4 / 27
始まりは4月のある日
しおりを挟む
4、始まりは4月のある日
仕事のキリが少しついてスマホを見ていた。
ソファーのクッションにスマホを放り投げる。
オレンジ色のソファーに一旦沈んだiPhoneが跳ね上がりまた沈んだ。無視する様に視線を外してベランダの外の青空をぼんやり眺めた。
冬の終わりの晴れ間の青空が広がってる。
だけど今日は朝から気分が悪い。
先日から計画していた関西への旅行が親友の久美子の突然の体調不良で中止になったからだ。
昨日、高熱でぼーっとする久美子と話をした結果、文子は一気に旅行に対して持っていたエネルギーが抜けてしまった気がした。
旅行仲間は使う旅費のランクが同じなのは大切だ。気兼ねなく美味しいものを食べて美味しいと問いかけたり、同意してくれる人が居ないと旅はつまらない。
久美子はその点でとっても相性が良い。
その中止の連絡を文子は休日を潰してツーリストや旅館にキャンセルの連絡を取り終えた。
折り畳みタイプのスマホカバーが大きく開き、諦め切った雰囲気のままソファーに横たわってる。
文子はいつも旅行先はこだわりを持つ。
いろいろな情報で宿泊先を調べそれに合った時間の列車をツーリストに手配する。それが旅行の楽しみだと思っている。
「旅の相棒は久美子がいいのよね、代わりがいないのが辛いわ」
そう呟きながら思い浮かべる。今回の宿は奈良の田舎の古民家をリフォームした旅館を取った。
アールヴェーダの意識したオイルマッサージ。無農薬野菜を使った野菜で料理をしてくれる。
収穫の体験、薬膳の座学などを、シンプルな味付の野菜料理が自慢の宿らしい。なかなか予約が取れない宿でもある。
文子は奈良が好きだ。
京都のようにきらびやかではない、だが観光客にへりくだった京都の気取ったところが奈良の寺には少ない。
例えば里山の麓にぽつんと立っていて宣伝する気がほとんど無い国宝級の仏を安置する寺。
崩れかけた背の低い瓦をのせた土塀。
文子でも簡単によじ登れて、ホイット飛び越えてしまいそうなその境界の緩さに文子はほっとする。
一度その中に入ってしまえば、シンプルな本堂の作りの中、奈良時代の仏たちが待っていたかのように優しく、厳しいポーズで迎え入れてくれる。
行きたい気持ちはあってもこの計画を楽しいものにするには少し時間をずらしてみるのも良い事だろうとそう納得する事にした。
またお互い都合を合わせることを考えると奈良の仏たちに会うのも時間がかかってしまうのだろう。
残念ながら仕方ない。
ツーリストや旅館の受付の人もこれは仕方ないとでも言うように落ち着いた声で、淡々とキャンセルの内容を確認してくださったのだ。
ため息が出る。
その悔しさをスマートフォンが文子に代わってソファーのクッションにダイブしてくれた。
投げた後、はっとして、すまないとでも言うようにクッションに手を伸ばしうつ伏せにソファーに寝た。
文子は42歳建築デザイナーを自宅で個人でやっている。
顧客の要望を聞いてそれをCGに直して展開するグラフィックデザイナーと建築士を合わせたような仕事だ。
細部に細かくデザインを積み重ねて顧客はその中をRPGゲームのようにその中動き回れる。
最近需要が増えて店舗の依頼やマンションのエントランスでも使われている。関西へ行く予定が直前にキャンセルになったため一生懸命仕事を詰めて作業終わらした結果
そのためにポカーンと2日ぐらい空いた時間ができてしまった。
つまり暇だ。
仕事のキリが少しついてスマホを見ていた。
ソファーのクッションにスマホを放り投げる。
オレンジ色のソファーに一旦沈んだiPhoneが跳ね上がりまた沈んだ。無視する様に視線を外してベランダの外の青空をぼんやり眺めた。
冬の終わりの晴れ間の青空が広がってる。
だけど今日は朝から気分が悪い。
先日から計画していた関西への旅行が親友の久美子の突然の体調不良で中止になったからだ。
昨日、高熱でぼーっとする久美子と話をした結果、文子は一気に旅行に対して持っていたエネルギーが抜けてしまった気がした。
旅行仲間は使う旅費のランクが同じなのは大切だ。気兼ねなく美味しいものを食べて美味しいと問いかけたり、同意してくれる人が居ないと旅はつまらない。
久美子はその点でとっても相性が良い。
その中止の連絡を文子は休日を潰してツーリストや旅館にキャンセルの連絡を取り終えた。
折り畳みタイプのスマホカバーが大きく開き、諦め切った雰囲気のままソファーに横たわってる。
文子はいつも旅行先はこだわりを持つ。
いろいろな情報で宿泊先を調べそれに合った時間の列車をツーリストに手配する。それが旅行の楽しみだと思っている。
「旅の相棒は久美子がいいのよね、代わりがいないのが辛いわ」
そう呟きながら思い浮かべる。今回の宿は奈良の田舎の古民家をリフォームした旅館を取った。
アールヴェーダの意識したオイルマッサージ。無農薬野菜を使った野菜で料理をしてくれる。
収穫の体験、薬膳の座学などを、シンプルな味付の野菜料理が自慢の宿らしい。なかなか予約が取れない宿でもある。
文子は奈良が好きだ。
京都のようにきらびやかではない、だが観光客にへりくだった京都の気取ったところが奈良の寺には少ない。
例えば里山の麓にぽつんと立っていて宣伝する気がほとんど無い国宝級の仏を安置する寺。
崩れかけた背の低い瓦をのせた土塀。
文子でも簡単によじ登れて、ホイット飛び越えてしまいそうなその境界の緩さに文子はほっとする。
一度その中に入ってしまえば、シンプルな本堂の作りの中、奈良時代の仏たちが待っていたかのように優しく、厳しいポーズで迎え入れてくれる。
行きたい気持ちはあってもこの計画を楽しいものにするには少し時間をずらしてみるのも良い事だろうとそう納得する事にした。
またお互い都合を合わせることを考えると奈良の仏たちに会うのも時間がかかってしまうのだろう。
残念ながら仕方ない。
ツーリストや旅館の受付の人もこれは仕方ないとでも言うように落ち着いた声で、淡々とキャンセルの内容を確認してくださったのだ。
ため息が出る。
その悔しさをスマートフォンが文子に代わってソファーのクッションにダイブしてくれた。
投げた後、はっとして、すまないとでも言うようにクッションに手を伸ばしうつ伏せにソファーに寝た。
文子は42歳建築デザイナーを自宅で個人でやっている。
顧客の要望を聞いてそれをCGに直して展開するグラフィックデザイナーと建築士を合わせたような仕事だ。
細部に細かくデザインを積み重ねて顧客はその中をRPGゲームのようにその中動き回れる。
最近需要が増えて店舗の依頼やマンションのエントランスでも使われている。関西へ行く予定が直前にキャンセルになったため一生懸命仕事を詰めて作業終わらした結果
そのためにポカーンと2日ぐらい空いた時間ができてしまった。
つまり暇だ。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる