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第62話 復縁
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「シャワー浴びて来るわ」
そう言うと、綾乃はベッドから抜け出してシャワールームへと消えていった。
一人ベッドの上で天井を見上げながら、どう綾乃を説得するか、考えを巡らせる。
暫くすると、綾乃はシャワールームから出てきて、僕にもシャワーを浴びて服を着ろと言うので、僕は素直に従った。
僕がシャワーを浴びて戻ってくると、綾乃はテーブルに座っていた。ワインが入ったグラスが二つ、用意されていた。
「圭君があまり飲めないのは知っているけど付き合って」
「はい、いただきます」
テーブルの向こうの綾乃は厳しい表情をしている。完全に仕事の顔になっている。
「ねえ、私が今、どんな心境だか分かる?」尋問調の言い回しだ。
「その、川本さんが妊娠したのには、仕方のない理由があるんです」
僕は、愛莉が妊娠した経緯を話した。
「それは気の毒だと思うし、その相手の男に腹も立つわ、でも」
綾乃の言いたいことは予想がついた。綾乃との関係を断ったことの原因でもあるのだから、愛莉は。
「それとこれは別! 男を取られたのよ彼女に、こんな屈辱を味わったのに、その相手を助けろって言うの?」
「助けろとは言ってません。後任として推してるだけです。彼女が有能なのは綾乃さんだって知ってるはずです」
綾乃は、ワイングラスを揺らしながら、思案しているようだった。
「確かに人手は必要だし、川本さんなら適任だと思うわ。
今度、三人で話しましょう。私は前向きに考えてみるわ」
「ありがとうございます!」
「でも、そんなに川本さんの事が大切なら、圭君が引き取ってあげれば良いのに。
子供だって、今なら戸籍上は圭君の子供にできるじゃない」
綾乃は不思議そうに僕を見つめる。少し目が寂しそうだった。
「それは……、提案してみました。でも、拒否されて、僕たちは友達に戻る事にしたんです」
「なんで? 川本さんも圭君のことが好きで、この先もずっと一緒に居られるのに」
「僕の負担になりたくないらしいです。それに、子供も僕の本当の子供じゃないし、複雑なんです」
愛莉の妊娠が分かった日、散々話し合って決めた事だが、僕だって納得している訳ではない。
「そう、彼女って確か母子家庭で、お母さんも若い時に妊娠して彼女を産んだのよね。そういう家庭環境が影響しているのかもね」
綾乃は、ワインのグラスに口づけすると赤い液体を喉に流し込んだ。
「だから、せめて彼女の生活が安定することができればと思ったんです」
「君は本当におせっかいだね 笑」
綾乃は、さっきまでの厳しい表情を崩し女の表情に変わっていた。
「川本さんには悪いけど、私には好都合なのかしら?」
「え?」
「だって、圭君は今、フリーなんでしょ?」
「でも、今更……、それに、僕は卒業したら地元に戻ろうと思ってるんです」
僕は、自分がこの先何をしたいか、どういう目標があるのか、綾乃に話した。
「そうなんだ……、そう言う事があったのね。もしかして、今でもその子の事が好きなの?」
「それ……は……」
「否定しないんだ 笑」
「すみません……」
「でも、圭君って、前々から思ってたけど、見かけによらず熱いよね」
「同じことを、松江で会った高取さんにも言われました」
あの日の事を思い出し、僕は少し顔が赤くなる。しかし、松江で高取夫妻や土門華子の母に会ったことで、僕の目標が定まったと言って良い。
「でも、あんまり頑張りすぎると、暴走して何処かで倒れてしまうわよ。
だから、圭君もたまには誰かに甘えなきゃ。そういう所を川本さんも心配したんじゃないの」
綾乃が、遠回しに復縁を迫っているのは感じ取れた。
「綾乃さんは良いのですか? あと二年もすれば、この関係は否が応でも終わるというのに」
「逆に、期間が定まっているから、燃えるんじゃない?」
綾乃は立ち上がると、せっかく着た服を脱ぎ始めた。
「綾乃さん?」
「ねえ、私をこんなにしたのは誰?」
服を脱ぐと、綾乃はベッドに座って挑発する。
「圭君と別れてから、ずっと寂しかったのよ。今夜は、その埋め合わせをしてもらうわ」
僕も服を脱いでベッドで綾乃を抱きしめる。
「僕って、ダメですね。すぐに欲望に負けてしまう」
「別に犯罪じゃないし、正常な反応じゃないの?」
綾乃の理屈を、僕は唇で塞いだ。
「でも、生徒にこんなことしちゃダメよ。未来の先生 笑」
唇が離れると、綾乃が冗談を言って笑った。
「しませんよ 笑」
と言いながら、陽菜の事を思い出した。
(陽菜との事も、ハッキリさせなきゃ……)
そう言うと、綾乃はベッドから抜け出してシャワールームへと消えていった。
一人ベッドの上で天井を見上げながら、どう綾乃を説得するか、考えを巡らせる。
暫くすると、綾乃はシャワールームから出てきて、僕にもシャワーを浴びて服を着ろと言うので、僕は素直に従った。
僕がシャワーを浴びて戻ってくると、綾乃はテーブルに座っていた。ワインが入ったグラスが二つ、用意されていた。
「圭君があまり飲めないのは知っているけど付き合って」
「はい、いただきます」
テーブルの向こうの綾乃は厳しい表情をしている。完全に仕事の顔になっている。
「ねえ、私が今、どんな心境だか分かる?」尋問調の言い回しだ。
「その、川本さんが妊娠したのには、仕方のない理由があるんです」
僕は、愛莉が妊娠した経緯を話した。
「それは気の毒だと思うし、その相手の男に腹も立つわ、でも」
綾乃の言いたいことは予想がついた。綾乃との関係を断ったことの原因でもあるのだから、愛莉は。
「それとこれは別! 男を取られたのよ彼女に、こんな屈辱を味わったのに、その相手を助けろって言うの?」
「助けろとは言ってません。後任として推してるだけです。彼女が有能なのは綾乃さんだって知ってるはずです」
綾乃は、ワイングラスを揺らしながら、思案しているようだった。
「確かに人手は必要だし、川本さんなら適任だと思うわ。
今度、三人で話しましょう。私は前向きに考えてみるわ」
「ありがとうございます!」
「でも、そんなに川本さんの事が大切なら、圭君が引き取ってあげれば良いのに。
子供だって、今なら戸籍上は圭君の子供にできるじゃない」
綾乃は不思議そうに僕を見つめる。少し目が寂しそうだった。
「それは……、提案してみました。でも、拒否されて、僕たちは友達に戻る事にしたんです」
「なんで? 川本さんも圭君のことが好きで、この先もずっと一緒に居られるのに」
「僕の負担になりたくないらしいです。それに、子供も僕の本当の子供じゃないし、複雑なんです」
愛莉の妊娠が分かった日、散々話し合って決めた事だが、僕だって納得している訳ではない。
「そう、彼女って確か母子家庭で、お母さんも若い時に妊娠して彼女を産んだのよね。そういう家庭環境が影響しているのかもね」
綾乃は、ワインのグラスに口づけすると赤い液体を喉に流し込んだ。
「だから、せめて彼女の生活が安定することができればと思ったんです」
「君は本当におせっかいだね 笑」
綾乃は、さっきまでの厳しい表情を崩し女の表情に変わっていた。
「川本さんには悪いけど、私には好都合なのかしら?」
「え?」
「だって、圭君は今、フリーなんでしょ?」
「でも、今更……、それに、僕は卒業したら地元に戻ろうと思ってるんです」
僕は、自分がこの先何をしたいか、どういう目標があるのか、綾乃に話した。
「そうなんだ……、そう言う事があったのね。もしかして、今でもその子の事が好きなの?」
「それ……は……」
「否定しないんだ 笑」
「すみません……」
「でも、圭君って、前々から思ってたけど、見かけによらず熱いよね」
「同じことを、松江で会った高取さんにも言われました」
あの日の事を思い出し、僕は少し顔が赤くなる。しかし、松江で高取夫妻や土門華子の母に会ったことで、僕の目標が定まったと言って良い。
「でも、あんまり頑張りすぎると、暴走して何処かで倒れてしまうわよ。
だから、圭君もたまには誰かに甘えなきゃ。そういう所を川本さんも心配したんじゃないの」
綾乃が、遠回しに復縁を迫っているのは感じ取れた。
「綾乃さんは良いのですか? あと二年もすれば、この関係は否が応でも終わるというのに」
「逆に、期間が定まっているから、燃えるんじゃない?」
綾乃は立ち上がると、せっかく着た服を脱ぎ始めた。
「綾乃さん?」
「ねえ、私をこんなにしたのは誰?」
服を脱ぐと、綾乃はベッドに座って挑発する。
「圭君と別れてから、ずっと寂しかったのよ。今夜は、その埋め合わせをしてもらうわ」
僕も服を脱いでベッドで綾乃を抱きしめる。
「僕って、ダメですね。すぐに欲望に負けてしまう」
「別に犯罪じゃないし、正常な反応じゃないの?」
綾乃の理屈を、僕は唇で塞いだ。
「でも、生徒にこんなことしちゃダメよ。未来の先生 笑」
唇が離れると、綾乃が冗談を言って笑った。
「しませんよ 笑」
と言いながら、陽菜の事を思い出した。
(陽菜との事も、ハッキリさせなきゃ……)
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