気高い蝶 男の欲望にまみれた人妻

小笠原雅

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武志の悩み 黒い拍動

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13、武志の悩み 黒い拍動

 内村武志は地方都市のホテルのラウンジに人を待っている。バーのカウンターは酒瓶の後ろは窓になっていて、目の前にはチラホラと灯りが灯る少し力の衰えた街の夜景が広がっている。
 此処はこの街では立派なホテルの最上階のラウンジだが老朽化は否めない。バブルの遺産の様なカーペットも日焼けやシミで輝きを失っている。この街の風景と同じ古びた感じがある。
 スーツを着た男性が入って着た。直ぐに武志を見つけると
「シングルモルトで銘柄は任せる」とバーテンダーに伝えて武志の横に座った。
「今は単身赴任か?」
 男は窓から見える夜景をぼんやり見ながらウイスキーを待った。
 この男は武志の元上司で、大手商社の部長。戦略部門担当の西田さんだ。
 武志は1年前に大きなコンペで最高のプレゼンをやったつもりが負けて、責任を取らされる様に移動になり、在籍はそのままで地方の関連商社に転属になった。
 安心して座ってた椅子を蹴り飛ばされて後ろに転んだ気がした。在籍と給料はそのままの条件、経費も自由がある格別の待遇だ。会社をクビになった訳じゃないと踏ん張った。
 コンペは結果が全てだ。負けには理由があるそれをリサーチできずに席を外されるのは心外だがケリを付けると言う意味で命令に従うのは良いのかもしれない。武志は上司の言う通り商社に移動を受け入れた。
 
「お久しぶりです」
 武志は西田にウイスキーが届いたのを見てグラスを上げた、「お先に失礼しています」
 少し笑顔でそう言った。
「うまくやってるか?」
「ほんとあれ以来ですよね。はい先様では全く配属が知られてなくて、受け入れる準備も無かったです。給料が親会社持ちなので卓を用意したって感じでした」
「そうか苦労したんだな」
「あんたがそうしたんでしょ」
 武志は少し睨んで話しを続けた。西田は窓の外を興味無さそうに眺めている。
「手付かずの案件がありました。再生エネルギー関連です。可能性を見つけて今物にしようと頑張ってます」
 武志も窓を見てグラスを口に運んでいる。
「なんか新しいことは無いか?」
「やはり、部長の読み通り、銀行の株を買い占め、役員を送り、この街でバランスよく成り立っている、技術のある中小の会社の債券を不良債権して売り飛ばす。そんなストーリーですね」
「ネガティヴキャンペーンで株価を落としに掛かってます。大阪の組み関係も動いています。特定できて無いですが、仕手筋で稼いでいる男がいます。信頼されている様です」
「そうか城の中の井戸を壊すつもりだな」
「この街の国会議員、銀行の常務、はハニートラップで歯抜けです。大きな投資家も応援しています。繋げているのがその男です」
「組を動かしているのが部長良く知ってる人です」
「どうして組を動かしたんだろな」
「組といってもその男とは関係無いようです。繋がる物はありません。この案件は持ち込みの様です。うちの株式割合が意外に少ない所を見抜かれた様です」
「そうか出城の戦いだな」
「落ちぶれた地方の銀行を守ると役員会に載せるのは今は危険だ。いつ旗を上げるかタイミングが判らない、そこらへんを見守ってくれ」

「特命係長みたいだな、あんまり頑張って怪我するなよ。連絡は細かくくれいつもの方法でな」

「最終に間に合うな、ご馳走様、嫁さんに嫌われるなよ」

 最後の一言はきついな、嫌われたくないよ当然だろ。武志はバーテンを読んでお代わりを頼んだ。

「シングルモルトで銘柄は任せる」
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