115 / 241
試練の塔
無限ループは怖い
しおりを挟む(イラスト:叶海ネム先生)
何百歩と螺旋状の階段を登る二人。ラミッタは手を頭の後ろで組んで言う。
「何よこれ、どれだけ登らせるつもりなのよ!!」
「まぁ、そう言うな」
やっとのことで扉が現れ、マルクエンは重いそれを開く。
部屋の中を見た二人は驚いた。先程のエントランスそのままの部屋が目の前には広がっていたのだ。
「これは……」
「さっきの部屋じゃない」
動揺する二人だが、また更に階段が続いている。
「この先をまた進めば良いのか?」
マルクエンがそう言った時に、ラミッタはポーチから傷薬を出して通路に置く。
「何をしているんだラミッタ?」
「おまじないよ」
またも階段を登る二人、そして扉が待ち構えていた。
それを開いてマルクエンは驚愕する。
「この部屋!!」
ラミッタは冷静にスタスタと通路まで歩いた。
「完全に同じ部屋ね」
ラミッタは床に置かれた傷薬を指さして言う。
「これは……。どうなっているんだ!?」
「知らないわよ」
ラミッタは片目を閉じてため息をつく。
「試練はもう始まっているって所かしらね」
「なるほどな」
部屋を見渡すマルクエン。ラミッタは魔力を感知しながら部屋の隅から隅まで怪しい場所がないか調べる。
十数分後、ラミッタがため息を吐いてマルクエンに近づく。
「ダメね、魔力の妨害が激しくて、全然分からないわ」
そう言って壁にもたれかかると、なんと一部が崩れてラミッタは尻もちを付く。
「いったぁ……、何よこれ……って!!」
ラミッタの尻には魔力が込められ、一気に射出される。
「いやああああああ!!!」
宙を飛ぶラミッタ。そのまま向かい側の壁にぶつかりそうになる。
とっさに防御壁を張り、激突は免れた。その衝撃を与えた壁からは光が漏れる。
「大丈夫か!? ラミッタ!!!」
マルクエンは落下するラミッタを受け止めようとするが、顔面でラミッタの尻を受けてしまう。
「ぶぐほっ」
「な、何してんのよ!! このド変態卑猥野郎!!!」
理不尽に殴られるマルクエン。地面に降り立ったラミッタは赤面していた。
「っつ……。ったく、この塔の神様はいい趣味をしているみたいで」
そこでラミッタは異変に気付く。壁に小さなヒビが入っていることに。
「なるほどね……。宿敵!! この壁に思いっきり体当たりしてみて」
「体当たり? あぁ、やってみる!!」
何のことか分からないマルクエンだったが、言われた通りに壁にタックルを決めた。
壁は崩れ落ち、マルクエンは向こう側へ勢いよく倒れる。
「なっ、壁が!?」
「どうやら、こっちが正解みたいね」
マルクエンが突き破った通路をくぐり抜けるラミッタ。目の前には上へと続く階段が待っていた。
階段を登ると、扉が見える。
これでまた同じ場所だったら嫌だなと思いながらマルクエンが押して開けると、先程までとは別の部屋が広がり、安堵した。
0
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

聖女は聞いてしまった
夕景あき
ファンタジー
「道具に心は不要だ」
父である国王に、そう言われて育った聖女。
彼女の周囲には、彼女を心を持つ人間として扱う人は、ほとんどいなくなっていた。
聖女自身も、自分の心の動きを無視して、聖女という治癒道具になりきり何も考えず、言われた事をただやり、ただ生きているだけの日々を過ごしていた。
そんな日々が10年過ぎた後、勇者と賢者と魔法使いと共に聖女は魔王討伐の旅に出ることになる。
旅の中で心をとり戻し、勇者に恋をする聖女。
しかし、勇者の本音を聞いてしまった聖女は絶望するのだった·····。
ネガティブ思考系聖女の恋愛ストーリー!
※ハッピーエンドなので、安心してお読みください!

原産地が同じでも結果が違ったお話
よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。
視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。

【完結】拾ったおじさんが何やら普通ではありませんでした…
三園 七詩
ファンタジー
カノンは祖母と食堂を切り盛りする普通の女の子…そんなカノンがいつものように店を閉めようとすると…物音が…そこには倒れている人が…拾った人はおじさんだった…それもかなりのイケおじだった!
次の話(グレイ視点)にて完結になります。
お読みいただきありがとうございました。


聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした
猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。
聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。
思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。
彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。
それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。
けれども、なにかが胸の内に燻っている。
聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。
※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる