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第40話 不機嫌な女社長
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夕方。
僕は、一緒についてくると言う美栞を振り切って、原宿駅で愛莉と待ち合わせていた。
それにしても、美栞の行動の元になっている『参考書』には、どんなことが書かれているのか。今日も『カレシの浮気阻止には最初が肝心』と、一緒についてきて相手の女にくぎを刺すのだと言ってきかなかった。
僕は、最初から核実験はしない、理科の実験はリトマス紙からでしょ、徐々に実験のレベルを上げていきましょう、となだめたのだった。
美栞の事もあったが、今日は綾乃だ。
綾乃になんと申し開きをしようかと僕は考えを巡らせていた。
「きっと怒っているだろうな……」綾乃の時折見せる厳しい表情を思い出し、少し怖い気がした。
「森岡君」
思いを巡らせていたところに不意に声がかかり、僕はハッとする。
「あ、川本さん」と振り返って、僕は驚いた。
今日は綺麗に化粧をして、冷たい印象の目元も明るく色付けているため、元からの綺麗さが際立っていた。
「また、見つめてる 笑」
愛莉は、可笑しそうに笑うが、僕は彼女の笑顔が好きだ。つい、見とれる時間が長くなる。
「もう~、なに?」
「す、すみません。 今日は雰囲気が違うな……て」
僕は頭をかきながら、照れ笑いした。
「面接があるから、お化粧してきたの。普段はやらないんだけど……、変じゃない?」
「いえ、とても綺麗です。見違えちゃいました」
「森岡君って、ホント、お世辞をスラスラと言うよね 笑」
「(お世辞じゃなく、本当に綺麗だと思ったんだけどな)
僕も都会に慣れて、口が上手になったのかもしれません 笑」
「あーー、やっぱり、お世辞なんじゃない」
愛莉は少しむくれて見せるのだが、冷から温の変化が絶妙に可愛く見える。僕は胸がドキドキする思いがした。
「あの、カテマッチの事務所は、ここから歩いて少しの所なんです。行きましょうか」
僕が向かう方向を指さして歩き始めると、愛莉が腕を絡めてきた。
「せっかくだから、腕組んで行こうよ」
思いがけないサプライズに、僕は頬をフルフルさせながら歩く。
(最近、女性と仲良くする機会が増えた気がする……、これって)
人生初の、『モテ期』到来か!?
~・~・~
「え……と、たしか、この辺だったような……」
岸本に連れられて一度来ただけなので、場所があやふやだった。
愛莉の前でカッコ悪いところを見せたくないのだが、東京の土地に慣れていないのは如何ともしがたい。
不味いな……と思い綾乃に電話をかけると、迎えに来てくれると言うので、その場で待つことにした。
「カテマッチって、女の社長が一人で経営してるって聞いたんだけど、本当なの?」
「ええ、それも若くて美人で、まさに完璧な女性と言った感じです」
「へ~」と愛莉の目が冷たくなる。
「え? どうかしました?」
「なんか、わたしへのお世辞と言い方が違う。森岡君って、もしかしてその人の事が好きなの?」
「ええーー、そんなことある訳ないじゃないですか。全然、世界が違いますよ」
「住む世界じゃなくて、森岡君の気持ちを聞いてるんだけど、その反応で分かったわ。
でも、どんな人なのか、興味が湧いてきた 笑」
愛莉は、そう言って笑って見せたが……、目が笑ってない。
やはり、リケジョの行動はよく分からない、と僕は再認識した。
「森岡君」
声をかけてきたのは綾乃だった。
「あ、宮下さん。 すみません、面倒をかけてしまったて」
「いいのよ、事務所も分かり辛い場所にあるし」と言いながら、僕の腕に絡めている愛莉の手に視線をやった。
「彼女が、今日、紹介したい子?」
「はい、川本愛莉さん」と、僕が紹介するまでもなく、愛莉が前へ出て自ら自己紹介した。
「川本愛莉です。今日は、お時間を取っていただき、ありがとうございます」
「宮下綾乃です。あ、お話は事務所で、こちらです」と僕たちを連れ立つ。
綾乃が現れたと言うのに、愛莉は僕の腕に手を絡めたまま、綾乃についていく。
時折、綾乃が振り返って僕たちがついてきているのか、確認する。その時、心なしか僕の事を睨んでいるような気がした。
やはり、デートの約束を反故にした事を怒っているのだろうか?
少し、不安がよぎった。
(これは、素直にあやるしかないな……)
「ねえ、宮下社長、ちょっと怖い顔になってない?」
「う、うん……そうですね……」
「わたし、なにか怒らせたかな?」
「いや……たぶん、原因は僕です」
僕は、一緒についてくると言う美栞を振り切って、原宿駅で愛莉と待ち合わせていた。
それにしても、美栞の行動の元になっている『参考書』には、どんなことが書かれているのか。今日も『カレシの浮気阻止には最初が肝心』と、一緒についてきて相手の女にくぎを刺すのだと言ってきかなかった。
僕は、最初から核実験はしない、理科の実験はリトマス紙からでしょ、徐々に実験のレベルを上げていきましょう、となだめたのだった。
美栞の事もあったが、今日は綾乃だ。
綾乃になんと申し開きをしようかと僕は考えを巡らせていた。
「きっと怒っているだろうな……」綾乃の時折見せる厳しい表情を思い出し、少し怖い気がした。
「森岡君」
思いを巡らせていたところに不意に声がかかり、僕はハッとする。
「あ、川本さん」と振り返って、僕は驚いた。
今日は綺麗に化粧をして、冷たい印象の目元も明るく色付けているため、元からの綺麗さが際立っていた。
「また、見つめてる 笑」
愛莉は、可笑しそうに笑うが、僕は彼女の笑顔が好きだ。つい、見とれる時間が長くなる。
「もう~、なに?」
「す、すみません。 今日は雰囲気が違うな……て」
僕は頭をかきながら、照れ笑いした。
「面接があるから、お化粧してきたの。普段はやらないんだけど……、変じゃない?」
「いえ、とても綺麗です。見違えちゃいました」
「森岡君って、ホント、お世辞をスラスラと言うよね 笑」
「(お世辞じゃなく、本当に綺麗だと思ったんだけどな)
僕も都会に慣れて、口が上手になったのかもしれません 笑」
「あーー、やっぱり、お世辞なんじゃない」
愛莉は少しむくれて見せるのだが、冷から温の変化が絶妙に可愛く見える。僕は胸がドキドキする思いがした。
「あの、カテマッチの事務所は、ここから歩いて少しの所なんです。行きましょうか」
僕が向かう方向を指さして歩き始めると、愛莉が腕を絡めてきた。
「せっかくだから、腕組んで行こうよ」
思いがけないサプライズに、僕は頬をフルフルさせながら歩く。
(最近、女性と仲良くする機会が増えた気がする……、これって)
人生初の、『モテ期』到来か!?
~・~・~
「え……と、たしか、この辺だったような……」
岸本に連れられて一度来ただけなので、場所があやふやだった。
愛莉の前でカッコ悪いところを見せたくないのだが、東京の土地に慣れていないのは如何ともしがたい。
不味いな……と思い綾乃に電話をかけると、迎えに来てくれると言うので、その場で待つことにした。
「カテマッチって、女の社長が一人で経営してるって聞いたんだけど、本当なの?」
「ええ、それも若くて美人で、まさに完璧な女性と言った感じです」
「へ~」と愛莉の目が冷たくなる。
「え? どうかしました?」
「なんか、わたしへのお世辞と言い方が違う。森岡君って、もしかしてその人の事が好きなの?」
「ええーー、そんなことある訳ないじゃないですか。全然、世界が違いますよ」
「住む世界じゃなくて、森岡君の気持ちを聞いてるんだけど、その反応で分かったわ。
でも、どんな人なのか、興味が湧いてきた 笑」
愛莉は、そう言って笑って見せたが……、目が笑ってない。
やはり、リケジョの行動はよく分からない、と僕は再認識した。
「森岡君」
声をかけてきたのは綾乃だった。
「あ、宮下さん。 すみません、面倒をかけてしまったて」
「いいのよ、事務所も分かり辛い場所にあるし」と言いながら、僕の腕に絡めている愛莉の手に視線をやった。
「彼女が、今日、紹介したい子?」
「はい、川本愛莉さん」と、僕が紹介するまでもなく、愛莉が前へ出て自ら自己紹介した。
「川本愛莉です。今日は、お時間を取っていただき、ありがとうございます」
「宮下綾乃です。あ、お話は事務所で、こちらです」と僕たちを連れ立つ。
綾乃が現れたと言うのに、愛莉は僕の腕に手を絡めたまま、綾乃についていく。
時折、綾乃が振り返って僕たちがついてきているのか、確認する。その時、心なしか僕の事を睨んでいるような気がした。
やはり、デートの約束を反故にした事を怒っているのだろうか?
少し、不安がよぎった。
(これは、素直にあやるしかないな……)
「ねえ、宮下社長、ちょっと怖い顔になってない?」
「う、うん……そうですね……」
「わたし、なにか怒らせたかな?」
「いや……たぶん、原因は僕です」
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