221 / 241
聖女様
見たい
しおりを挟む
「心地良いな」
スフィンは満足気な顔をし、目を閉じて湯を感じていた。
「えぇ、とても……」
ラミッタもそう返してふぅーっと息を吐く。
そんな、束の間の緩やかな時間を邪魔しようとする者が居た。
「よし、そろそろ良い頃合いかな?」
湯に浸かって体も温まり、マッサはそろそろ出るのかと思ったマルクエン。
「もう出ますか?」
「えぇ、そうしましょうか」
そう言ってザバッと湯から上がり、マッサは野風呂を隔てている竹壁へ歩き始めた。
「ま、マッサさん? 出口はあっち……」
「シー、静かにっす」
マッサは竹壁をくまなく見て回り、ガックリと肩を落とし小声で言う。
「女性陣がお風呂を上がるのを待つのは竹壁の前で待つのがベストですぜ!」
「な、何を……」
「その間……。竹壁の隙間に目を近づけるのはいけないことっすかねぇ!?」
「な、何を言っているんですか!?」
「だって、隣には美女!! これが覗かずにいられるかってんですぜ!!」
マルクエンは思わず呆れていた。
「ダメですよ、マッサさん」
「でもマルクエンさんは除いた事があるんでしょ?」
「い、いや、あれは事故で……」
「随分と騒がしいな」
隣から突然聞こえるスフィンの声に、マッサとマルクエンはドキリとし、固まる。
「あ、あー。スフィンさん?」
「貴様らのやろうとしている事など大体見当がつく。この竹を超えてみろ、命は無い」
「そ、そんなことねぇ、するわけないでしょうねぇ!? ねぇマルクエンさん!?」
「あっ、あぁ、えぇ!! まさかそんな事……」
男湯から聞こえる声に、ラミッタは赤い顔を湯船に沈めて『ド変態卑猥野郎』と呟いた。
先に湯から上がったマルクエンとマッサは女湯の二人を待つ。
村人から渡された地酒をマッサは飲み、マルクエンは牛乳を飲んでいた。
「待たせたな」
スフィンとラミッタが風呂から上がり、男どもの元へと歩く。
「命拾いしたな」
「し……、失礼ですね覗きの証拠は? 覗き? 命拾い? 何の事です?」
「私は何もそこまで言っていないのだが。まったく」
呆れるスフィン。そんな四人に村人から声が掛かる。
「皆様、宴の準備ができましたんで、ご案内しますべ」
「おぉ、かたじけない」
腹が減っていたマルクエンは笑顔でそう言いながら、村人の後を付いていく。
「ほ、ほら、宴ですって! 行きましょう!」
マッサも焦りながらマルクエンの後を追いかける。
「やれやれだな」
「男って奴はこれだから困りますね」
村の中心では大きな焚火。所々に小さなかがり火が設置されている。
「祭りの時にやる事なんですが、今日は勇者様が来たお祭りですべや」
「そんな、ここまでして頂かなくても……」
気が引けたマルクエンは照れくさそうに頭を掻いていた。
「何をおっしゃる! 勇者様が来ただけでもめでてぇのに、勇者様は村の恩人ですべ!!」
「随分と手厚い歓迎だな」
スフィンは腕を組みながらフンっと笑う。
スフィンは満足気な顔をし、目を閉じて湯を感じていた。
「えぇ、とても……」
ラミッタもそう返してふぅーっと息を吐く。
そんな、束の間の緩やかな時間を邪魔しようとする者が居た。
「よし、そろそろ良い頃合いかな?」
湯に浸かって体も温まり、マッサはそろそろ出るのかと思ったマルクエン。
「もう出ますか?」
「えぇ、そうしましょうか」
そう言ってザバッと湯から上がり、マッサは野風呂を隔てている竹壁へ歩き始めた。
「ま、マッサさん? 出口はあっち……」
「シー、静かにっす」
マッサは竹壁をくまなく見て回り、ガックリと肩を落とし小声で言う。
「女性陣がお風呂を上がるのを待つのは竹壁の前で待つのがベストですぜ!」
「な、何を……」
「その間……。竹壁の隙間に目を近づけるのはいけないことっすかねぇ!?」
「な、何を言っているんですか!?」
「だって、隣には美女!! これが覗かずにいられるかってんですぜ!!」
マルクエンは思わず呆れていた。
「ダメですよ、マッサさん」
「でもマルクエンさんは除いた事があるんでしょ?」
「い、いや、あれは事故で……」
「随分と騒がしいな」
隣から突然聞こえるスフィンの声に、マッサとマルクエンはドキリとし、固まる。
「あ、あー。スフィンさん?」
「貴様らのやろうとしている事など大体見当がつく。この竹を超えてみろ、命は無い」
「そ、そんなことねぇ、するわけないでしょうねぇ!? ねぇマルクエンさん!?」
「あっ、あぁ、えぇ!! まさかそんな事……」
男湯から聞こえる声に、ラミッタは赤い顔を湯船に沈めて『ド変態卑猥野郎』と呟いた。
先に湯から上がったマルクエンとマッサは女湯の二人を待つ。
村人から渡された地酒をマッサは飲み、マルクエンは牛乳を飲んでいた。
「待たせたな」
スフィンとラミッタが風呂から上がり、男どもの元へと歩く。
「命拾いしたな」
「し……、失礼ですね覗きの証拠は? 覗き? 命拾い? 何の事です?」
「私は何もそこまで言っていないのだが。まったく」
呆れるスフィン。そんな四人に村人から声が掛かる。
「皆様、宴の準備ができましたんで、ご案内しますべ」
「おぉ、かたじけない」
腹が減っていたマルクエンは笑顔でそう言いながら、村人の後を付いていく。
「ほ、ほら、宴ですって! 行きましょう!」
マッサも焦りながらマルクエンの後を追いかける。
「やれやれだな」
「男って奴はこれだから困りますね」
村の中心では大きな焚火。所々に小さなかがり火が設置されている。
「祭りの時にやる事なんですが、今日は勇者様が来たお祭りですべや」
「そんな、ここまでして頂かなくても……」
気が引けたマルクエンは照れくさそうに頭を掻いていた。
「何をおっしゃる! 勇者様が来ただけでもめでてぇのに、勇者様は村の恩人ですべ!!」
「随分と手厚い歓迎だな」
スフィンは腕を組みながらフンっと笑う。
0
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

聖女は聞いてしまった
夕景あき
ファンタジー
「道具に心は不要だ」
父である国王に、そう言われて育った聖女。
彼女の周囲には、彼女を心を持つ人間として扱う人は、ほとんどいなくなっていた。
聖女自身も、自分の心の動きを無視して、聖女という治癒道具になりきり何も考えず、言われた事をただやり、ただ生きているだけの日々を過ごしていた。
そんな日々が10年過ぎた後、勇者と賢者と魔法使いと共に聖女は魔王討伐の旅に出ることになる。
旅の中で心をとり戻し、勇者に恋をする聖女。
しかし、勇者の本音を聞いてしまった聖女は絶望するのだった·····。
ネガティブ思考系聖女の恋愛ストーリー!
※ハッピーエンドなので、安心してお読みください!

原産地が同じでも結果が違ったお話
よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。
視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。

【完結】拾ったおじさんが何やら普通ではありませんでした…
三園 七詩
ファンタジー
カノンは祖母と食堂を切り盛りする普通の女の子…そんなカノンがいつものように店を閉めようとすると…物音が…そこには倒れている人が…拾った人はおじさんだった…それもかなりのイケおじだった!
次の話(グレイ視点)にて完結になります。
お読みいただきありがとうございました。


凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる