別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが

まっど↑きみはる

文字の大きさ
上 下
133 / 243
アムールトへ

アムールトへ!

しおりを挟む
 そして、三日目。ようやく王都アムールトが見えてきた。

「ようやく見えましたね」

 ゴーダの言葉に馬車から身を乗り出してマルクエンは外を見る。

「おぉ……」

 城壁で囲まれた街からは、所々高い建物が見える。ライオ以上に大きな街にマルクエンは思わず圧倒されて言葉が出なかった。

 段々と王都へ近付くと、人通りも多くなってくる。

 門の前では人々が身分証の提示を求められたり、荷物の検査等を受けていた。

 しばらく待っていると、マルクエン達の番が来る。全員荷台から降り、マスカルが身分証を提示しながら言った。

「お疲れ様です」

 衛兵は差し出された紙を見て目を丸くする。

「ゆ、勇者マスカル殿!? はっ、お努めお疲れ様です!!」

 勇者マスカルの名を聞いて周りも少しざわめく。人々の注目も余所よそに、マスカル達は王都の中へと消えていった。

 大きな建物が立ち並ぶが、その奥に一際立派な物がある。あれが城だろう。

「それでは、しばらくは街で泊まり、王との謁見の許可が降りたらお会いして頂きます」

「わかりました」

 馬車を預け、マスカルの後を付いていくと、立派なホテルへ着いた。

「こんな立派な場所に……」

 マルクエンが考えを漏らすと、マスカルは笑う。

「皆さんは私にしてみたら大事なお客人でもあります。安宿には泊めさせられませんよ」

「そんな、お気を使われずに……」

 エントランスに入ると、魔石できらびやかに装飾され、幻想的な雰囲気すら漂っていた。

 王都で治安面の心配は無いだろうとのことで、部屋は各自1部屋。

 1人部屋のはずなのだが、そこらの宿の3人部屋よりも大きい部屋で、何だかラミッタはソワソワしていた。

 野宿をしていた時の料理も美味かったが、夕食のビュッフェには流石に勝てず。数日ぶりに手の込んだ料理を口にできた。

 部屋の備え付けシャワーで汗を流して、マルクエンはふわっふわのベッドに寝転ぶ。



 あっという間に眠ってしまい、朝になった。

 朝のルームサービスは断り、食堂で皆に挨拶をして一緒に食事を摂る。

「そうそう、マルクエンさん、ラミッタさん。ジャガの街から冒険者ギルドに届いたようですよー?」

 アレラがニコニコと言うので、ついに来たかとマルクエンは思った。

「我々もギルドに顔を出したいので、向かいますか?」

 マスカルが言ってくれたので、マルクエンは言葉に甘えることにする。

「えぇ、お願いします」



 マスカルの案内でやって来たアムールトの冒険者ギルドは、本拠地だけあってどの街よりも立派な大きい5階建てであった。

 扉は開けっ放しになっており、冒険者や依頼者がぞろぞろと出入りしている。

 受付に近付くと、向こうから声を掛けてきた。

「お疲れ様です! 勇者マスカル様!!」

 勇者の名を聞いて皆がざわつく。視線も気にせずにマスカルは要件を言った。

「どうも、ジャガの街から届けられた荷物を受け取りに来たのですが」

「はい、どうぞこちらに……」

 とある部屋に案内され、そこでお茶を飲みながらマルクエン達は待つ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...