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居酒屋で
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16、居酒屋で
私のスマホにLINEが届いた。誘ってくれた彼女は、まだ会社の仕事が終わらないようで、約束の時間より遅れると連絡があった。
これで2回目だ。30分ぐらい待たされただろうか。私の付き合いでは時間にルーズな人はたまにいる。そんなに気になりせもせずに近くのコーヒーショップの中で彼女を待っていた。
バックの中に悠太と行ったカウンターバー、マスターからもらった名刺がある。取り出してもう一度指で擦ってみた。今はとっても大切に感じてしまう。
その住所を確認してスマホの地図アプリに住所を入力してみた。この駅の改札口から10分ぐらいは歩くようだ。 誘ってくれた彼女はこの駅の近くのどこの店を予約を取ってくれたんだろうかわからないが、少々飲んでも此処に戻れば歩いて行ける距離のようだ。
気配がする方に目を向けると、コーヒーショップ店の大きなウィンドガラスの向こう側で手を合わせている待ち人がいた。私は笑顔で答えて席を立った。
本来ならあっちがお客さんで私が接待しなきゃいけない立場なのに、彼女は、女性で個人で自立してやっている私の姿に憧れを持っているらしく、先輩のような扱いをしてくれる。
甘えてはいけないが気分が悪いわけでもない。彼女には知ってる情報は全部吐き出す。彼女は私を慕う気持ちが伝わってくるのでプライベートでも会っていろいろな話をしている。
彼女が連れて行ってくれたのは、カウンターだけの小さな店で昔ながらのおでん屋を模したような居酒屋だった。カツオと昆布の出汁の香りが部屋中に広がって入るだけで食欲が湧く、それでいて若く活気のあるいい店だった。古い民家をイノベーションして土壁の雰囲気、バンダナを頭に巻いた若い夫婦が料理と出されたおでんに合う酒を説明してくれる。
担当の女の子は私を慰めると言う理由でここに来たはずなのだが突然彼女の恋話を聞く羽目になった。同棲したいと思う彼氏がいるが、同棲してしまうと結婚にはたどりつかないかもしれない。ちゃんと結婚して子供も欲しいしどうしたらいいのか?男の方はなかなかその気にならない。困ってしまったと私に泣きついてくる。
私の若い頃は同棲なんてそんな簡単に親がさせてくれなかった。一緒に住みたかったら結婚しなさい。その一点張りで困った。旦那も私も若かったから性欲が後押しして未来の事など何も考えずに一緒に住んでしまおう。旦那に無理矢理プロポーズさせて結婚をした。
若かったので市営住宅に安い家賃で住む事ができた。知らぬ間に子供ができた。逆に若いうちに子育てができて仕事に戻っても体力だけはあったので、家事と子育てと仕事を両立することができた。職場には大学で一緒だった仲間たちも何人かいてその職場でキャリアを積むことができた。ふたりめの子供を授かったとき産休を機に会社を辞めた。細々と独立まではいかないが知り合いが流してくれる小さな仕事を拾い集めながら今の仕事をした。それを一生懸命働いてくれる旦那様の収入の足しにして今がある。多分仕事が私に合ったのだろう仕事の内容が苦にならない。母親など両親の助けもあって今この地位に入れる事はとってもラッキーなことだったと思う。
そんな話をポツリポツリしながら家族の大切さを、改めて思い出していた。さっきまで若い男の体を思い出して色情に夢中になっている私を、自分自身を、改め少し気持ちが覚めたような気になった。
都会の夜の空は街の灯りが届いているのか白く感じる事がある。ネオンが空に浮かぶ雲に映えて少し色づいている。そんな非日常な雰囲気が好きだ誘ってくれた彼女は気持ちがスッキリしたのか、今すぐ逢いたいと言って小走りに大好きな男の元へ消えて行った。
「さぁ私も帰ろう」
少し里心と言うのか家族の事も頭に浮かぶ様になった。
子どものためにケーキを買うかと駅の改札口に向かった時、これから帰ると伝えようとスマホの画面を見た。
ポップアップされた地図アプリの矢印が目に入った。
「200m先を左です」
私のスマホにLINEが届いた。誘ってくれた彼女は、まだ会社の仕事が終わらないようで、約束の時間より遅れると連絡があった。
これで2回目だ。30分ぐらい待たされただろうか。私の付き合いでは時間にルーズな人はたまにいる。そんなに気になりせもせずに近くのコーヒーショップの中で彼女を待っていた。
バックの中に悠太と行ったカウンターバー、マスターからもらった名刺がある。取り出してもう一度指で擦ってみた。今はとっても大切に感じてしまう。
その住所を確認してスマホの地図アプリに住所を入力してみた。この駅の改札口から10分ぐらいは歩くようだ。 誘ってくれた彼女はこの駅の近くのどこの店を予約を取ってくれたんだろうかわからないが、少々飲んでも此処に戻れば歩いて行ける距離のようだ。
気配がする方に目を向けると、コーヒーショップ店の大きなウィンドガラスの向こう側で手を合わせている待ち人がいた。私は笑顔で答えて席を立った。
本来ならあっちがお客さんで私が接待しなきゃいけない立場なのに、彼女は、女性で個人で自立してやっている私の姿に憧れを持っているらしく、先輩のような扱いをしてくれる。
甘えてはいけないが気分が悪いわけでもない。彼女には知ってる情報は全部吐き出す。彼女は私を慕う気持ちが伝わってくるのでプライベートでも会っていろいろな話をしている。
彼女が連れて行ってくれたのは、カウンターだけの小さな店で昔ながらのおでん屋を模したような居酒屋だった。カツオと昆布の出汁の香りが部屋中に広がって入るだけで食欲が湧く、それでいて若く活気のあるいい店だった。古い民家をイノベーションして土壁の雰囲気、バンダナを頭に巻いた若い夫婦が料理と出されたおでんに合う酒を説明してくれる。
担当の女の子は私を慰めると言う理由でここに来たはずなのだが突然彼女の恋話を聞く羽目になった。同棲したいと思う彼氏がいるが、同棲してしまうと結婚にはたどりつかないかもしれない。ちゃんと結婚して子供も欲しいしどうしたらいいのか?男の方はなかなかその気にならない。困ってしまったと私に泣きついてくる。
私の若い頃は同棲なんてそんな簡単に親がさせてくれなかった。一緒に住みたかったら結婚しなさい。その一点張りで困った。旦那も私も若かったから性欲が後押しして未来の事など何も考えずに一緒に住んでしまおう。旦那に無理矢理プロポーズさせて結婚をした。
若かったので市営住宅に安い家賃で住む事ができた。知らぬ間に子供ができた。逆に若いうちに子育てができて仕事に戻っても体力だけはあったので、家事と子育てと仕事を両立することができた。職場には大学で一緒だった仲間たちも何人かいてその職場でキャリアを積むことができた。ふたりめの子供を授かったとき産休を機に会社を辞めた。細々と独立まではいかないが知り合いが流してくれる小さな仕事を拾い集めながら今の仕事をした。それを一生懸命働いてくれる旦那様の収入の足しにして今がある。多分仕事が私に合ったのだろう仕事の内容が苦にならない。母親など両親の助けもあって今この地位に入れる事はとってもラッキーなことだったと思う。
そんな話をポツリポツリしながら家族の大切さを、改めて思い出していた。さっきまで若い男の体を思い出して色情に夢中になっている私を、自分自身を、改め少し気持ちが覚めたような気になった。
都会の夜の空は街の灯りが届いているのか白く感じる事がある。ネオンが空に浮かぶ雲に映えて少し色づいている。そんな非日常な雰囲気が好きだ誘ってくれた彼女は気持ちがスッキリしたのか、今すぐ逢いたいと言って小走りに大好きな男の元へ消えて行った。
「さぁ私も帰ろう」
少し里心と言うのか家族の事も頭に浮かぶ様になった。
子どものためにケーキを買うかと駅の改札口に向かった時、これから帰ると伝えようとスマホの画面を見た。
ポップアップされた地図アプリの矢印が目に入った。
「200m先を左です」
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