるで、全身が砂糖でできているみたいだな。どこもかしこも甘い」
椿の足首を左右に広げると、その奥に涼雅は口移しで蜜を垂らした。小さな蕾はビクビクと震え、まるで涼雅を誘うようにヒクヒクした。
花の蜜を吸う蝶のように、涼雅は椿の性器を貪った。あまりにも強い刺激に耐えられず、椿は声を喘ぎ続けた。も
「どこにも行かせないっ。椿を、2度と離すものかっ」
「涼雅・・・っ」
涼雅は、自身の指に唾液を絡ませると目的の場所をゆっくりなぞった。不安げに自分を見上げる椿に、優しく囁く。
「少し、痛いぞ」
入り口にそっと爪先を入れれば、椿の身体が強張った。涼雅は、椿の身体から緊張が解けるまで繰り返し指を差し込む。
「もう、いいから、涼雅。早く、いれ、て」
椿が弱々しい声で囁く。早く涼雅と1つになりたかった。隙間がないぐらい涼雅と繋がって、そのまま溶けてしまいたかった。
「力を抜くんだ。椿」
「ど、うやって?」
椿の質問に、涼雅はなにも言わず唇を重ねた。舌を深く絡め、椿がその気持ちよさから無意識に力を抜いた瞬間。涼雅が自身を埋める。椿は瞳を大きく見開き、自分の体内に入ってくる涼雅を受け止めた。
「あっ、うあっ、はあっ、ああっ」
硬くて熱い涼雅自身が、ジリジリと奥へと進む。その度に、椿は涼雅の背中に爪を立ててその痛みに耐えた。
「大丈夫か?」
汗だくになっている涼雅の、艶っぽい表情にゾクッときた。指を伸ばし、大好きな金色の髪を指に絡める。黄金に輝くその髪は、優しい月のように奇麗だと椿はぼんやり思った。
「もっと、乱暴にして、いいよ」
体内に、涼雅の鼓動を感じる。動かないのが辛いということも。椿が言えば、涼雅が切なげに眉を寄せる。
「バカなこと言うなっ。絶対に傷つけたりしないっ」
「涼雅・・・」
涼雅が緩やかに腰を動かす。
中を擦られ、椿の中に痛みだけではない。確かな快楽があった。
「椿っ。愛してる。ずっと、ずっと言いたかった。初めて会った時から、俺にはお前しかいない。だから、ずっと俺の側にいろっ」
背中を抱き締められ、より深く涼雅と繋がって、椿の心が満たされる。
「んっ、んんっ、あっ、あっ、涼雅っ、離さないでっ。もっと奥まで、もっと・・・っ」
うわ言のように何度も繰り返しながら、椿は涼雅と1つになった。熱くて、痛くて、気持ちよかった。愛する人と結ばれるという事が、これほどまでに幸福をくれるのかと椿は初めて知った。
(これで、大丈夫。涼雅と離れても生きていける)
椿は、涼雅の背中に爪を立てると熱い蜜を迸らせた。
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