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第54話 本当の彼女ができた
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GWも過ぎた五月の半ば、小梢と別れてから一年になろうかとしていた。
僕は、相変わらず多忙を極めていた。その日も、カテマッチの運営の仕事の後に綾乃を抱き、自分の部屋へ帰り着いたのは午後11時頃だった。
普段なら綾乃のマンションに泊まるのだが、最近、性に目覚めた綾乃の欲求が凄まじく、夜も寝かせてくれないため、言い訳を作って自宅に戻ってきたのだ。
それに、佳那、愛莉との関係も続いており、僕は疲弊していた。
駅から重い足を引きずり、ようやくアパートへたどり着く。
僕の部屋は二階にある。階段を上っていくと、部屋の前にうずくまっている人影を見つけた。
(愛莉?)
人影は、愛莉だった。
「愛莉、どうしたの、こんなところで?」
「あ、圭。やっと帰ってきた」
見上げる愛莉の顔を見て、僕は凍り付いた。
「どうしたの? その顔。腫れてるじゃない」
「うん……、ちょっと……」
「連絡くれれば良かったのに、いつから待ってたの?」
「スマホ、壊れちゃって……」
よく見ると、服も乱れている。一体何があったのだろうか? 僕は、ひとまず愛莉を部屋へ招き入れた。
「冷やさなきゃ、ちょっと見せて」
愛莉の顔は、目の下辺りが少し紫に腫れて、口も切っているようだった。
すぐさま、濡れたタオルで冷やしてやる。
「痛っ……」
愛莉は、辛そうに顔を歪めた。
「何があったの? 誰かに襲われたの?」
僕は、心配の余り、矢継ぎ早に質問を投げかけるが、愛莉は他人事のように涼しい顔をしている。
それに……、目が冷たい。
「カレシに殴られたんだ……」
「え? どうして?」
「浮気が、バレちゃった 笑」
浮気、つまり僕との関係が知られてしまったという事か。しかし、女の子に暴力を振るうなんて、僕にはとても容認できなかった。
「だとしても、暴力なんて絶対に許せない! 警察に行こう!」
「ちょっと、落ち着いてよ。 圭」
愛莉は、大げさだと言わんばかりに呆れた顔をする。
「わたしが悪いんだしさ、こんな怪我、直ぐに治っちゃうよ。
だから、大事にしないで」
「分かったよ」
とは言ったものの、僕の腹の虫はおさまらない。愛梨のカレシに激しい怒りをお覚えた。
「なんだか、服も汚れてるよ。着替えなよ」
僕は、愛莉が泊まるときに使っているパジャマを取り出し、彼女に渡した。
「ありがとう」と言うと、愛莉はその場で着替え始めた。
「愛莉……、それって?」
下着姿になった愛莉の身体のあちこちに顔と同じようにあざが認められた。
「結構、ボコボコにされたから 笑」
僕は、愛莉がいじらしくなり、思わず抱きしめてしまった。
「圭……、くるしいよ……」
「ゴメン、でも、こんなひどい事をされて……」
僕は、ずっと心の奥に封印していた気持ちを、吐き出す。
「カレシと別れろよ!」
「……」
「僕は、絶対にこんなことしない。愛莉を大切にするよ」
以前にも同じことを言って愛莉に断られた。でも、これ以上は愛莉に辛い思いはさせたくなかった。
「そうだね、圭は優しいから、女の子に暴力なんて絶対に振るわないね」
「愛莉、僕と付き合ってよ」
「それは……」この期に及んでも、愛莉は躊躇する。
「でも、これで……、アイツとも本当に別れられるかな……」
「僕も、女の人との関係は全部、なくすから、だから、僕と付き合って」
「全部って……、そんなに居たの? 笑」
余計な事を言ってしまったと思ったが、愛莉に隠し事はしたくなかった。
だから、佳那のことも、綾乃のことも話した。
ただ……、小梢の事だけは言えなかった。土門華子の事を話すのを躊躇ったというのもあるが、過去の事という認識があったからだ。
それに、まだ小梢の事が過去になり切れていないと思った。きっと、愛莉が過去にしてくれると依存してしまったのだ。
「ちゃんと全員と別れるよ、だから付き合って」
「わたし、圭と付き合うんなら、もう浮気はしない」
「僕も、愛莉だけだよ」
愛莉を抱きしめる。
「ねえ、今日はちょっと無理そう 笑」
愛莉が何を無理だと言っているかは、直ぐに分かった。
怪我をしている愛莉は抱けない。それに、僕もさっきまで綾乃を抱いてきたばかりなので、さすがに無理だ。
「明日、病院に行ってきた方が良いね」
「こんなの、唾をつけてりゃ治るわよ 笑」
「愛莉……、好きだ」
「わたしもよ、圭」
こうして僕に、初めて本当の恋人ができた。
僕は、相変わらず多忙を極めていた。その日も、カテマッチの運営の仕事の後に綾乃を抱き、自分の部屋へ帰り着いたのは午後11時頃だった。
普段なら綾乃のマンションに泊まるのだが、最近、性に目覚めた綾乃の欲求が凄まじく、夜も寝かせてくれないため、言い訳を作って自宅に戻ってきたのだ。
それに、佳那、愛莉との関係も続いており、僕は疲弊していた。
駅から重い足を引きずり、ようやくアパートへたどり着く。
僕の部屋は二階にある。階段を上っていくと、部屋の前にうずくまっている人影を見つけた。
(愛莉?)
人影は、愛莉だった。
「愛莉、どうしたの、こんなところで?」
「あ、圭。やっと帰ってきた」
見上げる愛莉の顔を見て、僕は凍り付いた。
「どうしたの? その顔。腫れてるじゃない」
「うん……、ちょっと……」
「連絡くれれば良かったのに、いつから待ってたの?」
「スマホ、壊れちゃって……」
よく見ると、服も乱れている。一体何があったのだろうか? 僕は、ひとまず愛莉を部屋へ招き入れた。
「冷やさなきゃ、ちょっと見せて」
愛莉の顔は、目の下辺りが少し紫に腫れて、口も切っているようだった。
すぐさま、濡れたタオルで冷やしてやる。
「痛っ……」
愛莉は、辛そうに顔を歪めた。
「何があったの? 誰かに襲われたの?」
僕は、心配の余り、矢継ぎ早に質問を投げかけるが、愛莉は他人事のように涼しい顔をしている。
それに……、目が冷たい。
「カレシに殴られたんだ……」
「え? どうして?」
「浮気が、バレちゃった 笑」
浮気、つまり僕との関係が知られてしまったという事か。しかし、女の子に暴力を振るうなんて、僕にはとても容認できなかった。
「だとしても、暴力なんて絶対に許せない! 警察に行こう!」
「ちょっと、落ち着いてよ。 圭」
愛莉は、大げさだと言わんばかりに呆れた顔をする。
「わたしが悪いんだしさ、こんな怪我、直ぐに治っちゃうよ。
だから、大事にしないで」
「分かったよ」
とは言ったものの、僕の腹の虫はおさまらない。愛梨のカレシに激しい怒りをお覚えた。
「なんだか、服も汚れてるよ。着替えなよ」
僕は、愛莉が泊まるときに使っているパジャマを取り出し、彼女に渡した。
「ありがとう」と言うと、愛莉はその場で着替え始めた。
「愛莉……、それって?」
下着姿になった愛莉の身体のあちこちに顔と同じようにあざが認められた。
「結構、ボコボコにされたから 笑」
僕は、愛莉がいじらしくなり、思わず抱きしめてしまった。
「圭……、くるしいよ……」
「ゴメン、でも、こんなひどい事をされて……」
僕は、ずっと心の奥に封印していた気持ちを、吐き出す。
「カレシと別れろよ!」
「……」
「僕は、絶対にこんなことしない。愛莉を大切にするよ」
以前にも同じことを言って愛莉に断られた。でも、これ以上は愛莉に辛い思いはさせたくなかった。
「そうだね、圭は優しいから、女の子に暴力なんて絶対に振るわないね」
「愛莉、僕と付き合ってよ」
「それは……」この期に及んでも、愛莉は躊躇する。
「でも、これで……、アイツとも本当に別れられるかな……」
「僕も、女の人との関係は全部、なくすから、だから、僕と付き合って」
「全部って……、そんなに居たの? 笑」
余計な事を言ってしまったと思ったが、愛莉に隠し事はしたくなかった。
だから、佳那のことも、綾乃のことも話した。
ただ……、小梢の事だけは言えなかった。土門華子の事を話すのを躊躇ったというのもあるが、過去の事という認識があったからだ。
それに、まだ小梢の事が過去になり切れていないと思った。きっと、愛莉が過去にしてくれると依存してしまったのだ。
「ちゃんと全員と別れるよ、だから付き合って」
「わたし、圭と付き合うんなら、もう浮気はしない」
「僕も、愛莉だけだよ」
愛莉を抱きしめる。
「ねえ、今日はちょっと無理そう 笑」
愛莉が何を無理だと言っているかは、直ぐに分かった。
怪我をしている愛莉は抱けない。それに、僕もさっきまで綾乃を抱いてきたばかりなので、さすがに無理だ。
「明日、病院に行ってきた方が良いね」
「こんなの、唾をつけてりゃ治るわよ 笑」
「愛莉……、好きだ」
「わたしもよ、圭」
こうして僕に、初めて本当の恋人ができた。
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