上 下
76 / 232
水の神様

お魚

しおりを挟む
「あっ、待ってくださいよー!!」

 ケイ達も続いて洞窟の奥に走る。

 どうやら洞窟の奥までたどり着いたマルクエン達。

 そこにはいずみと小さな祠があった。

「水の神様!! 居るのかしら? 居るなら出てきなさい!!」

「ちょっ、ラミッタさん!? 神様相手に失礼じゃ……。本当に居たらどうすんスか!?」

 ラミッタの呼びかけに応じるように、泉の底から何かが浮上してきた。

 そのまま水しぶきを上げて飛び出す。その姿は……。

「え、何あれ……」

 ラミッタの見る先には体長2メートルほどの大きな魚、そして腹からは人間の足が2本生えていた。

「き、きもっ!!」

「アレが神様……。なんでしょうか?」

 シヘンはそんな事を言う。

「バカ!! あんな神様いるか!! ありゃどう見ても魔物ッスね」

 不意に魚は口からとげを飛ばし、とっさにラミッタは防御壁を張ったが、止めきれなかった数発がシヘンを襲う。

「危ない!!」

 自らを盾にしてマルクエンがそれを防ぐ。

「マルクエンさん!!」

 傷は浅かったが、じんじんと痛む。棘を引き抜いてマルクエンは魚と対峙した。

「とにかく、こいつをやっちゃえば良いわけね」

 ラミッタは雷を浴びせたが、驚いたことに魚はピンピンとしている。

「コイツ、多分だけど粘液で雷を弾いている!!」

 それならばと炎で焼き焦がそうとするが、泉に逃げられてしまった。

 そんな時、マルクエンは急にめまいがしてふらつく。

「っく、何だ……?」

「どうしたの宿敵!?」

 思わずマルクエンは片膝を着く。

「きゅ、急にめまいが、気分も悪い……」

「大丈夫!? 宿敵!!」

 魚が再び地上に現れた。ラミッタは足元を強く踏んで石を猛スピードで飛ばす。

 粘液がそれを受け流すが、生えている足を下から岩が絡め取った。

「いい加減にしなさい!!」

 魚の口を目掛けて氷柱を突き刺すラミッタ。それは体を貫き、絶命した。

 ラミッタはマルクエンの元に駆け寄る。

「宿敵!! その程度の傷で死ぬようなタマじゃ無いでしょ!! しっかりしなさい!!」

 確かに、マルクエンのケガはそこまで酷くはなかった。

 だが、彼はとても苦しそうだ。

「もしかしてッスけど、この魚の毒……とか?」

「シヘン、解毒できる!?」

「今やってみます!!」

 シヘンは魔法で解毒を試みた。

 しかし、一向にマルクエンの調子は良くならない。

 そんな時、ケイがハッとして言った。

「もしこの魚が、自分の毒を体内で中和するタイプの魔物だったら、どこか内蔵に解毒成分があるかもしれませんッス!! 何かそういう魔物がいるって聞いたことあるッス!!」

「なるほどね」

 ラミッタは近くの石を魔法で鋭くさせ、魚の腹を切り裂いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

【12/29にて公開終了】愛するつもりなぞないんでしょうから

真朱
恋愛
この国の姫は公爵令息と婚約していたが、隣国との和睦のため、一転して隣国の王子の許へ嫁ぐことになった。余計ないざこざを防ぐべく、姫の元婚約者の公爵令息は王命でさくっと婚姻させられることになり、その相手として白羽の矢が立ったのは辺境伯家の二女・ディアナだった。「可憐な姫の後が、脳筋な辺境伯んとこの娘って、公爵令息かわいそうに…。これはあれでしょ?『お前を愛するつもりはない!』ってやつでしょ?」  期待も遠慮も捨ててる新妻ディアナと、好青年の仮面をひっ剥がされていく旦那様ラキルスの、『明日はどっちだ』な夫婦のお話。    ※なんちゃって異世界です。なんでもあり、ご都合主義をご容赦ください。  ※新婚夫婦のお話ですが色っぽさゼロです。Rは物騒な方です。  ※ざまあのお話ではありません。軽い読み物とご理解いただけると幸いです。 ※コミカライズにより12/29にて公開を終了させていただきます。

【完結】ツンな令嬢は婚約破棄され、幸せを掴む

さこの
恋愛
伯爵令嬢アイリーンは素直になれない性格だった。 姉は優しく美しく、周りから愛され、アイリーンはそんな姉を見て羨ましくも思いながらも愛されている姿を見て卑屈になる。 アイリーンには婚約者がいる。同じく伯爵家の嫡男フランク・アダムス フランクは幼馴染で両親から言われるがままに婚約をした。 アイリーンはフランクに憧れていたが、素直になれない性格ゆえに、自分の気持ちを抑えていた。 そんなある日、友達の子爵令嬢エイプリル・デュエムにフランクを取られてしまう エイプリルは美しい少女だった。 素直になれないアイリーンは自分を嫌い、家を出ようとする。 それを敏感に察知した兄に、叔母様の家に行くようにと言われる、自然豊かな辺境の地へと行くアイリーン…

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

伯爵夫人のお気に入り

つくも茄子
ファンタジー
プライド伯爵令嬢、ユースティティアは僅か二歳で大病を患い入院を余儀なくされた。悲しみにくれる伯爵夫人は、遠縁の少女を娘代わりに可愛がっていた。 数年後、全快した娘が屋敷に戻ってきた時。 喜ぶ伯爵夫人。 伯爵夫人を慕う少女。 静観する伯爵。 三者三様の想いが交差する。 歪な家族の形。 「この家族ごっこはいつまで続けるおつもりですか?お父様」 「お人形遊びはいい加減卒業なさってください、お母様」 「家族?いいえ、貴方は他所の子です」 ユースティティアは、そんな家族の形に呆れていた。 「可愛いあの子は、伯爵夫人のお気に入り」から「伯爵夫人のお気に入り」にタイトルを変更します。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

処理中です...