403 / 574
反乱の勇者
反乱の勇者 4
しおりを挟む
その頃、エルフの勇者であるトチノハは王の間を目指し走っていた。
途中で立ちはだかる兵士たちは爆風の魔法で吹き飛ばしていく。トチノハの前には何の障害にもならなかった。
そんな時、目の前にふと現れたのは。
この国の大臣であるイグチだ。
周りには兵士が護衛として付いている。そして、次の瞬間トチノハは目を疑った。
イグチは睡眠の魔法を周りの兵士たちに掛けたのだ。深い眠りにつく兵士達を見てトチノハは言う。
「何のつもりですか?」
「私はあなたと内緒の話がしたいのですよ。勇者トチノハ」
トチノハは右手を構えたままイグチを見つめる。
「内緒の話とは何でしょうか、私は王と直接の対話がしたいのですが」
「あの王と対話した所で何も変わりませんよ」
イグチは笑顔でそう答えた。トチノハは目の前の男の腹積もりを探る。
「それは話をしてみないとわかりませんね」
「話す前からわかっていますよ」
そこまで言った後笑顔をやめてイグチは続けて言う。
「あの様な愚かな王に何を言っても無駄です」
トチノハは一瞬、眉をピクリと動かしたが、動揺を悟られないように言葉を返す。
「大臣ともあろう方が王に随分な物言いですね」
「事実なのだから仕方がないでしょう」
はぁーっとイグチはため息を付いた。時間稼ぎをする為の妄言かと思ったが。
「私が仕えるのは国です。先代の王は素晴らしい方でした……。が、今の王はあまりにも傲慢で愚かです」
「どういうことですか?」
「私はあなた達と手を組みたいのですよ」
「今、なんと?」
「ですから、私…… いや、私達はあなた達と手を組みたいのです」
トチノハは右手を下ろして話を聞く気になった。
「この国には今の王に不満を持つ層が少なくありません。政界にも、です」
「なるほど、それは納得できます」
「私も今の王にうんざりとしている1人でしてね、なんとかする機会を伺っていたのですよ」
トチノハは黙ってイグチの話を聞く。
「魔人の襲撃とあなた達の反乱で、王都は、いや国は混乱の最中です」
「えぇ、そうでしょうね」
「だからこそ、そんな今だからこそ、聡明で強い王が必要なのです」
ふむ、とトチノハは考える。
「あなたはこの国を乗っ取るつもりですか?」
「そんな物騒なことはしません。私が仕えるのはあくまで国。この国の為には新たな王が必要と考えたまでです」
また笑顔を作ってイグチは話し続ける。
「捉えたキエーウのメンバーはすぐにとは行きませんが、処刑しましょう。罪がそこまで重くないものにも獄中で病死して貰います」
「それは嬉しい話です」
「そして、亜人も裁判とは別に私の裁量で、罪が重すぎると思う者は処刑をするふりをして1人1人と逃しましょう」
トチノハはイグチの話をどこまで信じて良いものか考えていた。そんな時、イグチは懐から何かを取り出してトチノハの足元へ投げてよこした。
「それは城の地下道の鍵です。そこから逃げればきっと安全でしょう」
足元に投げられた鍵を拾い上げるとイグチはまた話し始めた。
「そして、私が人質になりましょう。その間に反乱軍を逃して下さい」
「……取り敢えず今は信じますが、もし城から出るまでの間に偽りがあったら、死体が1つ増えることになりますが」
途中で立ちはだかる兵士たちは爆風の魔法で吹き飛ばしていく。トチノハの前には何の障害にもならなかった。
そんな時、目の前にふと現れたのは。
この国の大臣であるイグチだ。
周りには兵士が護衛として付いている。そして、次の瞬間トチノハは目を疑った。
イグチは睡眠の魔法を周りの兵士たちに掛けたのだ。深い眠りにつく兵士達を見てトチノハは言う。
「何のつもりですか?」
「私はあなたと内緒の話がしたいのですよ。勇者トチノハ」
トチノハは右手を構えたままイグチを見つめる。
「内緒の話とは何でしょうか、私は王と直接の対話がしたいのですが」
「あの王と対話した所で何も変わりませんよ」
イグチは笑顔でそう答えた。トチノハは目の前の男の腹積もりを探る。
「それは話をしてみないとわかりませんね」
「話す前からわかっていますよ」
そこまで言った後笑顔をやめてイグチは続けて言う。
「あの様な愚かな王に何を言っても無駄です」
トチノハは一瞬、眉をピクリと動かしたが、動揺を悟られないように言葉を返す。
「大臣ともあろう方が王に随分な物言いですね」
「事実なのだから仕方がないでしょう」
はぁーっとイグチはため息を付いた。時間稼ぎをする為の妄言かと思ったが。
「私が仕えるのは国です。先代の王は素晴らしい方でした……。が、今の王はあまりにも傲慢で愚かです」
「どういうことですか?」
「私はあなた達と手を組みたいのですよ」
「今、なんと?」
「ですから、私…… いや、私達はあなた達と手を組みたいのです」
トチノハは右手を下ろして話を聞く気になった。
「この国には今の王に不満を持つ層が少なくありません。政界にも、です」
