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背徳の人妻 気高い蝶

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9、背徳の人妻 事実を知らない男


 その日の夜文子は自分の家に帰る事になった。
 ベランダの掃除を自らする事を亭主に納得させる事、佐田が呼べば直ぐに来る事。
 来ない時は来ないで構わないがお仕置きがある事。

 エクスタシィ疲れで怠い身体で佐田の部屋のトイレやお風呂、ベット周りの掃除をした。
 佐田は素知らぬ顔でパソコンでメールチェックしている。
 シャツとトランクスのままで机に向かう佐田を見て、また机に潜りたい衝動に突き上げられる。頭は佐田のシンボルでいっぱいになってしまい、そんな自分がイヤになる。

 掃除が終わり文子は自分部屋に戻った。部屋から出る時も冷たい感じで「ハーイ」と遠くからの言葉だけだった。
 さすがの文子もカチンと来て、なんだ身体だけか?と怒った。当て付けにドアをキツく音が鳴るぐらい閉めてプンプンと家に戻った。
 シャワー浴びて後、冷静になると、身体だけかって思う事さえおかしな事だと気づいた。私はレイプされてイヤイヤ身体を佐田に弄ばれて、無茶苦茶にされたのに。
 佐田はもともと身体が目的じゃない。偶然淫乱な文子に出会っただけなんだ。これは佐田も言っている。じゃあ私が淫乱だから悪いのか?わからない。わからない。
 むしゃくしゃするのでハイスピードで簡単に家事をしてベットに入った。
 佐田の匂いを探す自分がいる。直ぐに自愛を始めたが満足出来ない。
 明日は佐田は文子の知らない女をあのに連れ込んで、あのソファでで抱くのだろうか? 文子の愛液と唾液が付いた、シンボルをその女の好きにさせるのだろか?
 怖い事に気づいた。佐田の女に嫉妬してる今すぐ佐田の前で裸になり自分の中にシンボルを入れて佐田の目を塞ぐ様にキスをしたい。他の女に気が向かないように食い締めたい、前で好がり狂いたい。

 ああ、なんて言う事を考えているのだろう、明日夫が帰って来ると言うのに。
 ウズウズする、佐田と言う麻薬が切れたのだろう。欲しいとダメだとが交互に来る。
 気が狂う。私はきっとダメになってしまった。眠れない夜になった。


「ただいま、ちょい、いつもより早かったかな?」
 土曜日の昼ごろ夫の武志が帰ってきた。
「参ったよ、うまくいかなくてね、終電の新幹線ニンニク間に合わせられなかった。でもその分ゆっくり寝れたよ」
 夫の武志はいつもの暗い顔で疲れたと連発で帰ってきた。先に食事してシャワーの後少し寝るらしい。
 文子は昼食を用意しながら武志の様子を伺っている。
「昼飯作ってくれるんだ、ありがとう、パスタが良いな、ペペロンチーノが簡単でいいんじゃない?ニンニク効かせて欲しいなぁ」

 意外な言葉に文子はドキドキしてしまった。普段武志から料理のリクエストは無い、なんでも美味しいって言うのがあの人だ。
「疲れてるのね」
「そうだねー、だからガツンってしたのも食べたいのかな?」
 そう言いながらテレビの電源を付けてくつろいだ雰囲気でソファに座っている。

 アイボリーの壁紙、部屋のコーナーに観葉植物を置く棚が並び、薄いピンクのソファが部屋の中央にある。可愛いクッションが並ぶその中の、お気に入りのクッションを脇に抱くように武志が今部屋に居る。

 文子の頭の中は佐田の口で咀嚼されたパスタの味、武志が座るソファで犯され、ソファの後ろのドレッサーあの鏡で夜叉に心を喰われてしまった。その事を武志は知らない。
 武志はいつもの様に冷蔵庫からビールを開けて缶のままテレビ見ながら呑んでいる。
「やっぱり家の飯はいいなほっこりするよ、それに直ぐに休めるってのも良いな、ビジネスホテルだと、外の飯かコンビニ弁当だからなぁ」
 何も知らないで喜んでいる武志を見ると腹が立ってくる。
「ねえ聞いて!」
「なんだよいきなり、機嫌が悪いな」
 文子は驚きながらも機嫌良く食べてる武志に、
「水曜日にお隣の佐田さんから直接クレームがあったの。凄く怒ってらしてどうにかして欲しいって言われたの」
「それで佐田さんと話し合いをしたのよ。邪魔にならない時には私がベランダの掃除をすることにさせてもらったの」と告白した。
 さすがに、「おしっこ漏らすほど気持ちよかったから毎日行きたい」とは言えなかった。

「そうなの?電話では何も言って来なかったよね」
 文子はドキドキしたがなんとか誤魔化さないといけない。
「ちゃんと決まったら話そうと思ったから中途半端に伝えたくなかったの」
「だから言ったろ、こんな難しい話しになる前に対応しなきゃダメだよ」
「花壇を守りたいために必死にお願いしたのよ、ねえそれで良いでしょ」
「大事な奥さんを独身男の部屋に黙って行かせれる訳ないでしょ」
「彼の家はハウスキーパーが来てるの、留守の時に来てくれるらしいの、それと同じ感覚だから良いよって言ってくれたのよ」
「そのハウスキーパーにして貰えれば良いよね、お金はうちで出そうよ」
「それなら今すぐ引っ越そうよ、お庭のある一戸建てにね、それなら話しは解決だよ」
 そうだ引っ越せば佐田とも切れるかもしれない。
「住宅購入って今仕事が1番大切な時なんだよ、子どもも欲しいし、家の方は待った!ゆっくり考えるよ。一、二回掃除に行って様子見てみなよ。それから考えよう」
 武志はテレビを消して、「御馳走様!シャワー浴びて来るよ、パワー付いてから今晩一緒に寝ようね」楽しみだな」

「引っ越そうよ、そうすればこれ以上酷くならないよ」それは佐田との身体の関係を言ったつもりだったが、武志はそれを知らない。「考えるよ」とシャワーを浴びに歩いて行った。

 佐田との約束を守った文子は安堵した。大きくため息をついた。同時に底なし沼に入り込んで足が抜けなくなってしまった自分を想像していた。
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