202 / 241
スフィン
深夜のお茶会
しおりを挟む
テントの設営中に出来たのは、干し肉のスープだった。
「それじゃ、食べましょうかね『イタダキマス!』」
マッサが言うと、マルクエンも続いて元気よく「イタダキマス」と言い、ラミッタも小さく呟いた。
「すっかりこの世界に馴染んだなラミッタ」
スフィンが皮肉交じりに言うと、ラミッタはハッとして否定する。
「い、いえ、違うんです!!」
「まぁいい。イーヌの騎士、毒なんて入っていないから食べるがいい」
「そうですか、ははは」
マルクエンは苦笑いしながら食事を始めた。
「それじゃ、おやすみなさーい」
食事を終え、魔物避けの結界を張ると、マッサはそう言ってテントへ消える。
男女別で2つのテントを立てたので、気まずくなることは無さそうだ。
草木も眠る様な深夜にスフィンはふっと目が覚めた。
二度寝をしようと思ったが、何だか寝付けない。
隣では幸せそうに寝息を立てながら寝ているラミッタが居た。
コイツのこんな顔は久しぶりに見たなと思い、見回りがてらに起こさないよう外へ出る。
「おや、お早いお目覚めで」
「貴様……」
そこにはマッサが焚き火の前で座っていた。
「最近、夜に仕事がすることが多くてですね、昼夜逆転しちまってるんですわ」
「そうか」
興味なさげにスフィンは返事をする。
そして、ふと男用のテントを見た。
あそこにはイーヌの騎士が眠っている。
奴は元の世界でも強敵だったが、こちらの世界で更に強くなっていた。
いつかは仕留めなくてはいけない。
「何考えているんですかね?」
「いや、何でもない」
「それなら良いですが、勇者様に何かあったら俺も戦わなくちゃいけないのでね」
遠回しにマッサから牽制を入れられ、ふふっと軽く笑うスフィン。
「そんな事より見て下さいよ、この星空」
満天の星空をマッサは指さした。確かに美しい。
「隣、どうですか? お茶でも飲みません? お姉さん?」
軽々しくスフィンをナンパしてみたが。
「あぁ、そうだな」
成功してしまい、マッサは驚く。
街から出たばかりなので、まだ傷んでいない牛乳があり、マッサはミルクティーを作ることにした。
鍋で牛乳を煮て、網の中に入れた茶葉を落とし、ぐるぐるとかき混ぜる。
牛乳が茶色く色づき始め、網を引き上げると、鍋を掴んで中身をコップに注ぐ。
「お砂糖はどれぐらい入れますか?」
「たっぷりだ」
「了解致しました、将軍様」
マッサは笑いながらサラサラと砂糖を入れてかき回す。
「はい、どうぞ」
スフィンはコップを受け取る。温かさが手にじんわりと伝わった。
牛乳と茶葉のいい香りを嗅ぎ、一口飲むと柔らかい甘みが口に広がる。
「美味いな」
「へへっ、あざーっす」
「喫茶店でもやったらどうだ?」
「冒険者を引退したら考えますわ」
マッサが軽口を返すと、スフィンは純粋な笑顔をしていた。
「スフィンさん。やっと素直に笑ってくれましたね」
「なっ、違う!!」
取り繕うように赤面して顔をしかめたが、もう遅い。笑顔はもうマッサの心にしまい込まれてしまった。
「夜空の下、二人きりでお茶会。うーん、ロマンチックですねぇ」
「相手がお前じゃなければ、な」
「うぉーん、辛辣ゥー!!!」
「それじゃ、食べましょうかね『イタダキマス!』」
マッサが言うと、マルクエンも続いて元気よく「イタダキマス」と言い、ラミッタも小さく呟いた。
「すっかりこの世界に馴染んだなラミッタ」
スフィンが皮肉交じりに言うと、ラミッタはハッとして否定する。
「い、いえ、違うんです!!」
「まぁいい。イーヌの騎士、毒なんて入っていないから食べるがいい」
「そうですか、ははは」
マルクエンは苦笑いしながら食事を始めた。
「それじゃ、おやすみなさーい」
食事を終え、魔物避けの結界を張ると、マッサはそう言ってテントへ消える。
男女別で2つのテントを立てたので、気まずくなることは無さそうだ。
草木も眠る様な深夜にスフィンはふっと目が覚めた。
二度寝をしようと思ったが、何だか寝付けない。
隣では幸せそうに寝息を立てながら寝ているラミッタが居た。
コイツのこんな顔は久しぶりに見たなと思い、見回りがてらに起こさないよう外へ出る。
「おや、お早いお目覚めで」
「貴様……」
そこにはマッサが焚き火の前で座っていた。
「最近、夜に仕事がすることが多くてですね、昼夜逆転しちまってるんですわ」
「そうか」
興味なさげにスフィンは返事をする。
そして、ふと男用のテントを見た。
あそこにはイーヌの騎士が眠っている。
奴は元の世界でも強敵だったが、こちらの世界で更に強くなっていた。
いつかは仕留めなくてはいけない。
「何考えているんですかね?」
「いや、何でもない」
「それなら良いですが、勇者様に何かあったら俺も戦わなくちゃいけないのでね」
遠回しにマッサから牽制を入れられ、ふふっと軽く笑うスフィン。
「そんな事より見て下さいよ、この星空」
満天の星空をマッサは指さした。確かに美しい。
「隣、どうですか? お茶でも飲みません? お姉さん?」
軽々しくスフィンをナンパしてみたが。
「あぁ、そうだな」
成功してしまい、マッサは驚く。
街から出たばかりなので、まだ傷んでいない牛乳があり、マッサはミルクティーを作ることにした。
鍋で牛乳を煮て、網の中に入れた茶葉を落とし、ぐるぐるとかき混ぜる。
牛乳が茶色く色づき始め、網を引き上げると、鍋を掴んで中身をコップに注ぐ。
「お砂糖はどれぐらい入れますか?」
「たっぷりだ」
「了解致しました、将軍様」
マッサは笑いながらサラサラと砂糖を入れてかき回す。
「はい、どうぞ」
スフィンはコップを受け取る。温かさが手にじんわりと伝わった。
牛乳と茶葉のいい香りを嗅ぎ、一口飲むと柔らかい甘みが口に広がる。
「美味いな」
「へへっ、あざーっす」
「喫茶店でもやったらどうだ?」
「冒険者を引退したら考えますわ」
マッサが軽口を返すと、スフィンは純粋な笑顔をしていた。
「スフィンさん。やっと素直に笑ってくれましたね」
「なっ、違う!!」
取り繕うように赤面して顔をしかめたが、もう遅い。笑顔はもうマッサの心にしまい込まれてしまった。
「夜空の下、二人きりでお茶会。うーん、ロマンチックですねぇ」
「相手がお前じゃなければ、な」
「うぉーん、辛辣ゥー!!!」
0
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

聖女は聞いてしまった
夕景あき
ファンタジー
「道具に心は不要だ」
父である国王に、そう言われて育った聖女。
彼女の周囲には、彼女を心を持つ人間として扱う人は、ほとんどいなくなっていた。
聖女自身も、自分の心の動きを無視して、聖女という治癒道具になりきり何も考えず、言われた事をただやり、ただ生きているだけの日々を過ごしていた。
そんな日々が10年過ぎた後、勇者と賢者と魔法使いと共に聖女は魔王討伐の旅に出ることになる。
旅の中で心をとり戻し、勇者に恋をする聖女。
しかし、勇者の本音を聞いてしまった聖女は絶望するのだった·····。
ネガティブ思考系聖女の恋愛ストーリー!
※ハッピーエンドなので、安心してお読みください!

原産地が同じでも結果が違ったお話
よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。
視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。

【完結】拾ったおじさんが何やら普通ではありませんでした…
三園 七詩
ファンタジー
カノンは祖母と食堂を切り盛りする普通の女の子…そんなカノンがいつものように店を閉めようとすると…物音が…そこには倒れている人が…拾った人はおじさんだった…それもかなりのイケおじだった!
次の話(グレイ視点)にて完結になります。
お読みいただきありがとうございました。


聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした
猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。
聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。
思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。
彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。
それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。
けれども、なにかが胸の内に燻っている。
聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。
※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています

もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる