別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが

まっど↑きみはる

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スフィン

酔っ払いスフィン

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「ふにゃー、もう飲めない……」

 ラミッタは酔ってふにゃふにゃになり、その隣でスフィンはグビグビワインを飲んでいた。

「何だ、だらしないぞラミッタ」

 そんな事を言うも、スフィンも顔が真っ赤だ。

「まぁまぁ、お水でも飲んで」

 マッサが言うも、ラミッタは泥酔し、眠ってしまった。

「えーっと、そろそろお開きですかねー」

「ラミッタは私が宿まで運んでおきますよ」

 マルクエンは立ち上がり、いつぞやの日ぶりにラミッタをお姫様抱っこする。

 そんな様子を訝しげにスフィンは見ていたが、何も口にすることは無かった。

「それじゃウチの宿まで行きましょうか」

 スフィンは立ち上がるが、フラフラとしている。

「スフィンさん。肩でも貸しましょうか?」

「その必要はな……」

 そこまで言いかけてスフィンはよろめく。思わずマッサは「おっと」と言いながら肩を掴んだ。

 支えられながら千鳥足でスフィンは宿まで何とか歩く。夜空が優しく四人を照らしていた。

「それでは私はラミッタを運んでいきますので」

「うっす、頼みましたよマルクエン様!!」

「それじゃスフィンさん。お部屋まで行きますよー?」

 マッサは酔いつぶれたスフィンを部屋まで運び、ベッドに寝かせた。

 改めてまじまじと見ると、長いキラキラと輝く金髪に、大きな胸。それに美しい顔立ちと、美人だなとマッサは再認識する。

「それじゃ、いい夢を」

 そう言って部屋を出ようとするマッサの腕をスフィンは掴む。

「なっ!?」

 びっくりして声を上げるマッサにスフィンは潤んだ瞳で言う。

「私を一人にするな……」

「な、ななっ」

 マッサは思わず胸がドキドキとし、普段の掴みどころの無さを消してしまう。

「ど、どうしたんですかいスフィンさん!?」

「私を一人にするな……。しないでくれ……」

 ふぅーっと深呼吸をしてマッサは言う。

「わかりましたよ」

「マッサ。今夜は寝かせないぞ……」

「なっ!? それってどういう……」

 何かを期待するマッサ。

「私に付き合え」

「わかりました。おとこマッサ、据え膳食わぬはおとこの恥。今日は……」

「そうか」

 スフィンの柔らかい笑顔にマッサの口は思わず止まってしまう。

「よし、分かった。それじゃ早速始めるぞ!!」

「ちょ、ちょっと待ってください、シャワーを……」

「貴様に戦いとは何かを、軍人としての心得を教えてやる!!!」

「……は?」

 マッサは間抜けな顔をしていただろう。

「まず第一に、貴様は軽口が多すぎる。軍人たるもの……」

「あ、あの、俺は軍人じゃないので……」

「軍人も冒険者も戦いに身を投じるものとして心得は同じだろう!!」

 この後、スフィンの説教は夜が明ける頃まで続いた。
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