58 / 574
勇者と裏の住人
勇者と裏の住人 2
しおりを挟む
「ギルドでは『世界を滅ぼしかねない能力』を手に入れたから…… それを使えなくて悲劇の勇者って事になってたはずですが…… そういう事だったんですね」
ユモトは怒らせないかと恐る恐る言ってみたが、アシノはコップを手で持ったまま下を向いていた。
「私のことは話し終えた、ムツヤだっけか? お前が裏の住人と言われていたことと、あの急に現れた裏ダンジョンの主とやらについて話せ」
「……わがりましだ」
ムツヤはポツポツと自分の生い立ちを語り始めた、ところどころモモやユモトも注釈を入れ、大体のことはアシノに伝わったらしい。
「なるほどな、つまりお前は別の世界、裏ダンジョンの近くから来たというわけだな」
「はい、そういう事だと思います」
アシノは持っていたグラスを置いてそれを見つめながら言う。
「私も冒険者として結構やってきた、だから裏ダンジョンやそれに近い存在の噂は聞いたことがある」
「そうなんでずか?」
ムツヤはアシノを見て言う、それに対してアシノは「あぁ」と素っ気なく返した。
「それで、お前はこれからどうするんだ? アイツから裏の道具を取り返しに行くのか?」
「はい、あいつ達、えーっとキエーウは人間以外の…… オークや…… 後はわかりませんがとりあえず誰かを殺そうとしているんです」
ムツヤは身を乗り出して続けて言う。
「しかも、それが俺の道具を使ってなんてどうしても止めなきゃダメだと思うんです!」
フフッとアシノは正義感に燃えるムツヤを笑った。バーの薄暗い明かりに照らされたアシノの横顔はどこか遠くの、別の記憶を思い出している様だ。
「まぁせいぜい頑張ってくれよ、ムツヤ」
「あの、アシノさん! そ、その、ムツヤさんのお手伝いを…… していただくわけには……」
思い切って言ってみたユモトだが言葉尻は小さくすぼんでいた。そんなユモトを横目で見てアシノは一言。
「ダメだね」
そう言った。次にモモがアシノに食い下がる。
「しかし、ムツヤ殿の秘密を知っていて、なおかつベテランの冒険者でもあるアシノ殿にご助力頂ければ非常に心強いのです、どうか」
「面倒事に巻き込まないでくれ。断る理由は2つある。私の能力は戦いどころか家でワインでも飲みたくなった時ぐらいにしか役に立たない。そして、もう1つはお前達にそこまで親切にしてやる義理がない」
ユモトは怒らせないかと恐る恐る言ってみたが、アシノはコップを手で持ったまま下を向いていた。
「私のことは話し終えた、ムツヤだっけか? お前が裏の住人と言われていたことと、あの急に現れた裏ダンジョンの主とやらについて話せ」
「……わがりましだ」
ムツヤはポツポツと自分の生い立ちを語り始めた、ところどころモモやユモトも注釈を入れ、大体のことはアシノに伝わったらしい。
「なるほどな、つまりお前は別の世界、裏ダンジョンの近くから来たというわけだな」
「はい、そういう事だと思います」
アシノは持っていたグラスを置いてそれを見つめながら言う。
「私も冒険者として結構やってきた、だから裏ダンジョンやそれに近い存在の噂は聞いたことがある」
「そうなんでずか?」
ムツヤはアシノを見て言う、それに対してアシノは「あぁ」と素っ気なく返した。
「それで、お前はこれからどうするんだ? アイツから裏の道具を取り返しに行くのか?」
「はい、あいつ達、えーっとキエーウは人間以外の…… オークや…… 後はわかりませんがとりあえず誰かを殺そうとしているんです」
ムツヤは身を乗り出して続けて言う。
「しかも、それが俺の道具を使ってなんてどうしても止めなきゃダメだと思うんです!」
フフッとアシノは正義感に燃えるムツヤを笑った。バーの薄暗い明かりに照らされたアシノの横顔はどこか遠くの、別の記憶を思い出している様だ。
「まぁせいぜい頑張ってくれよ、ムツヤ」
「あの、アシノさん! そ、その、ムツヤさんのお手伝いを…… していただくわけには……」
思い切って言ってみたユモトだが言葉尻は小さくすぼんでいた。そんなユモトを横目で見てアシノは一言。
「ダメだね」
そう言った。次にモモがアシノに食い下がる。
「しかし、ムツヤ殿の秘密を知っていて、なおかつベテランの冒険者でもあるアシノ殿にご助力頂ければ非常に心強いのです、どうか」
「面倒事に巻き込まないでくれ。断る理由は2つある。私の能力は戦いどころか家でワインでも飲みたくなった時ぐらいにしか役に立たない。そして、もう1つはお前達にそこまで親切にしてやる義理がない」
0
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~
SHIN
ファンタジー
それは、ある少年の物語。
ある日、前世の記憶を取り戻した少年が大切な人と再会したり周りのチートぷりに感嘆したりするけど、実は少年の方が凄かった話し。
『僕の兄上はチート過ぎて人なのに魔王です。』
『そういうお前は、愛され過ぎてチートだよな。』
そんな感じ。
『悪役令嬢はもらい受けます』の彼らが織り成すファンタジー作品です。良かったら見ていってね。
隔週日曜日に更新予定。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる