66 / 66
第66話 初版
しおりを挟む
「岸本さんから初版が贈られてきたよ」
「みせて、あ、ちゃんと二冊贈ってくれたのね」
「僕たちがモデルになってるんだし、それくらい当然だよ 笑」
本を開くと、彼女の登場シーンから始まっていた。
「わたしが絶世の美少女になってるんだけど、も、盛りすぎだよね……」
(クス。本当はまんざらでもないくせに)
「岸本さんも、自分は本名で登場させて、ちゃっかりイケメンになってるしね 笑」
「なんだか、こうやって読むと、恥ずかしい……よね」
二人並んでソファーにすわり、僕たちは岸本さんの最新作を読んでいる。
岸本さんは僕の大学の先輩で、卒業後は編集の仕事の傍ら作家活動をおこない、去年、作家デビューを果たしていた。
そして、第二作は僕たちをモデルに描いた恋愛小説で、その初版が僕たちに贈られたというわけだ。
「それにしても、『不倫研究サークル』って題名、どうにかならなかったの?」
「どうも良い題名が浮かばなかったらしい、それに、あのサークルは僕と岸本さんの接点だしね」
「わたしは、どうせ書くなら江の島でのプロポーズまで書いて欲しかったな~」
「笑 誰かさんが頑固なおかげで、あの後まで書くともう一冊本ができちゃうよ。 それに、『なんで江の島まで行くんだ?』て散々文句を言ってたのは誰だっけ?」
「だって~、なにも言わないで『今から江の島まで行こう』なんて、コンビニでも行くみたいに言い出すんだもの」
「そりゃ、サプライズだからね」
「でも、嬉しかった……、初めてのデートの時に決めてたんだね」
「うん。ここで夜景を見ながらプロポーズしようって考えてたら、君は『なにをニヤケけてるんだ?』て言ったけどね」
彼女が僕の手を握り、肩にちょこんと頭を乗せた。
「あの時、あなたとこんなふうになれるなんて、思ってもなかった」
僕も、ギュッと彼女の手を握りかえす。
「あ!」
「どうしたの?」
「今、動いたの!」
「え、どこ? どこ?」
「ほら、ここ」
彼女は握っていた手を大きくなったお腹の上に導く。
「うお! いま、ポコッて感触があった」
彼女のお腹の中で、小さな命が躍動し始めている。
もうすぐ、新しい物語が始まる。
今度は、三人で。
----- 終わり -----
「みせて、あ、ちゃんと二冊贈ってくれたのね」
「僕たちがモデルになってるんだし、それくらい当然だよ 笑」
本を開くと、彼女の登場シーンから始まっていた。
「わたしが絶世の美少女になってるんだけど、も、盛りすぎだよね……」
(クス。本当はまんざらでもないくせに)
「岸本さんも、自分は本名で登場させて、ちゃっかりイケメンになってるしね 笑」
「なんだか、こうやって読むと、恥ずかしい……よね」
二人並んでソファーにすわり、僕たちは岸本さんの最新作を読んでいる。
岸本さんは僕の大学の先輩で、卒業後は編集の仕事の傍ら作家活動をおこない、去年、作家デビューを果たしていた。
そして、第二作は僕たちをモデルに描いた恋愛小説で、その初版が僕たちに贈られたというわけだ。
「それにしても、『不倫研究サークル』って題名、どうにかならなかったの?」
「どうも良い題名が浮かばなかったらしい、それに、あのサークルは僕と岸本さんの接点だしね」
「わたしは、どうせ書くなら江の島でのプロポーズまで書いて欲しかったな~」
「笑 誰かさんが頑固なおかげで、あの後まで書くともう一冊本ができちゃうよ。 それに、『なんで江の島まで行くんだ?』て散々文句を言ってたのは誰だっけ?」
「だって~、なにも言わないで『今から江の島まで行こう』なんて、コンビニでも行くみたいに言い出すんだもの」
「そりゃ、サプライズだからね」
「でも、嬉しかった……、初めてのデートの時に決めてたんだね」
「うん。ここで夜景を見ながらプロポーズしようって考えてたら、君は『なにをニヤケけてるんだ?』て言ったけどね」
彼女が僕の手を握り、肩にちょこんと頭を乗せた。
「あの時、あなたとこんなふうになれるなんて、思ってもなかった」
僕も、ギュッと彼女の手を握りかえす。
「あ!」
「どうしたの?」
「今、動いたの!」
「え、どこ? どこ?」
「ほら、ここ」
彼女は握っていた手を大きくなったお腹の上に導く。
「うお! いま、ポコッて感触があった」
彼女のお腹の中で、小さな命が躍動し始めている。
もうすぐ、新しい物語が始まる。
今度は、三人で。
----- 終わり -----
0
お気に入りに追加
29
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』
コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ”
(全20話)の続編。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211
男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は?
そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。
格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる