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バーカウンターで
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17、バーカウンターで
その店に行くには雑居ビルの地下に降りる階段がある。赤い絨毯が煤け汚れて踏み込むのが気が引けた。
おしゃれな作りの手すりが伸びていてその先端の鉄で作られた花の飾りを触ってみた。
迷っている。
さっきまで家族の顔が私の心にははっきりと浮かんでいたのにこの手すりを触るとすっかり消えてしまい悠太の逞しい身体を思い浮かべてしまうだろう。
でもイケナイ事だ。
でも連絡が無いし。
店にいるわけでもない。残香を嗅ぎたいだけだ。
そんな時近くで男の笑い声が聞こえた。きっと居酒屋から出て来たのだろう、男の陽気な大きな声だ。何人か集団でいるんだろう、少し怖くなった勢いで雑居ビルの地下への階段を降りることを決めた。
急ぎ足で階段を降りて地下の奥から2軒目の古びた看板の店に私は1人で入った。
女が1人でカウンターバーに入るって言う事は私の中では男を漁っている女、そんなイメージが私の中にはある。今の私はその通りだ私は男を求めてこの店に来たのだ。
マスター私の顔覚えていた。マスターは「お帰りなさいと」言って私の前にコースターを置いて軽く会釈した。
「今日は何になさいますか」
と優しい声。
「ドライマティーニを」
「はい分りました少し待っててくださいね」
軽い足取りでシェイカーを取りに行き、慣れた手つきで派手でもないシェイカーの振り技を見せてくれた。
カウンターに当てているライトで、照らされるグラスとマティーニの色がステキだ。
「待ち合わせですか」とマスターは聞いた。
「いいえこの近くに来たんです。もう一度来てみたかったんです」と私は答えた。
「ゆっくりしていってくださいね」と言ってマスターは離れようとしたが、「いや、私はこの一杯をいただいたら帰ります。でもきっとまた来ますね」
「そうですかよかったら悠太に連絡取りましょうか」とマスターは言った。
私は首を振ったが、図星だった。その時、マスターは私の顔の表情を見てさりげなく他の客のところに行って話を始めた。
マスターの背中に並べてある酒瓶を見る、ひとつひとつにその瓶の作り作られた場所がある。悠太の言うようなその土地、その土地、の気候や風土や、作ってる人たちの顔があると思う。
酒瓶のきらめきの中にもその人たちの人生があるように思えて、私は異国の地を旅したことが無いのでその場所に思いを巡らすこともできないが、時々見る外国の写真やテレビでのひとこまが思い出される。
先程の居酒屋の酔いとドライマティーニのツンとした味が、私の酔いを深くさせている。
あと1口で飲み終わる。
もう気が済んだこれを飲んで全て終りにしようと思って立ち上がった時一組のカップルが入って来たが入ってきた。
「わー素敵ですね先輩こんなとこでいつも1人で飲んでるんですか?」
若い女は大袈裟に見回して。
「渋いですよね」
「うるさいから少しは黙れよ。ここは大人の人が大人らしく飲むお店なんだ。うるさいとこの店からつまみ出すぞ」
悠太の声だった隣には若い女がその長い髪の毛。
体の女のなめらかなラインをみせびらかすようなニットのワンピース。
ノースリーブの肩から伸びるきれいな腕はシミひとつなく艶やかに光っている。
しまった腰周りから突き出たお尻の形、その服はスリットが深く入っていて、背の高いカウンターの椅子に座る時には太ももまであらわになってしまっている。
女でもため息が出るような綺麗な太もも、ピンヒールが良く似合う小さな足。
私は立った勢いをどうする事も出来ずにトイレに向かった。
トイレのも座らず戻りながら悠太の横に座る女を観察し終わると席に戻った。
私は嫉妬に狂った。
2人も子供を産んだおばさんの体型の私と、鍛えているのだろう、洗練された女の若い女の体が2つ並べれば雄太は私のことなの目に入らないんだろう。
確かに悠太は若い女が苦手だとは言ってたが、あの女と私を比べて私を選ぶはずがない。私は気づかれていない今のうちにこの店から出ることにした。 マスターに顔を向けて手で×文字を出してお勘定してもらうことにした。
若い女は一生懸命悠太に話しかけている。私に気づく余裕もないようだマスターは悠太に何かを言おうとした、私はマスターに向けて手を振ったひとつの恋の終わりだと思った。
気配を殺して支払いを済ませて、そっとドアを開けて外に出た。不思議と嫉妬で乱れる事も無い。
薄汚れた階段は軽快に登る事ができた。階段から見上げた空は虹色に汚く輝いている。さっき騒いでいた男たちもいない。ここを去る事が出来ない理由が無い。
酔った足が思うまま知らない方向に向かって前後に動いている、きっと帰るんだろう私は、自虐の笑い声が出てしまう。
キラキラと輝く若い女の笑い声が頭に入って消えない。きっと今夜はこの声で寝れ無いんだろうなって思いながら。ふらふらと歩いていた。
呼び止められる声がした。
私は振り向いた。
その店に行くには雑居ビルの地下に降りる階段がある。赤い絨毯が煤け汚れて踏み込むのが気が引けた。
おしゃれな作りの手すりが伸びていてその先端の鉄で作られた花の飾りを触ってみた。
迷っている。
さっきまで家族の顔が私の心にははっきりと浮かんでいたのにこの手すりを触るとすっかり消えてしまい悠太の逞しい身体を思い浮かべてしまうだろう。
でもイケナイ事だ。
でも連絡が無いし。
店にいるわけでもない。残香を嗅ぎたいだけだ。
そんな時近くで男の笑い声が聞こえた。きっと居酒屋から出て来たのだろう、男の陽気な大きな声だ。何人か集団でいるんだろう、少し怖くなった勢いで雑居ビルの地下への階段を降りることを決めた。
急ぎ足で階段を降りて地下の奥から2軒目の古びた看板の店に私は1人で入った。
女が1人でカウンターバーに入るって言う事は私の中では男を漁っている女、そんなイメージが私の中にはある。今の私はその通りだ私は男を求めてこの店に来たのだ。
マスター私の顔覚えていた。マスターは「お帰りなさいと」言って私の前にコースターを置いて軽く会釈した。
「今日は何になさいますか」
と優しい声。
「ドライマティーニを」
「はい分りました少し待っててくださいね」
軽い足取りでシェイカーを取りに行き、慣れた手つきで派手でもないシェイカーの振り技を見せてくれた。
カウンターに当てているライトで、照らされるグラスとマティーニの色がステキだ。
「待ち合わせですか」とマスターは聞いた。
「いいえこの近くに来たんです。もう一度来てみたかったんです」と私は答えた。
「ゆっくりしていってくださいね」と言ってマスターは離れようとしたが、「いや、私はこの一杯をいただいたら帰ります。でもきっとまた来ますね」
「そうですかよかったら悠太に連絡取りましょうか」とマスターは言った。
私は首を振ったが、図星だった。その時、マスターは私の顔の表情を見てさりげなく他の客のところに行って話を始めた。
マスターの背中に並べてある酒瓶を見る、ひとつひとつにその瓶の作り作られた場所がある。悠太の言うようなその土地、その土地、の気候や風土や、作ってる人たちの顔があると思う。
酒瓶のきらめきの中にもその人たちの人生があるように思えて、私は異国の地を旅したことが無いのでその場所に思いを巡らすこともできないが、時々見る外国の写真やテレビでのひとこまが思い出される。
先程の居酒屋の酔いとドライマティーニのツンとした味が、私の酔いを深くさせている。
あと1口で飲み終わる。
もう気が済んだこれを飲んで全て終りにしようと思って立ち上がった時一組のカップルが入って来たが入ってきた。
「わー素敵ですね先輩こんなとこでいつも1人で飲んでるんですか?」
若い女は大袈裟に見回して。
「渋いですよね」
「うるさいから少しは黙れよ。ここは大人の人が大人らしく飲むお店なんだ。うるさいとこの店からつまみ出すぞ」
悠太の声だった隣には若い女がその長い髪の毛。
体の女のなめらかなラインをみせびらかすようなニットのワンピース。
ノースリーブの肩から伸びるきれいな腕はシミひとつなく艶やかに光っている。
しまった腰周りから突き出たお尻の形、その服はスリットが深く入っていて、背の高いカウンターの椅子に座る時には太ももまであらわになってしまっている。
女でもため息が出るような綺麗な太もも、ピンヒールが良く似合う小さな足。
私は立った勢いをどうする事も出来ずにトイレに向かった。
トイレのも座らず戻りながら悠太の横に座る女を観察し終わると席に戻った。
私は嫉妬に狂った。
2人も子供を産んだおばさんの体型の私と、鍛えているのだろう、洗練された女の若い女の体が2つ並べれば雄太は私のことなの目に入らないんだろう。
確かに悠太は若い女が苦手だとは言ってたが、あの女と私を比べて私を選ぶはずがない。私は気づかれていない今のうちにこの店から出ることにした。 マスターに顔を向けて手で×文字を出してお勘定してもらうことにした。
若い女は一生懸命悠太に話しかけている。私に気づく余裕もないようだマスターは悠太に何かを言おうとした、私はマスターに向けて手を振ったひとつの恋の終わりだと思った。
気配を殺して支払いを済ませて、そっとドアを開けて外に出た。不思議と嫉妬で乱れる事も無い。
薄汚れた階段は軽快に登る事ができた。階段から見上げた空は虹色に汚く輝いている。さっき騒いでいた男たちもいない。ここを去る事が出来ない理由が無い。
酔った足が思うまま知らない方向に向かって前後に動いている、きっと帰るんだろう私は、自虐の笑い声が出てしまう。
キラキラと輝く若い女の笑い声が頭に入って消えない。きっと今夜はこの声で寝れ無いんだろうなって思いながら。ふらふらと歩いていた。
呼び止められる声がした。
私は振り向いた。
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