上 下
26 / 66

第26話 小梢の過去

しおりを挟む
しばらくベッドの中で放心状態でいたが、小梢は『シャワー浴びて来るね』といってベッドから抜け出し、灯りの方へ向かった。まるで小梢が光の中に消え入るような錯覚に陥る。

先ほどと同じように、ガチャガチャとユニットバスの扉が開いて閉まる音がして、やがてジャー、バシャバシャっと水がはじける音が部屋に響いた。

僕は、ベッドの中で天井を見つめながら、ある不安に襲われていた。

なぜ小梢は今日、僕との関係を進めたのだろうか?
いつも唐突で、謎めいた行動をする小梢が、次に何をするのか?

それが、僕にとって良い事になるのか悪い事になるのか、高確率で悪い事のような気がしてならなかった。
先ほどまでとは別のドキドキが始まる。

「お待たせ」

程なくして小梢は、浴室から出てきた。当たり前だが、服を着ている。

「僕も、シャワー浴びてこようかな」

「うん……、圭君、あとで話があるの」


(やっぱり、きた!)


僕の予感は的中する。小梢からは良くない事しか話してもらえない気がした。

「分かった。とりあえず、シャワー浴びてくる」

僕は、逸る気持ちを抑えつつユニットバスの扉を開閉し、熱いシャワーを浴びる。
気持ちを落ち着かせ、部屋に戻ると照明が灯されていて、小梢が正座して待っていた。


僕も正座して小梢と向かい合う。
小梢は僕を真っすぐに見据えると、バッグから封筒を取り出し、僕に手渡した。

「これは?」

「圭君、わたしの故郷……、松江なの」

「へ?」

「圭君と同じ中学にいたのよ。圭君は1年で転校したけど、わたしはそこの卒業生」

「この封筒は何なの?」

封筒は随分と古いもののように見えた。

「読んでみて」

中には便箋が二枚入っていた。
僕は、それらを取り出し、広げてみる。


  『雪村小梢様』


文面が目に飛び込んできた。

僕は一瞬、小梢の表情を伺うが、小梢は真っすぐに僕を見据えたまま微動だにしない。

僕は、文面を読み進めるにつれ、手が震えてくるのを覚えた。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

由紀と真一

廣瀬純一
大衆娯楽
夫婦の体が入れ替わる話

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

兄の悪戯

廣瀬純一
大衆娯楽
悪戯好きな兄が弟と妹に催眠術をかける話

処理中です...