「なるほど、それは納得できます」
「私も今の王にうんざりとしている1人でしてね、なんとかする機会を伺っていたのですよ」
トチノハは黙ってイグチの話を聞く。
「魔人の襲撃とあなた達の反乱で、王都は、いや国は混乱の最中です」
「えぇ、そうでしょうね」
「だからこそ、そんな今だからこそ、聡明で強い王が必要なのです」
ふむ、とトチノハは考える。
「あなたはこの国を乗っ取るつもりですか?」
「そんな物騒なことはしません。私が仕えるのはあくまで国。この国の為には新たな王が必要と考えたまでです」
また笑顔を作ってイグチは話し続ける。
「捉えたキエーウのメンバーはすぐにとは行きませんが、処刑しましょう。罪がそこまで重くないものにも獄中で病死して貰います」
「それは嬉しい話です」
「そして、亜人も裁判とは別に私の裁量で、罪が重すぎると思う者は処刑をするふりをして1人1人と逃しましょう」
トチノハはイグチの話をどこまで信じて良いものか考えていた。そんな時、イグチは懐から何かを取り出してトチノハの足元へ投げてよこした。
「それは城の地下道の鍵です。そこから逃げればきっと安全でしょう」
足元に投げられた鍵を拾い上げるとイグチはまた話し始めた。
「そして、私が人質になりましょう。その間に反乱軍を逃して下さい」
「……取り敢えず今は信じますが、もし城から出るまでの間に偽りがあったら、死体が1つ増えることになりますが」
0
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~
SHIN
ファンタジー
それは、ある少年の物語。
ある日、前世の記憶を取り戻した少年が大切な人と再会したり周りのチートぷりに感嘆したりするけど、実は少年の方が凄かった話し。
『僕の兄上はチート過ぎて人なのに魔王です。』
『そういうお前は、愛され過ぎてチートだよな。』
そんな感じ。
『悪役令嬢はもらい受けます』の彼らが織り成すファンタジー作品です。良かったら見ていってね。
隔週日曜日に更新予定。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
後輩に手柄奪われたからって、能力は変わらないし
製作する黒猫
ファンタジー
口数が少なくて、覚えの悪い新人ハンターのセトラエル。
そんな新人を導くことになった俺、シールは優しいだけが評判の底辺ハンターだ。
教えるからにはと、新人にハンターの基本的なことを丁寧に教えているつもりだがうまくいかない。
感覚的にやっていることを言葉にするのは難しいもんだ。
ほとんど俺一人で倒した魔物を渡して、ギルドへ新人に売りに行かせたのがよくなかった。
ある日、美女2人を侍らせた新人にバディを解消させられる。
それどころか、ギルドでは新人の足を引っ張る無能だとか、寄生虫だとか言われる羽目に。
もともといい評判でもなかったし、俺は無視して今まで通りの生活を続けることにした。
先行して8話を間違って公開していました。ご迷惑をかけた方がいらっしゃったら申し訳ありません。
完成してからお披露目予定でしたが、公開してしまったので執筆しながらの投稿となります。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
一人ぼっちの辺境伯
暁丸
ファンタジー
「辺境伯の爵位を剥奪し、庶民とする」
数十年ぶりに王城からやってきた使者は、そう告げた。理由は、辺境伯が貴族の責務を果たしていないことらしい。数年前に王位継承の小競り合いがおき、公文書館が焼け落ち、辺境伯が何をしているか失伝していたのだ。
あの方が身罷られてもうどれほど経ったか…。ため息一つで辺境伯は勅命を受け入れた。
長編で書いてるお話の主人公、ステレのプロトタイプです。
山奥に一人で住む辺境伯という設定は、元々別のお話のゲストキャラだったのですが、一部設定を変更のうえ独立してあぁ成りました。ステレは元々はBBAキャラだったのです。
長編の方がちょうど辺境伯になった所まで来たので、こっちも独立の短編に纏め直してみました。
ショートショートで登場人物全員名無しです。ご容赦下さい。
(2022.03)読み直しておかしなところを修正しています。内容に大きな変更はありません。
(2022.04)元々、チョイ役予定だったキャラのバックストーリーを纏めただけなので、読み直したら「行間読めよ」と言わんばかりの説明不足が気になりちょこちょこ加筆してたんですが、それでも足りないように思えて来たので、1周年記念で前日譚と後日譚を新規に書いてみました。
若干コメディ寄りになってます。ぶっちゃけ、最終話できちんと完結した…と思った人は読まなくてもいい程度の話です。
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる