別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが

まっど↑きみはる

文字の大きさ
上 下
3 / 241
再会

共闘

しおりを挟む
「お、お前、生きていたのか!?」

 マルクエンは動揺して言った。同じ様に焦るラミッタも言葉を返す。

「いや、まって、宿敵、なんでアンタがここに!?」

 互いに混乱し、上手く言葉が出て来ない。代わりにシヘンがマルクエンに声を掛けた。

「お知り合いなんですか?」

「い、いえ、知り合いというか、知ってはいるのですが」

「えー、何スか? もしかして痴話喧嘩とかー?」

 ケイはにやにや笑いながら言った。マルクエンは顔を赤くして言葉を返す。

「いや、決してそんなものでは」

 そんなやり取りをしていると、村人が血相を変えて冒険者ギルドに入ってきた。

「た、大変だ!! ゴブリンと魔物の群れが村に襲いかかってきた!!」

 その言葉を聞くと、ラミッタは一気に凛とした顔になり、外へと飛び出す。

「ま、待てラミッタ!!」

 マルクエンもその後を追って村の外へと走っていく。

 一緒に付いてきたシヘンとケイはその光景を見て絶望した。

「な、なんスかこの数は!!」

 思わずケイはそう言う。百にも及ぶゴブリンと、その後ろにはカニや犬、カマキリの魔物が続いていた。

 村には衛兵が三人いるが、とても太刀打ちできないだろう。それどころか、村にいる冒険者達を合わせても無理だ。シヘンは杖を強く握ってポツリと言う。

「さっきのゴブリンは……、もしかして先遣隊だったのでしょうか」

「そうかもしれませんね」

 マルクエンが大剣を引き抜いてシヘンの言葉に答える。その正面ではラミッタが魔物の群れと対峙し、振り返らずに言った。

「宿敵!! 一時休戦よ!! アイツ等をやるわ!!」

「あぁ、分かった!!」

 その提案にマルクエンは同意し、二人は魔物の群れに走っていく。

「マルクエンさん!! いくらマルクエンさんが強くてもこの数は!!」

 シヘンは止めようとマルクエンの背中に叫ぶが、止まらない。

 敵に近づいたラミッタは炎の玉を左手から打ち出す。着弾すると、そこを中心に大きな爆発が起きた。吹き飛ぶゴブリン達。続いて雷の魔法で感電させ絶命させる。

「うおおおおお!!!」

 雄叫びを上げながらマルクエンはまるで小枝を振り回すかのように大剣を振るい、次々とゴブリンと魔物を切り裂いていく。

 冒険者も衛兵も、その圧倒的な力を眺めることしか出来なかった。

 ものの十分程度で村を襲撃した群れは壊滅してしまう。皆、言葉を失っていたが、ケイが最初に言葉を口に出す。

「マジか、マジっスか!?」

 白昼夢のような光景にそんな感想しか出てこなかった。

 だが、段々と状況を理解した者達から歓声が上がる。そんな注目の的であるラミッタはマルクエンに声を掛けた。

「どうやら、亡霊じゃないみたいね」

「お前こそ、本物みたいだな」

 二人は互いにニヤリと笑い顔を見合わせた。

「また一戦やり合いたいものだけど、宿敵。あなたはこの世界に来たばかりかしら?」

 この世界という言葉が気にかかったが、マルクエンは言葉を返す。

「あぁ、気付いたら森の中で寝ていた」

「私が色々説明してあげるわ」

 村へと歩みだすラミッタの後を、マルクエンは剣を仕舞って着いていく。

「ラミッタ殿、流石でした。本来であれば我々衛兵が戦わなければならないものを……、情けない」

「いえ、良いのですよ」

 衛兵に笑顔でラミッタは返事をする。

「それで、そちらの方は冒険者でしょうか?」

「いや、昔ちょっとありましてね」

 適当にはぐらかしてラミッタは冒険者ギルドに向かう。マルクエンの元にシヘンとケイもやって来た。

「マルクエンさん、やるっスねぇー!!」

 ケイに言われると、マルクエンは頭をかいた。

「そんな、大したことではありませんよ」

「マルクエンさん、お怪我は!?」

「シヘンさん。お気遣いありがとうございます。怪我はありませんよ」

 あんな大群相手で傷一つ無いことに、シヘンは驚いていた。冒険者ギルドに戻ると、中はざわつく。

「おい、さっきの男だ」

「何モンなんだアイツ……」

 マルクエンを見ると冒険者たちは口々に言っていた。そんな中、ラミッタとマルクエンの元に老人の男が歩いてくる。

「先程の戦いを見ていました。ラミッタさんは流石の活躍で。そして、そちらの男性は……?」

 老人でありながら鋭い眼光でマルクエンをちらりと見る。

「私は、マルクエン・クライスと申します。イーヌ王国で騎士を務めています」

「イーヌ王国……。あぁ、ラミッタさんが前におっしゃっていたお国ですか」

「宿敵、ギルドマスター殿も交えて話がしたいんだけど。我々が置かれた状況についてね」

 ラミッタが言うと、マルクエンは頷いた。今はそれしか選択肢が無いだろう。

「わかった」

 ギルドマスターに付いていくと、二人は奥の応接室へと案内された。

「どうぞ、おかけ下さい」

 マルクエンとラミッタはギルドマスターの対面にあるソファに隣同士で座る。マルクエンはラミッタの顔をちらりと流し見た。

 あの戦場でしか会わなかった彼女が隣で座っているというのは何とも奇妙な感覚だ。

 そして、そのラミッタが話し始める。

「さて、私は長い話が苦手だから単刀直入に言うわ宿敵。今いるこの世界は、私達がいた世界と別の世界なのよ」

 真面目に話す顔を見て、冗談ではないのだろうとマルクエンは思ったが、理解が追いつかない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

聖女は聞いてしまった

夕景あき
ファンタジー
「道具に心は不要だ」 父である国王に、そう言われて育った聖女。 彼女の周囲には、彼女を心を持つ人間として扱う人は、ほとんどいなくなっていた。 聖女自身も、自分の心の動きを無視して、聖女という治癒道具になりきり何も考えず、言われた事をただやり、ただ生きているだけの日々を過ごしていた。 そんな日々が10年過ぎた後、勇者と賢者と魔法使いと共に聖女は魔王討伐の旅に出ることになる。 旅の中で心をとり戻し、勇者に恋をする聖女。 しかし、勇者の本音を聞いてしまった聖女は絶望するのだった·····。 ネガティブ思考系聖女の恋愛ストーリー! ※ハッピーエンドなので、安心してお読みください!

原産地が同じでも結果が違ったお話

よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。 視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。

【完結】拾ったおじさんが何やら普通ではありませんでした…

三園 七詩
ファンタジー
カノンは祖母と食堂を切り盛りする普通の女の子…そんなカノンがいつものように店を閉めようとすると…物音が…そこには倒れている人が…拾った人はおじさんだった…それもかなりのイケおじだった! 次の話(グレイ視点)にて完結になります。 お読みいただきありがとうございました。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした

猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。 聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。 思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。 彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。 それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。 けれども、なにかが胸の内に燻っている。 聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。 ※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています

処理中です...