別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが

まっど↑きみはる

文字の大きさ
上 下
208 / 243
聖女様

焼肉焼肉

しおりを挟む
 ラミッタは目を閉じて生物の探知魔法を使う。

「そこね!!」

 追いかけた先には鹿が一匹。

 鹿は木々を軽々と避けて森を駆けるが、宙を飛ぶラミッタからは逃げられない。

 ぐんぐん近づいたラミッタは、氷柱で首を射抜いて鹿を絶命させる。

「簡単に朝ごはんゲットね」

 得意げな笑みを浮かべて遅れて追いかけてきたマルクエンに言う。

「はは、かなわんな……」

「それじゃ、ちょちょいと解体しちまいますか。火の準備をしておいて下さい」

 元々猟師でもあるマッサは手際よく鹿を解体し、枝肉にしていく。

 やる事がないマルクエンは木の枝を拾い集めていた。

 火と肉が揃えば、木の枝を串代わりにして即席のバーベキュー大会だ。

 腹が減った面々は肉の焼ける香ばしい匂いと、あふれる肉汁に釘付けになっていた。

「そろそろ焼けましたかね、食いますか」

 マッサが言うと、待っていましたとばかりにスフィンも頷く。

「そうだな」

 各々目の前にある地面に突き立てた串を引き抜いた。

「それじゃイタダキマス!」

 マルクエンは一口かじると、肉のうま味と熱さを口の中に感じる。

「むっ、美味しいですね」

「いやー、美味いっすね。せめて塩でもあればもっと美味いんでしょうけど」

 マッサがそう返すとスフィンはふんっと鼻を鳴らして目を閉じたまま言う。

「贅沢を言うな。肉が食えるだけありがたいと思え」

「まー、そうなんスけどもね」

 生肉の串を地面に刺し、代わりに焼けた肉を取る。そんな行為を四人は腹が満足するまで続けた。

「いやー、食った食った」

 マッサはそんな事を言いながら空を見上げる。

「残った肉はどうします?」

 流石に鹿一頭を食べきれなかったので、マルクエンが聞く。

「命を無駄にしては罰が当たる。もちろん持っていく」

 スフィンはそう言うも、荷物袋もすべて失った今、どうしたものかと考える。

 そんな時、人の気配が近付き、全員でそちらを振り返った。

「誰だ?」

「誰だって、あんた等こそ誰だべや?」

 訛りのある中年の男がこちらをいぶかし気に見ていた。

「変な音は鳴るわ、森で煙は上がるわで様子見に来だんだ」

「お騒がせしてすみません。私はイーヌ……。じゃなかった。この国の勇者、マルクエンです」

 それを聞いて更に中年の男は疑いの目を向ける。

「勇者様がこんな森で焼肉っでが?」

「はい、魔人と戦い荷物を失いましてね……」

「うーむ……」

 男が疑うのも無理はない。勇者の証明書も何も失くしてしまったのだから。

「あ、そうだ。これで信じて貰えるかしら?」

 そう言っってラミッタは宙を高く飛んで見せた。男は目を丸くして腰を抜かす。

「な、なんだべやそりゃ!?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...