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それぞれの想い

それぞれの想い 3

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「お兄ちゃん」

 ヨーリィとムツヤは向かい合って寝ていた。ムツヤはヨーリィの手を握って魔力を送っている。

 そんな時にヨーリィの紫色の瞳が、暗い部屋で月明かりを反射してボウっと浮かび上がるようにまっすぐムツヤを見つめた。

「なに? ヨーリィ?」

 目をそらさずにヨーリィは言葉を続ける。

「お兄ちゃんは、サズァン様に会いたいって思いますか?」

 ムツヤはうーんと考えた。

「もう一度会ってみたいどは思うよ」

「そう」とヨーリィは言ってまた黙ってしまう。

「ヨーリィはマヨイギさんにまた会いたい?」

 ヨーリィは視線を逸して答える。

「はい、マヨイギ様には会いたいと思っています」

「そっかー…… あぁそうだ、俺に敬語使わなくてもいいからね」

 ムツヤが言うと「わかった」と返事をしてまた沈黙、そして言葉。

「不思議だね、100年も一緒に居たのに、たった数日会えないだけで会いたくなるなんて」

「そうだなー、俺もじいちゃんとずっと一緒に暮らしていたげど、少し会ってないだけで今、何してるか心配だもんな」

 ヨーリィはまたムツヤを見つめた。大きな瞳と長いまつげがくっきり見える。

「お兄ちゃんの家族はお祖父様だけなの?」

「あーそうだなー。お父さんとお母さんは小さい頃に死んじゃったみたいで、何も覚えてないな」

「私と、一緒だね」

 ヨーリィは特に表情も変えずに言った。

「ヨーリィのお父さんとお母さんも死んじゃったの?」

「私は生まれてすぐに奴隷として売られた。だから親のことはほぼ何も覚えていない」

「そっかー……」

 ムツヤは言葉が出てこなかった。奴隷というものがどういう物か本を読んで少しは知っていたし、こちらの世界でもモモから聞いて改めて悲惨な制度だと知った。

「ヨーリィはお父さんとお母さんに会ってみたいって思う?」

「いいえ、まったく」

 キッパリとヨーリィは否定する。

「私を奴隷として売った人間に、恨みはあれど情なんて無いから」

「そうか、そうだよね。ごめんねヨーリィ」

「それにどの道100年前だから生きてないよ。私こそ変な話をしてごめんね」

「いいよ、ヨーリィの話もっと聞かせて欲しいから」

 しかし、この後は特に会話がなかった、しばらくしてムツヤは眠ってしまった。

 ヨーリィは自分のことを不思議に思う、自分はこんなにおしゃべりだったかと。
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