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高山の願い 怪しい催眠術
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十五、高山の願い 怪しい催眠術
村上の叔母、貴美子は亡くなった高山の母の妹で、母とは8歳ぐらい歳の離れた妹だ。
村上には普段はきみちゃんて呼ばれている。夫の洋三は単身赴任で仙台に住んでいる。
子どももいないし、当然着いていく物だと思っていたが、夫の洋三は誘いも無いまま1人住みのマンションを借りて居て。貴美子には迷惑かけないよって、如何にも気遣ってあげた様に、優しい笑顔出して貴美子にそういった。
いつからか心がすれ違い、“シャツのボタンひとつを掛け外したような”気持ち悪い関係だ。
これは良い表現だ。そんな感じが続いていて。彼はそこから逃げ出したかったんだろう。
そう思うと貴美子はなぜかほっとしたような感覚に襲われて、それ以上寂しいから連れてってとは言えなくなってしまった。
子どもがいなくても大切にしてくれる、そう信じていたけれど、きっかけがひとつ出来れば夫婦の形は変わり果てる物なのかも知れない。
貴美子は歯科衛生士の資格を持っていて、仕事は順調で院長ともいい関係が続いている、後輩にも頼りにされている。
45歳となれば仙台で次の転職先もあるかどうか不安だ、いくら求人がたくさんある歯科衛生士だとしても、仙台で、それも住居の近くでそういう場所があるとは限らない。
亭主の洋三に勝手に決めたと抗議を言えなかったのは、そういうバックグラウンドもあったからだと思う。
あっという間に時間が流れて、洋三は仙台に行ってしまった。がらんとした時間が襲って来た、寂しくて困り果てていた。
そんな時、姉の富美子が時々、連絡をくれていた。富美子の息子の嫁、照美は性格の良い子で気があった。
時々は女3人でいろいろなことをしゃべって楽しい時間を過ごしていた。あの日が来るまで。
あの事件が終わってから和博は人が変わったようになった。
姉も一緒に死んでしまった。自分が守ると云う気持ちになって、仕事はクビ覚悟の長期休暇を取り、毎日毎日和博の家に訪ねて行った。
変わり果てた姿、伸びたヒゲ長い髪、昔の和博の姿を思い出せない。時々独り言のように、怖い言葉、殺す殺す、帰らない帰らない、殺す殺すと、独り言で言っていた。
返す言葉なんてない、ただ見守りたい、食べるか食べないかわからない食事を作り、和博の気に触らないように身の回りの世話をし続けていた。
貴美子は公園に行って気晴らしするのが良いと思いつき、とにかく公園に行くように進めた。
和博は散歩に行くようになり公園に行き、少し雰囲気が変わった。
奇妙な出会いで高山と言う気功師の先生と会ってそれから気分が変わったと言う。
ある日、
「お礼がしたい、一緒に食事を食べたいんだけど、きみちゃん何か作ってもらえませんか?」と村上が言う
少し泣いた。こんな風に言えるなんて、この日を待っていたんだと貴美子は思った。
それから数日後、高山は村上の家にやってきた。だぶだぶのカッターシャツを着て。ズボンは白のスラックス、お揃いの白の靴を履いていた。見た目は爽やかな気功師と言える。右手は台湾人が好きそうな、金の大きな腕時計が光る。
部屋に通され、手土産のお酒を村上に渡し、高山は丁寧にお辞儀をした。
「思いがけずお招きにありがとうございました。本来ならご辞退させていただくところ、村上さんの熱い熱意に負け、参らせていただきました。ありがとうございます。」
高山はいつも毒々しい大阪弁を一切使わず、さらりとお辞儀をした。
高山はそれから村上の方を見てこういった。「村上くんみるみる元気そうになったね」「もう安心だね、今日はお招きありがとうございます」「こんな風にしてもらえるなんてほんと大感激ですありがとう」
そう言って優しい瞳と笑顔を村上に向け、その後貴美子の顔を見てまた同じく優しい笑顔向けた。深く光る吸い込まれる様な高山の目。
「お名前はなんておっしゃるんですか」と高山が貴美子に聞いた。
少し驚いたように「私ですか、私は貴美子といいます」と答えた。
高山はにっこりうなずいて「貴美子さんですね素敵な名前だ」「貴美子さん握手してもらえますか」と爽やかに言い放った。
高山は優しく手を差し出すと、貴美子はそれに応えるように手を出した。
高山が手を握ろうとした、貴美子の手を触れようとしたのに、手を握らずに手のひらとひらを合わせるようなところで止めた。その時高山は太い声で、「手がくっつく」と言った。はっとした表情で貴美子の身体が固まった。妙なことに貴美子の手は、高山の手を追いかける様に、手をつけようと手のひらを右から左に動かしていった。
その間高山は真剣な顔で貴美子の目を見ていた。
高山はその動きに合わせて手を引き上げるように少しずつ手のひらを上に上げていった。
貴美子が一本高山に近づく。
高山の手が顔の高さより、少し上になったとき、高山は貴美子の耳元で「眠れ」と一言つぶやいた。貴美子の手は力なく片方は高山の肩に掛かり、甘いダンスをする様に、抱きつくような形で、高山の胸の中で眠るような姿になっていた。その後、高山は貴美子を抱きしめ、体を支え少し腰を落とし貴美子の耳元で、
「スーっと、力が抜けて、気持ちよく気持ちよく、あなたはスーっと」と呟いている。
左腕で貴美子の肩を抱きしめて、左膝で背中を支え、腰を引き寄せた姿勢で高山は言った。
「村上君あんた買い物頼んでたやろ、隣駅のケーキ屋さん、はよ行かないとしまるで、約束通り歩いて行きや、片道40分かな?ゆっくりいっといで、慌てんさかいにね。」
村上は「はい」と返事して財布を取りに行く。
玄関で靴を履いて家を出ようとしている時に、高山の声が聞こえた。
「はい、100円硬貨を見ると笑っちゃいますよ、ほら!」
「キャハハー」
貴美子の大きな笑い声が聞こえる。
あー催眠術にかかっているんだね、楽しそうって思った。自分もそうだとは気が付かずに。
村上の叔母、貴美子は亡くなった高山の母の妹で、母とは8歳ぐらい歳の離れた妹だ。
村上には普段はきみちゃんて呼ばれている。夫の洋三は単身赴任で仙台に住んでいる。
子どももいないし、当然着いていく物だと思っていたが、夫の洋三は誘いも無いまま1人住みのマンションを借りて居て。貴美子には迷惑かけないよって、如何にも気遣ってあげた様に、優しい笑顔出して貴美子にそういった。
いつからか心がすれ違い、“シャツのボタンひとつを掛け外したような”気持ち悪い関係だ。
これは良い表現だ。そんな感じが続いていて。彼はそこから逃げ出したかったんだろう。
そう思うと貴美子はなぜかほっとしたような感覚に襲われて、それ以上寂しいから連れてってとは言えなくなってしまった。
子どもがいなくても大切にしてくれる、そう信じていたけれど、きっかけがひとつ出来れば夫婦の形は変わり果てる物なのかも知れない。
貴美子は歯科衛生士の資格を持っていて、仕事は順調で院長ともいい関係が続いている、後輩にも頼りにされている。
45歳となれば仙台で次の転職先もあるかどうか不安だ、いくら求人がたくさんある歯科衛生士だとしても、仙台で、それも住居の近くでそういう場所があるとは限らない。
亭主の洋三に勝手に決めたと抗議を言えなかったのは、そういうバックグラウンドもあったからだと思う。
あっという間に時間が流れて、洋三は仙台に行ってしまった。がらんとした時間が襲って来た、寂しくて困り果てていた。
そんな時、姉の富美子が時々、連絡をくれていた。富美子の息子の嫁、照美は性格の良い子で気があった。
時々は女3人でいろいろなことをしゃべって楽しい時間を過ごしていた。あの日が来るまで。
あの事件が終わってから和博は人が変わったようになった。
姉も一緒に死んでしまった。自分が守ると云う気持ちになって、仕事はクビ覚悟の長期休暇を取り、毎日毎日和博の家に訪ねて行った。
変わり果てた姿、伸びたヒゲ長い髪、昔の和博の姿を思い出せない。時々独り言のように、怖い言葉、殺す殺す、帰らない帰らない、殺す殺すと、独り言で言っていた。
返す言葉なんてない、ただ見守りたい、食べるか食べないかわからない食事を作り、和博の気に触らないように身の回りの世話をし続けていた。
貴美子は公園に行って気晴らしするのが良いと思いつき、とにかく公園に行くように進めた。
和博は散歩に行くようになり公園に行き、少し雰囲気が変わった。
奇妙な出会いで高山と言う気功師の先生と会ってそれから気分が変わったと言う。
ある日、
「お礼がしたい、一緒に食事を食べたいんだけど、きみちゃん何か作ってもらえませんか?」と村上が言う
少し泣いた。こんな風に言えるなんて、この日を待っていたんだと貴美子は思った。
それから数日後、高山は村上の家にやってきた。だぶだぶのカッターシャツを着て。ズボンは白のスラックス、お揃いの白の靴を履いていた。見た目は爽やかな気功師と言える。右手は台湾人が好きそうな、金の大きな腕時計が光る。
部屋に通され、手土産のお酒を村上に渡し、高山は丁寧にお辞儀をした。
「思いがけずお招きにありがとうございました。本来ならご辞退させていただくところ、村上さんの熱い熱意に負け、参らせていただきました。ありがとうございます。」
高山はいつも毒々しい大阪弁を一切使わず、さらりとお辞儀をした。
高山はそれから村上の方を見てこういった。「村上くんみるみる元気そうになったね」「もう安心だね、今日はお招きありがとうございます」「こんな風にしてもらえるなんてほんと大感激ですありがとう」
そう言って優しい瞳と笑顔を村上に向け、その後貴美子の顔を見てまた同じく優しい笑顔向けた。深く光る吸い込まれる様な高山の目。
「お名前はなんておっしゃるんですか」と高山が貴美子に聞いた。
少し驚いたように「私ですか、私は貴美子といいます」と答えた。
高山はにっこりうなずいて「貴美子さんですね素敵な名前だ」「貴美子さん握手してもらえますか」と爽やかに言い放った。
高山は優しく手を差し出すと、貴美子はそれに応えるように手を出した。
高山が手を握ろうとした、貴美子の手を触れようとしたのに、手を握らずに手のひらとひらを合わせるようなところで止めた。その時高山は太い声で、「手がくっつく」と言った。はっとした表情で貴美子の身体が固まった。妙なことに貴美子の手は、高山の手を追いかける様に、手をつけようと手のひらを右から左に動かしていった。
その間高山は真剣な顔で貴美子の目を見ていた。
高山はその動きに合わせて手を引き上げるように少しずつ手のひらを上に上げていった。
貴美子が一本高山に近づく。
高山の手が顔の高さより、少し上になったとき、高山は貴美子の耳元で「眠れ」と一言つぶやいた。貴美子の手は力なく片方は高山の肩に掛かり、甘いダンスをする様に、抱きつくような形で、高山の胸の中で眠るような姿になっていた。その後、高山は貴美子を抱きしめ、体を支え少し腰を落とし貴美子の耳元で、
「スーっと、力が抜けて、気持ちよく気持ちよく、あなたはスーっと」と呟いている。
左腕で貴美子の肩を抱きしめて、左膝で背中を支え、腰を引き寄せた姿勢で高山は言った。
「村上君あんた買い物頼んでたやろ、隣駅のケーキ屋さん、はよ行かないとしまるで、約束通り歩いて行きや、片道40分かな?ゆっくりいっといで、慌てんさかいにね。」
村上は「はい」と返事して財布を取りに行く。
玄関で靴を履いて家を出ようとしている時に、高山の声が聞こえた。
「はい、100円硬貨を見ると笑っちゃいますよ、ほら!」
「キャハハー」
貴美子の大きな笑い声が聞こえる。
あー催眠術にかかっているんだね、楽しそうって思った。自分もそうだとは気が付かずに。
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