別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが

まっど↑きみはる

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聖女様と王都へ

出発の朝

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 酔ったスフィンから軍への勧誘を受けていたマッサだったが、二人ともいつの間にか眠っていたらしい。

 隣のベッドで無防備にもスヤスヤ眠る美人に一瞬、良からぬ事を考えたが、ダメだダメだと頭を振る。

「何か朝飯でも作っておくかー」

 独り言をしてから、マッサは朝食の準備に取り掛かった。

 一通りの調理器具と食材はあったので、簡単なスープと目玉焼き。パンを用意して朝食をこしらえる。

 その間に目覚めたらしいスフィンが居間へやって来た。長い金髪がボサボサに乱れている。

「あぁ……。おはよう」

 昨日のあやふやな記憶のままスフィンはマッサに挨拶をした。

「おはようございまーす! 朝飯出来てますぜ」

「あ、あぁ。すまないな……」

 何だかやけに素直なスフィンにマッサは調子が崩される。

 二人は向かい合って椅子に腰かけ、スフィンは目の前の朝食をまじまじと見つめた。

「それじゃイタダキマス!」

 マッサは元気よく言ってからフォークを持ち、スフィンは無言のまま食器に手を伸ばす。

 スプーンでスープをすくい、柔らかそうなくちびるへと運んで味わった。

「美味いな……」

「でしょ?」

 マッサは得意げに言う。スフィンは黙々とパンや目玉焼きを食べていた。

「何かこうして二人で飯食べると、出会った時の事を思い出しませんか?」

「あぁ、そうだな」

 何だか元気のないスフィンとの会話が耐えられず。無理して饒舌じょうぜつになるマッサ。

「昔のような、最近のような、何だか不思議な感じっすよね」

「まぁな」

 そこで初めてスフィンは微笑む。思わずその笑顔にマッサはドキリとしてしまった。

 その後は特に会話もなく、朝食が終わる。

「さーて、あのツンデレカップル勇者様を探しに行きますかね」

 マッサは伸びをしてから立ち上がった。

「そうだな、行くか」

 否定も肯定もせずにスフィンも腰を上げてマッサと共に家を出た。





「ほーら高い高いー」

 子供を抱きかかえて空を飛ぶラミッタ。

「すごーい!!」

 目を輝かせて地上を見る子供。別の子供達も早く飛びたいと羨望せんぼうのまなざしを向けていた。

「あら、楽しそうですねい」

 マッサが笑いながら言うと、スフィンは一瞬だけゆっくりと目を閉じた。

「王都へ向かう準備は私達で済まそう」

「将軍様もお優しい事で」

「黙れ」

 マッサは「へいへい」と小声で相槌あいづちを打ってから、村長の家へと向かう。



 村長の家には旅の荷物が用意されていた。流石に荷馬車とそれを引く頑丈な馬は用意できなかったが、充分だろう。

 スフィンが礼を言ってから、ラミッタ達の元へと戻る。

「随分とお楽しみだったようだな、ラミッタ」

「あっ、す、スフィン将軍!!」

 ラミッタは思わず敬礼をし、隣のマルクエンは軽く挨拶をした。

「おはようございます」

 スフィンからの挨拶は無い。

「旅の仕度が整った。行くぞ」

 代わりにあったのはそんな短い言葉だった。
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